═パラダイス周辺════
スルガはコントロール・ポットに乗り込んでいる。それぞれの機体の背中にはLBXより長い四本のブースターとそれよりは小ぶりの八本の補助ブースター、早い話がVOBが取り付けられていた
機龍には追加のバッテリーが外接されている
─少し前─────
パラダイスの建造データを元に構築したシュミレーションで訓練をしている。結果的には扉の破壊に成功しているものの格納庫前まで到達するまでに二機戦闘不能という結果が大半であった
「こりゃちょっとヤバイなぁ」
「そうですね・・・これでもリタイアしてないスルガさん何者なんですか本当に」
大体オーバーセンスのお陰である
「サターンの時よりキツい・・・でも突破できないと壁が破壊出来なくなる」
「スルガのアブゼロで何とかなってるけど、それじゃあダックシャトルが帰還できなくなるかもなんだよねぇ・・・どうしたものか」
ランとバンが頭を捻っている
「・・・弾幕の回避に時間を掛けすぎてもいけない。もろにどうするべきか」
ダックシャトルはLBXより的が遥かに大きい。いくら回避プログラムがあるとはいえ弾幕に晒される時間は最低限にするべきだ
「あ、アレ使えるかも」
「アレ?・・・またろくでも無いものかい?」
「《VOB》ヴァンガードオーバーブースト、少し前開発した直線速度特化の特殊強襲用装備だ。パリの一件で直接敵の弱点を強襲出来れば・・・と思ってな。設計最高速度はトルークビルトも越える。無重力下で起動するとそれ以上の速度になるだろう」
「トルークビルトを越える速度・・・つまり音より」
「早いな。地球上での最高速度は大体マッハ2、ただしここは宇宙、空気抵抗が無いから速度はその比じゃないぞ」
「つまり・・・迎撃を速度で圧倒するってことだね?」
「ま、そんなところだな。」
まあ、その代わり少しでも切り離しと逆噴射のタイミングをミスれば即スペースデブリの仲間入り、と言葉を残した
その後、訓練では被弾こそ無いが壁に激突、調整ミスで宇宙のゴミになりまくった
そしてなんやかんや今に戻る
─今に戻る────
「スルガさん、コレ本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。切り離すタイミングさえ間違えなければ真っ直ぐ飛ぶだけだから」
作戦はLBXと補助ブースターで少しずつ進路を調整しながら圧倒的な速度をもってパラダイスの格納庫に向けて突撃するという超単純明快でゴリ押しの極みのようなもの
ブレーキに関しては止まれないのならそのままぶつかれば良いというトチ狂った発案を採用しギリギリで切り離さず移動、全てにおいてなるべく速度を落とさず格納庫の扉に着地することで突撃を成功させるという賭けに出た
ダックシャトルは弾幕に晒される時間を最小限にするため俺達の格納庫扉破壊直前にパラダイスの対空火器の射程内に突入、そのまま弾幕を突破して格納庫に滑り込む算段だ
『皆、準備はいいか?』
「「「ハイッ!」」」
『よし。パラダイス制圧作戦を開始する!』
イカロス・ゼロ、イカロス・フォース、ヴァルキュリア、機龍、A・アーサーがカタパルトに下ろされる。レールに給電され加速準備が開始、ダックシャトル本体もエンジンの出力を上げる。そして射出へのカウントダウンが始まった
『コブラ、射出は任せた』
『了解だ。カウント5秒前4...3...』
カタパルトが発光し進路を照らす
『2...1...発ッ進!』
カタパルトが起動、そしてダックシャトルの外に出た瞬間、VOB全てのブースターが点火、今までとは比べ物にもならないパワーでLBXに与えながら更に速度を上げる
「えっ、嘘ッシュミレーションより早い!」
「コブラァ!今何キロォ!」
《とっくに音速は越えた!で、マッハ60、まだまだ加速中!》
「空気抵抗無いしもっと出せるな。他のは大丈夫か?まだまだ加速するぜ?」
「ハイッ!使いこなして見せます!」
「凄い・・・もうパラダイスがここまで」
出撃の時は豆粒のような大きさだったパラダイスが今ならハッキリ捉えられるどころかどんどん大きくなっている。それにコントロールポットに附属された速度計は数字と桁の上がり方が激しすぎてもはや数字が読めず機能していない。そして気付けばパラダイスは目の前だ
《マッハ200突破!》
「ようし、これがこいつのパワーか・・・もっと速度が出そうなのが名残惜しいが・・・エンジン停止用意、パージ用意」
既にパラダイスの至近距離に近付いている。こちらの接近を感知した迎撃火器が起動、パラダイスの周回を考えるとその10倍以上は出ている
その段階でパラダイスの内部に入り込む直前に五機のVOBが最期のブーストをかける
計器が対応しきれず計測不能だがこの瞬間世界で、宇宙で一番の速度を出したLBX達だろう
迎撃の弾やミサイルが飛んでくるが全て目論見通りパラダイスの迎撃は速度で振りきれている
本当に掠りもしない
「突っ込むぞ!」
バンの号令でブースターをパラダイス側に逆噴射、速度を殺す
そこで役目を終えたVOBは自壊した
どんどん近付いてくる壁に激突する恐怖にハラハラしながら、扉の上に着地に成功する。しかし一息とてつく暇はない
「よし、ヒノ行くぞ!」
「ああ!最初の一撃、頼んだ!」
「オッケー!私もいつでも行ける!」
「バンさん!僕たちも」
「行くよ。ヒロ!」
即刻扉の上から飛び立ち定位置についた
「胸部装甲展開、リミッター解除。エネルギー充填開始」
「聖槍・・・抜錨!」
機龍の胸部装甲が開き、エネルギーの充填が開始される。同時に細かくブースターを使い発射方向を調整
それと同時にA・アーサーが上げた右腕で聖槍ロンゴドミニアドが浮遊、槍の織り込みにエネルギーが収束していく
勿論パラダイスからの迎撃も止まらない。大半がダックシャトルに向けられる中、誘導弾が襲来するがまだ出番が先のゼロ、フォース、ヴァルキュリアが遊撃している
「照準よし、発射!」
アタックファンクション
アブソリュート・ゼロ
機龍から放たれた空色の光球を扉ど真ん中に直撃させた。表面に氷を浮かばせながら扉全体が凍結する
「ヒノ!」
「ロンゴォ・・・!」
槍の織り込みに収束したエネルギーが膨張、強大なエネルギーが巨大な光の槍を造り出した。そして右腕を少し引くとそれに合わせて槍も後退
「ミニアドォッ!!」
アタックファンクション
ロンゴミニアド
A・アーサーの右腕を扉に向けて振り下ろし巨大なエネルギーを投擲した。アブソリュート・ゼロで凍り付いていた扉に対しては明かに過大な威力
突き立った槍は一枚目を破砕、二枚目の扉に突き刺さり大爆発を起こす
「よっし!次はあたしだね?行くよヴァルキュリア!」
扉を破砕する間にヴァルキュリアが位置についていた。攻撃を終えた機龍とA・アーサーはヴァルキュリアと入れ替りで迎撃に出る
アタックファンクション
炎崩し・極
そして、ヴァルキュリアの目の前に巨大な業火球が出現する。扉とは反対方向に飛び上がり火球に向け突撃、両腕を引き衝突寸前で両拳を火球に打ち込んだ
その衝撃波は火球全体を揺さぶり、一気に加速して業火球は扉に近付くとロンゴミニアドの煙を掻き消した
煙が晴れた一瞬をスルガは見たが、扉は二枚目が大破しており槍の先端が直撃したであろう場所らへんは三枚目の扉が露出していた
そこに炎崩し・極が襲来、火球は傷付いた二枚目の扉を熱と爆発で消し飛ばし三枚目の扉全体に亀裂が入る程の大きなダメージを与える
「バン!ヒロ!後頼んだ!」
「ヒロ、準備は良いな?」
「ハイ!何時でも行けます。リミッター解除。イカロス・フォース、ウェポンフォーム!」
突っ込むための加速分距離を取った二機、そしてイカロス・フォースがその姿を大剣へ変えた
イカロス・ゼロがその剣を握り、構えて二機のブースターでフル加速しながら刃にエネルギーを集中させる
アタックファンクション
メテオブレイカー
流星をもブレイクする一撃が振りかざされる
アブソリュート・ゼロで凍り付きロンゴミニアドが突き刺さり、炎崩し・極が直撃し満身創痍の扉に突撃、文通り粉砕した
ここはもう二度と格納庫としては使えないだろう
破壊した先で二機は格納庫内に着地残り三機も迎撃から逃れるため格納庫内へ。脳汁ドバドバで気付かなかったがダックシャトルはかなり揺れていた。外(LBX)から見れば旋回やバレルロールを繰り返し着実に格納庫に突っ込んでくるダックシャトル
それを眺めながら迎撃火器の掃除を開始、誘導弾やメーサーの直撃でいくつかは動きが止まる
そして、ダックシャトルが穿たれた格納庫に飛び込んで行くのを見て、体をコントロールポットの座席に押し付けた。その刹那更に前後上下左右に強烈な衝撃がポットを襲う
「・・・成功ですか?」
「みたいだな」
格納庫で機首を床に擦り付けながら停止。
『飛行システムに大きな障害無し。着陸に成功したモ』
何はともあれダックシャトルは無事で着地成功。この先に世界の命運と、ルナが待っている
必ず助け出す。その決意を胸にスルガはコントロールポットを出た