═トキオシティ スルガ宅════
現在スルガはルナとヒノと縁側で川の字で寝転がり昼寝をしている。愛する二人に抱き付かれ囲まれるスルガはほくほく顔で空を見上げる。もうすぐ動き出すであろうミゼルの事も少し忘れて休みに更けていた
ディテクター事件が終結して色々合った。
さて、俺がミゼルと戦う前の下拵えの内容だけ先に語っておこう
・カイオス長官経由で政府直轄状態のオメガダインの資料全てを閲覧、しかしミゼルのMの字すら見られず、ミゼルが使用していたのと同タイプのアンドロイドが廃棄されていたと言う情報を入手、しかしスルガが裏から捜査してもアダムとイブの痕跡は発見出来なかった
・ワールドセイバーの方も調査は難航、パリの一件からワールドセイバーの噂話は大衆に広がったが、新たなめぼしい情報は得られなかった。しかしトルークビルトのビットの解析が終了した
・触れられるだけでOUTのゴーストジャックに対応するためにフルリンクシステムを登載しない高性能LBXを計画、山野博士が囚われていたエンジェルスターと解体待ちの海道邸、旧イノベーター研究所に泥棒に入りイプシロンの設計データを復旧、イプシロンUCを製作、この実戦データや世界中から集められるデータを利用して3機目の希望のLBXを作る予定
まあ、こんなところだ。ミゼルに対応してる時にワールドセイバーに暴れられるのが糞程面倒だが流石のワールドセイバーも正面からミゼルの相手はしたくないだろうし、お互いの敵なら敵の敵は味方理論でワールドセイバーを粉砕できれば御の字だが
「「スゥ・・・」」
眠る二人の髪を撫でるとくすぐったそうに体を捩る。この二人だけはワールドセイバーとの戦いに巻き込みたくない。しかし否応にも巻き込む事になるだろう
とまあ、とりあえず目先はミゼル。とりあえずラジオに耳を傾けているが特にLBXが暴れだしたと言うニュースは無い
ふと頭を止めて両手を使い二人の顔をムニムニする
「うにゅ・・・くぅ」
かわいい(思考停止)
普段から良く手入れしている二人の肌はモチモチで至福の時間だ
「んん?しゅるが?くすぎゅったいよ」
「寝てる乙女にイタズラとはいただけないね?」
「別にいいじゃねえか。それに減るもんでも無いし」
そう言いつつ二人を完全に抱き寄せて笑う
「スルガあったかーい!」
「確かにポカポカする」
「あの暴走の後から体温少し上がったからなー」
一通り二人のことを堪能して、スルガは起き上がり
「よし。飯にすっか!」
と台所へ行った
─数日後 スルガ宅─────
夕刻も終わる頃に呼び鈴が鳴った。ルナが玄関を開けると居たのはレックス、少し息が上がっているようだ
「ルナか。スルガ、居るか?」
「あ、レックス。スルガなら自室で作業してるけど?スルガー!レックス来たよー!」
「どうしたんだい?そんなに慌てて」
ルナに返事を返して作業服姿のスルガが奥から出てくる
「どしたのレックス?」
「今さっきだが店にLBXが侵入してきてな。本格的に暴れる前に撃破はしたが妙な機能を持っていた」
「妙な機能?どんなLBX?」
「こいつなんだが・・・これに触れられたLBXが突然こいつの言いなりになるように暴走したんだ」
「・・・暴走したLBXのMチップは?」
「取り外されてた。こいつの解析を頼みたい」
レックスの手の中にあるのは黒いLBX、レックスと対峙したことで装甲が割れているがそのシルエットはスルガが見間違えることは無かった
LBXベクター、ミゼルの手下でダンボール戦機世界における『お前のような量産機がいるか』の代表だろう
「・・・成る程、わかった。二人とも、もしかしたら新しい事件かもしれない。レックスの言う触れられたLBXが暴走するなら俺達のLBXもあるいは」
「暴れるかも知れない・・・」
「とりあえず分解する。更に細かいことはシーカーかタイニーオービットへ持っててみねえと」
「頼んだ」
スルガが工具を持ち出して解体開始、襲撃や奪還対策として無人機による監視網を形成した
「・・・は?」
「アレ?なんでコアパーツが入ってないの?スルガ抜いてないよね?」
「抜いてない・・・自律稼働にしてもおかしい点しか無いな」
スルガが完全にアーマーフレームとコアスケルトンを分離。コアスケルトンはさっさと四肢を取り外し更に解析を続ける
「流石に駆動モーターとかは入ってるな。バッテリーや制御装置は散らして設置してある。一応整合は取れるが・・・」
「このLBX見たこと無いけど。スルガ、メーカーとか分かるかい?」
「いや、どれも市販品じゃねえ。間違いなくオーダーメイドだ。暴走のからくりは手先に付いてる謎のパーツだ。恐らくこれに触れられるとハッキングされるか、ウイルスを流し込まれるかで暴走する・・・が個人的に一番問題なのは量産されてるか否か?・・・コレ、1機だけだった?」
「いや、三機確認できた。二機は俺が大破させちまってな。他のパーツと混ざっちまって持ってこれなかった」
「OK。コレを大破させれるレックスは化け物だ。この数値をみろ」
スルガの手にあるのは硬度計
「この硬度だと並の攻撃じゃ傷一つ付けられないしコアスケルトンの強度も計算にいれると・・・多分グングニルの直撃でようやく撃破出来る位だな。だが大破までは追いやれん。それが三機有ったとすると」
「量産の可能性が高い・・・か?」
「まあ機龍のパワーなら大破させられると思うけど・・・」
こうやって実物ばらして解析したから分かるが徹底的な構造の無駄を省きつつ多少の拡張性があるときた。固い装甲にそこそこの足、それに結構なパワー。こちら側のワンオフ機と並ぶ性能、こいつが量産機とかふざけんなよマジで
「一体どこの誰がこんなものを・・・よし。取り敢えずトキオシアのシーカーに持ってってこいつの内部データの解析に入ろう。行動プログラムくらいなら分かるかも」
「今車を出す。急ぐぞ」
「新たな事件・・・バンやヒロには連絡しないのかい?」
「もうちょい詳細が分かってからでも遅くはない気がするけど・・・ルナ、一応オタクロスに一報入れといてくれ。自動的にNICSにも伝わるはずだ」
「大丈夫。もう入れてるよ。一応拓也さんにもね」
「流石俺の嫁さんだ。機龍、行くぞ。ソルジャー、シャルナック!留守任せた」
ベクターをパーツごとに箱詰めし万が一にも暴れられないようにしておく
自宅警備にはソルジャーとシャルナックが残る。奴らなら大丈夫だろう
═トキオシアデパート地下、シーカー本部═════
時間は深夜、シーカー本部に到着しベクターの解析を始めている。スルガがシーカーの技術者と色々している間、ルナとヒノは自身のLBXからフルリンクシステムを取り外していた
「駄目ですね。内部データは完全に消去されてます。この感じだとそもそも内部データなんて存在しなかったのかもしれません」
「行動プログラムの方は?」
「それらしいコードが残されていましたが改竄の痕跡を発見しました。恐らく機能停止前に自動で書き換えられたのかと」
「手掛かりなしですか?」
「一つだけ、内部にメッセージのようなものが」
「緑の《M》・・・作成者か、運用者の暗号ですかね?」
「これだけでは何とも、ですがLBXの暴走を引き起こす方法は判明しました。コレをみてください」
シーカーの技術者がディスプレイにベクターの手先を拡大、赤いライトのような部分に注釈を付ける
「ここから強い電磁波のような物を発していると思われます。仕組みを考えるとLBXどころかスーパーコンピュータまでハッキングが可能です」
「つまり有線通信でもこいつに見つかれば傍受されると言うことですか」
「ましてやLBXです。こいつがそこら中に居る可能性も考えられます。ここの設備でもこのLBXの侵入を完全に止めるのは難しいでしょう」
「成る程・・・仮にこいつが軍隊のようにこの辺を襲撃してきたら取り返しのつかないことになりますね」
「ええ。間違いなくです。現代、ほぼ全てがコンピューター制御、相当厄介な事になりますよ」
「スルガ!バンから連絡!Nシティで原因不明のブレインジャックが起きたみたい」
「チッ、流石に遠い。奴らに任せるしかない。司令室に行きましょう。少しでも多くの情報を集めねば」
司令室に滑り込みむと既に拓也とカイオス長官との回線が開いていた
「長官!状況は?」
『Nシティ全域でLBXが暴れだし、それにいくつものコンピューターがザザザッ』
突然通信が途絶、再接続を試みるも弾かれた
「回線が切れた・・・妨害か?」
「駄目です。回線開きません!」
『何があった?』
「Nシティでのブレインジャック・・・にしては変、またパリの連中が暴れだしたのかもしれない」
『現地の監視カメラの映像は出せるか?』
シーカーオペレーターの手がコンソールの上を踊る。無情にエラーを表示するだけだ
「駄目です。Nシティとの通信自体出来ません!」
「エクリプス格納庫より連絡、エクリプスが独りでに離陸、姿を消しました!」
『なんだと!?』
「エクリプスが?何者かのハイジャックか?」
「報告では整備が終わった後に突然離陸。人が乗っているとは考えられないと」
A国の連中とは連絡途絶、向こうの事は向こうに任せるしかない。まあジンやユウヤも居る。ベクター含めて何とかするだろう。それよりはエクリプス、正直エクリプスの失踪をミゼルの行動開始の指標にしてたから読みを外しちまった
『Nシティでの件と関連があると見るべきだな』
「ええ・・・」
「通信途絶前にインフィニティネットに上げられた映像がいくつか収集出来ました」
「画面に出してください」
スルガはディスプレイの映像を見る。しかし逃げながらとったような映像ばかりで参考には成らなかった。がルナが一枚の写真を見つけ出す
「スルガ、この写真の黒いLBX、ぶれてるけどこのシルエット、レックスが撃破したあれじゃない?」
「確かにそう見えるね。レックスが言っていたLBXが暴走した。っていう情報も合わせると」
「さっきの解析情報とも辻褄が合う・・・エクリプスが姿を消した理由もこいつが原因と考えれば納得がいくな」
『そいつが檜山の店で暴れたと言うLBXか?解析はどうだ?』
「大体終わってるのでデータを送信します・・・いや、後で書面で届けます。この状況だ。どこでどう改竄されるか分からない」
『分かった。しかしどうする?情報を集めようにも通信自体が出来ないとなると』
「ええ。現地のバン達に任せるしか有りません。こっちはこっちでこれからの対策を練りましょう」
『よし。ならシーカーの機能をタイニーオービットに移し連携を強化しよう。同じ建物の中だ。最悪連絡出来ない・・・と言うことは無くなる』
「ですね。情報解析も機械の解析もやり易くなるし、防衛拠点が一つ減るのは大助かりです」
慌ただしく引っ越しが始まった。だが一時間程で荷物は纏まり後は搬出と移送だけ。普段の訓練の賜物だ
「さてと、レックス、俺も一度家に戻ってデータを破壊しに行く」
「またやるのか?」
「バックアップはいつでも輸送できる体制にある。トラック付けて運び出せば終わりだ」
「分かった。車を回しておこう」
ミゼルが動き出し始めた。スルガも動き始める