══タイニーオービット社═════
一方的に疲労が貯まる中、スルガはまた爆睡していた。機龍とあそこまで無茶をしたので無理もない
帰ってきた所でルナとヒノに叩き起こされ寝ぼけながら報告会に参加する事になってしまった。そしてその眠気を用意に吹き飛ばす程の来客が来ていた
「む、八神君、その子達か?」
帰ってきた全員が目を疑った
「財前総理!?護衛もなしでなぜここに!」
防衛戦帰りの八神が驚愕している。と言うか全員驚いている。対応していたであろう拓也さんと霧野秘書はイタズラが成功したような笑みを浮かべた
「あのエネルギープラントは我が国の、世界の行く末を決めるもの。守ってくれた礼は直接言わねば私の気が済まない・・・君たち、良くやってくれた」
そう言い財前総理が深々と頭を下げる
「えっ・・・頭を上げてください総理」
「私達は当たり前の事をしただけですよ」
バンとアミが困惑半分で財前総理を止めにかかる
「それに、山野バン君、川村アミ君、青島カズヤ君、河白スルガ君、去年のパレードの事、八神君から話を聞いている。本来なら謝礼の1つでも贈りたいのだが・・・」
「そもそも非公式の事件ですし」
「別にそんなもん要らねえよ」
スルガとカズがそう返した
「あ、ならお礼の代わりに何かあったら御助力をお願いしたいですね。NICS、実質的なA国政府、そこに日本政府が加わってくれるなら凄く助かります」
「分かった。命の恩人達への協力は惜しまない」
「ありがとうございます。拓也さん、早速現状報告、共有と行きたいんですが?」
「カイオス長官とはもう通信が繋がっている。そしてクラウディア大統領もこの会議に参加したいそうだ」
「私も参加させてもらおう。世界から託され生まれた希望もこの目で見てみたい」
シーカーの隊員がコンソールを操作、ホワイトハウスに通信が繋がる。映像に写るのはカイオス長官とクラウディア大統領だ
「クラウディア大統領!ガーダイン追撃の時、解放してくれてありがとうございます。お蔭で愛するものをこの手で取り返せました」
『貴方が河白スルガ君ですね。貴方には私の命を守ってもらった恩があります。お礼は要りません』
『一刻も時間が惜しい。早速報告を頼視たい』
「はい。我々シーカーは小笠原諸島沖のエネルギープラントを銃撃してきたミゼルを迎撃、これを撃退しました」
「途中の推移とオチは俺から。率直に言わせてもらいますと・・・痛み分けと言った所でしょう。途中ミゼルは侵攻にオーレギオンを投入、俺とレックスの時間稼ぎで何とか持たせてましたが最終防衛ラインまで抜かれました。その後アキレスD9が到着、オーレギオンに手傷を負わせた所でミゼルがエクリプスを伴って飛来、こちらの損害とセト50の存在を考えて追撃を諦めました」
『希望のLBX、アキレスD9はミゼルに対抗出来た・・・』
スルガは更に話を続ける
「ですが、エクリプスがエネルギープラントに飛来したと言うことは奴は日本周辺に潜伏している可能性が高い。現在、奴にとっての一番の脅威はアキレスD9、誕生を待たれているもう二機の希望です。全て日本の、ここにある以上、狙われるでしょう」
「現在復旧した基地を中心にありとあらゆる手段で哨戒網を構築している。今のところエクリプスが日本列島に近づいていると言う報告は無い」
『それでMr.ウザキ、今後の方針は?』
「暫くは様子見になります。防衛戦でかなりの損傷と損害を受けました。それにもう二機の希望、短く見積もっても日本の日付が変わる頃になります」
「だけど、オーレギオンも直ぐには動かないと思います」
バンが口を開いた。オーレギオンはスルガ&レックス、スルガ&機龍(本気)、アキレスD9と連戦を続けたのだ
「バンがオーレギオンの右腕を切り落としました。大体前回半日で動き出したので次までに・・・丸1日は固いです。それに奴もアキレスD9に対抗できるようにカスタマイズしてくるでしょう。奴は博打は好みません。奴なりに100%勝てる機体に仕上げてくる。それにどれだけ時間がかかるかは分かりませんが少なくとも明日、この辺がラインだと考えます」
「スルガ君、その根拠はなんだい?」
「俺達がアキレスD9の設計、製造にかかる時間が丸二日、奴の常軌を逸した技術力を見ても1日は固いかと」
『そこまでに新たな防衛プランを練らねばいけないわけね?』
「防衛じゃありません・・・決戦に持ち込むべきです」
『決戦?』
「と言うかミゼルもそのつもりでしょう。このまま行ってもお互い泥沼化・・・てか、この会議もどおせ覗いてんだろ?出てこい」
『・・・やっぱりバレてたんだ。その様子だと国際会議の所から気付かれててたのかな?』
「ああ。お前からすれば滑稽で無駄な会議だったろ?」
ミゼルのアバターがシーカーの設備から投影される。ミゼルは財前総理とクラウディア大統領を一瞥しスルガの方に手を伸ばした
「なあミゼル、そろそろ決着付けようや?このまま争い続けたらリソースはどんどん減っていく。中途半端なスクラップ&ビルドはリソースを余計削るぜ?」
『・・・それは一理あるね。ふむ・・・それなら、終わりにしてあげよう。君たちが積み上げてきた希望を打ち壊す形でね』
「ああ。終わりにしよう。お前を0に還元してな」
スルガとミゼルはそう言い合いミゼルは姿を消した
「・・・次が決着の時、ですか。ですがスルガさん、僕たちは勝てるでしょうか?」
「うん。あんな傷だらけのミゼルに何も出来なかった」
ヒロとランが撃破されたイカロス・フォースとヴァルキュリアを見て不安を募らせる
「珍しく弱気だな。ヒーローは勝つんだろ?それにラン、戦いもせずに負けた気とはらしくねえなぁ?ま、見てなって。地球をチェス盤にした河白スルガとミゼルの勝負、その行く末を」
『河白スルガ君、わざわざ決戦を誘ったと言うことは策が有るのですね?』
「それについては・・・ミゼルに盗聴されてるのが証明されたのでお楽しみに」
スルガは笑っている。睡魔での頭の故障か、それとも内に存在する狂気か
「場所の予想は付いているのか?」
「あ~確かに、後で財前総理にはお伝えしましょう。ですがこれだけは言っておきます。これを実行するのには何もかもが足りない。とだけ」
『スルガ君、君は・・・何なんだ?宇宙に行くときも君が手を回していた。まるで未来でも見えていたかのように』
「・・・俺は、絶対に譲れない、守りたいものがあるだけです。俺にはバンやヒロのように真に世界を守るための戦いをしてこなかった。いつもルナとヒノを守るために戦ってきました。世界なんてどうなってもいいんですよ。俺はね」
会議の場を静寂が支配した
だがバンがスルガに、あの言葉をかける
「人は、神にあらず。人は、獣にあらず。スルガは力を手に入れても、神様みたいな傲慢さを持たなかった。獣のように弱いものを叩くこともして無いよ」
続いて、ジン
「スルガ君のやり方は王道ではない灰色ばかりだが、だからこそ僕らは君に助けられてきた」
続いて、アミ
「そうそう。あんたが私達の常識軽くぶち壊して思いもしないこと次々してくれたから今があるのよ」
続いて、カズ
「お前がとんでもないもの作ってとんでもないことしてくれたお蔭でいつも退屈しねえさ。ま、その分やらかしてたけどな」
四人の言葉を聞いたスルガ、少し笑ってこう返した。確かにスルガならこの答えになるのだろうが、国家元首二人が居るなかで言うべき言葉では無かったとだけ言っておこう
─時間は廻る──────
ルナとヒノは寝床に入りスルガはもう二機の希望、イプシロンをベースにしたLBXの製作、そしてエネルギープラント防衛戦で傷付いたLBXの修理をしていた
特にオーレギオンと長時間対面した機龍の損傷は特に激しく修理に時間を要していた。ぶっちゃけミゼルの再度侵攻に間に合うか分からない
「河白君、少し良いかい?」
「えっと、サイバーランスの西原さん、なんですか?」
「どうも現状だとオーレギオンの我王砲に戦闘能力を残して1発耐える・・・まで行きません。そもそも体術的な戦い方も厳しいです」
「あー・・・うーん・・・あ、なら戦闘で捥いだオーレギオンの左右の腕があります。そのコアスケルトンのスタンフィールインゴットを抜き出そう」
「それなら腕部は足りますが」
「ですが脚部の材料が足りません。特にストライダーフレームに近い構造になると・・・どうしても基礎材料にスタンフィールインゴットが必要です」
別の研究員が頭を捻らせながらやってくる。スルガも頭を回すがそんなに直ぐスタンフィールインゴットが纏まった量出るわけが・・・あった
「・・・出所不明のがあります。それを溶かして使いましょう。追求は無しでお願いします」
機龍の歪んで壊れたコアスケルトンを提供する。そこに居た二名はそれ以上を聞かず開発に戻っていった
「よし。これで完成までのピースは揃い新たな希望が胎動を始めた・・・見てろよミゼル、お前を欠片も残さず消し去ってやる」
═どこかの空域 エクリプス機内═════
会議を覗いてスルガによる宣戦布告を受け取った後、ミゼルも本格的に動き出していた
「やっぱり設計図は手に入らないか」
勿論そうだろう。設計に使うパソコンは物理的に外部ネットワークから隔絶されいる。侵入させたベクターも速やかに警備のシーカー実働部隊やシャルナックが始末している
「となると・・・」
修理中のオーレギオンに手を触れて自分のインストールを始めた。そしてオーレギオンもその姿を変えるのだった