─翌朝 タイニーオービット社──────
スルガは過去の自分に呆れていた。確かにミゼルは、ベクターは強力な敵だった。ソレは間違いないがここまで数仕込ん(各所に配置されたウォーリアーOWや特殊効果マインに警備用無人機大量と監視カメラ&各所レーダー網その他色々)だっけ?
なお暇潰しにシャルナックとソルジャーが増やしていた為である。取り敢えずブルド改支援型と工具を取り付けられたアーキテクトをあるだけ用意しソルジャー、シャルナックに監督させ撤去、撤収作業を開始した
そんなところで拓也と八神に呼び出され社長室へ
「スルガ、忙しいのにすまないな」
「いえいえ、大体任せれるので」
「ああ、早速本題だ。スルガ、君はミゼルが滅んだ、そう思っているか?」
「・・・なぜそんなことを?」
「財前総理はミゼルの脅威が本当に無くなったのかを危惧している。私自身命ではなくプログラムの集合体である彼が全て消えたとは思えない」
「まあ、それは俺も思う。どっかにウイルスの欠片でも残してる可能性は高いけど、居ても俺個人としてはあんまり危険視はしてない。奴は俺達に言った。好きにしろと」
「アレはアレで律儀だよ。騙しはしても嘘はつかない。そう言う奴だ。少し巡り合わせがよければ、利害が一致すれば、頼もしい味方になったのかもな」
スルガは外を見る。ワールドセイバーに、ソルジャーと機龍、シャルナックに記憶を改めて精査してもらい思い出せた存在のニュースタンダード、はっきり言ってニュースタンダードの方はウォーズのセカンドワールドの戦闘結果で世界が変わる。くらいの事をしてた。としかあんまり覚えていない。今度はここもちょっかいをかけよう
ミゼレムクライシスの事含めて実に20年近くの記憶を睡眠の中で確認している。記憶のサルベージに編み出したこの方法は脳に負担もかかるため時間をかけなければいけない
「まあ、当分は心配要らねえだろう。誰かが余計なことをしなければな」
ミゼルクライシスは・・・正直ミゼルが黒くなって出てきたとこ辺りでこの世界きたからあれの原因知らねえんだよなぁ。こっちのミゼルの印象的にそんな事するとはあんまり思えないし、まあ大体ワールドセイバーだろ(適当、だが正解)
「そうか。分かった。君のその言葉を総理に伝えておく」
「これじゃ納得するとは思わんので、そうですね・・・決戦に向けてエクリプスとオーレギオンに完全に同化してたんでセト50の爆発で完全に消え去った。くらいですか・・・あ、拓也さん、ミゼルオーレギオンとの戦闘と解析のレポート、期限あります?」
「お前も忙しいだろう。他3人の事もある。なるべく早く頼みたいが特に期限は決めない」
「分かりましたー」
「それと諸々のデータから技術解析も頼む。財前総理も解析できれば外交のカードにするだろう」
「ふむ・・・ってもセト50で全部消し飛んでるし(嘘)戦闘映像もあるけど俺らの動きが速すぎてあんまりよく撮れて無いんだよなぁ・・・期待はせずに。まぁ、出来る限りはやってみますよ」
ついでに戦闘レポートも作るとして、仮にこの世界のミゼルオーレギオン、ミゼルオーレギオン・シャードとも言うか
「一応レポート作るのに技術者数名借りますよ」
「分かった。あまり長時間だと少し困るからそれだけ気にしてくれ」
「分かりました。あそうそう、イプシロンΔ零のモスボール処理に設備借りますね」
「モスボールするのか?」
「ランの意思は固いらしく、まあ、もし何かあったときに復旧させますよ」
そして時間はお昼に近づきスルガは鉱石喫茶に向かう。頼んでいたものを買う為だ
─鉱石喫茶──────
「いらっしゃい、おや?君でしたか」
「思った数倍速かったですね。もう少しかかるかと思ってたのですが」
「私の収集物に良いのものがありまして、こちらなど如何でしょう?輝きも強く発色も綺麗、透明度も申し分ない。月長石と日長石の原石です」
カウンター席で目の前に出された2つの鉱石、片方は白く時折青く輝き、片方は強く鮮やかな赤褐色を見せる
「ほう、これは中々、触れても?」
「構いません。石の特徴と扱い方等は?」
「調べてる内に覚えました」
「ならば結構、その2つは差し上げます」
「いや、金に困ってるわけでも無いし、別に良いそんな」
「ふふっ、私達の日常を守って下さった細やかなお礼です」
そう言ってマスターは笑う。いやいやそれは、お礼ですと言うやり取りを幾度か繰り返し、スルガの妥協点を出した
「・・・借り一つで。何かあれば連絡してください。力を貸します」
「ならば、それで。加工はご自分で?」
「ええ。ダイヤをカットする設備はあるので、それでやります」
「分かりました。何か飲まれていきますか?」
「いいえ、後処理に追われる身でして、ここで御暇させてもらいます」
「では、お体に気を付けて。またお二人を連れていらしてください。いい宣伝にもなります」
「落ち着いたらまた来ます。それでは」
タイニーオービット社武装解除と各種報告書、まだまだ書かなければいけない書類と解析待ちのミゼル系譜の技術(大半はオーバーテクノロジーからのロストテクノロジー行き。だって殆ど吹き飛んだんだもん)
その後一週間と少しは死ぬ程忙しかった。知っていて覚悟していた事ではあったがミゼルを撃破した功労者、レジェンドとして持て囃されるのが予想以上にウザかったのだ
一日目、そのままタイニーオービット社武装解除の作業とミゼル技術解析
二日目、同上+協力者達への御礼回りやら
三日目、増えた同上+マスコミ、マスゴミ対応
四日目、増えた同上+アポ無し、アポ見境無し凸してきたマスゴミの撃滅宣言 タイニーオービットの非武装化完了
五日目、スルガの周りが静かになる。バンとヒロ、ランも呼びミゼルオーレギオンについてのレポート作成
六日目、なんかテレビの特番組まれた。忙しいので三人纏めて出演拒否
七日目、技術者全員でミゼル由来技術は何も分からない宣言。文句ある奴は表出ろと言い放つ
八日目、今
─タイニーオービット社、夜──────
「ゔゔゔゔぅううう、終わっだぁ〜」
「お疲れ様ね。紅茶淹れてくれるかしら」
「うい〜」
給湯室でちゃちゃっと淹れて、大空博士に差し出した
「どぞ〜」
「ありがとうね」
協力してくれた各国元首まで渡るミゼル関連報告書の作成が完了した。一部都合の悪い事実は闇に葬り、今のところミゼルオーレギオンシャードの拾い物もバレていない
最終結果は上々、後は未成年を盾に政治家共に丸投げだ
「いやしかし、今になって考えれば、よく勝てたな。戦闘ログ見返せば見返すほどにわけわからん性能してやがったし」
「私からの言わせてもらえば、貴方と機龍の方が滅茶苦茶よ。何?あの黒いの」
「結局よく分からん。何がどうなってああなってるのかさっぱりですよ。冗談抜きの気合と根性です」
そう言い投げて、席を立つ。
「もう少し、お話を聞かせてくれないかしら?」
「スルガ君、私たちは義理堅いぞ?」
いつの間にか背後に居た山野博士、何やらただならぬ雰囲気
「一体なんの?ミゼル関連の拾い物なら流石に暇無かったですよ」
「そうね、シーカーに来て頂戴。諸々話すわ」
「分かりました」(やっべー、オーバーセンスの事バレたかー?それともミゼルオーレギオンの拾い物?違うなら・・・駄目だこの2人から呼び出し食らう心当たりが多すぎる)
スルガら平然を装ってはいるが内心多すぎる心当たりに戦々恐々としていた
─シーカー本部─────
タイニーオービットの中で幾つか作られている要塞化解除外域の一つ、シーカー本部、その客間的な、会議室的な場所
「さてと、何から言おうかしら?」
(言おう?)
「スルガ君、パリの犯人に付いて、どこまで調べをつけているのか?」
「ワールドセイバーですか・・・ぶっちゃけあんまり。ミゼルに全リソースぶち込んでたんで」
「そう・・・スルガ君、私からの取引をいいかしら?」
「取引・・・ですか?」
「私からも頼む」
「山野博士まで?お二人が俺に望む事とは?」
「貴方、こう言ってたらしいわね?ミゼルは消滅していない。けれど何者かに利用される恐れが有ると」
「はい。完全に一個人の視点ですが」
「博士、ジンも連れてきました」
「ああ。ありがとう檜山君、ジン君もいきなり呼び出して済まないな」
「いえ構いません。それでスルガ君、話とは?」
レックスとジン?・・・あぁ、ニュースタンダードの被害者か
「ははぁーん?もう一つの組織についてもゲロれと?」
「ああ。それと、フルリンクシステムについてだ。交換に私と彼女が持つ情報を提示しよう」
「アダムとイブの性能テストでかなり色々情報があるわ。どうかしら?」
「・・・ならワールドセイバーの話からしようか。八神さんに依頼した所除くと、俺が調べれた所はアフリカか中東に拠点があること、よく分からん選民思想がある事、それと、動力不明の潜水艦を数隻保有してて、そしてNICSにもその手が及んでる事かな。一応ここまで調べた事、そのスパイに気取られてるけど、核心情報は握らせてない」
「なら少しづつの交換で行きましょうか。国際テロ組織、ワールドセイバー、もう一人の幹部、いえ、リーダーかしら?セレディ・クライスラー、彼の年齢は不明だけどあなた達が壊滅させたイノベーターから供与されていたオプティマを用いた不老手術を施され、今は青髪赤目の若者の風貌らしいわ」
「次は私から。組織の総戦力に関してはそこまで強力では無い。恐らく純粋に国家、軍隊相手には抵抗できても物量の差で負ける。良くて局地戦が行える程度だろう、その技術力は凄まじい物がある。かつて海道義光が使っていた月光丸もワールドセイバーから提供された技術を用いて建造されたLBXだった。私の推測も混じるが、こちらが作れるものは向こうにも製造可能だと思ったほうが良い。君のフルリンクシステムや絶対零度砲も、或いは」
そして、ディテクター時代、どこからか正体を見抜き極秘回線でコンタクトを取ってきた。と付け加えられた
「・・・待ってください?コンタクトを取ってきた時期はいつ頃ですか?」
「あれはロンドンのブレインジャックの直後だったと記憶している」
「人の口に戸は立てられぬ。パリの犯人として話は間違いなく広がっているわ。ミゼル事件があったから下火になったけど要注意団体として認識されてるわね。他にも関与した事件とか諸々のデータ、提供次第で貴方にあげるわ」
「ありがとうございます。これは注意事項なのですが、特に大空博士」
「なにかしら?・・・いえ、ヒロの事ね。オーバーロードだったかしら」
「はい。そのセレディ・クライスラーとか言うのが執着してる能力、未来予知やら五感のキレが良くなる能力、実は俺も似たような事出来るんですよ」
山野博士が顎に手を当てて何かを考えている。そして烈伝でヒロが大変な事になるのを遠回しに警戒させた
「君も未来予知を?」
「ヒロのより多分二、三段劣りますが機龍とフューチャーホープ号で暴れまわった後位から。ですが俺が視えるのは写真で激しめの頭痛を伴います」
「成る程、アレ以降の勘の良さはそこからか」
流れでオーバーロードも開示しておく。取り敢えず情報が手に入るなら悪い取引ではない
「一応それだけじゃ無い事だけは伝えておきます。それじゃあ次、ニュースタンダード、レックスとジンの家族を間接的に殺した組織について」
「・・・」
「・・・ニュースタンダード、お爺さまの口からから一度だけ聞いたような」
レックスとジンの顔に曇りが見えた
「ざっくり言うと世界経済を裏から操る多分国連的な組織、大国の首相やら大富豪、巨大企業の重役連中が自分達の利益を得るために色々暗躍してる。戦争起こしたり技術独占したり。後財前総理も一応メンバーっぽいかも」
「なら私からはフューチャーホープ号の騒動より少し前に判明してる構成員や金銭の流れについて情報を出すわ。また何かメモリに纏めておくわね」
「助かります」
「スルガ君、君の機龍も目を付けられているそうだ。まあ、無理もない。あの黒いオーラはエネルギーを吸収して熱線へと変換する性質を持つ。溜められる上限もはっきりしていない。そうだろう?」
「別に熱線だけじゃ無いですけどね。電撃やらレーザー、ビームなんでも行けます」
「つまり充電方法を問わない出力自由の上限不明バッテリー、という訳か?」
「多分、一度に喰える量は決まってそうですけど、ミゼルオーレギオンの我王砲はΔ零と協力して止まったので」
「確実にワールドセイバーもニュースタンダードも機龍に興味を持っている。それを引き起こした君とフルリンクシステムも」
「面倒な物作っちまったなぁ」
「スルガ君、僕とレックスの家族を間接的に・・・殺した、と言うのは」
若干ジンの声が震えている。そこにスルガが容赦なく追い打ちを掛ける
「レックスの親父さんのエネルギープラントもトキオブリッジの崩落事故、両方この連中が富を得るために引き起こされた悲劇だ。エネルギープラントは生み出される莫大な利益、トキオブリッジ崩落はそこで動く巨額の富あたりが・・・この話はもう辞めたほうがいいな」
「ああ、済まない」
「なら少し方向を変えて、ワールドセイバーと違ってこいつは下手に打倒すると世界中が大混乱間違い無し。下手すりゃ信用信頼で成り立ってる貨幣制度が崩壊しかねん。腐っても秩序側の組織、緩やかに少しずつ解体するしか無いな」
「さて、ここまで話したが・・・最後、フルリンクシステムの隠し事に付いて」
スルガの口は、重い
「そう。私が一番気になってるのはソコなのよ。機龍やソルジャー、シャルナックの自我は色々可笑しい。確かに人とのコミュニケーションの自然さや新たな物の制作は分かるのよ。うまく説明出来ないけれどあの3機の思考ロジックは人間そのもの、それこそ誰かの人格をそのままコピーでもあれ程のモノは出来ないわ」
「自我が生まれた理由は本気で分かんねえんです。仮説としては、俺の人格をベースに記憶にあるルナやヒノ、その他人間の性格やイメージをトレースして出来上がった。と仮説つけてます。それと・・・本当に貴方達を信用、信頼してるので明かしますが」
「フルリンクシステムは自我の獲得、それだけじゃないの?」
「オーバーセンス、俺はそう呼んでいます。フルリンクシステムと言うシステムを完全に厄ネタ扱いしてるのはコイツが原因です」
「オーバーセンス、僕も何回か使ったがそんな違和感は無かったが?」
「ルナやジンじゃまだまだ未熟、LBXと深く繋がり続けて、強敵と戦い続けて、シンクロ率を危険域まで引き上がると、システムが相手の精神とか制御装置に干渉して、何か相手の次の行動が視えるようになる。俺が異様に攻撃のいなしが上手いのはこれのお陰です」
「次の手が、視える?勘の類では無いんだろうが、どういう」
レックスはいまいちピンと来てないようだ
「なんか、相手に纏わりついてる赤いオーラみたいなのが次の手を示してるとか、そんな感じ?でも爆風の範囲とか銃弾の軌道も視えるから多分分かってないとこで何かしてる」
「そんな事が可能なのか?いや、確かに相手が人なら脳波のような物を受信出来るのかも知れないが・・・」
「スルガ、それはどれほど先まで視えるんだ?」
「4、5秒先まで。ある程度自由は効くから普段は2、3秒が楽かな。ただ欠点はあって結局今は視覚に重なる物だから視界が潰れるとどうも鈍くなる」
「つまり、貴方の彼女達が使ってた特殊モードは対オーバーセンス用のシステムと言う事ね?」
「スルガ君、僕も、使えるようになるのか?」
「・・・分からん。フルリンクシステムは根本から謎の多いシステム、発生条件は?誰でも起こり得るのか?先天的資質が必要なのか?そもそも俺が例外なだけで他には起こらないかもしれない。超重度使用のサンプルデータが少なすぎて何とも言えん」
現状フルリンクシステムの戦闘はスルガを除けばルナとジンしか経験が無い。スルガの中ではミゼレムクライシスでのアキレスやアテナスの例を知っているため多分頑張れば会得出来るものであろうと結論つけていた。と言っても未来の話、今は関係無い
「そうか・・・ありがとう。僕の方でも修練を続けさせて貰う」
「うーん、個人的にはあんまりお勧めしないなぁ」
「何?他にも何かあるのか?」
「オーバーセンスのシンクロ域に達するとただでさえ酷い機体の負荷のフィードバックが更に酷くなる。俺は痛みへの慣れとLBXからのフォローがあって戦えてる状態になるぞ」
「・・・スルガ君は、大丈夫なのか?ダックシャトルであんな事になっていただろう。それに意識を飛ばした事だって」
「ばーか、平気に見えるなら目ん玉洗ってこい」
そう言い投げる。フザケた物言いだがスルガの目は研ぎ澄まされた刀のような鋭さで覚悟が決まっている事を示していた
「スルガ君、機龍、今から本気の僕とバトルしてくれないか?」
「俺も本気で相手すればいい?」
「ああ。僕もオーバーセンスの底力、試してみたい」
「良いぜ。人数指定はなし。明日、お互い準備万端で行こうか」