─スルガの家────
二人は昨夜の片付けを終えて、ルナはお昼ご飯を、ヒノは転校手続きを書いていた
「んー、こんなとこかな、いや、もう少し甘みを?でもスルガがもっと小さい時のレシピだしもう少し辛さを加えても」
亡きスルガの母親が残したレシピを自分の物にするべく苦戦中だ。そして家の呼び鈴が鳴る
「ごめーん、ヒノちゃん出てー」
「分かった」
家に来たのは石森里奈、ヒノはそのままリビングに招き入れ、台所からエプロンを着たルナも居間に来る
「お邪魔するわね。ルナ。これお土産よ」
「あ、お姉ちゃん?お昼食べてく?」
「あら良いの?ならルナの手料理頂こうかしら」
「オッケー」
そう言い台所へと戻っていき、コンロを付ける音と小気味よい包丁の音が聞こえてきた
「もう家事の腕は追い越されてそうね」
そう言い微笑む里奈
「里奈さんと2人でゆっくり話をした事ってあんまり無い気がないな」
「そう?・・・そうね。確かに、いつもルナかスルガが居たから、ヒノちゃんは今幸せかしら?」
「とっても幸せさ。里奈さん、そう言えば会った頃の2人ってどんなだったの?ずっと病院に居たとは聞いたけど」
「あの時は色々と追い込まれていたわ。無理して元気を出したり、少しづつ病状も悪化してた。イノベーターの事は知ってるかしら?」
「少しだけ聞きました」
「私も山野博士の助手として一緒にイノベーターで研究員をしていて、あまり会いに行けていなかったから、大体その頃ね。スルガと会ったのが」
「そこからの話は常々と聞いてるかな」
「最初会った頃、彼が入院してた時ルナから暇さえあればLBXを触っている不思議な男の子だったわ。私が会ったのはルナとスルガが積極的にLBXで遊んでた。2人ともとても楽しそうだった」
「へー、」
「ルナは変わったわ。明るくなってスルガにべったりになって」
「なになにー?2人でなんの話してるのー?」
ルナが出来た料理を持って居間へ戻ってきた
「気にしないで、ルナの昔話よ」
「えー!ちょっと恥ずかしいんだけどー」
「ふふっ、ごめんね」
そして、この家族団欒な時間の裏、とんでもない事になっている男が居た
─タイニーオービット社、研究室──────
スルガは大空博士の研究手伝いをしていた。どうやらフルリンクシステムやそれぞれの人格に興味があるらしい。だがなぜかここ霧野秘書が居る。それに女性研究員が多い気というか殆ど女性だ
何だろう、何か物凄く嫌な予感がする
「しかし興味深いわね。ソルジャー、シャルナックのAI、いえ人格は、ええ、本当に興味深いわ」
大空博士がソルジャーとシャルナックを解析しながら言葉を漏らす
ちなみに機龍は面倒くさがって家で留守番、銀龍は大空博士を怖がって逃げた
「こいつらの性格ベースは俺っぽいんですよね。何かいつの間に新しいパーツやらシステム組んでるし」
「あなたの行動力を汲んだソルジャー、冷静な技術屋の面を良く汲んだシャルナック、機龍は、よく分からないけれど」
「あいつだけ何かよくわかんないんですよ」
「ええ。面白いわ。凄く面白い。でももっと面白いことがあったわね。そう言えば聞いたわよ。昨夜、凄くカッコよく決めたみたいじゃない?」
「?何のことです?」
あれ?何か周りの視線が少しおかしくなった気がする・・・いやしかし心当たりが無い?
「あなたのLBX、こんな映像を自己判断だけで送ってくるんですものねぇ?」
「私もこんなプロポーズされたかったわぁ」
「世界を救ったカップルの告白なんてそう見れるものじゃないしねー」
「社長も覚悟を決めて欲しいものですが」
「・・・まさか」
大空博士の足が逃げようとしたスルガの椅子のキャスターのブレーキを掛けて動きを止めた。そして、女性社員たちがその後ろに集まり、逃走経路を塞がれる。
──絶体絶命
大空博士がこの部屋で一番大きいモニターに、昨夜の映像、スルガのプロポーズ劇を映し出した。しかも音声付きである
「畜生嵌められた!やったのソルジャーか機龍だな!?あ、居ねぇ?!」
「あら、ハメたのは貴方じゃないの?」
「その後朝まで寝室から物音がしたって、物証は上がってるのよ?」
研究台に居たはずのソルジャーは姿を消しておりシャルナックは頭を下げていた。止められなかったと言いたげだ
「指輪を作ってたのは知ってたけど、詳しく聞かせて頂戴な、あなたの話を、ね?」
哀れスルガ、既に蜘蛛の巣の中、普段はガチガチに警戒する癖に新たに確かな幸せを掴んで油断、罠に掛かってしまった
しかも普段こういう場所から連れ出してくれる愛しの彼女いや、お嫁さん達はお家で昨夜の疲れを取りながらスルガの帰宅を待っているのだった