═NICS本部═════
本部の中は広く対テロ用に複雑な構造となっているので部屋の配置が把握しにくい
それにヒノが生まれ育ち慣れ親しんだイギリス英語ではなくアメリカ英語で案内が書かれている。それが余計に混乱を助長していた
「うーん、迷った」
「あれ?ヒノさんどうしてこんなところに?」
「いや、道に迷ってしまって」
「どこに行くんです?」
「えっと、スルガが工房として使ってた工作室なんだけど」
「それなら僕もペルセウスのメンテナンスをしに行こうとしてた所なので一緒に行きませんか?」
「ありがたいな」
二人が歩き出す
「そう言えばヒノさんとスルガさんとライバルなんですか?」
「うーん、そうなるね。去年のアルテミスで僕が負けて、少し後にリベンジしてその後は僕が日本に行かなかったから、イギリスでのブレインジャックが久しぶりになったね」
そんな他愛も無い会話をしている内に工作室へ付いた。中には山野博士と大空博士が何かを見て固まっている
「あれ?母さん何かあったの?」
「ひ、ヒロこれなにか知ってる?」
大空博士の指の先には・・・一機のワイバーンに酷似した銀色に黄色の羽を持ったキラードロイドが首と尻尾を丸めて猫のように丸まっていた
「キラードロイド!?何でこんなところに!」
ヒロがペルセウスを出撃させる。ヒノもA・アーサーを戦闘態勢にした。だが見向きもされない
「・・・何か変、まさかスルガの置き土産ってこれの事?」
「置き土産?これを作ったのはスルガ君なのか?」
「多分・・・僕のCCMに使用権限が送られてるらしいけど」
ヒノが近寄るとそのキラードロイドが目を覚ました。顔を動かしてヒノを見ると、起き上がる
ピロリン♪
「音声メッセージ?《よう。もう会ったみたいだな。ソイツは俺が破片集めて作った対キラードロイド用のキラードロイド『銀龍』だ。キー坊もとでも呼んでやってくれ。細かい説明は省くが今戦闘関係の指示は俺とルナ、ヒノの言うことしか聞かん。後よろしく~》・・・えっと、これからよろしく頼むよ。キー坊」
銀龍が翼を広げてヒノの前にひれ伏す。その後棚の前に移動した。そして羽を器用に取っ手に引っ掻けると扉を開けた。中には無人機やFA、そして一本の武器
「これは・・・槍か?」
それは螺旋構造の用なそうでないようなモノが複雑に織り込まれた槍
山野博士が手に取ろうとすると、あいだに銀龍が割り込む。そして羽でそれを上手く挟み、ヒノに差し出す
「僕に?」
《聖槍ロンゴミニアド。A・アーサー用に作った槍だ。最大火力はオーバードウェポンにも劣らない。趣味が合わないならバンにでも投げといてくれ。あと違えてもその織りを解くなよ?》
またCCMから音声メッセージが流れる
「貰ってばかりだね・・・ありがとうスルガ」
「ヒノ君、少しそれを見せて貰っても良いか?」
「はい。構いません」
「それにしてもキラードロイドまで作ってたなんて、どうやって制御してるのかしら?」
大空博士が銀龍を観察していると、銀龍がそれに気付き何か紙束の入ったファイルを運んでくる
「あら?中々可愛いじゃない。どれどれ・・・基本はキラードロイドの強化改良型か。でも制御装置はまるっと違うのね・・・・・・・・・へぇ?オリジナルの自己進化AIねぇ、キー坊、とか言ってたかしら?貴方ちょっとッ(ガシッ)解析させてくれない?」
銀龍が捕まった。じたばたしているが大空博士が離さない。諦めずに体を捻る銀龍しかし大空博士も諦めない
「母さん、結構嫌がってるけど・・・」
「そうみたいね。でも気になるのよ!」
大空博士が開き直った。それを聞いて銀龍が項垂れる
「と、取り敢えずこの子をみんなに紹介しようか?」
「そうね。解析はそれの後にするか・・・」
═司令室═════
取り敢えず今居る人達に合わせる。山野博士はそのまま工作室でLBXのメンテナンス作業をするそうだ
司令室に居たのはカイオス長官、オタクロス、ジェシカ、ユウヤ、ジン、檜山兄妹だ
「どうしたんだ?・・・それは!」
「キラードロイド!?」
ジンとユウヤが銀龍を見た途端戦闘態勢に入る。すぐにヒノが止めに入りスルガの作品であることを説明した
「これがあのこの子の作ったキラードロイド?・・・私のとは何か違う。敵意?でも悪意を感じない。なぜ?」
「おそらく、スルガのルナを守りたいと言う純粋な気持ちの現れだからだ。スルガらしいと言えばスルガらしい」
「キラードロイドまでここで作っていたのか・・・暴走等の危険性は?」
スルガ、他の人にキラードロイドを作ってる事を何も言ってなかった
「それに関しては大丈夫ね。制御装置は彼独自の物に変えられてたし設計図を見た限りでは問題無いと思うわ」
「スルガ君が作ったところに一抹の不安を憶えるけど・・・大空博士が言うなら大丈夫かな?」
「ふむ、よろしく頼む。銀龍」
差し出されたジンの手の平に顔を載せる事で答える。
そして、時は来てしまった。緊急回線にアラートが鳴り響き、司令室のオペレーターが口から捻り出すように呟やいた
「長官・・・が、消失しました」
「すまない、今なんと言った?」
「島が、消失しました」
「なん・・・だと?」
送られてきたのは偶然近くを航行していたフリゲート艦で撮影され、送られてきた映像だ
現地はは夕刻、その映像には一筋の強い光に照らされた小さな島、すぐ後強い衝撃波が襲い掛かったのか船が海ごと大きく揺れカメラもブレ続け何も見えない
そしてカメラが安定、すると、何もない。ぐるッと回りを写すが何も無い。島ひとつが、消え去ったのだ
「これは・・・」
「十中八九パラダイスのエネルギー砲じゃな。ガーダインのパフォーマンスじゃろう。そろそろ何かしら言ってくるはずじゃ」
オタクロスの読み通り、全世界に向けての声明が出された。出しているのは仮面の男、ディテクターだ
《諸君、我々はディテクター、世界をこの手に頂くことにした。孤島を消し去ったのはほんのデモンストレーションだ》
「ディテクター!?」
「くっ、まだ宇宙に行く手立ても・・・」
《今から六時間以内に我々に服従するか、滅ぼされるか決める事だ。今の我々は君たちの手が出ないところに居る。六時間だ。懸命な決断をオススメする》
「・・・六時間、それがパラダイスが次のレーザーを撃てる時間と言うわけか」
「長官、マスドライバー施設からです。改造の九割が完了したと。後は最終点検と燃料充填だけです」
「な!?3日掛かると聞いていたが」
「それが、疲労を無視した突貫作業と、パラダイスの事が判明した時点でスルガ君から宇宙に逃げられたら追いかけるからよろしくと、現場で既に改造の準備を進めていたらしいです」
「また彼に助けられたか。全員に緊急招集だ!今すぐヘリでマスドライバー施設に送り届ける!」
まさに用意周到
自分が、周りが何かミスをする。イレギュラーが発生することを前提に手を回せるだけ回して、それをもとに計画を立て、実行する。失敗したら即座に次の手を打ち、敵を討つ
スルガが介入を続けたせいでイレギュラーが起こり続けた事で身につけた能力だ
═マスドライバー施設══════
全員があわただしくマスドライバー施設に到着した。しかし休む時間など無い。すぐに宇宙服に着替えダックシャトルに乗り込む
「どっと疲れた・・・」
「スルガさん、捕まってなお僕たちを助けてくれるなんて」
「奴からすれば、打てる手を打った程度の事だろうがな。しかし良くここまで上手く事を運ばせたな」
「だが、宇宙で僕達が戦えるか、そこが不安だ。宇宙には当然重力が無い。慣性が原因で永遠に動くことになる」
慣性の法則、厄介な存在だ。しかし山野博士がそれを解決する手段を考えていた
「そこは問題ない。ジェラート中尉からプロト・iの予備機二機と試験機を譲り受けた。この機体を改造すれば宇宙空間での戦闘は問題なくこなせるだろう」
「後あやつが作っておった飛行ユニットが使えるデヨ。少しLBXの方を弄ってやれば問題ないゾイ。それにオーディーンやA・アーサー、アキレス・ディードは自律飛行能力を持つからなにもしなくても戦闘が可能じゃ」
問題解決だ。ただ1つヒノの中にはスルガが残る
「スルガ、ここに来れるのかな?」
「・・・自分で改造を促していたなら予測して脱獄していても不思議ではないが、さすがに身一つでLシティからここまで移動するのは難しくないか?」
しかし、ソルジャーDが机に立つ。そしてヒノのCCMから声が流れてきた
『お前らさぁ?俺が大人しく捕まるとか思ってたのか?』
聞き間違えるはずもないバカの声
「えっ?スルガ!?じゃあ、えっと、軍事基地に居るのは?」
『ふむ。俺の調べだけど人間は人格と言う制御装置かプログラム的なのが無いと心臓とか以外は自発的には動けない。なら俺に適合する代わりの人格を用意して俺の体に放り込めばいい』
「・・・なんと言うか、滅茶苦茶だな」
「何時入れ換えたんだ?それも気付かれずに」
『手錠掛けれた時だ。即席の策の割には完璧以上に上手く行ったもんだから思わず笑っちまったぜ?兵士の目玉は節穴で上官の脳は不在だって。それに監禁してる奴誰も疑ってねえんだもん』
スルガの大爆笑、銀龍がソルジャーに近づきそれを撫でる
「・・・じゃあ、今スルガの中に居るのは?」
ランが聞いてくる。恐る恐ると言う様子
『ソルジャーだ。あいつなら寡黙で大人しいからそうそう問題起こさんし大丈夫。それより早期警戒に出したオリオン・Eがこちらに接近するLBXの大群を捕捉した。写真じゃ大多数が爆弾を持ってる。ガーダインはマスドライバーをぶち壊す気だ』
「なんだって!?」
スルガが写真を全員に送る
「オタクロス、ブレインジャックだ!直ぐに司令コンピューターを!」
『無駄だ。パラダイスに付いてるマリオネットシステム、簡単に言うとブレインジャック発生システムを使ってる。さっさと殲滅するか逃げるかだな。コブラ、ここの管制塔に連絡、俺達が時間稼ぐから発射を少しでも急いでくれと』
「分かった。お前達、迎撃に出るぞ!」
『ヒノ、俺の無人機、持ってきてくれたか?』
「あっ、忘れてた」
「俺が持ってきた。いつの間にこんな数を用意したんだ?」
『よし。オタクロス、マスターコマンダーとパソコンを接続してくれ。数にはそれなりの数と質で抵抗だ』
数多に用意されたスルガ製無人機達、レックスが持ってこれるだけ持ってきたその総数は二百を越える。まだNICSにおいてある分を合わせれば五百は下らない
箱から次々に飛び出し、マスターコマンダーが命令、無人機達が防衛ラインを形成し迎え討つ姿勢を整える。銀龍も腕を殲滅特化のガトリングユニットに換装しヤル気満々だ
敵は全方位から迫りつつある。敵の総数は不明、だが皆なら突破できる。スルガもソルジャーから機龍に乗り換えて銀龍と共に一番機体が少ない北側の防衛線のに向かう
他のメンバーはジン、ジェシカ、ヒノ、そして初陣の銀龍だ。ハンター改など無人機の中でのワンオフもここに居る
この防衛線の戦力はナガシノ15機、インビット・F10機
上記四人、銀龍、ハンター改、ルナティックジョーカー、灰従者、ロビン・リッパー、計34機とキラードロイドだ
これで燃料充填完了まで堪え忍ぶ
マスドライバー防衛戦、開幕