結局ハードボイルドについてあまり正確な理解を得られなかった一成は、次の日の朝、ハードボイルドについてインターネットで検索をすることにした。
「ハードボイルドとは、硬派な男である。たとえばターミネーターがハードボイルド。いかがでしたか?参考になった方はこちらのランキングをクリック!」
という記事を見て、彼はとりあえず「女に興味ないね」というふうにすればいいと考えた。
しかし同時に「女に興味ありありのくせに『興味ないね』ってフリなんてできるのか」とも思った。
――モテようとしてハードボイルドにはなれない
ニートの声がリフレインし、彼は思いついた。
そうだ!スポーツならハードボイルドだしモテるはずだ!と。実際、甲子園球児はモテているのだ。プロ野球選手になれば女子アナとも仲良くできるのだと思った。
しかしそれではやはり、モテようとしてハードボイルドになろうということではないか。
だいいちそれでは、真剣に野球をやっている人たちと戦うことはできないはずだ。
やがて「モテようとしてハードボイルドにはなれない」という言葉が頭の中をぐるぐるし始め、家をでなければいけない時間になったので、一成は自分の男子校の高校へと足を進めた。
高校に行ってもおもしろいことは特にない。大したイベントもないのだ。
彼はハーレムの期待を胸いっぱいに膨らませて進学したのに、それが欺瞞だったという事実に抵抗感を感じてしまっていて、ろくすっぽ楽しめなかったのである。
ため息をついていると、友人の同級生が話しかけてきた。
この友人の同級生、男なのに容貌は美少女だというわけのわからない存在だ。この高校の中ではウホウホとその容姿に惹かれたゴミゴミがたかってくるが、一成にとっては「いや男じゃん」というふうに感じていたので普通に接していた。するとなぜか懐き出したのであった。
話しかけられた内容に対して、一成が適当に「あー」とか「なるほど」とか「そうなのか」とか「それは大変だ」とか「それでどうなったのか」などと返していると、その同級生はますます熱を帯びた顔でわけのわからない戯言を延々と話すのだった。
(よくそんなに話すことがあるな……)
と思いながらボーッとし続ける一成。そこに突如「それでうちの妹が」というワードが耳に入った。
「妹!?」
「うわっ、びっくりした」
「妹がなんだって?」
「えっと、それでうちの妹が一成に一度会ってみたいって言ってて……」
「なんで?」
「えっ、さっきも言ったけどぼくの話聞いてたら興味持ったみたいで、ぼくは『一成はあんまり人間に興味もってないと思うから会ってもらえないかも』って言ったんだけど、『いいから聞け』ってうるさくて」
「いいぞ」
一成の頭の中はピンクだった。ハードボイルドになろうとした矢先に到来した出会いのチャンス!これを逃さない手はないと考えた。その後予定を見てスケジュールを合わせたあと、彼はまた家に帰ろうとするのだった。
そして、ハードボイルドになりつつある一成は、今日はただ家に帰ろうとするのではなく、ハードボイルドに帰ろうと考えて、電車を使うのではなく、家までの距離30kmを、徒歩で歩いて帰ることにした。
徒歩で歩くことによってなにかイベントが発生するかと思われたが、とくに何事もなく家についてしまった。
家につくと一成は特に勉強するわけでもなくそのまま眠りについた。