指揮官が鎮守府に着任しました。   作:Minatoneko

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指揮官が鎮守府に着任しました。Ⅰ

SS投稿は初です。

ご指導ご鞭撻よろしくです(不知火並感

誤字などのご指摘も宜しくお願い致します。

 

筆者は広く浅くをモットーに生きておりますのであらゆる知識が中途半端であり、詳しい方々からすると「そんなわけねーだろ」という描写もあるかもしれません。またかなりの遅筆です。ですが頑張って書き上げていきたいと思います。

 

ご理解とご指導を再度お願い致しまして、本文へと入りたいと思います。

それでは。

 

―――――――――――――――

 

 

男は溜め息混じりに紫煙を吐き出した。反対に息を吸い込んでみれば、未だに馴れないなんとも言えない臭いが鼻につく。

 

湿っていて、生臭い、何とも言えない臭い。知っている。これは、潮風だ。

 

男は自分の状況を思い出して、また溜め息を吐きそうになったが、かろうじて堪えた。

 

「…そろそろ行くか。ここでこうしてたってしょうがねぇしな…」

 

鈍い銀色の輝きを放つ、研ぎ澄まされた刃のようなフォルムの車。わざわざあの手この手で用意した相棒である。

 

乗り込んでエンジンをかけ、アクセルを吹かす。走っている車は男のものだけで、海沿いを走る車道には人っ子一人いない。

 

「ん…悪くねぇな、海沿いってのも。人もいねぇし」

 

先ほどまで矢鱈と溜め息を繰り返していたのを忘れたように、男は機嫌良さげに呟く。

 

誰もいないのをいいことに、アクセルを踏み込む。

 

狼の遠吠えにも似たエンジン音が人気のない街に響き渡る。

 

男が目的地に着くまで、あと小一時間。

 

 

 

 

「hey,大淀ォー?新しい司令官って今日来るんでしたヨネー?」

 

「えぇ、司令部からはそう聞いてますが…遅いですね…」

 

部屋に二人分の溜め息が空虚に響く。どちらも眼を見張るような美女なのだが、纏う雰囲気は暗く、また大淀と呼ばれた女性の目の下には、疲労故かクマが出来ている。

 

 

「呼んだクマ?」(。・x・)ゞ

 

「呼んでませんから部屋で待機しててください」

 

 

 

「…金剛さん…私たち、どうなるんでしょうね」

 

「………わからないネー…」

 

謎の闖入者によって僅かに軽くなった空気が、またどんよりと暗く重いものになっていく。

 

二人が男に出会うまで、あと小一時間。

 

 

 

 

「―――?」

 

金剛は俯き加減だった顔をあげる。その聴覚が、徐々に近付いてくる音を捉えたからだ。

 

「どうしたんですか?」

 

「…なにか近付いてくるネー…多分車だけど、聴いたことないエンジン音ネー」

 

「新しい司令官でしょうか、私ちょっと見てきますね」

 

「yeah,あと5分もしたら見えてくると思うヨー」

 

「わかりました!」

 

 

 

 

「…ここか………」

 

車から降りた男の前には3m程の高さの塀と、鋼鉄製の門が聳え立っていた。門扉には《日本海軍 第十七鎮守府》という看板と、《関係者以外ノ立チ入リヲ禁ズ》という看板が掲げられている。

 

「まいったな…守衛くらいいると思ったんだが…インターホンすら見当たらねぇ」

 

煙草を咥えライターで火をつけながら、男はこれからどうするか考える。考えなしにここまで来た為、事前に待ち合わせている訳でもなく、今日自分がここに来ることすらこの中にいる者たちは知らないかもしれない。

 

「さてはて…まぁなんとかなるだろ。塀も3mくらいしかないし、いざとなったら大声で叫んでりゃ誰か来るだろ」

 

吸いさしを携帯灰皿にねじこみながら、男はこの場に来るに至った経緯を少しの苦々しさと共に思い返していた。

 

 

 

 

 

時は半月ほど遡る。

 

「―――は?…もう一度言っていただけますか?無線の調子が悪いようでして」

 

 

『おやおや、君がジョークを言うとは珍しい』

 

余談ではあるが無線の調子が悪い、などという言葉は死語となって久しい。通信技術の飛躍的な進歩は、地球の反対側とでもタイムラグ無しの通信を可能とした。

 

 

 

「冗談を言った覚えはありませんが。…一体どういう訳です?日本へ行って海軍の指揮官になれ、などと」

 

 

『指揮官ではなく司令官だよ、司令官。日本軍が生み出した"カンムス"、そいつらを率いて海からやってくる化けモノと戦うのさ』

 

 

「………」

 

『なに、話としてはシンプルさ。君も知っているだろう?"カンムス"は戦艦の"魂を宿したヒトガタ"だ。戦艦1隻にから造れる"カンムス"には限度がある』

 

 

「それは聞いた事がありますが…あぁ、それで海外の艦に目をつけたという訳ですか」

 

 

『そうそう。…で、我らが欧州連邦としても日本からの支援は喉から手が出るほど欲しい。ここに我ら手を繋ぎ、って訳だ』

 

 

「それと自分が日本に行く事とはどう繋がるんですか?」

 

 

『うんうん。君も日本の、いや、海に面した地域の状況は知っているだろう?』

 

 

―――知っている。自分はそこにはいなかったが、それでもそこは…故郷、だったのだから。

 

今から5年前、日本は突如として海から襲撃を受けた。既存の兵器が通用せず、海上でありながら極めて有機的に戦闘を行う異形の存在。

 

海に面する地域全てが同時多発的に攻撃を受け、その全てが為すすべなく火の海に沈んだ。

 

それは日本以外の国も同様だった。

 

人々を内地へ逃がす時間を稼ぐ為だけの絶死の戦いがあらゆるところで繰り広げられた。

 

最初の会敵より三日で日本は制海権も制空権も喪失した。避難しようとする旅客機や漁船にすら容赦なく攻撃が加えられた。

 

最初の一週間が過ぎる頃には誰もが理解していた。これはどこか他国からの攻撃などではないことを。

 

交渉の余地も降伏の意味もなく、ましてや逃げ場などどこにもないということを。

 

 

人々はやがて海より来たる異形の存在を“深海棲艦”と呼ぶようになった。

 

数えきれない程の戦死者を積み重ねて、深海棲艦が陸上ではその能力を大きく減衰させる事を突き止めた日本はギリギリのところで滅亡を免れたが、状況は最悪と言ってよかった。

 

なにしろ四方を敵に囲まれているのだ。このままではただ死ぬのを先延ばしにしただけである。

 

 

 

―――だが。それは奇跡か、それとも必然か。日本の海上自衛隊技術研究所は"それ"を生み出した。深海棲艦と同様海上を征く能力と、深海棲艦の装甲を撃ち抜くだけの攻撃力を兼ね備えた人類最後の希望。

 

その名こそ、“艦娘”。

 

『………と、まぁ君も知っての通り日本は艦娘を生み出す事でなんとか戦線を押し戻す事に成功した訳だ。そして海岸線に沿って防衛線を構築し、鎮守府とかいう軍基地に艦娘を配備してこれを守っている』

 

 

「………」

 

 

『だが、日本海軍は人手不足らしくてね、部隊を率いて前線を戦える司令官を欲しているとのことだ』

 

 

「それでわざわざ自分を指名してきたんですか?」

 

 

『君を指名したのは連邦政府さ。日本は欧州艦と有能な司令官が欲しい、欧州は日本の支援とー』

 

 

「…欧州艦由来の艦娘が欲しい、と」

 

 

『より正確には充分な経験を積んだ即戦力としての、という事だね。それに君を取り返せば"司令官"も手に入る、という算段さ。運用のノウハウやら設備が無い現状、艦娘だけ貰っても意味がない』

 

 

「…日本政府が一度手にした艦娘を容易く他国へ返すとは考えにくいのですが」

 

 

『そうかもしれないね。だが、国と国の約束だ。日本だって欧州連邦と表立ってやりあうわけにはいかんだろうさ。君が部隊を率いて彼らの指定した海域を深海棲艦から取り戻せば契約は完了だ。君は大手を振って帰ってこられる』

 

 

『それに、"彼女たち"をより強化する為にも日本の技術供与は見逃せないのさ、連邦も、本社の技術者も』

 

 

「しかし、まだ"連中"を根絶やしにした訳では…」

 

 

『君の言いたいことはよく分かるよ。だがこれは欧州連邦政府から本社を通した正式な命令だ。拒否など許されない。一週間以内に荷物をまとめたまえ』

 

 

 

「………了解です」

 

 

『欧州戦線の英雄を市場に送り出す様で心苦しいが、これもこの国に住まう人々の為だ。その代わりと言ってはなんだが、出来る限りの便宜を図らせてもらった。日本での君の生活や立場は連邦政府が支援する。…ここと君の部下は私が守る、思い切りやって来い、黒琉瑠貴亜中佐』

 

 

「了解」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

それから瑠貴亜は荷物をまとめ、方々に挨拶し、列車やら飛行機やら船やらを乗り継ぎ、やっとこさ極東までやって来たのだった。

 

遠い。ものすごく遠い。

 

いつ襲われるかわからない中での長旅とかふざけんな。

 

 

「…とは言ったものの…どうすっかな…なーんか海軍司令部も微妙な顔してたしな…うぅうむむむ」

 

 

「あ、あの………」

 

 

「あん?」

 

 

「…っ!」

 

振り返るとそこには声にならない悲鳴を上げつつ此方を見上げる女性がいた。長い黒髪と理知的な眼鏡が特徴的な美女だが、その顔は真っ青である。

 

…言うまでもなく、自分のせいであった。

 

「…あ〜すまん、俺は黒琉瑠貴亜《こくりゅう るきあ》という。怪しいモンじゃなく、本日付でこの海軍基地の司令として着任する予定の者なんだが…聞いて、ないか…?」

 

 

「いっ、いえ!伺っております!もっ申し訳ありません、私は軽巡洋艦、大淀と申します!司令補佐艦として、お迎えに参りました!」

 

 

「お、おう…ありがとな…じゃあとりあえず、中に入れてもらっていいか?」

 

 

「えっ…鎮守府内に、ですかっ?」

 

 

「…?…あぁ、司令部からは基地にて前線指揮を取れ、って言われてるからな…なにか入ったらマズイ事情でもあんのか?」

 

 

「いっいえ!そんなことはっ」

 

 

真っ青だった顔色は幾分和らいだものの、矢鱈とオドオドとした様子の大淀に対して瑠貴亜はどうしたものかと頭を巡らせる。

今までも目の前の大淀の様な部下はいた。こう言った場合、焦って距離を詰めようとすればお互いにとって良くない事になる。

 

結局瑠貴亜は、この場で大淀をどうこうする事を諦め、ギクシャクと目の前を歩き始めた大淀の後に着いて行く事にした。

 

 

 

 

 

 

「…こちらが提督が指揮をお取りになる、"執務室"です。奥の扉は提督のお部屋に繋がっています」

 

 

「へぇ…なかなか豪勢な部屋だな」

 

 

 

大淀は瑠貴亜を案内しながら、身体の震えを抑えるのに必死だった。

 

極度の疲労に加えて、この新しい司令官に対する恐怖が彼女の精神を激しく圧迫していた。

 

 

―――よみがえるのは、過去の記憶。

 

「何故だっ!何故こんな簡単な作戦も満足に遂行出来んのだっ!?」

 

 

「ひっ!?」

 

 

初めて配属された鎮守府の司令官は、瞬間湯沸し器のような人だった。戦況を把握する才も、部下である艦娘の意見を聞く度量もない人だった。

 

結果として作戦は何一つうまくゆかず、仲間は傷付いていくだけだった。司令官からの八つ当たりで、大淀の顔にはいつも痣と隈が絶えなかった。

 

 

やがてその司令官は資金の横領が発覚し、更迭された。

 

鎮守府は解体され、大淀は金剛らと共に別の鎮守府へと配属された。

 

 

 

そこに、「司令官」はいなかった。

 

『聞こえるか、艦娘ども。今日は鎮守府近海より更に沖へと出る。索敵した後敵がいれば撃て、以上』

 

 

「…了解。通信、終わり」

 

 

配属されたのは最前線の鎮守府だった。

 

『こんな危ない所にいられるか、闘いなんぞ貴様らでやれ』

 

そう言って司令官は、無線機をひとつ置いていなくなった。

 

指示は無線機を通じて2、3日に1回。

 

鎮守府近海を周回して、本隊からはぐれたであろう深海悽艦を倒すのみ。

 

それでも大淀にとっては、誰に怒鳴られることも殴られることもない、穏やかな日々だった。

 

 

どうせなら。ずっとこのままで。…そんなことを考えた罰だったのだろうか。

 

 

"ソレ"は唐突にやって来た。

 

数十を超える深海悽艦とそれを率いる戦艦クラスとおぼしき人型深海悽艦。一般的に深海棲艦はヒト型に近づくほど強力なものであり、時にはユニーク個体といえるものも存在しているらしいが、彼女たちが人型の深海棲艦と会敵するのはこれが初めてだった。

 

近海の索敵しかしていなかった為にその準備行動に気付かず、完全に先手を取られてしまった。

 

「司令、敵が、敵の大部隊がっ」

 

 

「既に近海付近まで入り込まれています!指示をっ!」

 

 

「しれい、かん…?」

 

 

どれほど呼び掛けても、返事はなかった。

 

司令官の指揮が無ければ艦娘はその能力を十分に発揮することは出来ない。

 

強大な敵の前に一人、また一人と倒れていった。

 

地獄を這いずるような闘いを何日続けただろうか。たった半日のようにも、何日にも感じられるような、辛い戦闘だった。

 

敵は物資が尽きたのか、唐突に引き揚げていった。

 

水平線に太陽が沈む頃、最も近くの鎮守府から艦娘達が駆けつけて来てくれた。

 

なんでも、私達の無線を偶然拾ってくれたらしい。

 

 

………そうか。無線が通じてなかった訳じゃ、なかったんですね。

 

 

大淀は覚った。司令官は私達を見捨てたのだ、と。

 

 

二十人ほどいた筈の艦娘のうち生き残ったのは大淀を含めて僅か6名。鎮守府は壊滅と判断され、解体。

 

生き残った艦娘は皆酷いPTSDで戦場に戻るどころではなかった。

 

 

「…金剛さん。金剛さんは、まだ闘い続けるんですか?」

 

 

「モチロン」

 

 

「…どうして、ですか?あんな、あんな目にあったのに!」

 

 

最後の最後まで敵の前に立ちはだかり、幼い駆逐艦たちを庇った金剛は、他の誰よりもひどい怪我をしていたのに。

 

―なのに。なぜ、なのだろう。

 

 

「hey,大淀ォー?…こっち向くネー」

 

 

「…?」

 

 

「確かに、私たちはテイトクに恵まれないデース。…次のテイトクも同じような人かも知れまセン」

 

 

「でも、たとえどんなテイトクであっても」

 

 

「ワタシは」

 

 

「金剛型戦艦1番艦、金剛デース!」

 

 

「かつての大戦の時から、姿かたちは変わっても、変わらないものがありマス」

 

 

「ワタシは、"金剛"は、人々を守る為に闘いマース!」

 

 

眩しかった。金剛さんのその笑顔は。

 

痛々しい大怪我で包帯まみれにも関わらず、太陽のような輝きを放っていた。

 

 

 

結局、大淀は金剛と共に新たな鎮守府に配属される道を選んだ。

 

退役する事も出来たが、どうせ自由な人生が待っている訳でもない。

 

人をはるかに上回る能力を持った存在を首輪もリードもなしに解き放つ程、総司令部は愚かではないだろう。

 

きっと監視が付いたり、何につけ不自由が付いてまわるのだろう。

 

だったら。

 

 

最後まで戦ってやろう。

 

 

 

そう思って着任した鎮守府にはそもそも司令官がいなかった。

 

大淀は落胆を隠せなかったが、僻地で深海悽艦の襲撃もほとんど無い地域ゆえに、それも仕方なかった。

 

きっともう、司令官になって最前線で戦う気概のある武人など、この戦争の初めに皆逝ってしまったのだろう。

 

内地では戦前とそう変わらない生活を取り戻しつつあると、ニュースキャスターが嬉しそうに語っていた。

 

そんな場所を捨てて、こんな最前線まで来るような物好き、マトモな人ではないだろう。

 

きっと私達艦娘を憂さ晴らしの道具か、せいぜい出世の道具くらいにしか思っていない、そんな人だ。

 

 

 

―そう、思っていたから。

 

…怖かった。大淀は目の前の男が、怖くて仕方なかった。

 

艦娘は提督による指揮が無ければ本来の性能を発揮できない。

 

司令官のいない現状は、決して望ましい状況ではない。

 

だが、これからこの司令官と共に生活を送らなければならないという事実が、大淀にとっては戦いの果てに沈む事より恐ろしかった。

 

どうせなら最期まで戦ってやろう、と決めた筈の覚悟が、真夏の氷のように溶けていく。

 

 

 

「…あー、大淀。俺は荷物とか開けて整理するから、今日はもういいぞ」

 

 

「…はい………」

 

 

「…俺の正式な着任は明日だから、明朝0700に皆を集めてくれるかな、挨拶したいし」

 

 

「わかりました…」

 

 

 

大淀が部屋を出ていくのを見届けた後、俺は思わず溜め息を吐いてしまっていた。

 

「…いやー…なんであんなビクついてんだ………」

 

張り詰めて今にも切れそうな、そんな様子で。

あまりにも、痛々しかった。

 

 

―――コンコン。

 

「スミマセーン。誰かいますカー?」

 

 

「鍵はかかっていない、入ってくれ」

 

 

「失礼しマース。…あなたが新しいテイトクですカー?」

 

 

「あぁ。…本日付、というか正確には明日から、この前線基地の指揮官として着任する、瑠貴亜…黒琉 瑠貴亜だ。階級は中佐」

 

 

「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース!よろしくおねがいしマース!」

 

 

「あっあぁ、よろしく………ん?帰国子女っつった?」

 

 

「イェース!"金剛"は英国ヴィッカースで建造されたネー」

 

 

「あぁ…それで帰国子女ね……んで?なにか用があったんだろ?」

 

 

「新しいテートクに挨拶しないとって思ってネー!」

 

 

「…それだけ?」

 

 

「イェース!でも、優しそうなテートクで良かったデース!」

 

 

「そりゃ良かった。…さっき大淀にも伝えたけど、明日0700に挨拶の場を設けたい。それまでは俺に気にせず、全員休んでくれ」

 

 

「お休みは嬉しいネー!…でも、近海警備はしないといけないヨー?」

 

 

「一応聞くけど、君ら艦娘の言う近海ってどのくらいの範囲?まさか本当にニューギニアまで?」

 

 

「そんな訳ないネー!各鎮守府の制海圏の内、ゼッタイ安心、っていう範囲の“外側”を近海って呼んでイマース。だから鎮守府によって近海の範囲は違うケド、ここでは20浬から25浬くらいデース」

 

 

「25浬っつーと…45000くらいか。それくらいなら大丈夫だ」

 

 

 

「…?」

 

 

「まぁそれはこっちでなんとかする。…気にせず休め、こんなこと言うのもなんだが、すごい顔だぞ。寝ろ」

 

 

「…よくわからないケド…わかったネー!」

 

 

「いい返事だ。俺はこの鎮守府の周りを見てくる。明日、全員に挨拶したあと、鎮守府内をチェックするから、なんかあったらその時に聞こう」

 

 

瑠貴亜は?マークを浮かべる金剛を部屋から送り出すと、運び入れた荷物の中からテキパキと小物を出しては執務室や隣接する私室を自分好みの空間へと整えていった。

 

 

「壁紙やらカーテンやらも替えたいところだな…椅子も見てくればっかで仕事しにくそうだし。…こんなもんか」

 

 

満足げに部屋を見渡し、瑠貴亜はポケットをまさぐる。煙草にライターで火をつけながら、一際大きく、見るからに頑丈そうなコンテナの封を解いていく。

 

その中には様々な銃火器、日本刀、野戦服やボディアーマーといった装備がぎっしり詰め込まれていた。

 

 

「ん。特に欠品は無いし、目立った破損もなし。んじゃ行きますか」

 

 

瑠貴亜は着ていた服を脱ぐと濃紺の戦闘服を身に着け、ベストやポーチといった装備品を装着していく。

 

 

最後に分解された状態でしまわれていた拳銃を組み直し、動作確認をしてから腰の右後ろへとしまった。

 

 

「んじゃ、ちょっくらご挨拶に行きますかね。お引越しの、さ」

 

 

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