「オールマイトに会って欲しい?」
バカンスという名の合宿を終えて初めての新上司からの連絡は命令ではなくお願いだった。
何でも箝口令を敷く前にAFOが牢屋で俺の名前を出した事がオールマイトの耳に入ってしまったらしい。
オールマイトは俺の捜索に箝口令が出た事も相まって今もヒーロー時代の伝手を使って捜索してるらしい。
既に俺が書類上しか高校に所属してない件や中学生の時に公安に保護された事は知られているらしく、公安としても俺をオールマイトが探している状況は歓迎するものではない為、殆どの情報を伏せて『頭脳を買って公安で協力していること、彼がAFOの裏の計画について暴いてくれた事』を伝えたら、是非お礼がしたいとのことだそうだ。
公安としては長年、平和の象徴として社会を守ってくれたオールマイトの貢献に報いたい気持ちもある為断りづらく、本人次第と答えたという事だ。
俺としては正直、オールマイトの貢献に応えられるなら構わないが、AFOと殻木逮捕は俺の為という側面もかなり強い為、感謝されるのはむず痒い。
取り敢えず四人に聞いてみる。
「ワシ個人としては会ってみたい!生きてOFAを次代に継承した彼には興味がある!しかし、扉間君の安全を考えると直接会うのは控えるべきだな!」
「俺もPlus Ultraに賛成かな、向こうも色々とあるだろうし電話で話くらいは聞いてあげれば?」
「会う会わないは、坊主次第でいいだろ。」
「オールマイトの気持ちは分かりますが、私は反対です!例え電話でも監視されている可能性があります!なので私が代わりに会いましょう!扉間君!色紙持ってますか!」
テレポンが建設的な事を言ったと思ったらこれだ。
だがテレポンの考えにも一理ある、オールマイトの周辺が100%善人とは言い切れない。
ホークスにも電話で相談してみるか。
『そこまで疑心暗鬼になる必要ないと思うよ。引退したあの姿見たら敵も監視しようとは思わないし、寧ろ裏社会も混乱してる今しか連絡出来ないかもね。』
確かにAFOがいなくなった今、裏社会は次の支配者の椅子に座るべく様々な組織がにらみ合っている。
オールマイトの監視より、隣人の監視の方に忙しいというわけだ。
表も表でマスコミはオールマイト引退騒動は落ち着いてきている為、オールマイトの周囲にマスコミの影はない。
確かに会うなら今しかないだろう。
結果、グラディエーターの意見を採用してオールマイトと電話で話す事になった。
その事を公安が伝えるとオールマイトは此方の事情を察したのだろう、電話での会談を了承してくれた。
電話は此方からかけてくれて構わないとも言って公安に電話番号を渡してきた。
電話番号を渡された次の日の夜。
「それじゃ電話するぞ、確認だが四人とも静かにたのみます。特にテレポン。」
「何で私だけ名指し!そして呼び捨モガッ!」
念じた方が確実だな。
テレポンの無力化に成功したので電話をかける。
prrrr…
『もしもし、八木です。』
「もしもし、千手扉間と申します。今お時間大丈夫ですか。」
『おお!千手少年か!ありがとう、私の我が儘に答えてくれて!今は丁度部屋で休んでる所だから大丈夫だよ!』
やっぱり人が出来ている。
取り敢えず、向こうも用事が無いようで助かった。オールマイトにかけ直す勇気は流石にない。
「なら良かったです。」
『改めて、ありがとう。私も奴を捕まえて終わりだとは思っていなかったが、まさか奴は自分の個性を後継者に移植させようと考えていたとは思わなかった。
もし君が居なければ、次の世代にとんでもない悪を残す事になっていた。本当にありがとう、千手少年。』
「…オールマイト、俺は貴方にそこまで感謝される程の男じゃありませんよ。
俺はAFOを釣り出す為に林間合宿での襲撃を予期した上で公安に見過ごさせたんです。」
感謝に耐えきれなくなり打ち明けてしまった、俺がAFOの計画を完全に潰す為に雄英生の危機を見逃した事を。
あの神野の事件は本来AFOが死柄木から離れる為の卒業式で、あえて誘導させられていた事を。
殻木という医者がAFOの協力者である事を早い段階から突き止めていて、殻木の病院の地下にAFOがいる可能性が高い事を突き止めていた事を全て打ち明けた。
全ての行いは正義の為ではなく俺の安全の為に行った事だ、オールマイトに感謝される資格はないのだ。
四人にも概要は説明しているが、ここまではっきりと説明はしていない。
テレポン達と俺、そしてオールマイトの間で沈黙が保たれた。
『扉間少年、君の言い分が正しければ確かに君は雄英生徒諸君を見捨てたのは事実だ。』
「…」
『だが、君はその事を私に打ち明けてくれた!隠して賞賛を受け入れるのを拒み、罰を求めた!その精神を私は尊敬する!
そもそも彼らを守りきれなかったのは我々大人の責任!そして、AFOを過去に倒しきれなかった私の責任でもある!
だから扉間少年!私は君を許す!』
「…オールマイト。」
『もしそれでも君が君を許さないのであれば!いつか彼らに直接謝罪するといいさ!
大丈夫!彼らも許してくれる!』
気が付いたら泣いていた。
大泣きしていた。
歯をくいしばり、嗚咽を上げて泣いてしまった。
オールマイトは俺が落ち着くまでまってくれた。
「…お恥ずかしい所を聞かしてしまいました。」
『HAHAHA!扉間少年、泣くことは恥ずかしい事じゃないぜ!
そして、改めてお礼を!君のお陰でAFOとOFAの因縁に終止符を打つことが出来た!本当にありがとう!』
「まだ敵連合が残ってますよ。」
『ああ!だが私はもうヒーローとして活躍は出来ない、だけど君や現役のヒーロー達がいる!
頼りにさせてもらうさ!』
「…俺を頼っていいんですか?」
『ああ!君は私を、OFAを助けてくれたのだ!ならもう君は立派なヒーローさ!』
第二部初っぱなが懺悔回
でも必要だとは思うんですよね、合宿襲撃を黙認させた事を見逃したのは穢土転生関係ないですし。
神野は?って思う方もいるかも知れませんが、対決を想定した公安が頑張って避難をさせたので原作よりは被害が少なかったとお考えください。
AFOの力を知っている死んだ公安No.2が頑張りました。