基本方針を決めてから早十年、14才の中学二年生となった。
十年間で原作の時間軸を調べたら主人公達と同年代であったが、小学校や中学校で原作キャラとあった事はない。
義務教育を受けながら、習い事としてヒーローがやってる格闘道場に通いながら個性について色々と試していた。
個性に関しては、虫やネズミ、爬虫類や犬猫鳥等の入手が比較的簡単な物から試した結果、穢土転生の発動に関して条件が有ることが分かった。
まず、発動方法はシンプルで、手で持った遺伝子情報を生きた生物の皮膚に押し付ける事で発動する。
必要な遺伝子情報量は手のひらに乗る程度で問題は無い。
また、穢土転生体は原作と同じく不死身であり、自我を縛ったり、命令を打ち込んだり、五感の共有も可能で解除を念じれば塵に戻る。
因みに、起爆札や命令札は埋め込まれて無かった。
次に、ルール1として穢土転生体の素となる生け贄は同じ科目で無くてはならない。つまり、猫を穢土転生するにはどんな種類でも猫科で無くてはならない。
ルール2は虫や植物は穢土転生出来ない。一寸の虫にも五分の魂は無かった。
この二つのルールに反しない限り、どの動物だろうと穢土転生体にする事は可能である。
穢土転生体の口寄せに関しては、召喚してない状態で念じれば、穢土転生体が召喚される。
つまり、どこでも召喚、撤退が可能であると言うことだ。
今は、穢土転生体として猫とカラスの数匹と穢土転生の契約を行い、表向きは『塵を動物のように操る個性』という事になっている。
発動方法や条件、穢土転生体で出来る事などを確認した結果、現代社会での運用に関して問題点が浮き彫りになった。
単純に死んだヒーローやヴィラン等の使える死体の確保がほぼ不可能である事だ。
生け贄に関してはそこらじゅうにいるが、強い個性持ちや身体能力の高い人間の遺伝子情報の確保は日本が火葬という点を踏まえても難しい。
仮に土葬の国に行き墓荒らしをしようにも、個性が遺伝子由来という事で墓場の監視は滅茶苦茶厳しいのが現状である。
仮に上手くいったとしてもヒーロー活動中に穢土転生体の正体がバレた時に説明が出来ない。
つまり、ヴィランやヒーローの穢土転生体の運用はヒーローになる場合、公的機関のサポートが必要であるということ。
つまり、自分の個性を公開するリスクがある。
個性を公開する場合、危険な個性として処分される可能性を減らす為に、ヒーローとしての実績と信頼を積む必要がある。
つまり使えるようになるのは随分先になる。
逆にヴィランとなる場合、ヒーローを動物に襲わせて殺害し、遺伝子情報を確保すれば簡単に穢土転生体として運用出来る。
つまりは、ヴィランとして活動する方が個性を最大限利用出来るのだ。
何故、ヒーローやヴィランに成った場合の話をしだしたか、というと単純に学校でもらった進路希望表のせいだ。
学力は前世の記憶を持ちながら真面目に勉強したおかげで問題ないし、運動方面も格闘道場で習っている為、自信はある。
表向きの個性もある程度応用が利く為、客観的に判断してヒーロー素質はある。
だが、自分にはヒーローになる目的がない。
個性を全力で使いたい欲はあるが、個性で何をしたいという先がないのだ。
それに、この個性を人に使うなら何かしらの大義が必要だと思うのだ。
開発者の千手扉間も里を守るという大義の為に穢土転生を作り上げ、使ったのだ。既に命を弄んでおいて何を言うかと思うが、一線を越えるなら越えるなりの理由が必要だと感じるのだ。
「はぁ…」
進路希望の一件からため息が良く出るようになった。
単純に個性を禁止して一般人として生きれば良い話だが、それは違うというか耐えきれない自分がいる。
今も、猫やカラスであるが数匹、穢土転生の契約を結んでいる。
やってる事は外道のそれという自覚はあるが、個性を押さえて生きられる自信はない。
『個性に性格や趣味趣向が引っ張られる』という考えがある。
確かに小学生の頃の夏休みの自由研究は毎年標本を作っていた。
正直、穢土転生の使用に忌避感はない。
クラスメイトの個性や身体能力から穢土転生体の候補として活用法を考えている自分がいる。
その事に気づいた時に恐怖ではなく納得した辺り、既に手遅れなのだ。
だからこそ人への穢土転生は一線を引く必要がある。
個人の正義や幸せの為の使用ではなく、大勢を守るために使用しなくてはならない。
原作を考えればAFOという、巨悪そのものや彼が育て上げた死柄木弔を中心にした敵連合というヒーロー社会の敵が存在する。
彼らを倒すために穢土転生を使うのはどうだろうか?
生け贄も穢土転生体も全てヴィランを使用すれば良い。
彼らを滅ぼした後に穢土転生を解除し、余生を過ごす。
穢土転生を使い、社会を守れる合理的な理由だ。
(だめだ、正しいが違う)
穢土転生は他人を殺して死者を蘇らす外法であり、どのような大義が有ろうと外法に頼る時点で破綻している。
己を犠牲にするならまだしも、穢土転生にはそれが一切ない。
そもそも穢土転生は大義を守る為に生まれた術であって、術の為に大義を求める時点で破綻しているのだ。
やはり、現代社会において、どう考えても穢土転生は人に使う理由はない。
たが、個性を使用したい欲がある。有用な人間を保存したい欲がある。
これを抑えて生きて行けるだろうか?
何かを切っ掛けに爆発しないだろうか?
保証がないなら自分は今の時点で命を絶つべきではないだろうか?
結局、進路希望の紙は空白のまま提出した。
公立の中学なので、空白で出した事には特に注意を受けなかったのは幸運だった。
その後、何度か希望調査が行われ、同じように悩みながら白紙を提出し、三年生へとなった。
三年生になる頃には、格闘術の方は教わってるヒーローから『お前に教える事は何もない!』と免許皆伝を伝えられ、今では教える側として通っている。
そして三年生になったある日、進路希望を白紙で出したのはまずかったらしく、進路担当の教師に呼び出された。
学校側が伝えてきた内容を要約すると、雄英を第一候補に、ヒーロー科を受けて欲しいらしい。
我が校初の雄英生、あるいは我が校出身のヒーローという文句が欲しいのだろう。
進路担当とのお話があったその日の帰り道ぼんやりと考える。
(今、答えを出す必要はないのではないか。今の個性の使い方でヒーローになって、衝動が強くなったら改めて考えれば良いのではないだろうか。)
逃げの思考だが、仕方ない。実際に強い衝動に駆られている訳ではないし、様子見という事で、個性免許を取るために雄英に行くのが一番な気がしてきた。
早々に、人を穢土転生する決断なんて訪れるものではないはずだし。
後、遺伝子情報の確保ですが、曾祖母は手に入れてたやんというツッコミは、昔は緩かったというか日本で厳しくなったのは曾祖母の活躍への批判のせいと思ってください。
以下、現時点のプロフィール
名前 千手 扉間
個性 穢土転生(表向きは塵を動物の様に操る個性)
身長 165cm
体重 55kg
見た目 全体的に、千手扉間ぽいぞ!
扉間eye 鋭い!周りからはいつも不機嫌だと思われてるぞ!
扉間hair 白くてボサボサ!