個性が「穢土転生」な件   作:ボリビア

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フォローした作品が更新止まったなって実感出来る瞬間って辛いよね。



再びのバカンスな件

 冬の那歩島は快適だ。

 ほどほどの気温で心地がいい。

 なんかこういう南の島でボーッと過ごす事の良さはおっさんになってリタイアした後だと思っていたが、何かもうずっとここにいたい。

 前回も来たプライベートビーチと別荘でぐだくだするのは何とも言えない素晴らしさがある。

 ビーチチェアに体を預けて水平線をボーッと眺める。

 Plus Ultraは遠泳、グラディエーターは海底散歩に赴きカロリは料理の準備をしている。

 テレポンは新作水着がウンヌンカンヌン言って着替えてる。

 監獄長以外はこの環境を楽しもうとしている。

 監獄長だけはいつも通りの服装で俺の後ろで警護をしている。

 本人曰く、此方の方が性に合っているとの事。

 

「…やっぱり、監獄長も海を楽しんだらどうだ?」

 

「結構、此方は生前から遊びをしない男であった。

 休息が要らない今こそ、生前の理想である。」

 

 仕事人間ここに極まり。

 本人がこうと決めたのなら尊重しよう。

 

「監獄長の視点から見て、今後の俺達はどうなると思う?」

 

「表向きの存在が作られると予想する。

 我々は現在、裏表問わずに動向を探られる存在。

 デコイとしての存在を世間にさらして探りを入れてくる人間、デコイと見破って行動を起こす人間を監視して悪を炙り出す。」

 

 なるほど、偽物の敵連合を捕らえた人間を公表する事で探りを入れてくる人間を観察か。

 ついでに、次代の平和の象徴とまではいかないが世間の安定にも繋がる。

 

「俺には名誉なんてどうでもいいし、最適な方法かもな。」

 

「この案は貴君が名誉に興味が無い事で意味をなす。

 仮に此方の案が現実になったときにデコイの人気に目を潰されないように。」

 

「寧ろデコイ君に同情するよ。

 虚栄なんて空しいだけだし、手当は弾ませなきゃな。」

 

 まあ、そんな人間をデコイにするような事はしないだろうが。

 監獄長の案は多分実行されるだろうな。

 流石に今回の功績はでかすぎる。

 個人がどう思おうが世間は敵連合を捕らえた人間を知りたがってるだろうし、隠すとせっかくよい方向に収まってきた治安が悪化する可能性がある。

 もしくは極秘特殊部隊とかで煙に巻いて、裏社会に見えない恐怖を刻むか。

 

「どうなろうと、やるべき事は変わらないか。

 これ以上言うと鬼に笑われるか。」

 

「…。」

 

 まさかの監獄長スルー。

 そういえばテレポンはどうしたんだ?

 前回みたいに、いの一番に水着に着替えて海に走っていくと思ったが未だに別荘から出てこない。

 カロリに連絡してみるか。

 

(カロリさん、テレポンはまだ別荘に?)

 

(あー、うん。

 今出てきたぞ。)

 

 何か返答にキレがない。

 異常事態ではなさそうだし、テレポンがまたアホな事でも企んだのだろうか。

 そう考えていたら、目の前の砂地に棒手裏剣が一本飛んできて突き刺さった。

 棒手裏剣にはマーキングが付いているからこれと入れ替わって驚かそうとしてるのか。

 まあ、所詮生気ゼロの土気色の人間の水着、前回同様に一刀両断してくれよう。

 一応待ち構えていると、テレポンが飛んでき…た…。

 

「どーですか、今回の水着は!

 大量のファンデーションで全身を塗ったので土気色とか生気がないとかもう言わせませんよ!」

 

 紛れもなくテレポンだった。

 だが、何時ものテレポンではなかった。

 肌色の彼女は美しかった。

 生前の彼女本来の美がここにある。

 黒のビキニを着ているせいで寸胴なのが顕著なのに、それすら美しく見える。

 ヤバい、これはヤバい、目が離せない、何も考えられなくなる。

 

「綺麗だ…。」

 

 声に出してしまった。

 幸いテレポンには聞こえないほど小さな声量だった。

 全身が熱くなる。

 

「…ほう。」

 

 珍しい者を見たように監獄長が小さく笑った事すら気にならない。

 ずっと見ていたい。

 

「おや?

 いつもの一刀両断が聞こえて来ませんね?」

 

 ヤバい、何か言い返さなくては。

 だが思考が纏まらない。

 見とれていた事を本人にバレたくないというか恥ずかしい。

 誰か助けてくれ。

 

「おや、これはひょっとしブビャ!?」

 

 願いが通じたのか水飛沫が俺達を呑み込んだ。

 

「すまない!

 巨大なサメが襲ってきたのでつい張り切ってしまった!」

 

 水飛沫を起こしてくれた救世主はPlus Ultraみたいだ。

 水飛沫が収まり周囲を確認する。

 監獄長は咄嗟に前に出てくれたのか、直立不動で俺の前に立ってくれている、お陰でそこまで水に濡れなかった。

 

「ありがとう監獄長。

 テレポンは?」

 

 監獄長は黙って視線だけを俺の足元に向ける。

 其処には顔から地面に突っ伏した肌色と土気色が混ざった何とも言えない不気味な姿のテレポンしかいなかった。

 ズボッと頭を上げて自分の姿を確認するテレポン。

 

「あー!?

 せっかく塗り込んだファンデーションが!?」

 

 そうそう、これだよこれ。

 

 




久しぶりのギャグ回

主人公、実はテレポンにベタぼれというね。
エドテンのあの体なら何とかなっていたけど、生前に近い姿だとアカン。

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