個性が「穢土転生」な件   作:ボリビア

55 / 73
顎の衰えがやばい。


観戦な件

 休憩中にPlus Ultraとテレポンの戦いを見学することになった。

 浜辺には距離を取り対峙する二人と見学兼審判の俺だけが残る。

 

「扉間君は片目で私の視界を見てくださいね。」

 

 テレポンは体を解しながら、此方に見学の仕方を教えてくれる。

 視界共有はよくやっているからその程度なら問題ない。

 テレポンは構えをとらず、Plus Ultraは腰を低くして構えており、準備は出来たようだ。

 

「では、はじめ!」

 

 始めの合図と共に俺の時同様にPlus Ultraは個性を使用し、一気に距離を詰めていく。

 俺の視界からは一瞬で迫っているようにしか見えないが、テレポンの視界でみると高速で迫ってくるPlus Ultraの動きを捉えている。

 Plus Ultraが突きだした右手をしゃがみながら避け、そのまま斜め前に転がる事で、Plus Ultraの後ろを取るテレポン。

 Plus Ultraもすかさず後方へ振り向くが、振り向いた瞬間にテレポンが砂を投げつける。

 恐らく転がった時に掴んでいたのだろう。

 

「扉間君、体格に関係なく弱点というのは存在しますよ。

 こんな感じで!」

 

 視界を封じられたPlus Ultraの動きが一瞬止まった瞬間に滑り込むように懐に入ったテレポンが股間へと拳を放つ。

 

「Oh…!」

 

「更に、こう!」

 

 懐から飛び上がるように今度はPlus Ultraの顎にアッパーを放ち、Plus Ultraは思わず仰け反ってしまう。

 

「そして、最後にこう!」

 

 仰け反ったPlus Ultraの体を蛇のように登り、肩車のような姿勢から両足で首を絞めて、両手で目を潰す。

 

「視界を一時的に潰したら即座に急所を狙えば体格差があろうとこのように!」

 

 なるほど、一瞬の混乱から畳み掛けるように急所を狙う事で敵の行動を無力化し最後に絞め落とすのか。

 

「アーマーとか着ている場合はどうするんだ?」

 

「その場合関節を極めてください。」

 

「うむ、素晴らしい攻撃だテレポン君!

 だが、そろそろ外して欲しい!」 

 

「おっと失礼。」

 

 にしても、Plus Ultraがいとも簡単に無力化されるとは思わなかった。

 Plus Ultraからみてどう評価するのだろうか。

 

「目潰しからの一連の流れは素晴らしいの一言!

 異形型も含めて人間の弱点を克服出来た存在は少ない、特に顎と股間に対応した存在はほぼいないだろう!

 たが、ヒーローの場合は別かもしれない、ファウルカップを装着したヒーローは普通にいるからな!」

 

「あー、そうですね。

 頭の良い敵や経験値がある敵はファウルカップ付けてる場合が多いですね。

 まあ、そんなときは棒手裏剣を遠慮なく振るいますが。」

 

 エグい。

 テレポンが忍者スタイルなのは、個性以外にもこの合理的で容赦なしな戦闘スタイルも理由なのかもしれない。

 忍者ならエグい戦いをしても忍者だからしかたないと片付けられるし。

 

「さて、まだ休憩時間はありますし、付き合って頂けますかPlus Ultra?」

 

「うむ、此方もテレポン君のような相手との経験は少ないから、是非続けよう!」

 

 再び、元の位置に戻り構える二人。

 俺が開始の合図を出すと、Plus Ultraがテレポンに向けて砂を巻き上げる。

 Plus Ultraのパワーで巻き上げられた砂は天然のショットガンみたいな物だ。

 生身であれば全身に傷を負う上に視界を遮られる。

 実際にテレポンの視界は砂埃が舞って前方が見えない。

 すかさず、Plus Ultraはテレポンのいる位置目掛けて地面すれすれまで全身を低く、両手を広げて蠍のような姿勢でタックルを繰り出す。

 普通、あそこまで低い姿勢ならスピードは出ないが、Plus Ultraの超パワーなら砂浜でも思いっきり踏み込めば一息で迫る事が出きる。

 それに両手を広げる事で横に逃げられないようにしてあるので必然的に避けるなら真上に避けるしかない。 

 テレポンはタックルを予想してか、真後ろに跳んで反動をつけて高く跳ぶ事でPlus Ultraを飛び越える形で避けようとするが、Plus Ultraはテレポンが最初にいた位置で急停止して空中のテレポンの片足を掴み砂浜に何度も叩き付ける。

 

「うむ、これで一勝一敗!」

 

「タックルは予想してましたが、あそこで急ブレーキしてくるとは流石ですね。」

 

「ワシの戦闘スタイルはパワーによる圧倒だが少し頭を使わせてもらった!」

 

「あっ、扉間君。

 今回は飛んでしまいましたが戦闘中には飛ばない方が良いですよ。

 宙に浮いたらこんな感じで料理し放題なので。」

 

 ぶらーん、とPlus Ultraに片足持ち上げられながら言われると説得力がある。

 今回の読み合いはPlus Ultraの勝ちだが、方法がごり押しに近いので考え方だけ参考にするか。

 その後も何度も模擬戦を繰り返す二人だが途中から此方そっちのけで熱中し始めたし休憩時間終わったので一声かけてから別荘に向かった。

 

「時間だから、戻るけど砂浜直しといてくださいね。」

 

「さあ、私が勝った数が多ければ晩御飯のおかず頂きますよ!」

 

「別に頼まれれば普通に上げるが、さあ来い!」

 

 砂浜無事かなぁ。

 




というわけで以外と汚い戦法もするテレポン。
目潰し金的なんでもござれです。
今回は主人公の為拳のみだけど、本来は棒手裏剣片手に個性も使うのでかなりエグい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。