あれから、二週間が経ち漸く帰還命令が出た。
訓練については目標の20分は達成出来ず、15分が限界だった。
結局、島でA組に出くわすこともなく騒ぎを起こさずに立ち去れたのは良かったと言えるだろう。
別荘は色々あって半壊したが、それくらいなら問題ないと言ってくれたし無事に過ごせただろう。
今、俺は公安委員長と電話してメディア対策の説明について受けている。
戻ってこれたのは公安のメディア対策が上手くいったからだ。
具体的には公安第四特殊犯罪対策室が出来ていて、そこの室長が総理大臣から表彰されているのをテレビで知った。
第四特殊犯罪対策室が敵連合を逮捕した事になっており、作戦を指揮した室長を中心にメディアに露出する事にしたらしい。
公安委員長曰く俺の活躍については室長以外のメンバーは頭脳面での事しか知らせておらず、あの部署は俺の存在を隠す為の部署で俺との繋がりは一切無いとのこと。
唯一俺の活躍を知っているのは室長のみだが、信頼出来る相手らしい。
部署としては俺や対策室の事を嗅ぎ回る人間を調べあげて、危険人物や敵組織の人間であれば逆に監視を行い摘発の証拠を集めるのが仕事である。
既に何名か怪しい人物を監視している事から餌として機能している。
てっきりそこに所属するのかと思ったが今まで通り、公安委員長直属の部下として仕事をしてもらいたいとのこと。
『ということで、今後も今まで通りにお願いします。』
「わかりました、そういえば異能解放軍はどうなってますか。」
『既に貴方の提案を精査し、ホークスを中心に何名かのスパイと共に活動を行っています。
既に穏健派と過激派の溝が出来はじめているので上手く行けば半年以内に分裂させる事が出来るでしょう。』
やっぱり、ホークス中心に行うのか。
ホークスなら適任と言えば適任だ、人の懐に入るのが上手いし、個性で情報収集すれば言葉選びも容易い。
それに、ホークスは象徴になる。
派閥の溝が致命的になった時にどちらの立場かは分からないが独立をする際に自分を象徴にすることで彼らに与える動揺は大きくなるだろう。
ホークスを危険に晒してしまったのは物凄く心苦しいがホークスが適任なのも事実だ。
原作よりマシかもしれないが、やっぱり不安になる。
「一ヶ所に纏めるとかは、やっぱり無理ですか。」
『規模からして不可能でしょう。
ただ、作戦の結果によってはヒーロー達による鎮圧も考えています。
その時は幾つかの施設制圧に貴方の力を貸してください。』
「勿論です。」
厳密には五人の力だろうけど。
公安委員長との連絡が終わって色々と考える。
…正直、頭脳労働として異能解放軍を相手取るのはここら辺が限界だ。
それに、一応影武者的な存在が出来たがまだ目立たない方が良いだろう
原作知識もほぼ使いきったし勉強に力を入れるのも良いかもしれない。
メタ視点による発想力は使えるが、それを補う知識はまだまだ足りてない自覚はある。
五人にも相談して、暫くは解決済みの事件を参考に推理力でも磨こうか。
「というわけで、異能解放軍に関しては作戦の結果次第で動く事になる。
そして、今後の方針だが原作知識もほぼ使いきったし暫くは勉強に重きを置こうかと考えている。」
「まあ、現状異能解放軍は罪を犯した証拠はない。
仮に証拠があったとしても、11万人を相手取るよりは分裂させた方が楽だろう。
それと、今後の方針については異論はない。」
「うむ!
勉学に励むのは若人の権利!
沢山勉学に励もうではないか!」
グラディエーターとPlus Ultraは肯定的。
「うーん勉強に関しては賛成ですが、異能解放軍に関してはもっと動いた方が良くないですか?
分裂の作戦が失敗した場合、向こうはより強固に過激になっちゃいますよ。
最悪でも幹部全員の捕獲出来るように準備は必要ですよ。」
「テレポンの意見も一理あるぜ。
ああいうのは頭を潰さなきゃ意味がねぇ。」
テレポンとカロリが一部反対か。
たしかに、幹部全員あるいは指導者である四ツ橋の捕獲は必要かもしれない。
「貴君の意見は悪ではない故、規則通りに此方は従おう。」
監獄長は賛成というか中立か。
「全員の意見は分かった。
異能解放軍に関しては幹部や四ツ橋の捕獲に関われるか交渉してみる。
勉強に関しては、ヒーロー関係や犯罪心理なんかは皆に教わりたいと思うから宜しく頼む。」
夜食にカレーパン食べたら胃もたれしたぞ。