「会って欲しい人がいる?」
ある日、いつものように公安の訓練や仕事をこなしていると、ホークスから『会って欲しい人がいる。』と連絡があった。
『会って欲しい人物を簡単に言うと俺の前任者かな。』
ホークスの前任者、つまりは公安所属のヒーローというだけでは無さそうだ。
公安所属のヒーローは何人かいるが態々『前任者』と呼ぶということは恐らく汚れ担当というのは察しがついた。
『ヒーロー名はレディナガン、本名は筒美火伊那。
今はタルタロスに重犯罪者として収監されてるんだけど。』
「…公安ヒーローでタルタロスに居るって、使い捨てられたか暴走でもしたんですか。」
公安のヒーローがタルタロスに居る。
その言葉だけでレディナガンがどのような目に遭ったか想像に難くない。
知らなくて良いことを知ってしまったか、全体の正義を捨てて個人の正義に走ったかだ。
『表向きはヒーロー殺しで収監されてるけど、実際は前任の公安委員長を殺してるんだよねー。』
前任の公安委員長については今の公安委員長と違い、大分過激なタチだったらしいとは聞いた事があるが、末路は身内に殺されたのか。
送られてきた資料によると、どうやら危険思想の犯罪者を何人も未然に処理させられていたらしい。
年齢的にも大分若い頃から仕事をしていた辺り、前任の公安委員長は口が上手かったらしい。
明るい未来だ何だと嘯いて、彼女に殺しをさせていたと資料には書いてある。
「ホークスの前任者については分かりました。それで、俺が会う理由は何ですか?」
レディナガンに対しては多少同情するが、俺と関係があるかと言われれば関係無いと断言できる。
前任の公安委員長も知らないし、彼女自体も面識は無いのだから。
『扉間君の個性による監視網プログラム覚えてる?』
「動物の穢土転生体を利用した監視網ですよね。
結果は上々でしたが、公安の人手不足で見送りの筈ですが。」
俺の個性は現状、護衛を務める5人以外に死者の証言取りを行う位しか実行してないが、将来的な俺の公安内部での地位向上を図る一環で個性のさらなる運用が必要と判断した俺とホークスは動物による穢土転生体を利用した監視網を実現させた。
鳥類を中心に監視対象のいる地域に存在する小動物を使用した監視網は監視対象に悟られる事無く生活や行動記録を丸裸に出来る最高の監視網である。
犠牲となる小動物には申し訳ないし、畜生道に堕ちるのは確定だが個人的には人間相手では無い分、精神的苦痛が少なく個性欲求を満たせる為、とても良い。
『そうなんだけど、実際に運用する為にも彼女を公安に戻そうという意見が出てね。
彼女に公安ヒーローに復帰して貰うための面談と、後は扉間君への教育に良いかなって。』
「教育はともかく面談は大丈夫なんですか?」
教育というのは単純に公安に所属することによる発生する負の面を知って貰おうという意図があるのは分かった。
穢土転生という個性を持った以上、日本で暮らすには公安と離れる事は出来ないし公安もレディナガンのように暴走させないために知ってほしいのだろう。
(とりあえず、そういう公安アンチのヒーローと会話しても大丈夫だと思われてる位に信用されていると思っておくか。)
『うーん、そこは俺も不安なんだよね。
まあ、人手不足だからナガン先輩には復帰してほしいけど、扉間君と会わせる必要はぶっちゃけ無いし。
けど、公安委員長のお願いなんだよね。』
「それは何というか意外ですね。」
公安委員長はある意味俺にとって恩人でもある。
前任と違って比較的穏健派な彼女は俺を擁護し利用しつつも、ある程度の自由を確保し捜査に関して資料閲覧の許可や先程の監視網実現の為の許可も彼女が責任を負う事でテストが実施されたのだ。
本人からすればヒーロー社会維持の為に必要な事をしたまでと言うかもしれないが、俺にとっては後ろ盾であり居なくなっては困る替えの利かない人間である。
だからこそ今回のお願いは無視出来ない。
それと、公安委員長が『千手扉間に個人的なお願いをする。』というタブーを犯してまでレディナガンを救いたいという意思を感じたからだ。
「現状、俺の命を脅かすとしたら狙撃ですし。
彼女が復帰すればその穴も埋まるという名目で俺の面通しをするというのはどうでしょう。」
そもそも狙撃されるレベルで特定される事は殆ど無いと思うが、ウチには対遠距離持ち個性は居ないし、多分おそらく必要だろう。
だから、盗み聞きしてたテレポンはニヤニヤするな。
『結構乗り気だね。
断られるつもりで話したけど、そういう事なら話を進めておくよ。』
WHM編が続き思いつかないのでレディナガン編を始めようかと。