『来たぞ。アクア団だ』
ミナモシティのホテルで寛いでいた私の元に、ポケギアから渋い男性の声が届いた。声の主はホウエンポケモンリーグ、第四四天王のゲンジさん。現ホウエン四天王の中で一番の実力を持つドラゴン使い。
私とホウエン四天王のプリムさんとゲンジさん、フロンティアブレーンのリラちゃんとネジキ君の五人で交代しつつ、おくりびやまで二つの宝玉を守護していた。今日はゲンジさんの担当だった。
ちなみにジンダイさんはレジスチル達三匹を使いこなす為に、砂漠で修行しているそうだ。
『わかりました。これよりポケモンリーグを閉鎖。四天王と協力して頂ける皆さんは送り火山に集合してください』
今度は爽やかな男性の声。ホウエンチャンピオンのダイゴさん。彼の呼びかけに応えて、私もホテルの屋上からサザンドラに乗りおくりびやまを目指す。
『状況は?』
『相手の戦力は少数だ。おそらく斥候だろう。襲撃もまだ散発的……だが、数が増えたならワシ一人では突破されるぞ』
前からも懸念していた通り、おくりびやまという場所が防衛に向いていない。なだらかな円錐型の山。足場もこれといって悪い場所は無く、整備されてない所でも普通に登ることが可能なのだ。
周囲を海に囲まれていると言っても、陸からは非常に近い。ボートやなみのりを使えるポケモンがいるならばすぐだ。
360度全てから侵入される恐れがある。なんなら空からも襲撃可能だ。この状況ではいくら四天王といえども一人と数匹のポケモンだけでは、防衛線には穴が開きまくる事に。
そしてこの戦いは勝利条件がいつもと異なる。今までのテロとかでは私に向かってくる相手を倒せば良かったのだが、今回相手は私達を無視してくるだろう。向こうは戦う気はほとんど無く、宝玉さえ手に入れる事が出来ればいいのだから。
『ミナモシティにヒナノ君とリラ君、ネジキ君が待機している筈です。その三人と共に我々が辿り着くまで耐えて下さい』
『了解した』
おくりびやまの山頂にサザンドラで到着する。そこには宝玉を祀り、超古代ポケモンを鎮める為の台座が置かれている。
「おぉ、お前さんか!」
「よく来てくれたのう」
私を出迎えたのはこのおくりびやまにて、宝玉を守護する使命を背負う老夫婦の声。フヨウちゃんの祖父祖母に当たる人だ。何回か警備している日に挨拶は済ませていた。
「ご無事ですか?」
「大丈夫じゃ。ワシらも宝玉もなんともない」
「じゃが本当にこの紅色の珠と藍色の珠を狙う輩が来るとはのう」
おじいさんは痛ましい表情で台座に祀られた二つの宝玉を見つめる。おばあさんは目を閉じ悩ましい表情だ。
紅色の珠は小さな太陽の様に明るく輝き、藍色の珠は静かな深海を思わせるような暗い輝きを放っている。どちらとも見ているだけで惹き込まれそうな美しさだ。
おじいさんが二つの宝玉を見つめている間に、おばあさんが話しかけてくる。
「ヤツらはまた来るのか?」
「何度でも来るでしょうね。コレさえあれば望みが叶いますから」
「……なんと愚かな」
「ゲンジさんは何処に?」
「ゲンジ殿なら見回りを続けてくれておる。じゃが、一人では手が足りまい。お前さんも行っておくれ」
「……大丈夫ですか?」
敵の狙いは正にこの場所なのだ。私達の中から一人くらいはここにいた方がいいのではないか。でも、一人減るだけで防衛ラインの構築は一気に難易度が上がる。
「こんな年寄りでも宝玉の守護者じゃ。お前さんがた程の実力は無いが、一人二人程度ならワシらでもなんとかなる。コレでもワシらの孫、フヨウをこの山で鍛えたのだからのう。
いざと言う時はワシのチリーンが騒いで伝える。山の中腹程度なら聞こえるはずじゃ」
「わかりました」
送り火山の中腹、そこに上半身裸にコートという海賊船の船長を思わせる格好の人物が佇んでいる。 その傍にはボーマンダがその人と同じ方向を警戒している。アクア団の第一波を迎え撃ったゲンジさんだ。
「来たかヒナノ君」
私に一瞬だけ視線を向けた後、すぐに警戒に戻る。
「アクア団は?」
「全員逃げていった。流石に一人では拘束している暇が無かったのでな。ヤツらは海の中から散発的に現れた。現在ワシのポケモン達が空から監視している」
「む?何者だ!」
山を素早く駆け上がるポケモンの姿が見えた。その背には人が跨っている。
視界の遠くに見えた時はアクア団かと警戒したが、ポケモンの姿が大まかにでもわかると私もゲンジさんも肩の力を解く。あのポケモンを手持ちに加えているのは彼女くらいしかいない。
「ボーマンダ、警戒する必要は無い。味方だ」
威嚇しようとしたボーマンダをゲンジさんが諌める。そして会話ができる距離まで近づいた。
「遅くなりました!」
ジョウト地方に伝わる伝説のポケモン。勇ましく蓄えた髭、背中には雨雲を思わせるような体毛。見た目からも雷の荒々しさを感じさせるポケモン、ライコウだ。
そんな伝説のポケモンを従えるのはフロンティアブレーンの一人。タワータイクーンのリラちゃん。
「リラ君だったな。チャンピオンから聞いている。協力感謝する」
「礼には及びません。ボクも故郷を守りたいだけですから。ネジキさんもドータクンに乗って此方に向かっていました。まもなく到着するかと思います」
「わかった。これより山の中腹を警戒・防衛ラインとする。それぞれの持つポケモンを間隔を空けて展開し迎撃するのだ。普段のポケモンバトルとは違う戦いになる。倒すのでは無く、宝玉に近づけさせない事を第一に考えるように」
私達に必要なのは時間だ。現在サイユウシティからはダイゴさん、プリムさん、フヨウちゃん、カゲツが。砂漠からジンダイさんが此方に向かっている。彼らが到着さえすれば、防衛ではなく一転攻勢を仕掛けることが出来る。
団員の多くを捕縛出来るだろう。もし幹部やボスを捕まえられるなら、勢力を大幅に削る事ができるし、上手く行けば解散まで行くかもしれない。
「サイユウからここまでの時間は?」
「ワシのドラゴンポケモンを移動用に預けてある。あと三時間もあれば到着するだろう」
「三時間……長いですね」
アクア団も斥候を通して知ってしまっただろう。この山と宝玉を四天王が守護している事を。ならば防衛戦力が増える前に目的を達しようとするはずだ。それこそ戦力を総動員してでも。
「だが、やらねばならん。……あの結果だけは認める訳にはいかんのだ」
ゲンジさんの決意に満ちた言葉に私もリラちゃんも頷く。私も含めこの件に関わる全員が、あのシミュレーション報告を受けている。私たちが失敗すれば現実になってしまう数字が脳裏に浮かぶ。
「ワシは正面南側を、ヒナノ君には山の裏手北側を。リラ君はミナモシティ方面東側を。ネジキ君にはキンセツシティ方面西側を担当してもらう。襲撃を受けたらすぐに連絡を。その都度戦力を振り分ける」
「了解」
「わかりました」
さて、流石の私も真面目モード。送り火山防衛戦だ。この四人で何とか三時間凌ぎきらなくてはならない。
自分が警戒する範囲の山肌と空を注意深く観察している。既に一時間と三十分が経過したけど、不気味な程静かだ。四人がポケモンをフル展開している為、送り火山に多くいる野生のゴーストポケモン達も姿を隠してしまった。
今回の襲撃はアクア団に放った鼠達から一切の連絡が無かった。知らされなかったのか、私やチャンピオンと通じている事がバレてしまったのか。彼らは今どうなってしまったのか。
気になると言えばマグマ団もそうだ。マグマ団もアクア団もお互いにスパイを入れているはずで、アクア団が動いたらマグマ団も動きかねない。それが私とダイゴさんの最大の懸念だ。
下手したらこの送り火山で三勢力による三つ巴の戦争状態になりかねない。
「っ?!」
私のいる場所から見て右後ろの方向から、耳を劈く雷鳴が轟いた。間違いなくリラちゃんのライコウが放ったものだろう。すぐにポケギアに着信が入る。
『ボクの所に襲撃です!……人とポケモンが津波のように!』
『ヒナノ君聞いたな?!君とワシの戦力をリラ君の方に傾ける!ネジキ君、その分の警戒範囲をカバーしてくれ!』
「了解!」
『りょうかーい!』
私は身軽なアブソルとブラッキーに引き続き警戒を任せ、バンギラス、サザンドラ、ダークライの三匹と共に山の東側へ急ぐ。
リラちゃんが視界にギリギリ入るくらいになって、山の麓の方を見てみる。彼女の先程の表現が正しかった。ポケモンと人の波がジリジリと山を登ってくる。
それに対しリラちゃんのポケモン、ライコウ、フーディン、カビゴン、ルカリオ、マニューラが遠距離攻撃で牽制し進軍を止めている。たまに波から飛び出て防衛線を突破しようとするポケモンを、逃さず撃ち落としているといった感じだ。
だが、それ以上に相手が多過ぎる。私達も加勢してなんとかなるのか。
「リラちゃん!左側私が引き受けるよ!」
『ワシが右側を受け持つ!』
『ありがとうございます!今なら押し返せる!』
「バンギラス!行く手を封じる様にがんせきふうじ!」
バンギラスはその強靭な尻尾で山肌を削り取り、岩の塊として麓の方に放る。
アクア団の軍勢は一斉に遠距離攻撃を仕掛けてくる。数に任せた狙いの定まっていない攻撃。適当だが今なら非常に有効だ。私はバンギラスの背後に身を隠し、指示を続ける。
「サザンドラ迎え撃て!りゅうのはどう!」
「ダークライ!ポケモンも人も眠らせて。寝ているポケモンや人が登る邪魔になるように」
細かく狙いを指示する必要はほぼ無い。山の麓の方に撃てば必ず当たる。それほどの敵の数。
幸い救いなのは、私達の攻撃に竦んでくれる事だ。ロケット団のサカキみたいな、呪いの様なカリスマは無いようだ。あの数が忠誠心で恐れを抑え込み、登ってきたら流石に止めようが無い。
だが時間が進むにつれ疲労が溜まり、完全には抑えられなくなる。向こうの勢いは落ちる様子はなく、人とポケモンの波は近づいてくる。少しずつジリジリと、潮が満ちてくる様に。
『……三人とも少しずつ下がるぞ。コレではいつか抜かれる。警戒範囲を狭め、防衛ラインを強固にする』
「わかりました。どれほど下がりますか?」
『山頂が見える程度だ』
『ダメです!それでは宝玉に攻撃が届く可能性があります!』
『もちろん理解している。だが、このまま防衛ラインが崩壊してしまっては、それこそ持ち直せん』
「……リラちゃん大丈夫。あの夫婦も守護者として戦ってくれると言っていたから」
自分の心と言葉がまるで違う。他人任せもいいところだ。
流石にアクア団も宝玉を攻撃する気は無いと思うが、これだけの数のポケモンがワザを放つとどうしても流れ弾が発生する。そんな危険に巻き込む事になるとは。
『もう後には退けん……ここで死守する!四天王の名にかけて!』
━━━━━援軍到着予想時間まで残り一時間━━━━━
あかんなー。書くスピードが落ちてきた。お待たせしてすまんのぉ。
未だに防衛戦成功するか失敗するか決まってない。四天王達の強いポケモントレーナーらしさを出すなら成功させたいし、でも物語的に失敗した方が盛り上がるし……あ゛〜わがんね。
お気に入り登録、感想、特に評価ありがとう!気持ち的には元気玉。
誤字報告いつもすまん!
そろそろこの適当なあらすじどうにかした方が……今更か。