悪夢と共に   作:あんノー

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第二話

あたしはキクノ。シンオウリーグ四天王の一人。

 

ミオシティをぶらりと訪れていたら、ポケモンによる少女誘拐が起こったっていうじゃないか。

 

それを耳に入れてしまっては動かない訳にもいかず、警察や街の人に混じり連れ去られた方へ歩みを進める。

 

誘拐された少女の母親曰く、犯人はダークライという幻のポケモン。四天王として多くのポケモンと戦い、様々な形で関わってきたあたしですら聞いた事の無いポケモンだ。

 

悪夢を見せるポケモンでどうやら、少女は長い事その被害にあっていたらしい。

 

父親が寝ている少女の様子を確認しに行くと鉢合わせたらしく、娘を守る為に挑むもパートナーと共に眠らされ、今は悪夢にうなされているという。

 

 

ご両親の心中を察するとあまりにも不憫で、この重い腰をあげないといけないかねぇ。

 

 

 

 

街の中を森に向けて進みつつ、比較的背の高い建物の屋根に向けてボールを一つ投げる。そこから飛び出すのはグライオン。あたしの今の手持ちの中で、追跡に向くのはこの子ぐらい。

 

「逃げた方向へ滑空。見つけたら手は出さず、少し離れて旋回して場所を教えて頂戴な……こうそくいどう」

 

簡単な指示を与えると、グライオンはすぐにあたしの考えを汲み取り滑空体勢に入る。全身の無駄な力を抜き、滑空速度を少しでも上げる。

 

「さて、行っておいで」

 

音を立てずに逃げた先へ高速で滑空する姿を見送る。その方角へ歩みを進めながら思案する。

 

「それにしても幻のポケモンが人さらいなんてねぇ……いったい何が目的なのやら」

 

普通の野生のポケモンが子供を誘拐する事件や、人がポケモンを使って誘拐する事件なら聞いた事はある。だが、ダークライにはそんな話は無い。

 

過去に人さらいを行っているなら記録に残るし、記録に残らない昔でも逸話に含まれる筈だ。人間に害があるならば、人は必ず後世に伝承する。そうして生き残ってきた種族なのだから。

 

「ならば原因は少女の方かねぇ」

 

特定のポケモンに好かれる、または狙われるのは特段珍しい話でも無い。

 

前の飼い主に匂いや雰囲気が似ている程度でも寄ってくるポケモンもいれば、とある一族にしか心を開かないポケモンもいる。何か特殊な物を所持しているから永遠に付きまとわれる事もよくある事だ。

 

かくいうアタシもじめんタイプのポケモンに好かれてたりするからねぇ。

 

これ以上考えても仕方ないと思考を切り替え、ふと少し遠くの空を見ると追跡に放ったグライオンが見えた。

 

 

同時に視界の先には、おそらくダークライに眠らされているポケモンがちらほら確認出来る。木にもたれかかるように、地面にうつ伏せに、そして木の枝に引っかかるように。地に足をつけるポケモンも、木に張り付くポケモンも、空を飛ぶポケモンも全て。

 

例外はいるものの、多くのポケモンが同じ方向に向けてうつ伏せで寝入っている。

 

同時に眠らされたか。広範囲かつ遠距離で強制的に眠らせる。匂いも残ってないからガスとかでも無いし、草タイプのポケモンもぐっすりだから粉でも無いのね。上空のグライオンが眠らされていないなら、声や光などが条件でも無さそう……絞りきれないのはちと面倒だねぇ。

 

「この先ね。ドサイドン、ステルスロック。カバルドン、あなをほって真下まで行くのよ」

 

ドサイドンが足で地面を力強く踏み付ける。すると地面から角張った岩が宙に飛び出し漂う。そして風景へと溶け込んでいく。相手は眠らせてくるポケモン。その眠らせる手段が判明しない為の警戒態勢だ。

 

ステルスロックがあたしたちの前面で漂い始めた頃、カバルドンが地面に潜行していく。

 

これなら地面のカバルドンか空中のグライオン、どちらかは眠らない可能性がある。

 

「さて、あたしたちも行こうかね」

 

 

 

森の開けた場所、そこに一人の少女とポケモンがいる。私の立ち位置から見て、ダークライの奥に少女がいる。

 

おや、眠らされていない?

 

目の周りにくっきりとした隈をつけた少女は起きていた。私を見て驚愕している。助けを待っていたのだろうか。

 

「こんばんは小さなお嬢さん。助けに来ましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんは小さなお嬢さん。助けに来ましたよ」

 

私が初めて会う原作キャラが四天王とは思うまい。イメージとして四天王と呼ばれる方々はポケモンリーグでチャレンジャーを待っているものだと思っていたのだから。

 

よくよく考えると彼らも人間であり、自由に動くのは当然といえば当然なのだが。

 

 

驚きのあまり返す言葉が見つからない。ゲームの中のNPCではなく、現実としての四天王なのだ。なんでこの人がこんな所にいるのだ。

 

 

そんな驚愕中の私の前でダークライが動いた。両手からそれぞれ黒い玉、ダークホールを飛ばす。目の前のキクノとドサイドンを眠らせる気だ。

 

それは命中する前に見えない何かに当たり、何も無い場所を暗闇で包み込む。ダークホールが消えた後、かすかに空中が不自然に光るだけだった。

 

「おや、一番の当たりを引いた。ドサイドン、構えなさい」

 

ドサイドンの右手が私たちに向く。掌部分に石を撃ち出す発射口があるのだ。

 

ダークライはその場から動かず、両手に力を溜めている。あくのはどうで向かい撃つか、相手より先に撃とうとしている。

 

「逃げないのかい。こりゃ予想外だね。ならグライオン、ゴッドバード」

 

視界の上端から勢い良く、ポケモンがダークライに降ってきた。宙に浮いていたダークライが地面に叩きつけられる。だが、直撃では無かった。

 

ダークライは黒い防殻を頭上に展開している。あれはもしかして、まもるなのか。

 

「カバルドン、あなをほる」

 

地面に落とされたダークライの真下から、重量ポケモンのカバルドンが大きな口を開けて飛び出る。ダークライの半身を口で加え、地面に引きずり込んだ。

 

 

 

私が心配する間もなく、ダークライは身動きを封じられた。ダークライは頭以外が地面に埋まり、その頭の上ではドサイドンが掌の発射口を向けている。

 

もうどうしようもないというのは私でもわかった。父親に攻撃された時とは違い、私が感じたのは怒りではなく恐怖だ。四天王のポケモンに恐怖したのではない。ダークライがいなくなる未来に恐怖した。

 

出会ってからはまだ短い間だが、助けてくれたし頼みも聞いてくれた。それ以前からも私を夢の中で守ってくれていた。

 

「待って!!」

 

だからこそ、私は飛び出した。ダークライとドサイドンの発射口の間に。

 

 

「やれやれ、そういう事かい……小さいお嬢さん」

 

キクノはゆっくりと私に近づいてくる。ため息をつきながらグライオンとドサイドンをボールに戻した。

 

「念の為カバルドンで動きは封じさせてもらうからね」

 

カバルドンはまだこの下でダークライの半身を咥えたままらしい。

 

 

 

「さてお嬢さん、名前はヒナノで合ってるかい?」

 

「そうです」

 

「あたしはキクノ。お嬢さんが誘拐されたって聞いてきたんだけども……これはもしかして家出なのかい?」

 

「……はい」

 

「やれやれ……喧嘩でもしたのかい?」

 

「ちょっと複雑で……聞いて貰えますか?信じて貰えないかもしれないですけど」

 

私は話した。詳細は省いたが、他人の記憶に侵食されていた事。それで自我があやふやになり両親を親と見えなくなってしまった事。それをダークライが悪夢で上書きして、抑えてくれていた事。

 

みかづきのはねによって、記憶の侵食は一気に進んでしまったこと。ダークライはそれでも守りに来てくれたが、運悪く父親に見つかり衝動的に眠らせてしまった事。

 

八歳の身ではどうしようもない経験を、四天王のキクノは最後まで聞いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

聞けば聞くほど不思議な話で、数奇な人生のお嬢さんだ。これでまだ八歳なのだから驚きしかない。

 

他人の記憶が侵食してくるというのが、どんな感覚かはこの子にしかわからないのだろう。悪夢の方がマシであると感じる程の嫌悪感を感じるらしい。その結果の自我崩壊。

 

実の親を親と思えなくなるとは酷く悲しい話だ。それに自分が変わったという自覚があると言うのを、八歳の子供が吹っ切れたように言う姿に、あたしは何も言えなくなった。

 

他人の記憶の影響で子供とは思えない落ち着きと話し方をする。体は子供でも、その知識と精神性は大人と言ったところか。ただ、今回の衝動的な行動には多少の幼さを感じる。

 

「話はわかった……けどねぇ、正直言って精神面ではあたしはお手上げね。あたしにできることはポケモンとの付き合い方を示すくらいだよ」

 

「付き合い方……ですか?」

 

「今のままではお嬢さんとダークライを引き離さなきゃならない」

 

「……それは」

 

心苦しいがそうなるのは目に見えている。トレーナー資格も無いこの子が幻のポケモンを所持するのはリスクが高すぎる。

 

この子らの信頼関係を疑っているのではない。

 

ドサイドンがダークライに向けて照準を合わせた時、ダークライは後ろのお嬢さんに万が一があってはならないと回避を放棄した。

 

お嬢さんもダークライの前に立って防ごうとした。その時のこの子らの瞳のそっくりな事。あんな光景を見せられてはねぇ。

 

だが、多くの人は信頼関係という見えないものだけでは納得もしてくれないのもまた事実。

 

「お嬢さんが持つにはダークライの能力は強すぎるのよ。それに幻のポケモンだから狙う連中も多いだろうし」

 

「私がダークライと一緒にいるにはどうしたら良いですか?」

 

「ポケモントレーナーになる事。それもただのトレーナーじゃない。誰からも認められる様なトレーナー……ジムリーダーや四天王と言ったところかしら。お堅い連中にはダークライを完全に従えられるという格が必要で、悪い連中にはダークライを奪うのは不可能だと思わせなければならないのよ

 

お嬢さん……いや、ヒナノ。あなたに覚悟があるのなら手伝ってあげても良い。その間はあたしがあなたとダークライの責任を取るといえば、お堅い連中は黙るだろうさ」

 

「お願いします」

 

「即答だね。ダークライも良いのかい?」

 

こちらも即座に頷く。それを確認し、カバルドンに拘束を解くように指示を出した。ダークライが地表に上がる最中、懐から空のモンスターボールをヒナノに渡す。

 

「ほら、受け取り」

 

簡単に使い方を教え、ダークライも特に抗いもせずにボールに収まった。

 

ふふ、ダークライの入ったモンスターボールをジロジロと確認する様子は年相応だねぇ。

 

「さて、忙しくなるよ」

 

この子の両親への説明に、いくつかの機関や組織への説明。まぁ、ここらは良い。四天王の名はこういう時には大いに役に立つ。

 

問題はこの子の育成か。あたしもこの歳でまだ背負うものがあるとは……引退はまだだいぶ先の事になりそうだよ。

 

「とりあえず二年。あなたが十歳になるまでにトレーナーのいろはを叩き込む。その後は急ぎ足でジムバッジ集めて回って貰うからね」

 

「えっ?!」

 

「いつまでもあなたの面倒を見る訳にはいかないからねぇ」

 




switchのグラフィックに今更驚く作者でございます。とりあえず書き溜めを放流していく。サクサク行きますよ〜。

Q、ステロの効果違くな〜い?
A、技の説明に書かれてる事を拡大解釈していくぞ。

感想等助かる!

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