悪夢と共に   作:あんノー

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第二十話

逸る気持ちを抑え、ダイゴさんの指示通りミナモシティのポケモンセンターへ移動した。送り火山に残された団員達は、ミナモシティの警察が対応する様になった。

 

そのポケモンセンターで折れた左腕の手当てを受けながらテレビ画面を見ていた。今はどのチャンネルも同じ内容だ。

 

 

ホウエン地方全域に出されたチャンピオンによる緊急事態宣言。これから起こる災害とその被害予想。それを抑える為の避難指示がひたすらに流れていた。

 

ここミナモシティもその通知を受け慌ただしくなっている。グラードンとカイオーガは復活した後、ルネシティの目覚めの祠を目指す。えんとつ山にて復活するグラードンがルネシティに向かう時、ここミナモシティは進路になる可能性がある。

 

地上を歩くのか、地中を進むのか。どちらにしろ良くて焦土、最悪溶岩地帯に化すと言われては、住民は逃げる他ない。ポケモンレンジャーは総出で、野生ポケモンをできる限り避難させるそうだ。

 

 

 

そんな中私はというと、折れた左腕に添え木をあてて包帯で固定される。そのまま三角巾にて支えられ、これで私はよく見る腕を骨折した人の姿に。

 

「これでよしっと。すみません姐さん。今は応急処置くらいしか出来なくて……」

 

私を手当してくれたのは、カゲツの子分の一人。更生してポケモンセンターのお姉さんになった人だ。彼女が申し訳なさそうにしている。

 

「しょうがないよ。今はドタバタしてるからね」

 

病院もポケモンセンターも、今や何処も彼処も避難対応に追われている。前例の無いチャンピオンからの緊急事態宣言に皆、戦々恐々としているのだ。

 

「ウチの子達をお願いね」

 

「はい!お任せ下さい!」

 

ダークライを含めウチの子達は程度は違えど、皆治療が必要な程疲弊していた為預けている。通常業務に加えて、ポケモンセンターで保護しているポケモンや預かっているポケモンと共に、職員は逃げなければならない。それが、急に通達されて現場は大混乱。

 

 

 

その慌ただしい様子を見ていると、コツコツと近づいてくる足音。目の前のドタバタとは真逆の落ち着いたリズムだ。

 

「骨折は冷した方が良いと聞いた事があります。私がして差し上げましょうか?」

 

にっこりと笑う四天王のプリムさん。冗談にしては肝が冷える。この人少し前に、置いて行かれたマグマ団アクア団を凍らせてたもの。

 

「……プリムさんの氷じゃあ、逆に悪化してしまいますって」

 

「チャンピオンがお呼びです。なんでも呼んでいた方々がお着きになったようですよ」

 

 

 

 

 

 

 

「ヒナノ君紹介しよう。彼ら二人が古の伝承を語り継ぎ次世代に受け継いでいく使命を負った一族。ホウエンにてレックウザを知る二つの民の代表だ」

 

ポケモンセンターの外に出てダイゴさんと共に私を出迎えた男女。

 

「目覚めの祠、空の柱。ホウエンの二つの聖地を守るルネの民、そしてルネシティのジムリーダーでもあるミクリ」

 

男の方はノースリーブで大きな切れ込みの入った衣装と。肌の露出が多く、三連のブレスレットや緑色のショールを纏うなど、一見にハデに見える。しかし、その本人が持つ雰囲気がその衣服とマッチしている。

 

「レックウザを奉る流星の民、伝承者のヒガナ君」

 

女性の方は男性とは打って変わって、ボロボロのマントを纏い野性的な印象を受ける。

 

 

 

「ダイゴ、彼女が?」

 

「あぁ、我々の協力者。そしてなにより……レックウザについて明確に存在を認識していた。君達が伝えたわけじゃないんだろう?」

 

「いやー私は初めましてだわー。シンオウ地方の元四天王さんなんだよね?」

 

「私もだ。そもそもレックウザについて語る者は我々の中にはいない。これは古よりの掟だ」

 

ミクリさんの目は鋭く細く、ヒガナの目は興味津々といった感じで私に向いている。

 

 

アレ……もしかしてだけど、私疑われてる?

 

 

「さて、この通りレックウザはホウエン地方のトップシークレットだ……ヒナノ君、なぜ君はこのポケモンを知っているんだい?」

 

「私は空の柱を知っていた方が驚き。流星の民とルネの民で完全に秘匿してる筈なのに」

 

「いっ今はそんな場合じゃ……」

 

「確かにそれどころじゃない。ただ、この情報が君だけが知っているのか、他の誰かから聞いたのとでは、意味合いが大きく変わってくる。マグマ団、アクア団がレックウザについて既に知っているのなら、なにかしらの対策をされているかもしれない……君はレックウザをどこで知ったんだ?……素直な回答を期待するよ」

 

 

 

 

「はぁ……信じるか信じないはそちらに任せるよ。

 

 

私の相棒、ダークライは悪夢を見せる。私はそれを毎晩見ているわけだけど、たまに妙にリアリティがある悪夢を見る時があるんだ。それが大抵予知夢でね。これまでに三回かな。

 

カントー地方、ヤマブキシティでのロケット団の大規模テロ。

 

ホウエン地方、グラードンとカイオーガの衝突。

 

シンオウ地方、神と呼ばれるポケモンを利用した世界再編。

 

言葉にすると最初以外馬鹿馬鹿しい、そう言える内容。だけどカントーでは実際にテロは起き、半信半疑でその場所にいた私も協力して解決した。

 

そして今ここ、ホウエン地方では超古代の伝説が再現されようとしている。その悪夢でミクリさん、貴方の口から出たのがレックウザと空の柱」

 

「私が……君に?」

 

「私じゃないんだなーこれが。今ポケモンセンターの中にいる、ハルカちゃんなんだよね。

 

悪夢の中で、大人たちはあの子にホウエン地方を、世界を託した……託しちゃったんだよ。それがどうも気に入らなくてね。私が至る所で助けたり、この事件を止めようとしてみたけど……失敗した。

 

そこのお二人に尋ねるけど、今いる中でレックウザを目覚めさせに行けるのはハルカちゃんくらいなんじゃない?」

 

 

「そうだねー。この先二体の復活で、天候は大荒れになるだろうし。長距離を移動出来るポケモンを持っていて、トレーナーも五体満足なのはあの子しかいないだろうね。

 

流星の民の伝承者として指名するならハルカちゃんになるよ」

 

「ちなみに伝承者って肩書だけど、何かの役割があるの?」

 

「レックウザと空の柱については知っているのに、伝承者については知らないの?」

 

「あくまで夢の中の話だからね。知っているのは断片的なんだよ。貴女も夢の中では見えなかったからね」

 

「ふーん……。まぁそこまで知っているならいいか。どうせもう緊急事態だし。

 

流星の民の伝承者っていうのは、空の柱までの道筋を知り、それを秘匿し、次の伝承者に繋いでいく役割。でもって、今回みたいな有事の際に、誰かを空の柱まで案内するんだよ。

 

空の柱周辺はレックウザの影響からか特殊な気流でね。風の抜け道を正確に通らないとたどり着けないんだ。海から近づこうとしても、ご先祖様たちが岩礁を意図的に作って塞いでるし。奇跡的な偶然が重なれば、私無しでもたどり着けるかもしれないけど……それはある意味遭難かなー。

 

あと、空の柱の中には、意地悪なご先祖様たちが仕掛けたトラップがわんさか設置されているからね。それを解除するのも伝承者の役目。トラップを解除する人と空の柱を登る人は別々に必要だから、伝承者だけでもレックウザには会えないんだ」

 

「待って!!それって……レックウザと相対するのはハルカちゃんだけになるってこと?」

 

「そうだね。もちろん命の保証なんかはしないよ。伝説を、文字通り目覚めさせるんだからね」

 

「本来はチャンピオンである僕が行くはずだった。しかし……」

 

「あのハルカって女の子がとっておきのポケモン持ってたからね。ラティアスなんていう、ホウエンでこれ以上ないってほど、長距離高速移動に適したポケモンをさ。レックウザを目覚めさせる時間が大幅に短縮されるよ。そしてチャンピオンを前線の指揮に回せる。このメリットがわからないわけはないよね?」

 

ヒガナに言われるメリットがわかってしまう。そのためにハルカちゃんを危険にさらすのは仕方ないんだと囁き始める自分の理性が嫌になる。原作の通り、私たち大人はあの子に世界を託そうとしている。

 

 

そして、自分がその一員になったことに乾いた笑いが漏れる。自分の中でやるせなさと嫌悪感がごちゃ混ぜになった結果だ。

 

「そして、私たちルネの民が空の柱の鍵を代々管理している。この二つの民の許可が下りない限り、誰もレックウザに会うことができない」

 

「……えらい厳重だね」

 

「そりゃあ厳重にもなるさ。神聖視されていると同時に、触らぬ神に祟りなしだからね。グラードン、カイオーガのように、レックウザは宝玉によって鎮められて眠りについているわけじゃない。ただ自ら眠りについているだけ」

 

「不埒者にちょっかい出されてはたまったもんじゃない、と」

 

「その通り」

 

 

 

 

「ヒナノ君、君の悪夢では二体は復活した後どう動く?」

 

「復活した二体は当然、マツブサとアオギリの制御なんか気にも留めず、目覚めの祠に向かう。二体が衝突するのはその目前、ルネシティのカルデラ湖。ひでりと大雨が交互にやってくる異常気象がホウエン全体に広がるくらいかな」

 

「言い伝えにほぼ近いと言っていい。君が見た悪夢は正しく予知夢なのだろう。その上で聞く、この動乱は解決したのかい?」

 

「レックウザを目覚めさせ二体は鎮まったよ。だけど、被害がどうなったかまでは見えていない。それに夢と違う場面もいくつもある。その夢では私たちは送り火山で防衛戦なんてしてないし、まず私がいない。チャンピオンもミクリさんだったし」

 

「私がチャンピオンに?」

 

「それはあり得ない話でもないだろう?なんたって僕より一つ先に殿堂入りを果たしたのは君じゃないか」

 

「チャンピオンを辞退し、師匠の跡を継いでジムリーダーなる事を選択した私がチャンピオンになっているという事は、ダイゴはどうしたんだ?」

 

「自由気ままに石を探してましたよ」

 

「……変わらないな」

 

「僕はそっちの生活の方が嬉しいかな」

 

「ハイハイ三人とも、悪夢のたられば話に花咲かせてないで、結局どうするの?」

 

 

 

ミクリさんが思案の後に口を開く。

 

「ひとまず目覚めたグラードン、カイオーガは刺激せず真っすぐにルネに向かってもらう」

 

「街や住民はどうする?お前はルネのジムリーダーだ」

 

「街を放棄してもらう。ルネの民は皆、覚悟している。これが古より伝えられてきた役割だ。既に、避難は進んでいる……誰からも文句は出なかった。我々の街は気にしなくていい、そういう使命の下で二体の決戦の地に街を建てたのだから。実際に復活して、こうなるのは目に見えている」

 

ミクリは俯き、こぶしを握っている。地元愛が強い傾向があるジムリーダーが自分の街を見捨てるなんて、使命のためといわれても受け入れがたいものに違いない。

 

「ハルカ君とヒガナ君に空の柱へ向かってもらう。残った我々は二体の進行を監視し、総力をもって二体が激突するルネシティの被害を抑える」

 

ダイゴの発言にミクリがばっと顔を上げる。

 

「ダイゴ!街は良いと言っただろう。滅びる街のために君たちが命を張る必要はない!」

 

「何も街の為だけじゃない。二体は復活した後、目覚めの祠で真の覚醒を果たすのだろう?ならば二体にはレックウザが到着するまで、存分に戦って貰う必要がある」

 

「まさか……二体の戦いに干渉する気?」

 

私たちが伝説に介入するなんて、こんな人生だけど思ってもみなかった。

 

「幸いな事にそれができるメンバーが揃っている。やらない手はない。万が一、どちらかでも完全な復活を遂げられてしまえば、ホウエンだけの話では無くなってしまう」

 

「わかった……流星の民の使命として、できる限り早くレックウザを目覚めさせてくる」

 

「ルネの迎撃態勢を整える。ミナモから可能な限りの戦力とありったけの物資を運ぼう。復活までそう時間がない。皆、頼んだよ」




この作品内ではメガシンカがないので、巨大隕石も∞エナジーなんもかも存在しないよ。でもヒガナ出しとこっと思って、独自解釈設定もりもりだよ。想像力ゥ……ですかねぇ。

待ってましたコメあったけぇあったけぇよ。
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