悪夢と共に   作:あんノー

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第九話

一ヶ月後、トキワシティ。

 

サカキに気取られないように、警察は覆面捜査員少数が街に潜りトキワジムを見張っている。

 

ハンサムさん曰くレッドには警察の事は伝えてないらしい。少年の様子から我々の存在がバレるのは避けたいらしいが、元々無口だし別に良かったのではとも思っている。

 

私?ホテルでお留守番。

 

前回の大失態で信用失ったかと思ったが、私がいると来るわけ無いだろと言われ、それもそうかとなっている。ただ、サカキと戦闘になった時の助っ人として呼ばれている。……それってレッド少年いるから私要らなくない?

 

 

まぁでも協力するって言ったし、事の顛末知りたいしでトキワシティのホテルに数日前から篭ってる。ここのホテルからトキワジム見えるから、チラチラと確認しながら。もう夜で暗くなっているのに、ジムには未だに明かりも付いてない。

 

 

 

 

『ヒナノ君、例の少年がトキワジムに入っていった』

 

ハンサムさんの言葉に、あれ?と思ってジムを確認するとやはり明かりは付いてない。どうやらドアだけ開けていたらしい。

 

『それと例の少年と別の少年もジムに入っていった』

 

別の少年……あぁ、グリーン少年か。今日以外にここのバッジ取れる日ないもんね。サカキが解任されて、別のジムリーダー就任するまでにも時間はかかるだろうし。レッド少年が教えてあげたのかな。

 

『二人とも入って出てこない。サカキがいる可能性がある。我々も突入する。トキワジムの包囲態勢に入れ!』

 

では、私も準備しますかね。

 

 

 

ホテルの部屋を後にしようとして、後ろから光が駆け抜け、直後に轟音が響いた。

 

「…………は?」

 

 

振り返るとトキワジムが崩れ、黒煙と炎を上げていた。

 

その光景に私は思考が停止した。

 

トキワジムが爆発?なんで?レッドとグリーンは?

 

『総員!!急げ!サカキを、少年達を探すんだ!』

 

ポケギアから届いたハンサムさんの必死の叫びで我に返る。

 

ホテルから急いで出ると、私以外にも捜査員がトキワジムを目指して走っていた。中にはポケモンに跨り急ぐ人もいる。

 

私もアブソルを出し、その背に乗ってトキワジムへと急いだ。

 

 

 

 

 

 

水タイプのワザを出せるポケモンが炎を消していく。私もアブソルにあまごいを命じ、その後ポケモン達に瓦礫の中の捜索を指示する。

 

その間は頭が真っ白だった。あの二人が死ぬ?まさか。

 

大丈夫だ。二人は死なない、と自分自身に言い聞かせる。そうじゃないと私、彼らを死地に送った事になる。それは耐えられない。

 

私もフルメンバーで捜索する。

 

ブラッキーは小さな体で瓦礫の隙間を、アブソルは引き続き消火を、バンギラス、サザンドラ、ダークライは瓦礫を除いていく。

 

 

 

 

「捜査官!見つけました!抜け穴です!」

 

捜索開始からしばらくして、捜査員の一人から声が上がった。ハンサムさんと私が駆け寄る。

 

ジムの床に、人が入れる大きさの穴がくり抜かれていた。縄梯子で下に降りる様になっている。降りた先には人一人が余裕を持って歩ける横穴がまっすぐ続いているらしい。

 

「三名分の新しい足跡があります。この穴自体は前から作っていた様に見られます」

 

そうか……サカキはじめん使いのジムリーダーだった。ポケモンに掘らせていたのだろう。勝負を邪魔されたくなかったのか、元々脱出用に作っていたのか。

 

この捜索でだいぶ時間を奪われたのは痛い。今から追いかけて追いつけるだろうか。

 

「方角は?この先には何がある?」

 

ハンサムさんが捜査員の一人が持ってきた地図をなぞる。トキワジムに指を置き、そこから北へ。地図の上では緑に覆われていた。

 

「トキワの森か……我々はすぐに急行する。ニビシティ、クチバシティの警察に応援を求めろ」

 

「あっディグダの穴か」

 

私の呟きにハンサムさんがうなづく。ニビシティとクチバシティを繋ぐ、ディグダの作った地下通路。そこに穴を掘り繋げている可能性もある。だけど……

 

「もっとも、サカキが穴を掘れる以上、追跡は困難だろうが……それでも次に繋がる手がかりは掴んでおきたい。

 

ヒナノ君、それにポケモン達も、これまでの協力感謝する。君は確かこの後ホウエン地方だったね?」

 

私は数日後クチバシティから船に乗り、ホウエン地方に飛ぶと決めていた。もう予約や向こうでの約束もしてあるので、これ以上の協力は出来ない。

 

「はい、あまり力になれずすみません」

 

「今回はむしろ我々の力不足だ。サカキの動向をもう少し詰められていたなら……いや、たらればを言っても仕方ない。我々は再びサカキを追う。またいつか何処かで会おう!」

 

ハンサムさんや捜査員の方々は私に軽く敬礼して、パトカーやポケモンでバタバタとトキワの森へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ホテルで一眠りしてチェックアウトする。うん、気分も眠気もスッキリ。

 

「さて、切り替えますか」

 

サカキのことはもう頭の外にやっちゃおう。ハンサムさんや主人公が何とかしてくれる。私のカントーでの出番は終了ー……じゃなかったか。

 

「おや?ずいぶん早かったね」

 

トキワシティの外れ。セキエイ高原のポケモンリーグ本部に繋がる道。

 

街灯の下で一服しながら、ポケギアで時間を確認する。もう良い子は寝る時間だ。そこに待ち合わせをしていた悪い子が現れた。別に明日の昼間でも良かったのに。

 

「あんたに言われた通り、カントー地方八つのバッジを揃えた。約束は果たしてもらう」

 

「約束だからね。では……おん?」

 

タバコを携帯灰皿で消しながら、視界に映った異常を確認する。

 

レッドの後ろから誰かが走ってきている。もう夜は遅いし、こんな道路に用がある人物なんていないと思うんだけど。

 

「おい待てレッド!俺様を無視するなよ!……って、誰だアンタ」

 

「あらーグリーン少年まで来たのかー」

 

「俺は呼んでない……」

 

「おい、レッド!まさか俺とのバトル断って、この女に会いに来たってのか?……まさかそういう関係?!無口で無愛想なレッドが?!いや、無い無い」

 

さすがグリーン少年。レッド少年の分までよく喋るね。場の空気が持って私ありがたいよ。よーし、その勘違いを加速させるかー。

 

「そんな関係じゃない……」

 

「えーヤマブキシティでデートしたじゃん」

 

「デェェェェトォォ?!」

 

グリーン少年の声のトーンが上がる。もうダメ……この二人見てて楽しい。ところでテロ鎮圧ってデートに入るのかな。

 

「アンタ……」

 

レッド少年に睨みつけられて防御力下がったので止めます。ポケモンはこんな感じなのか。

 

「あははは冗談冗談。じゃあ、グリーン少年には初めまして。私はヒナノ。シンオウ地方から来たポケモントレーナーだよ」

 

「シンオウ地方……確か北の方だっけ?」

 

「そこの四天王だ」

 

「元だよー」

 

「?!……へぇ、そういう事か。おいレッド、俺に戦わせろよ」

 

「俺のバトルだ!」

 

あらあら、なんかこのままだとこの二人目の前でバトル始めそうなんだけど。それもポケモンバトルじゃなくて取っ組み合いの方ね。

 

こういうのが、私の為に争わないでってやつかなー。んー片方とだけバトルしても良いけど、どうせなら皆で楽しみたいよね。

 

そこで私、良い案浮かびました。

 

「じゃあさ、二人纏めてかかってきなよ。そっちそれぞれ二匹づつ。こっちは四匹での変則的なダブルバトル……どう?」

 

「約束が違っ!!」

 

「面白いじゃねぇか。レッド、お前は休んでていいぜ。俺一人で十分だ」

 

そうしてグリーンはボールを構える。レッドも納得はしていないものの、ボールを構える。

 

それはそうとグリーン少年、一人で十分だって?私の二匹相手に?

 

それはちょっと……傲慢じゃないかな。

 

「一人でも二人でもどうぞー。いやー久々に四天王の務めを果たすなー……トレーナーの伸びた鼻をへし折るっていう務めをさ。……では、良い悪夢を見ていってね」

 

私は左右の手からそれぞれボールを投擲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人でも二人でもどうぞー。いやー久々に四天王の務めを果たすなー」

 

約束が違う。この時まではそう思っていた。

 

だが、次のいつもとワントーン落ちた声で、そんな考えは吹き飛んでいった。

 

 

「トレーナーの伸びた鼻をへし折るっていう務めをさ」

 

 

背筋が凍った。この人が発する雰囲気が一気に変わった。

 

これだ。俺はこの人の本気と戦いたかった。横にグリーンがいるが関係無い。

 

「では、良い悪夢を見ていってね」

 

俺と、仲間達でこの悪夢を超えてやる!

 

 

 

こちらのポケモンは俺がピカチュウ、グリーンがピジョット。

 

対するのはブラッキーとサザンドラ。どちらもその実力を間近で見たポケモンだ。それが今敵対している。

 

「さぁピジョット!高く舞い上がれ!」

 

「ピカチュウ!ブラッキーにでんこうせっか」

 

ピジョットは高度を上げる。ピカチュウはボールから出てすぐに加速し、標的へと駆けていく。

 

「ブラッキー、サザンドラのてだすけに入って。サザンドラのサポートをしつつピジョットに警戒を」

 

ブラッキーがサザンドラの背に飛び乗る。そして上空のピジョットに意識を向けながら、サザンドラに力を上乗せしていく。

 

「サザンドラ、ピジョットは無視していいよ。接近するピカチュウにかえんほうしゃ、りゅうのはどう、だいちのちから」

 

サザンドラの三つの双眸が、ピカチュウに向いた。

 

そして左の頭からは炎が、右の頭からは衝撃波が同時に襲いかかる。さらにピカチュウの足元が小刻みに揺れる。

 

「攻撃中止!よけろ、ピカチュウ!」

 

でんこうせっかの速度を回避に使う。飛び退いた直後に大地からはエネルギーが吹き上がる。炎と衝撃波で回避出来る道筋は少なかったが、ピカチュウは見事に攻撃を躱しきった。

 

しかし、その攻撃の跡を見て唾を飲む。これまでに見たかえんほうしゃなどとは威力が違う。サザンドラ自体の強さもあるのだろうが、ブラッキーのてだすけの恩恵もあるのだろう。

 

「ピジョット!エアスラッシュ!」

 

グリーンはサザンドラの攻撃の隙を逃さず、上空のピジョットに攻撃を指示した。サザンドラはピジョットを見ていない。避ける事はできないはずだ。

 

「ブラッキー任せるよ!」

 

しかし、風の刃はサザンドラの前でひかりのかべに阻まれた。サザンドラの背中に乗るブラッキーが防御したのか。

 

あのブラッキーはシルフカンパニーの時も、彼女や彼女のポケモン達への攻撃を防いでいた。

 

 

サザンドラに攻撃を仕掛けるにはブラッキーをどうにかしなければならない。ただブラッキーに攻撃するにはサザンドラから落とさなければならない。

 

ダブルバトルでのこの二匹の組み合わせは、敵対する俺から見て空中要塞に挑む様だった。

 




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