エア・ギア【RTA風】   作:八知代

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5話 久しぶりだなウンコクズ

「ワリぃな、ウンコクズ」

 

 

〉〉トラックに轢かれそうになっていた男性を助けたら、罵倒かお礼か分からない言葉をかけられた。リカとは大違いだなと思った。

 

 

 

 あっというまに季節が変わったゲームの実況、はーじまーるよー。

 

 

 野山野家で居候をはじめて、はや数ヶ月ほど。季節は夏から秋になりました。

 

 ここまでのプレイ内容?大したことはしてませんので編集でカットしてます。

 あぁ、でも新聞配達の給料が入ってきたことにより大分生活は潤ってきましたね。具体的に言うと食卓にお肉が増えました(歓喜)

 

 

 さて、現在の状況を軽く説明をば。

 スシ君は夜の自由行動で、いつも通りヒュンヒュンピョンピョンしていたのですね。

 そしたらいつぞやのリカ姉のようにトラックに轢かれそうになっていた男性を発見、即座に救出。

 

 助けた相手は、お口ワルワル『鰐島海人(わにじまかいと)』君でした!以上、説明終わり!

 

 うーん別に助けなくても良かったなあ、これ。こいつ自力でどうにかできちゃうし。

 

 

〉〉口の悪さに驚いたが、気を取り直して男性に怪我の有無を尋ねる。

 

 

「あぁ、問題ねェ……にしてもナンだってこんな時間にクソガキが一人でうろついてんだァ?」

 

 

〉〉……口が悪い。長髪の男性は立ち上がり、壊れたスケボーを拾っていた。体内時計的には……そろそろ帰る時間だ。特に問題は無さそうだから帰ろうか。

 

 

「おい、クソガキ……おい、聞いてんのかァ?テメェだよオイこら聞けよクソガキ……何関係ありませんってェ顔で帰ろうとしてんだ!テメェに言ってんだよクソガキィ!」

 

 

〉〉足を止めて振り返る。もしかして此方に言っているのだろうか?

 

 

「そうだ。オマエそのA.Tをどこで「海人クンッ!」……柿谷ァ」

 

 

 あ、裏切り者感を出すだけ出しといて実は海人を凄い慕ってるだけの聖人ホモ谷くんだ(悪気なし)

 

 

〉〉バイクからアフロの男性──柿谷が降り、長髪の男性──海人に話しかける。二人して何か話してるから手持ち無沙汰になってしまった。やはり帰ろうか……いや、もう少し待っておこう。

 

 

 まあ、ヤンキーにあんな呼び止められ方したら流石に、ね?

 

 

〉〉柿谷が海人に何か紙を渡している。どうやら英語で書いてあるらしく、海人が読み上げるようだ。

 

 

「『木々は腕をからめ天へと伸ばす……群がる葉々は光を喰らい 森の闇をいよいよ深くする 狩人は気付かない 闇に潜むケダモノ達の双眸も牙も 今日は狩人が狩られる夜 ここは眠りの森』……?どういう意味だァコレ」

 

「さァ?あんまりにも詩的表現が強すぎてナンもわかんねェスネ……つーか海人クン、このガキ知り合いッスカ?」

 

「あー、そうだったぜ。続きだガキ、そのA.Tはどこで手に入れた?」

 

 

〉〉海人はA.Tについて訊きたかったらしい。どこで手に入れたも何も最初から自分のものであると主張する。

 

 

「あぁん?テメェどっかのボンボンかよ」

 

 

 まあ、この時期ようやく一般人にA.Tが知られ始めたくらいですからね。すげー高いからお坊ちゃんが親に買ってもらった、と思われても仕方ないね。

 

 

〉〉首を横に振る。残念ながら金に余裕のある家ではないことを伝える。

 

 

「……テメェもしかして「海人ぉ!」うぉっ!」

 

 

〉〉話の途中で海人が横から飛んできた何かに吹っ飛ばされた。

 

 

「おっ、お前!なんで」

 

「海人が全然帰って来ないから迎えに来てやったんだぜ。感謝しな!」

 

 

〉〉飛んできたのは女性だった……見たことある──ガゼル?そう呼び掛けると、女性は此方を振り返る。

 

 

「ん、おぉ!シイナじゃねェか!元気にしてたかよ、ウンコクズ!」

 

 

 おおっとこれはこれは。鬼畜ショタ双子に狙われる運命にある『Virgin Blade(はじまりの翼)』ことガゼルさんじゃないですか、ちーす(煽り)

 

 

〉〉またウンコクズ……。左腕で此方と肩を組み、空いた右手で此方の頭をガシガシと撫でまわすガゼルの言葉遣いに言葉がでない。

 

 

「ガゼルサンの知り合いッスカ?」

 

「おう、そうだぜ!なぁシイナ、おまえ今何してんだ?どこに住んでるんだよ?」

 

 

〉〉矢継ぎ早に質問される。むしろ此方からも聞きたいことがあるのだが……後5分で帰らないとリカに怒られる。肩に回されたガゼルの腕から逃れ、帰る旨を伝える。

 

 

「じゃー明日の夜、あそこの天辺で待ち合わせな!」

 

 

〉〉ガゼルが指差したのは東京タワー。分かった、と短く伝えてそのまま空に舞う……早く帰らねば。

 

 

 明日の予定が出来てしまいました……どうでも良いけどよほどリカ姉に怒られたくないんですね。スシ君尋常じゃないスピードがでてますよ(呆れ)

 

 しかも本当に5分で間に合うのかよ(驚愕) 

 ギリギリだったため多少リカ姉にお小言をもらいますが、外出禁止を言い渡される程ではありませんでしたね。

 

 

 (倍速なう)

 

 

 はい、次の日の夜ですね。なんか凄いリカ姉に見られてるけど、気にせずガゼルとの待ち合わせ場所に行きましょう。

 

 

「シイナ!遅いぞ!俺達ここで2時間も待ってたんだぜェ?」

 

 

〉〉指定の場所にはガゼルと煙草を吸う海人がいた。

 

 

「そういえば昨日は海人の危ないところを助けてくれたんだってな。ありがとよ」

 

「……別に俺だけでもどーにでもなったけどな」

 

「馬鹿、こういう時くれェ素直にお礼をいえよな……ワリぃなシイナ、海人は素直じゃねーだけで悪いヤツじゃ無いんだぜ」

 

 

〉〉別に気にしていないし、一応お礼なら昨日言われたことを伝える。それよりも彼のことを紹介して欲しいのだが。

 

 

「あぁ、わかった。アイツは鰐島海人、今俺が一緒に住んでる相手だ。海人!昨日も説明したけど、コイツは栖原椎名。俺の昔馴染みだぜ」

 

 

〉〉鰐島海人に向けて軽く頭を下げる。彼も此方に軽く右手を上げて応えてくれた。

 

 

「で、シイナ昨日話せなかったこと教えろよ」

 

 

〉〉興味津々といった調子で聞いてくるガゼル。今日は時間がある。足場の端に座わり、足をぶらぶらさせる。ガゼルも同じように横に座る。鰐島海人は少し後ろの方で相変わらず煙草を吸っていた。

 

 

 ……ていうかこの人なんでいるんですかね?え、もしかして束縛強い系?……よくよく考えたらコイツ子供(アキアギ)を檻の中入れるような人だった(絶望)

 

 

〉〉大都会の夜景を眺めながら、今日までの生活をガゼルに聞かせる。彼女は「ヘェー」「それでそれで?」と適度に相槌をいれてくれる。さらにガゼルは此方と同じ塔の出身。雀を見つけたとか綺麗な花が咲いていたとか雨が降ったとかハンバーグがおいしかったとか……そんな外に出てからの些細な発見や幸せに共感してくれるため、余計にいろいろ話してしまった。

 

 

「なんか兄貴っていうよりも親父って感じだな、シイナ」

 

 

〉〉カラカラと笑いながらガゼルは言う。嬉しいような嬉しくないような……結局言葉にならず微妙な表情を作るしかなかった。

 

 

「でもまァ、変わったなおまえ。あそこに居たときは強くなることしか頭に無いようなヤツだったのに、今じゃ一家の大黒柱ッてか?」

 

 

〉〉ガゼルの右手が此方の頭を撫でる。その手つきは昨日よりも大分優しいものだった。昨日といい、今といい……子供扱いしてないか?

 

 

「そりゃ、俺の方が年上だからな。ガキは黙って撫でられてりゃーいいんだよ」

 

 

〉〉一つ二つ程度じゃないか……というか、後ろからの視線が痛い。ガゼルの腕を頭から退けるも、再び戻ってくる。視線の鋭さがさらに増した。二、三回同じことを繰り返し、結局此方が折れた。

 

 

「……正直心配だったんだぜ。あそこでる前にシムカに手を引かれて来た時のおまえの顔、そりゃあもうヒッデェもんだったからな」

 

 

〉〉あぁ、あの時は……そうだったかもしれない。

 

 

「あの時何があったかは、俺はよく知らねーけど」

 

 

〉〉ガゼルと目が合う。

 

 

「おまえ、今幸せか?」

 

 

〉〉その言葉にすぐさま返答することができなかった。目蓋を閉じる。今でも先生──母さんを救えなかった時のことは鮮明に覚えている……あの時感じた後悔や虚無感といったものも一緒に。

 

 

 (目の前でママンが死んだら)そらそうなるよ。

 

 

〉〉そんな感情を奥底に抱えていても、この数ヶ月は確かに充実していた。楽しかった。それはきっとあの家族のおかげなのだろう。ゆっくり目蓋を開けると、再びガゼルの視線と交わる。

 

 

「答え、出たみたいだなァ」

 

 

〉〉あぁ、俺はいま……幸せだよ。

 

 

「おう!おまえの顔見りゃわかるぜ!」

 

 

〉〉ニカッと笑うガゼル。俺もいま、うまく笑えているのだろうか?

 

 

「じゃー今度は俺の話に付き合ってもらおうかァ?」

 

 

〉〉当然だ。むしろ何があったらそんな変な言葉遣いになってしまうのか気になっていた、と軽口をたたく。

 

 

「あぁん?おまえ海人を馬鹿にしてんのか?いいぜェ、とことん海人の良さを語ってやるヨ!」

 

「いや、俺を巻き込んでんじゃねーゾォ!自分の話をしやがれガゼル!」

 

 

〉〉後ろから鰐島海人が割って入ってきた。まだ時間はある。楽しい夜になりそうだ。

 

 


 

 

「お帰りなさい」

 

「ただいま。わざわざ玄関で待ってたのか?」

 

「……えぇ、まあ」

 

 

 昨日、いつもと様子が違ったから心配して待ってました……なんて流石に恥ずかしくて言えない。

 

 

「そうか、ありがとう」

 

 

 ぴくっ

 

 いつもよりやわらかい微笑みを浮かべるシイナに思わず反応してしまう。

 

 

「えっと……何か良いことあったの?」

 

「あぁ。昔馴染みと会ってたんだ。以前といろいろ変わってたけど……元気な姿が見れて良かった」

 

「そっか」

 

 

 彼が嬉しそうに語るものだから、私も思わず笑顔になる。

 シイナはA.Tを脱いで、部屋に持っていこうと私の横を通り抜け───

 

 ふわっ

 

 ───る前に腕をつかむ。

 

 

「え、なに?」

 

「煙草臭い。今すぐお風呂に行ってきて」

 

「いや、コレ部屋においたら「い ま す ぐ!A.Tは私が部屋に持っていくから!」は、はい……」

 

 

 「煙草は俺じゃなくて別の人がっ」と弁解する彼をお風呂場に叩き込む。あなたがそんなことする人じゃないことくらい分かってます!

 

 A.Tを2階の彼の部屋に持っていき、ついでに着替えもタンスから取り出す。それをもって1階へ戻り、扉を開けて脱衣場にはいる。

 

 

「着替え、ここに置いとくわよ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

 扉の向こう、シャワーの音と共にシイナの声が聞こえた。

 

 そのまま出ていこうとすると、籠の中に入った彼の脱いだ服が見えた。

 サッと手に取る。やっぱり煙草くさい。

 

 とりあえず、洗濯機の中に放り込んでおいた。

 

 

 




↓以下、没案。

『そのまま出ていこうとすると、籠の中に入った彼の脱いだ服が見えた。
 サッと手に取る。やっぱりにおう。彼の汗と煙草のにおいに隠れるように混じった────。

 とりあえず、気に食わないから洗濯機の中に放り込んでおいた。』


 ……無いな。リカ姉は純愛枠に決まってんだろいい加減にしろよ!!


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