エア・ギア【RTA風】   作:八知代

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 (前回のあらすじ)北海道までいってシムカにねっとり調律してもらったゾ!必殺技(ブラックホール)が使えるようになったゾ!我が家に帰ってきたら差出人不明(ラスボス)からの贈り物が!


 生存報告もかねての投稿。感想とかメッセージ見てやる気出しました。ぼちーぼち続けます。


11話 棘の玉璽

〉〉どうしてガゼルのA.Tがリカの手にあるのか。理解ができなかった。

 

 

 家を留守にしていた間に、爆弾並みに取り扱いに困るブツが届いていたゲームの実況はーじめーるよー。

 

 これは近くにストーカー(仮)がいますね、間違いない。

 

 スシ君とリカ姉、どっちを監視しているかは知りませんが、どっちにしたって有罪(ギルティ)です。

 

 スシ君の警戒レベルがグンッと上がりました。これならストーカー(確定)も容易には近づけないでしょう……二度と近づくんじゃねぇ!ペッペッ

 

 

 ていうかなんでコレがこんなところにあるんでしょうね?原作だと今頃は一般暴風族(モブ・ストームライダー)たちのもとに流れているはずなんですけど。

 

 

「シイナ、大丈夫?」

 

 

 おっと。スシ君は故人(ガゼル)の玉璽をみてポロポロ泣いてしまっているので、リカ姉に心配されてますね。

 

 スシ君はなにかにつけて泣いてない?気のせい?

 

 

 さっさと涙を拭きます。ついでにリカ姉にA.T借りてもっとよく観察させて貰いましょう。

 

 うーん、やっぱり大部分のパーツは新しいものに交換されていますが、このホイールは間違いなく棘の玉璽ですね。

 

 

 で、棘の玉璽(コレ)どうしましょうか。

 

 

 ブッ壊して捨てます?

 

 

 いやね、すでに「ルーン詩」はとられてる(?)でしょうから、コレを壊したところでラスボスの野望を止められるわけじゃありません。

 でもなんかほら、アイツの掌で踊らされてるとか思うと気分悪いじゃないですか。なので八つ当たりしてやろうかなーと思わないでもないです(過激派)

 

 

 …………いや、流石にやめておいてあげましょう。未だにガゼルが死んだことへの傷が癒えていないスシ君に、遺品をブッ壊させるなんて鬼畜外道なことをさせたら精神(メンタル)がブッ壊れてしまいそうですから(激ウマギャグ)

 

 いくらステータスを強くしたところで、精神がゴミカスでしたら勝てる戦も勝てませんわ。

 

 とりあえず、現役東大生の鰐島海人くんに渡す方向性でいきましょう。だってほら旦那(仮)ですし。

 

 

「ねぇ、一つお願いがあるの」

 

 

 おやおや、なんでしょうか?

 

 

「返す前に……一緒に走ってくれない?」

 

 

 デートのお誘いですね、わかります(曇りなき眼)

 

 

 

 

 

 

「ねぇ!どう?うまい!?」

 

 

 はー、上手いですねー(棒) 3日間、それも少ない練習時間かつ独学でコレですか……スシ君より才能豊かなのでは?(嫉妬)

 

 

 はい、現在我々は夜の世界を駆け抜けております。

 

 流石はガゼルのバックアップ(ブレイン・チャージャー)、普通に上手です。念のため人や障害物の少ないところを選んで先導していましたが、そんな気遣いは無用だったようですね。

 

 

 ん?ブレイン・チャージャーとは何ぞや、ですって?困りましたね、私もあまり詳しくは無いのですが……。

 

 『脳基移植者(ブレイン・チャージャー)』とは「空の王」(ラスボスの事に非ず)とか存在が不確定な輩が持っていたという「飛ぶ心」を「脳基移植(ブレイン・チャージ)」……つまり脳にインストールされた者たちのことを言うらしいです。「重力子(グラビティ・チルドレン)」とは違って瞳には「斜め十字の眼十輝(オーバークロス・トゥインクル・アイ)」が浮かんでいます。

 

 因みに最初の脳基移植者はガゼルで、そのバックアップとして存在しているのが野山野リカなんですよ。だからリカ姉はガゼルと同じ“荊棘の道(ソニア・ロード)”を走る素質があり、原作でも棘の玉璽を使いこなしていたんですね。

 

 まあ、流石にいまはただ走っているだけで“道”とかの領域にはありませんが。

 

 

 はぁ、横文字多くて疲れました。

 

 

「練習して壁も少しなら走れるようになったのよ、見て!」

 

 

 それはともかく、珍しくはしゃぐリカ姉が普通に可愛いですね。

 

 なので少しだけ意地悪をして差し上げましょう(ニッコリ)

 

 

「え、なに?」 

 

 

 急にスシ君に手を握られて困惑してますね。無視して坂を駆け降ります。

 

 

「し、シイナ?速くない?ねぇ!ちょっと速くないっ!?」

 

 

 おっ、そうだな。大丈夫大丈夫、まかせとけって~。

 

 

「カーブ!シイナ、前!前!カーブだってばっ!!」

 

 

 はい、そのカーブに向かって全速力で突っ込んで行って、ガードレール手前で力強く跳躍。

 

 

 I can fl「キャーーーーーーッッ!!!」うるせぇ!!

 

 

〉〉リカと繋いでいる左手が痛い。離れないように全力で握っているようだ。

 

 

 えぇ、えぇ。そうでしょう。初心者がこの大ジャンプは恐怖でしょうとも!

 

 しかしほら、もっとよく感じるのです。何者にも縛られない自由を!風を!

 

 

「飛ん、でる……」

 

 

 この感覚にはリカ姉も思わずニッコリ。いいゾ~コレ。

 

 

「本当に気持ちいい、んだけ、ど……落ちてない?落ちてるわよね、これ!?」

 

 

 お、正気に戻りましたね。そりゃあ落ちますとも、重力ありますから。

 

 リカ姉の顔が引きつってます。おじさんはねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子のそういう顔が大好きなんだよ!(外道)

 

 

 ……またクソデカボイスで叫ばれても困るので、虐めるのはここまでにしましょう。

 

 風を掴んで三回ほど空中を跳躍し、着地しやすい場所へ誘導。体を支えながらリカ姉の着地を手助けしてあげましょう。工事完了です。

 

 

 もう少しだけ時間がありそうですね。デート(仮)の締めはあそこにしましょう。

 

 

 

 

〉〉リカに見せたいところで真っ先に思い付いたのが此処だった。ガゼルが死んでからは近寄ることもなかったが……たぶん、此処が一番街が綺麗に見える場所だから。共有したいと思ったんだ。

 

 

 はい、東京タワーにつきました。今いるのは最上階である展望デッキのさらに上ですね(立ち入り禁止区域)

 

 ほらよく見るのです。眼下に輝く街の光……そうまるで夜空に煌めく星々のような美しさ!(B級ポエム)

 

 

 この光景にはリカ姉も思わずうっとり。いいゾ~コレ。

 

 

 夜景にあてられたのか、珍しくリカ姉がスシ君にお願いごとがあるそうです。要約すると、楽しかったからこれからも一緒に走りたいゾッて話ですね。

 

 

〉〉自分から願いを言うことはほとんどないリカの望みだが……どうする?

 

 

 んーどうしましょうかね?いくらスシ君が新聞配達頑張っているからってA.Tを新しく買えるほど豊かではありません。

 

 まだA.T黎明期とも呼べるこの時代。出回ってるA.Tの数が少ない上に、とにかく値段が高い。マジで高いです。初心者用カスタムが50万とか安い方です。

 そんなんだから親からA.T買って貰ったボンボンを狙うヤンキーとか転売ヤーが後を絶たないんですよ。

 

 一から組み上げようにも、まだショップもありませんのでパーツを探すのも困難です。

 

 そもそもライダーの実力とA.Tの性能は比例していなければいけないといわれます。

 リカ姉は脳基移植者であるため実力はもちろん一級品。その辺に出回っているA.Tでは明らかに釣り合いません。実力が発揮できないだけならともかく、A.Tと上手く噛み合わずに怪我してしまう可能性も否定できませんね。

 

 翻ってリカ姉の足元を見てみましょう。リカ姉に合わせた調律が成されていないため完璧とは言いがたいですが、そこにあるのは確かに一級品のA.T(棘の玉璽)

 惜しむらくはコレが差出人不明(ラスボス)からの贈り物だということでしょうか。

 

 

 うーん、どうしましょう?明らかなマイナス要素がそこしか思い浮かびませんね。

 といってもプラス要素もこれと言ってありませんが。あえていうならリカ姉からの好感度がいくらか上がるくらいでしょうけど、別に一緒に暮らしていけるくらいには高いからもう十分なんですよねぇ。

 

 まあ、どっちにしたってリカ姉に棘の玉璽は渡るんですから遅いか早いかの違いでしょう。だったら今のうちにちゃちゃっと強くなってもらって旧森結成前にステータス上げを手伝ってもらいましょうかね。

 

 うん、その方がいい気がしてきました!決定!(がばがば)

 

 

 


 

 

 

「今日ね、凄く楽しかった。一人で練習してたときも楽しかったけど、シイナと一緒の方がもっと楽しかったの。貴方の見ている景色、感じている風、聴いている音、いろんなものを知れて嬉しかった」

 

「そうか」

 

「……あーあ、もっとたくさん一緒に走りたかったな」

 

 

 シイナは一瞬驚いて、直ぐに難しい顔をして考え始めた。

 

 難しいことくらい分かってる。これは借り物。新品は手がでないほどに高い。

 ちょっと言いたかっただけ。

 

 

 困らせてごめんね?

 

 

 さっきのは冗談だったって笑って言おう。そう決心して改めてシイナに目を向ける。

 目があった彼はいたずらっ子のように小さく笑ってた。いつもは大人びた彼には珍しく、年相応の少年に見えた。

 

 彼はポケットから携帯を取り出しどこかに電話を掛ける。

 

 

「もしもし。……用があるから掛けたんだよ。ガゼルの玉璽が見つかった。…………そう、詳しくは今度話す。それでだ、コレ貰って良いか?使い手の人柄は俺が保証する。…………あぁもちろん。じゃあ、また」

 

 

 電話を切る。

 

 

「というわけでソレ、貰ってしまおうか」

 

 

 さらっと言われた。

 

 

「え?というわけでって、え?」

 

「海人からは犯罪に使わなければ良いって許可がでた。ガゼルだって相棒が後生大事にしまわれてるよりも、リカと一緒に飛ぶほうが喜ぶに決まってる」

 

 

 そういうものなのだろうか?

 

 今一理解が追い付かない。でももし本当に使わせてもらえるなら、それはとても有り難いことだと思う。

 

 

「まあ、わからないこともある。だからといってその事ばかり考えたって答えはでないし、無駄に疲れるだけだからやめるよ……とりあえず、これだけは覚えておいてほしい」

 

 

 彼はそう言うと、私から離れて足場の端の方に向けて移動する。一番端、ほんの少し重心をずらしただけで虚空に身を投げ出すことになるその位置で私の方に振り返る。

 

 

「何があっても、まもるよ」

 

「うん。信じてる」

 

 

 これには即答できた。

 

 私には貴方が何を危惧しているかはわからない。貴方がはぐらかして語るときは、たぶん聞いても答えてはくれないから。

 

 それでも。初めて会ったあの日から。

 

 ずっと信じてるよ、シイナ。

 

 

「そろそろ帰るか……リカ、俺を信じて此処から一緒に飛べるか?」

 

 

 どこかこちらを挑発するような態度で左手を差し出してきた。

 

 250m越えの紐無しバンジーかぁ……

 

 

「エスコート、よろしくね」

 

 

 彼の差し出した左手に右手を重ねる。

 

 ……なぜ提案した彼の方が驚いた顔をしているのか。さきほどの信じているという言葉を軽くみられているようで少しムッとする。

 重ねた手を強く握ることで、撤回の意思がないことを示す。

 

 

「……まかせろ」

 

 

 シイナからも握り返してもらえた。

 

 そのまま二人揃って一歩踏み出した。

 

 


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