エア・ギア【RTA風】   作:八知代

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 そろそろ七夕か……この小説が埋没するくらいエア・ギア小説増えろふえろふえろ。

 みんなも試しに一話書いてみません??さきっちょだけでいいから(おめめグルグル)


15話 道案内

 

 ベンケイと仮面暴風族(シイナ)を乗せたバイクが京都市内を走り抜ける。道案内を買って出るだけあり、ベンケイは抜け道などを駆使してほとんど止まることなく目的地へ向かう。

 

 

「そろそろ言われた場所に着くけど、何しに行くんどすか?」

 

「仕事だ」

 

「仮面ライダーのお仕事ねぇ」

 

 

 怪人とでも戦うのか、なんて冗談混じりにベンケイは思考する。後ろに乗っている青年が、無駄にゴテゴテした怪人と対峙して『変身!』なんてポーズをとっている様を思い浮かべ、何か似合わないなぁなんて勝手な感想を抱いていた。

 

 そうこうしているうちに、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。

 

 

「ベンケイ、ここまでで大丈夫だ。あとは自分で行く」

 

「自分で行く言うたって……危ない!」

 

 

 ベンケイが大きな声をだしたのも無理はない。後ろに座っていた青年がふわりと走行中のバイクから飛び降りたのだ。

 

 慌ててベンケイはブレーキをかけて後ろを振り返るが、そこにいるはずの青年はそこにはいなかった。

 どこに行った?と疑問がうかぶのと同時に、ベンケイは自分を追い越していく突風に襲われた。思わず目を伏せるが、不自然な影が自分の頭上を通っていったのを感じてすぐさま上に目を向ける。

 

 

「あっ……」

 

 

 ベンケイは目を奪われた。自分の頭上、数メートル上空を悠然と飛翔するソレは、青空と逆光もあいまって何だかとても神々しいものに見えたのだ。

 

 そして、その飛翔物体が先程まで一緒にいた仮面の青年であることを直感的に感じ取っていた。声をかけるよりも先にベンケイは青年に向かって右手を伸ばしたが、青年はベンケイの方を見向きもしない。それどころか何もないはずの空間を蹴ってどんどん上へ上へ、先へ先へと進んでいく。

 

 ベンケイはそれを呆然と見ていることしか出来なかった。

 

 

「そんなんずっこいわぁ」

 

 

 何も掴むことが出来ずに真っ直ぐ伸ばされた右手。その手は、遠ざかっていく青年を捕まえるように重ねられ、強く強く握られた。

 

 

「逃がさへん」

 

 

 そう呟くベンケイの瞳は、まるで獲物を見つけた豹のように鋭く光っていた。

 

 

 

 

 

 

 ベンケイが現場に到着した時にみた光景は、仮面暴風族が数名の警察官に敬礼をされているというものだった。

 少し視線を移すと、地面に伸びている男を二人がかりでパトカーに乗せようとしている警察官たちがいた。よくみると意識を失っている裸足の男の手首には手錠がしてある。つまり、あの男を捕まえたのはこの警察官たちではなく、そこにいる仮面暴風族なのだろうとベンケイは推測した。

 

 いつのまにか仮面暴風族は、ロングコートとハットを身につけた男性と何か話していた。この距離ではハッキリと会話の内容が聞こえないので、ベンケイは歩いて距離を詰めることにした。

 

 青年が男性に頭を軽く下げたり、男性が青年のズボンのポケットから飛び出ていた観光雑誌を取り上げたりしている間に会話が聞こえるようになる。

 

 

「とにかく、場所がわからないからと現場に遅れるのは論外だ。これ以降は自由行動はなし。俺たちと行動しろ、わかったな?」

 

「……わかり「ちょい待ちや」……ベンケイ」

 

 

 思わず割り込んでしまったが……問題ない。聞き取れた部分からしか判断できないが、このままでは青年はこの男性と一緒に行ってしまうのだろう。

 

 それでは駄目なのだ。

 

 ここで別れてしまえば、連絡先も顔も名前も一切知らないこの仮面の青年に再び会うことは困難になるだろう。困る、非常に困る。ベンケイは青年が空を翔ける姿に魅せられ、憧れたのだ。

 

 あの飛翔の方法を教えてもらわない限り、ベンケイは夜も眠れないだろうとわりと本気で考えていた。

 

 

 急に会話に口を挟んできたベンケイの方へ二人は顔を向ける。

 

 

「誰だこのお嬢さんは」

 

「あぁ、彼女は「さっきこの人に危ないところを助けられましてなぁ。お礼にデートする約束なんどす」おいっ」

 

 

 ベンケイは青年の左腕を少し強引に抱きしめる。ベンケイの突然の行動に青年は短く抗議するも、本人はどこ吹く風。むしろ腕に力を込めることによって、絶対に逃がさないという意思表示をする。

 

 

「観光じゃなくてナンパなんてしてたのか。あぁ、だから一人で行動したいって……」

 

「違いますヤスさん聞いてください」

 

 

 仮面のせいで表情は見えないが、雰囲気から焦って弁明しているのが分かる。それが何となく面白くて小さく笑ってしまう。

 自分が笑われているのに気がついた青年は、ベンケイの方に無言で顔を向ける。これは『お前のせいなんだぞ』と伝えたいのだろうか?勝手な想像だがそんなに間違っていない気がする。ベンケイは一層面白くなってしまった。その事に気付いたのだろうか、仮面からの圧が強まった気がする。

 

 

「くっ、ふふっ。やっぱり愉快な人やわぁ」

 

「お前なぁ……」

 

「なんだお前たち、仲良いな」

 

 

 そんなやり取りを眺めていた男性──ヤスはどこか呆れたように言う。

 

 

「でも悪いなお嬢さん。そいつは今、仕事の真っ最中なんだ。デートは諦めてくれ」

 

「あぁ、その事なんやけど一つええどすか」

 

 

 

 

 

 

「……なんでそうなる」

 

「なにいっとるん。ほら、次はこっちですよって」

 

 

 そう言って先導するベンケイの後を仮面暴風族は渋々付いていく。

 

 そう、ベンケイは青年と行動を共にする権利をもぎ取ったのだ。

 

 正確に言えば、ベンケイが青年を道案内する旨をヤスに申し出たが、ヤスはそれを却下。むしろ平日にも関わらず制服でいることに対して言及したところ、旗色が悪いと感じたベンケイは青年の手をとってその場から逃走したのだ。

 

 つまり、彼女は物理的に権利(仮面暴風族)をもぎ取ったのである……ちなみにバイクは近くの駐輪場に置きっぱなしになっている。

 

 その後、ベンケイに連れ去られるがままだった青年がヤスに電話で自身の無事を報告し、そのまま一緒に行動していいと許可がでたのだ。

 仕事をちゃんとしてくれるならもう何でもいい、というヤスのわりと投げやりな思考の結果である。

 

 

「ええやない。アンタ自由に観光したかったんやろ。何がそんなに不満なんどすか?」

 

「まぁ確かに観光はしたいし、ヤスさん達と行動してたら観光は出来なかっただろうけど。だからと言ってベンケイに案内されるのも違うんだが」

 

「我が儘言うたらあきません。というかこんな美人がガイドしとるんやから、もっと有り難がらんとバチが当たりますよって」

 

「……どーもありがとーございまーす」

 

 

 青年の投げやりな返答を聞いて、ベンケイは微笑む。

 

 

「何か笑うとこあったか?」

 

「不貞腐れて子供っぽいなぁ、思ただけどす」

 

「もしかして馬鹿にしてるのか?」

 

「まさか。かわいらしいと褒めとります」

 

「はぁ、もう何でもいいから金閣寺に連れてってくれ」

 

 

 青年は少し疲れた様子で先を促した。

 

 

「そう言うたら何でそないに観光したいんどすか?いえ、もちろん名所は沢山あるんやけど、仕事そっちのけで見るほどでもあらへん思いますえ」

 

 

 ベンケイは目的地に向かいながら何気無く尋ねる。大して気になっていたわけではない。ちょっとした話題として振ってみただけである。

 

 

「えっと、リカ……家族が最近修学旅行で京都に行って、アレを見たコレを見たって嬉しそうに話してたから……少し、俺も見てみたいなって……思ったから。それだけだ」

 

 

 青年はフードを深く被り直しながら答える。

 

 羨ましいからか……いや、共通の話題作りだろうか。名前からして姉か妹だろうが、仲は良好のようだ。

 

 相変わらず仮面のせいで青年の表情はわからないが、かわいらしいなとベンケイは再び笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「金閣寺……あの金箔全部売ったらいくらになるんだろう」

 

「その仮面つけて夢のあらへんこと言わんでもろうてええ?なんか残念な感じがするさかい。ほら、お昼食べに行きますよって」

 

「呼び出しがあったら困るから、テイクアウト出来るもので頼む」

 

「りょーかい」

 

 

 金閣寺の観光を終えた二人は少し早めの昼食をとるために、近場にあった全国チェーンのハンバーガーの店に入り、テイクアウトする。

 

 店を出て、少し歩いた所にあるベンチに並んで座る。

 

 

「モグモグ……さて、ほんならいろいろ気になっとったこと聞かしてもらいましょか」

 

「ジュゴー……身バレするような情報はNGだ」

 

 

 少年は仮面を少しずらして飲み食いをする。やっぱり食事の最中でも外さないか、と横目で盗み見る。

 

 

「それも気になりはしますが、今聞きたいのはちゃいます。ライダーは空飛んどったやろう。アレは何?」

 

「あぁ、A.Tのことか」

 

「えあとれっく……聞いたことはありますな」

 

「細かく説明するのは面倒だ。ちょっと凄いインラインスケートくらいに思っておけばいい」

 

 

 青年はそう言ってリュックの中から自身のA.Tを取り出して、ベンケイに差し出す。ベンケイはハンバーガーを脇に置き、それを受けとった。

 

 白を基調としたそれは、実際に持ってみると見た目よりも軽く感じた。

 ざっと観察してみる。ホイール部分は幾らか摩耗してはいるものの、ブーツ部分は傷一つなく綺麗であった。

 

 

「そういえば、街中でコレ履いて走ってる人見たことありますわ。そやけどアンタみたいに翔んどった人はいてません。特別なのはコレ?それともライダー?」

 

「ジュゴゴゴー……ご馳走さまでした。そのA.Tは比較的安いやつに手を加えたものだから、そこまで特別なモノではないよ」

 

 

 青年はベンケイに左手を差し出す。ベンケイはA.Tを青年に返し、残ったハンバーガーとジュースを手に取った。

 

 

「まぁ、俺はその辺の奴らよりA.Tに触れている時間が長いってだけだから、特別とは言えないんじゃないかな。数年後には大して珍しいものでも無くなってるさ」

 

 

 青年は食べ終わったゴミを纏めながら、そう言う。

 

 

「……そんなもんどすか」

 

 

──Prrrr....Prrrr....Prrrr....Prrrr....Prrrr……

 

 

「はい、もしもし。……暴行事件からの逃走……三人。場所は……了解しました」

 

 

 青年はベンケイに顔を向ける。ベンケイも食べ終わったようで、自分と青年の分のゴミを袋にまとめて立ち上がり、近くに設置されていたゴミ箱に捨てていた。

 青年もベンチから立ち上がり、リュックを背負う。

 

 

「そう言えばバイクはどうした」

 

「置いてきました」

 

「お前、どうやって道案内する気だ」

 

 

 ベンケイはにっこりと笑って青年を指差す。青年はその意図が読めずに小さく首をかしげる。

 ベンケイは笑みを絶やすことなく、無言で指を差したままで青年に歩み寄る。

 

 

「おい、まさか」

 

 

 悪い予感に思わず青年は一歩後ずさる。その一歩さえも無かったことにするようにベンケイは踏み込んで、距離をほぼゼロにする。

 

 コツン、と人差し指を仮面の鼻の辺りにあてる。青年よりも幾らか身長が高いベンケイは、少し前屈みになることで青年の仮面と正面から向き合う。

 

 仮面がなければ互いの吐息が感じられる距離。端から見ればキスをしているようにも見えるその体勢で、ベンケイは笑う。数多の男性を虜にするような、妖艶な微笑。

 

 

「抱えとくれやす。もちろん、お姫様だっこで」

 

 

 仮面の向こうで青年がげんなりしたような気がした。

 




 あらためて、方言おかしかったら教えてください(切実)

 まだ続くんだ。許してクレメンス。
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