ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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お待たせしました。ライザー戦決着です。
今回は中盤以降、各種説明文が多くなりますがそこはご勘弁下さい。
前回のアンケート結果から、『キャラ救済しつつグラブルキャラ出演』と、がっつりクロスが予想以上に伸びたので、がっつりとはいかなくても月末シナリオイベント(所謂サイドストーリー)は本作メンバーをメインに据えてやろうと思います。


それでは本編をどうぞ。


日輪は時を超えて、ライザーとの決戦と決着

 時間はほんの少しだけ前に遡る。

ライザーの眷属らと決着がつく少し前、ライザーから『このゲームの最後は王同士の戦いで決着をつけよう』と魔力による伝達があり、リアスは敢えてそれを受けた。もちろんライザーの策略である事は分かっているが、一誠を始めとした自分の眷属が勇敢に戦い勝利した。ならば、次は自分の番だ。

 

しかし、おそらくライザーは持久戦に持ち込もうとするだろう。そうなればいくら修行したとはいえ、体力が万全の状態ではない今のリアスでは完全に滅しきる事は困難だ。

だからこそリアスは決闘を受けた。自分の体力ギリギリまで粘り、カナエに後を託す為に。それが思いを理解し、手助けしてくれた友へリアスが出来る事だ。

 

 

「カナエはアーシアや朱乃と一緒に焦らず来て頂戴。大丈夫、勝てはしなくても負けたりはしないわ」 

 

「わかったわ。ただ、無理はしちゃ駄目よ」

 

「ええ。それじゃ、一足早くライザーとぶつかってるわね」

 

 

そう言うとリアスは決戦の場、屋上へと魔方陣から転移した。同時に他の三人へ朱乃が連絡しようとするが……

 

 

「……?おかしいですわね。ノイズばかり聞こえますわ。壊れる程のダメージや衝撃は与えていないのに」

 

「私のもです。仮に朱乃さんのがダメになってても相手の女王との戦いで使えなくなった、という理由がつけられますけど……戦闘さえしてない私のまでそうなるのは変です」

 

「……アーシアちゃん、朱乃……覚悟しておいて。もしかしたらこのレーティングゲーム……ううん、ゲームが終わった後に一波乱あるかもしれないわ」

 

「「え?」」

 

 

何かを察したカナエは二人へ警戒を促した。直接現場に居なかった為、詳しくは知らないが根源的破滅招来体がパズズを送り込んで来た時はそのパズズ自身の能力で電波に異常が出た。今の状況はそれに似ている。もしかしたら何かが現れる前兆かもしれないのだ。

 

 

「何にせよ、とにかく今は三人に連絡取って新校舎の屋上に向かいましょ。アーシアちゃん、こういう時こそアレよ!」

 

 

人差し指を立てながらにっこり笑うカナエに少し緊張感が和らいだのかアーシアも笑顔で頷き、ある鬼道を発動する。

 

 

「黒白の羅!

 

 二十二の橋梁 六十六の冠帯

 

 足跡・遠雷・先鋒・回地

 

 夜伏・雲海・蒼い隊列

 

 太円に満ちて天を挺れ

 

 縛道の七十七!天挺空羅!!

 

 

天挺空羅(てんていくうら)。情報伝達用の鬼道で、所謂LINEみたいなものだが、電波などが不要かつ対象が霊圧かそれに準ずるものを持っていれば問題無く情報伝達が可能な縛道である。

アーシアはこの鬼道や一部の縛道を回道と共に修得していた。もっとも戦闘以外の補助に使用するものが大半なので、直接戦闘向けではないが。

 

 

「皆さん聞こえますか!?部長さんが一騎打ちを申し込まれて、今新校舎の屋上で戦ってますっ!!」

 

 

天挺空羅によって正しく一誠、裕斗、小猫へとアーシアのメッセージが伝えられる。

 

 

「私とカナエさん、朱乃さんもこれから向かいます!皆さんもそのままそちらへ向かって下さい!」

 

 

しっかりと言葉を伝え、アーシアは天挺空羅を解除する。やはり少々疲れたらしく、ふぅふぅと肩で息をしていた。

 

 

「お疲れ様、アーシアちゃん。問題無く発動出来てたわ」

 

「あ……ありがとうございますっ」

 

「では私達も向かいましょう。いよいよ大詰めですわ」

 

 

朱乃の言葉に二人も頷き、三人は部室を後にする。目指すは決戦の場、新校舎屋上。

 

 

 

 

 一方、校庭にてライザーの全眷属(そもそもレイヴェルをカウントしていない)を倒した三人はアーシアからのメッセージを聴き、屋上を見た。そこでは遠目でもリアスとライザーの姿が見え、そこはかとなくライザーが険しい表情をしている。

 

 

「おそらくは部長が滅びの魔力の本質を理解した事でライザーが攻めあぐねてるんだと思う。下手をすれば不死特性が『滅ぼされて』魔力が直撃しようものなら本気で命に関わるだろうしね」

 

「……でも、部長も私達と同じで万全じゃありません。きっと向こうもそれに気付いて持久戦に持ち込んで来ると思います」

 

 

裕斗と小猫が話している間、一誠は考えていた。今の自分は体力的にもほぼ限界だ。行ってもまともな戦力にはならないだろう。ならば、自分のすべき事は……自分のやりたい事は。

 

 

「なあ、二人とも……俺の我が儘、聞いてくれるか?」

 

「どうしたんだい、イッセー君」

 

「……変な事だったら怒りますよ」

 

 

そういう小猫だったが、一誠の目は真剣だ。

 

 

「木場、その剣に禁手化した俺と小猫ちゃんを乗せた状態で振れるか?屋上へ向けてだ」

 

「それは……大丈夫だけど」

 

「なら、頼む。そしたら俺が先に跳び上がるから、小猫ちゃんは俺の足を、えっと……瞬閧の状態で思いっきり殴り飛ばしてくれ。後は自力でライザーまで軌道修正するから」

 

「私はもう少し大丈夫ですけど、イッセー先輩の体力が持たないと思います」

 

 

ごもっともな意見だった。正直禁手化してすぐに解除されてしまうかもしれない。だが、どうしてもライザーは一発ぶん殴ってやりたい。だからこそ一誠は踏ん張る事にしたのだ。

 

 

「意地でも保たせるさ。師匠や先輩から言われたんだ。『根性は文句無しだ』って。だから……これがこのゲームで俺の最後の一撃だ。絶対にあの野郎にブチ込んでやる!!」

 

「……分かりました。今の言葉、守ってください」

 

「ああ!」

 

「これじゃあ僕も反対出来ないな……なら、全力を出し切るよ。このゲームに決着をつけるのはカナエ先輩だと思うから、ここで出し惜しみする必要はないからね」

 

 

小猫と裕斗の協力も得た事で、一誠は準備に入る。

 

 

『止めても無駄なんだな、相棒』

 

「悪いなドライグ。こればっかりはどうしてもやっておきたい事なんだよ」

 

『仕方ない。一発だけだ。だがどのみち解除後はしばらくまともに動けなくなるのを覚悟しておけよ』

 

「サンキュー」

 

 

元より承知の上だ。『攻撃』の倍化に特化させた一撃。それを叩き込めればいい。先程言った通り、ただ自分の我が儘を押し通す為に。

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

 

再び『赤龍帝の鎧』状態になるが、全身を激痛が襲う。骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げているがそれを持ち前の根性で耐え、既に準備を終えた裕斗の『騎士殺し』に飛び乗る。

 

 

「二人とも、用意はいいかい……!?」

 

「いつでも行けるぜ!」

 

「お願いします、裕斗先輩」

 

 

一誠と小猫の言葉を合図に裕斗は二人が乗った自身の大剣を屋上へと向けて思い切り振り抜いた。

 

 

「行けえぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

最初に一誠が屋上へと向けて跳び上がり、瞬閧・白猫仙式を発動した小猫がそれを追う形で跳び上がる。一誠が攻撃倍化特化状態で禁手化したのもあり、元々機動力で圧倒的に勝る小猫が追いつくのは容易。そして当初の予定通り、当てやすいようにと揃えられていた一誠の両足を、小猫は思い切り殴り飛ばした。

 

 

「イッセー先輩、行きます……よっ!!」

 

 

ドガァン!という音と共にさらなる痛みが来るが、ここまで来たのだから泣き言は言わない。言っていられない。本気でライザーを殴り飛ばすため、一誠は拳を握り締める。

 

 

 

 

 リアスとライザーの戦いは裕斗の予想通り、ライザーがリアスの持つ滅びの魔力を警戒して一歩踏み込めない状態だった。まさかリアスもここまで短期間で強くなっているなど思いもよらなかったのだ。今まで過保護気味に甘やかされてきたと聞いていたのに。

 

 

「ハァ……ハァ……くそっ!!」

 

「どうしたのライザー?まさか私はあまり変わっていないだろうとでも思ってたのかしら」

 

「いい気になるなよ、リアス……!まだまだこれからだァ!!」

 

 

ライザーは凄まじい熱量の炎を発生させ、リアスへと放つが炎へと滅びの魔力を放出し跡形も無く掻き消す。

 

 

「まただ……!リアス!一体何処でその技術を身に着けた!?たった十日間で辿り着くようなレベルではないハズだ!!」

 

「元々私の家系が持っていた魔力の認識を『改めた』だけなのだけれど、つい最近まで認識していたものを改めるのは容易じゃなかったわ。だって産まれてからずっとそう思って生きていたから。それを手助けしてくれたのが、私を鍛えてくれたお姉様よ」

 

「お……お姉様だと?まさか、ルミナシアか!?」

 

「ハズレ。教えられるとしたらお姉様は悪魔ではないし、人間や三大勢力でもないという事ね。それから……お姉様達の実力は魔王様達よりも上よ。しかもそのさらに上もいるらしいわ」

 

「な……そんなバカな話があってたまるか!!」

 

 

ライザーにとって信じがたい話ばかりだった。そして、それを見ているグレモリー家とフェニックス家にも。お姉様達の、そういうからには複数いる事になるが、ウルトラマンならいざ知らずそんな存在など聞いた事もない。一番可能性が有るのは『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』か『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』かと思ったが彼らが力を貸すとも考え難い。

……後者はモロにその関係者だったりするのだが。

 

 

「実際見てみないと納得出来ないのは私も同じだったわ。それどころか、会ったら会ったで下手したら三大勢力が総力を挙げてもたった一人倒せるか分からないのが少なくとも九人いるって言うし……想像以上に宇宙は広いわよ、ライザー」

 

「!?」

 

「何より結果が答えよ。貴方も聞いたでしょう?さっきのアナウンスで貴方の眷属がほぼ全滅したのを」

 

 

理解したくない現実がライザーを襲う。僧侶撃破のアナウンスは一人分……レイヴェルはライザー同様フェニックスの特性たる不死を有するし、戦おうとしないだろうからやられていないだろう。しかし逆に考えるならレイヴェル以外は皆倒されたと言う事。

 

 

「だが……眷属がやられようと王を、リアスを倒せれば俺の勝ちだ!!」

 

(……焦ってはいるけど踏み込んで来ない。体力が万全じゃないのもあるけど……まだ練度が足りてない。『不死』特性を滅ぼせている時間が短すぎる。こればっかりは仕方ないけれど……結局カナエ頼みになってしまうわね)

 

 

滅びの魔力の本質を理解したとはいえ、さすがに完璧に使いこなすには圧倒的に時間が足りなかった。故に体力的にも精神的にも消耗している。このままではジリ貧だろうし、下手すればカナエの到着前に自分が倒れてゲームエンドだ。しかし、そんな彼女の心配を吹き飛ばす者がやって来た。というか飛んで来た。

 

 

「焼き鳥野郎ォォォ!!」

 

「「!?」」

 

「俺のビッグバンはぁ!!もう止められないぜぇぇぇ!!」

 

 

ゴバギィィィッ!!!

 

 

「があああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

一誠はレイトが岩を粉々にした時に言った迷言を同じように叫びつつ、出来る限り『攻撃』の倍化をした拳をライザーの頬へブチ込む。ライザーは想定外の乱入者の一撃をモロに喰らい、思い切り吹っ飛ばされた。

 

 

「へへ……やったぜ……あの焼き鳥野郎にキツイのかませた……」

 

 

満足気に呟くと一誠の禁手化が解除され、力無く落下する。身体の限界はとっくに超えていたのだ。意識を失わないだけでも大したものと言える。

 

 

「イッセー!!」

 

 

慌ててリアスは一誠の元へ飛び、抱きかかえながら屋上に降りた。身体は熱いもののまるで力が入っていないのか、一誠はぐったりしている。

 

 

「すいません部長……俺はこれ以上戦えそうにないです……こうして意識を保ってるのも精一杯で……」

 

「謝らないで、イッセー。貴方は良くやってくれたわ。一人で約半分もの相手眷属を倒したのよ。後の事は心配せずに、今はゆっくり休んで頂戴」

 

 

リアスは優しく抱きしめながら、無理を押してまで駆けつけてくれた一誠を労った。ゲンから貰った道着も含めて目立った外傷は無いものの、身体の内側はボロボロかもしれない。アーシアが到着したら診てもらおうとリアスが考えていたら、ライザーが怒りで表情を歪めながら舞い戻って来る。

 

 

「下級悪魔の分際でこの俺を殴り飛ばすとは……燃え尽きる覚悟は出来てるんだろうなァ!?」

 

「ライザー……!」

 

 

満身創痍の一誠を庇うようにするリアスだが、その時ライザーに向かって一誠が口を開いた。

 

 

「下級だからなんだよ……人間だからなんだよ……てめえは部長の事を何だと思ってんだよ……!」

 

「何……!?」

 

「そりゃあ俺は下級だよ……しかも師匠や先輩に出会わなかったら、禁手化どころかまともにてめえの眷属と戦えたかも分からねえ半端な奴だ。だから貴族だとか血筋がどうとかなんて話で蚊帳の外にされたって仕方ないさ……けどな……!」

 

 

一誠は怒りを隠す事をせず、ライザーを睨みつけながら己の気持ちをぶつける。

 

 

「部長は真剣に悩んで……色々考えてるのに……てめえはヘラヘラ笑って見下して……!部長の事を単に貴族の娘で婚約者としか見ないで、部長の事をまるで考えてないだろうが!どんだけ部長やてめえの家が立派でもな!部長だって貴族以前に一人の女の子なんだよ!!」

 

「貴様……口を慎め!下級悪魔が誰に口を利いている!!」

 

「うるせえ!!下級とかなんだとか関係ねえ!たとえ周りが敵ばかりになったとしても……てめえに部長は渡さねえ!!」

 

「イッセー……」

 

 

ある意味下手なプロポーズなのかもしれないが、リアスには今の一誠が誰よりも輝いて見えた。戦う力は残っていなくても、決して闘志を失ってはいない。何より、自分を『一人の女の子』として見ていてくれた。 

 

 

「一丁前にほざいているがなぁ!そのザマで何が出来る!?リアスも目には見えんが疲労はあるだろう、二人纏めて再起不能に「させると思うのかしら?」して……!?」

 

 

ライザーだけでなくリアスと一誠も声のした方を向くと、そこにはカナエやアーシア、朱乃、裕斗、小猫まで勢揃いしていた。

 

 

「貴様はあの時の……!?」

 

「お久しぶりですね、性悪七面鳥さん

 

「誰が七面鳥だ!?俺はライザー・フェニックスだ!!」

 

 

カナエの呼び方にライザーは激昂するが、リアスや一誠を始めとしたアーシア以外のメンバーはあまりにナチュラルにカナエが言い切ったので笑いを堪えている。

 

 

「ごめんなさいね、リアス。貴女の言葉に甘えてたらゆっくり来すぎちゃったみたい」

 

「大丈夫よ。ハリベルお姉様の特訓と……イッセーが、来てくれたから」

 

「あらあら?もしかしてお邪魔だった?」

 

 

笑顔で会話する二人はいつもの雰囲気だ。どことなくカナエは嬉しそうだが。

 

 

「カナエ、来てくれて早々申し訳無いのだけれど……」

 

「言ったでしょう?リアス。元よりそのつもりで来たんだから、イッセー君や皆と休んでて。今まで休んでた分、今度は私が働かないと。アーシアちゃんは皆をお願いね」

 

「はい!部長さん、イッセーさん、疲労回復までは出来ないですけど……」

 

「サンキューな、アーシア……カナエさん、あの焼き鳥野郎のブチのめし……お願いします」

 

「ええ。イッセー君、せめて寝るのは私が勝つのを見届けてからにしてね。そしたらリアスの膝でも胸でも好きな所を枕にしなさいな」

 

「ちょ……ちょっとカナエ!?」

 

 

さすがにカナエの発言に真っ赤になるリアスだったが、しっかり一誠を抱きしめているあたりそれも満更ではなさそうだ。アーシアも二人を引き離したりせず纏めて回道と神器で治療している。

そんな二人を見て、自分もレジェンドが帰って来たらオーフィスと同じくらい甘えてみようと思いつつカナエはライザーへ向き直った。

 

 

「さて〜……それじゃ、始めましょうか。っとその前に……そこに隠れてる子から『フェニックスの涙』とかいうのを使ってもらったらどうかしら?『全力を出せなかったから敗けた、だから無効だ』なんて、言われたくないもの」

 

『!?』

 

 

カナエが視線を向けた方向を全員が見ると、物陰からレイヴェルが出て来た。レイヴェルは隠れているのに気付かれた事よりもフェニックスの涙を自分が持っているのがバレた事に驚いている。

 

 

「何故隠れていた事に気付いていたかはこの際どうでもいいですわ。もし私がこのままフェニックスの涙をお兄様に使えば本当に勝ち目は無くなりますわよ。それを覚悟の上で?」

 

「……なら私も言っておいてあげるわね。お兄さんの悲惨な姿を見たくなければフェニックスの涙(それ)を使って早く降参してこの場を去りなさい。これは虚勢でもなんでもないわ。本当に見たくないものを見る事になるわよ」

 

 

先程までの笑顔が一変、鬼殺隊の『柱』として戦っていた時の引き締まった表情と張り詰めた空気を纏ったカナエにレイヴェルは背筋を凍らせた。フェニックス家としてのプライドなどどうでも良くなるくらいその場から逃げたくなったが、そんなレイヴェルにライザーは叫ぶ。

 

 

「レイヴェル!俺にフェニックスの涙を渡して下がっていろ!!」

 

「お……お兄様……」

 

「本来ならお前を守ってやりたいがこの人間は徹底的にやらねば気が済まんのでな……お前の為に加減してやる事も出来そうにない」

 

「は……はい!」

 

 

レイヴェルはなんとか気力を振り絞り、小走りにライザーへ近付きフェニックスの涙を渡すとカナエをチラチラと見ながらその場を離れる。どうやら警告通り、見逃してくれるらしい。

ライザーはフェニックスの涙が入った小瓶の蓋を開け、それを自分に振りかける。ユーベルーナの時同様に体力が戻っていく。傷に関してはリアスの魔力による特性消滅の効果が切れたからか既に完治していた。

 

 

「おい人間、最終勧告だ。見た目は良いようだし俺の下僕になる気があるなら見逃してやらんでも……」

 

「生憎だけど私は別の方に仕えてるの。ううん、仕えてるなんて言ったらあの方は怒るかも……そもそも私は貴方を叩きのめしに来たのであって、話をしに来たわけじゃないわよ?性悪七面鳥さん?」

 

「……一々癪に触る人間だな貴様ァ!!」

 

 

ライザーから凄まじい炎が噴き上がるが、カナエはどこ吹く風で深呼吸すると腰に差した新しい日輪刀……想い人より送られた、自分の為だけに創られた『日輪刀・陽炎』の柄を握り、一気に引き抜く。

それを見た一誠、小猫、朱乃は驚く。その理由は日輪刀の刀身にあった。

 

 

「刃が、赤い……!?」

 

「え?カナエのあの刀の刃、最初からあの色ではないの?」

 

「はい。カナエ先輩が体育館を吹き飛ばした時は黒い刃でした」

 

「その時点で普通の刀とは違うよね」

 

 

それだけではない。カナエの身体にも変化があった。

 

 

「ちょっと!カナエの顔に……」

 

「縁壱さんと似たような模様が……」

 

「あれは痣だそうですわ。確かに模様のように見えますが……」

 

「痣?朱乃、何か知ってるの?」

 

 

静かに頷く朱乃。縁壱と同じ伝説九極天の一柱である卯ノ花から聞いていたのだ。もっとも全てではないが。

 

 

「『心拍数が二百を超える』そして『体温が三十九度以上になる』という一定の条件を満たす事で発現するものらしいですわ。あの痣が発現すると身体能力が飛躍的に上昇し、ダメージも通常では考えられない速度で回復するそうです。卯ノ花先生は肉体が極限状態に達した事を示すパラメータ的なものではないかと仰ってました」

 

「な……!?」

 

 

ちなみに縁壱はこれが常時発動状態だ。というか、この痣を発現した上でさらに修練を重ねる事で漸く到達出来る『透き通る世界』を含めて生まれた時から会得していたというからマジで化け物である。

しかし、そんな縁壱が全力で掛かってもレジェンドにはまるで太刀打ち出来なかったという。おまけに全然本気では無かったと(そもそも人間体だった)。

和解後、巌勝にそれを話す縁壱は当時を思い出して凹んでいた。自分を超える者が出るのはいいのだが、超えるというかハナっから勝てる訳が無かったというか……完膚なきまでに敗北するとはさすがに思ってなかったようだ。

巌勝も試しにレジェンドに挑んで見たところ例の如く瞬殺され、縁壱と慰め合った。

ついでに忘れないで頂きたい。

色々やらかしているあのノアとキングもレジェンドと同格だという事を。

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

「……よし、赫刀(かくとう)はちゃんと使えるわね。痣は確認出来ないけど……この感じからして発現出来てるみたいだし」

 

「貴様……それは一体何だ!?武器だけでなく不可思議な模様まで……!」

 

「あ、ちゃんと発現してるのね、痣。鏡とかないと分からないわね〜……後で写真撮って見せてもらおうっと」

 

 

どうやら発現した感覚が曖昧らしく、ライザーの言葉で確信したカナエ。テンション自体は変わらないようで、いつもの彼女らしい発言である。

そんなカナエの脳裏には縁壱からの教えが過る。

 

 

『いいかカナエ殿。剣術の性質上ずっと力んでいる訳にはいかない。故に赫刀は相手を斬る直前、つまり刃が触れる瞬間に発動する事で最大限の効果を引き出す事が出来る。何故なら強く握り続けるよりも瞬間的に強く握り締めたほうが一瞬であっても込められる力が強いからだ。同時に前者よりも腕にかかる負担も少なくなり、結果として継戦能力も高くなる』

 

 

赫刀―赫灼の刃とも呼ばれるそれはいくつかの発動方法があるが、原理は日輪刀に強い衝撃と高熱を刃に伝える事によって発動出来るという極めてシンプルなもの。

分かりやすい発動方法としては万力の握力……つまり火事場の馬鹿力で日輪刀の柄を強く握り、そこから衝撃と身体の熱を刃に伝える事。

しかし発動は極めて困難であり、当たり前のように発動している縁壱がむしろおかしいのである。実際、カナエに教えた戦法も本来なら縁壱以外不可能だった方法だ。

 

だが、カナエはそれを修得出来た。これは偏にこの【エリア】に来てからずっとレジェンドの傍に居続けた事にその答えがある。

知っての通りレジェンドやサーガ直属になる、もしくは惑星レジェンドに招かれた時点でその者は光気を浴び、身体能力を始めとした各種能力の向上や、不老超寿ないし不死の命を得られる。最も恩恵を受けられるのは直属化する事だが、そうでなくとも光神の光気がもたらす恩恵は想像を遥かに超えて絶大なものだ。

カナエは長らくレジェンドの家族として生活し、惑星レジェンドに住んでいた時期もありその身に受けた光気の質や量は九極天に次いでいると言っていいだろう。

 

 

「皆に休ませてもらっていたとはいえ、私もこの調子だと長時間は維持出来なさそうね……悪いけど容赦無く行かせてもらいます。御覚悟を」

 

「覚悟するのは貴様の……!?」

 

 

カナエの言葉にライザーが返した一瞬の間にカナエの姿は消えていた。正しくはライザーの背後へと『跳んでいた』。

まだカナエは霊子を足場にする術を体得しておらず他の空を飛ぶ術も使えないが、アーシア救出時にレジェンドが教会に空けた天井へ跳躍して脱出するなど跳躍力は十二分に持ち得ている。

即ち今回も跳躍してライザーの背後に回り込んだのだ。それこそ視認出来ない程の速度で。

そしてそのまま斬りかかる。

 

 

日の呼吸

 

拾ノ型 火車!!

 

 

「がああああ!!」

 

 

ライザーの背中から鮮血が噴き出す。同じ炎ならばフェニックスである自分の方が有利なハズなのにと思いながらライザーは受けた傷を再生しようとするものの……

 

 

「な……バカな!?何故再生出来ない!!くそ!!」

 

 

ライザーは痛みを堪えながら、先制攻撃を成功させて再び屋上へ着地したカナエへ反撃するため空中から突撃する。

 

 

「まぐれ当たりの攻撃を一度当てた程度で調子に乗るなよ!!」

 

 

だが、それもカナエは予測済みだった。会得した『日の呼吸』唯一の突き技にして対空迎撃用の型で対抗する。

 

 

日の呼吸

 

伍ノ型 陽華突!!

 

陽炎を纏った超高速の刺突がライザーを襲う。

ライザーは危険を察知しギリギリで軌道を変えるものの、カナエの放った一撃が速過ぎた為躱しきれず、右腕が肩から斬り落とされた。

 

 

「ぐああぁぁぁぁ!!」

 

 

背中を斬りつけられていた事に加えて右腕を斬り落とされた事で、ライザーはさすがに痛みを堪えきれず屋上へと落下する。

 

 

「ぐ……う……何故だ……何故再生出来ない……!?」

 

「それはこの赫刀の特性よ。攻撃力の増大以外に、再生能力を阻害して大きな苦痛を与える特性があるの。本来は鬼限定だけれど、縁壱先生が言った通り今の私なら万物に通用するみたいね」

 

「な……何だと!?再生阻害!?」

 

 

ライザーは愕然とした。再生阻害―それは即ちフェニックス最大の特性に対して天敵とも呼べるものだ。炎と風を司る悪魔でもあるのだが、その二つは『柱』にも存在したし、炎に至ってはそれのさらなる上位に位置する『日』の呼吸を使うカナエから見ればライザーの力任せな技などお遊戯にすぎない。

この本来鬼に対する特効であった特性が万物に通用するものになったのも光気の影響である。

 

 

 

 

 

「……すげえ……!」

 

「たった二回の攻撃でライザーを地に落とした……!」

 

「……先程言った『痣』について唯一致命的な欠点があります」

 

『え?』

 

 

カナエの成長ぶりに驚きを隠せない一誠達だったが、朱乃はカナエの発現させた『痣』に関してある事を卯ノ花から聞かされていた。

 

 

「あの痣を発現させた者は……」

 

 

25歳までにその命を終える。

 

 

『!?』

 

 

この言葉に全員が唖然とした。もしそうならカナエは後数年の寿命しか無くなっている事になる。

痣の発現による身体能力や回復力の上昇は『寿命の前借り』であり痣者が25歳までしか生きられないと言われていたのはそれが理由である(縁壱は例外というか、かつての世界では普通にその三倍以上生きていた)。

 

だが、惑星レジェンドで保護された者たちはその理に当て嵌まらない……というか、その理から外れる。

理由は寿命の前借りが『純粋な人間として』のものであり、従属神となった九極天を始め『光神の加護』を受けた者達は少なからず光神の眷属とも言える存在である為、前述の純粋な人間としての寿命分(約百年)を消化すれば、後は代わりに体力消耗などが発生するもののデメリット無しで使用可能らしい。そもそも前述の通り光気を浴びると少なくとも超寿になるので百年程度では痛くも痒くも無いし。

まさに光気万能説。

 

 

「クク……そうか、そういう事か」

 

 

ライザーは笑うが彼は、というかオカルト研究部(アーシア含む)も光気の事は聞いていないのでまだカナエの寿命が後数年だと思い込んでいる。

 

 

(あ、マズい。たぶんコレ皆勘違いしてるわね。いや、普通なら勘違いじゃないんだけど……アーシアちゃんなら知って……あれ?アーシアちゃん光気の事知ってたっけ?惑星レジェンドにもまだ行った事無かったわよね……)

 

 

周りを見渡してあちゃーと言った表情になるカナエ。周りには知られて困った、という風に見えるが当の本人はちゃんと説明しておくべきだったと思いつつ、まあ後で説明すればいいや、この空気を壊すのも何だしせめて決着までは黙っておこうと考えた。

 

 

「このまま戦えば貴様の命が尽きるかも知れんというわけだ!良いのか?その若さで死ぬんだぞ!?只でさえ短過ぎる人間の寿命を削ってまで「それが何か?」……は?」

 

「元よりこの力が『寿命の前借り』によって得られているのは承知の上。今更そんな事で揺さぶりをかけようなど無駄な事よ」

 

「なっ……貴様分かっていてその力を振るっているのか!?何故だ!?何故己の命を縮めてまでリアスに肩入れする!!」

 

「友達だから。強いて言えばそれが今の理由ね」

 

『!!』

 

 

これに驚いたのはライザーだけでなくリアスもだ。寿命を犠牲にしてまで友達だからという理由で助けるなど正気なのかと。

 

 

「最初は貴方から何処ぞの鬼と同じモノを感じて気に入らなかったからだったわ。でもね、この十日間の合宿で……何というか連帯感的なものが生まれたのよ。そして、このゲームが始まる直前に意気投合しちゃったのが決定打かなぁ。正直に『ああ、この子は応援しなきゃ』って思ったの」

 

「カナエ……」

 

「私は見送られる……見送られた側だった」

 

 

思い出すのは、かつての世界に残した妹達の事。心優しいあの子達は志半ばで命を落とした自分の事できっと悲しんだだろう。おそらくは『柱』を目指したか、或いはなったのか。もはや自分に知る術は無い。

こちらに来て何の因果か再び生を得る事が出来た。予期せぬ力のお陰で寿命も途方も無く延びた。なら、今度は自分が見送ろう。新しく出来た友人を。

 

 

「リアスが幸せな未来へと進むのを笑顔で見送ってあげる事。それが今の、私が貴方と戦う理由。貴方を倒してリアスの自由を勝ち取る。まずはそこから始めないとね♪」

 

 

寿命を代償に多大な力を得る『痣』を発現させたまま、人差し指を立てつついつもの笑顔でリアスを見るカナエに、リアスは静かに涙する。

少し前まではただのクラスメイト。ちょっと深く知り合ったのはつい最近。そして、部員を経て正しく友人と言えるようになったのは今日だ。そんな彼女がそこまで自分の事を思ってくれていた事に感激すると同時に、彼女には死んでほしくない、そう心から願った。

 

 

「さて、結構長話してそろそろ私も疲れて来た事だし、一気に決めましょうか」

 

「理解出来ん……!理解出来ん!!そんな下らない理由でぇぇぇ!!」

 

 

ライザーはカナエが己に刃を向ける理由に納得できないのか、がむしゃらに魔力弾を放つがカナエには通用しない。

 

 

日の呼吸

 

拾壱ノ型 幻日虹

 

 

カナエの姿が陽炎のように揺らめいて消えると、直後にライザーの背後へ現れた。

 

 

「あ……ああ……」

 

 

もはや抵抗出来る気力も、逃げる術も無くなった。今のライザーに出来る事と言えば……

 

 

「ま……待て!分かっているのか!?この婚約は悪魔の未来の為に必要な事なんだぞ!!お前のような何も知らない人間が「ええ知らないわ、『悪魔の未来』なんて」どっ!?」

 

「必要なのは悪魔の未来なんて大きいものじゃない。リアスの家や貴方の家が何と言おうが、今必要なのはリアスが己の足で未来へ進む権利よ。定められた事じゃなく、自分の意思で歩む事に意味があるの。貴方も貴方達の家も……」

 

 

カナエは両手で日輪刀を握り締めて、この戦いに終止符を打つ為に構えた。そして―

 

 

「頭冷やして反省しなさい!!」

 

日の呼吸

 

玖ノ型 輝輝恩光!!

 

 

「あがっ!!あ……ぐ……」

 

 

本来のカナエの呼吸法である『花の呼吸』の型の一つに類似した日の呼吸の型を受け、ライザーは深々と斬り裂かれた。このままでは赫刀の再生阻害を受けているライザーは間違いなく死に至ると判断したルミナシアは、すぐにライザーを回収しアナウンスを告げる。同時に王が倒れた事でレイヴェルも再起不能扱いとなった。

 

 

「ラ……ライザー・フェニックス様、再起不能!!よってこのレーティングゲームはリアス・グレモリー様の勝利となります!!」

 

 

今、漸く長い戦いに幕が下りた。

 

 

 

 

 

下りる、はずだった。

 

 

 

〈続く〉




ライザーとのレーティングゲームは終了しましたが、まだ終わってません。
次回はいよいよレオ師匠とゼロ隊長が活躍する予定です。
後、アンケートによくある『要リクエスト』はリクエストが無いと、もし一位になったとき選択肢にないものから私が適当に選ぶ事になりますので、出来たらアイデア宜しくお願いします。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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