ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER 作:ハジケハムスター・ポッポ
結果、過去最長を更新。二話に分ければ良かったんでしょうけど書き始めたらどこで区切ろうか悩んだ結果詰め込んで普段の二〜三話分のボリュームに……
今回あの人は顔見せで、活躍は次回へ持ち越しです。
ぶっちゃけると兄上こと継国巌勝の主役回。しかも「あれ?鬼滅がこれとクロスしてる作品見掛けないな、なら実際この兄弟らがプレイしてるしクロスさせてしまえ」という安易な考えでやったらまさかあのウルトラマンまで活躍する事になりました。
おまけに一つ、今回のテーマはサブタイ通り『鬼』です。
それでは本編をどうぞ。
サーガ達三人の駒王散策から数日後……
あの日、巌勝はしばらく帰って来ず、三日月はバルバトスの整備手伝いに付きっきり。おまけにサーガはレジェンドに何やら相談しているという、出先で何かがあったとしか思えない行動を取った。
その後、数名が交代で仮住居に寝泊まりして有事の際に対処出来る体制を整えている。
「ホント何があったのかしらね〜?」
「巌勝さんも帰って来るのかなり遅かったですし、それから毎日のように出掛けてます」
「大方サーガが言っていたあのエクスカリバーとやらの痕跡でも見つけたんじゃないのか?もっともエクスカリバーと言うには劣化度合が相当らしいがな」
C.C.が何気なく言った一言にカナエとアーシアは驚きの表情で彼女の方を向く。
「「どういう事ですか?C.C.さん」」
「……お前達、実は生き別れの姉妹じゃないのかと思うくらい息がピッタリだな」
ふぅ……とC.C.は一拍置いてから説明する。
「サーガのやつがエクスカリバーの話をした日、レジェンドがいやに怪訝な顔をしているのを見たから問い詰めてみてそこで発覚したんだがな。エクスカリバーは湖の貴婦人とやらの手元に保管してあるらしい」
「ふえっ!?」
「でも、私そのエクスカリバーの持ち主と斬り合いしましたよ?」
「キュウ(一方的だったよね、斬り合い違うよね)」
レジェンドに聞いたというC.C.から発せられた言葉は驚きを重ねるには十分だった。グリーンモスラの意見はさておき、カナエの疑問は最もだ。
カナエも続けてエクスカリバーが数本ある事などあの日の出来事を、あの時その場にいなかったC.C.に説明したのだが……
「……やはりな。あいつの推理が正しかったようだ」
「レジェンド様の推理ですか?」
「ああ。あいつの推理というのはこうだ」
大昔の戦争で折れたというエクスカリバーは、かつてオリジナルのエクスカリバーから欠けた部分を使い生み出された『最初の』劣化エクスカリバー。そこからさらに細かくしてカナエ達がその目で見た第二劣化品が完成した。各々の能力は劣化した部分を補う為に後天的に付与されたものではないか、という事らしい。
現にオリジナルは先程の通り湖の貴婦人に返還され欠けた部分の修復も当の昔に済んでいるという。
「そもそもアレは剣だけでは本領発揮出来ず、鞘があってこそその真価を発揮するらしいからな。おまけに強度も桁外れだから折れるとしても光神クラスの一撃でも貰わない限りあり得ない。だとすれば折られたものはダミーか劣化品としか考えられないだろ」
「その割にはそこそこ威力はあったような……」
「劣化品や紛い物ではあっても完全な偽物、というわけでもないからな。元となったものがオリジナルの欠片から出来たやつだし。まあ、残りカスレベルの力は残ってたんじゃないか?」
思いっきりボロクソに言われて、聖剣(笑)としかC.C.には思われていない今回のエクスカリバー。
カナエからも「そこそこの威力」程度にしか捉えられていなかった。周りがアレだし仕方ない。
「いずれにしてもあいつらが直々に動く気でいるからな。割と早く片が付くだろうさ」
「え……それって」
「以前レジェンドが言ったろ?そろそろ頃合いだと。おそらくそう遠くないうちにお前達の所属しているオカルト研究部とやらにあいつ自ら接触しに行くはずだ」
アーシアとカナエはその言葉を聞いて驚愕した。C.C.はさして気にするでもなく、トドメの一言を告げる。
「お前達も覚悟しておけ。これからは今まで以上に怪事件と関わっていく事になる。悪魔だ天使だ堕天使だなどと種族争いしている暇などなくなるからな」
なにせ本来なら最高位光神が直属の眷属を伴って自ら動く事自体ごく稀であり、さらに【エリア】ツートップが拠点を除き、同じ世界に滞在する事も普通ならあり得ない。
つまり今回はそれだけの事態だという事だ。依然として調査は進展しておらず、解決の目処もつかない。
「ま、私はやる事が変わらないから別に気を張る必要もない。だからこの話はここで終わりだ。後はあいつから直接聞け、自白剤使おうが色仕掛けしようが私は構わん……いや、後者なら私も呼べ」
「「いろっ!?」」
アーシアは当然だがカナエまで真っ赤になって動揺した。しかも自分も混ぜろ発言付き。
……実のところ、妄想逞しい二人は色々すっ飛ばしてイメージしてしまったらしく……
「……はうっ(ぶしゅっ)」
「はわああああ!?カナエさんが!!」
「小説でよかったな、絵面を見られなくて」
カナエがほわほわしながら鼻血を噴出。物凄く幸せそうである。余談だがアーシアももう少しで危なかったらしい。
メタ発言はともかく確かにC.C.の言う通りだ。
それから間もなく、仮住居のインターホンが鳴らされカナエが「どちら様かしら?」と玄関まで行く。
許可のない者は入れない結界が張られている以上、正式に許可されてる者のはずだが、一応日輪刀もスタンバイしている。
「は〜い!どなたで……」
カナエがドアを開けるとそこには帽子を被った男性がボロボロのイリナを横抱きしながら立っていた。
「うぇああああ!?」
「おいどうした?ノアの奴でも立ってたか」
「いやそれはそれで大変だけれども今回は違うから!なんかケーキ作りに失敗したような状態の娘を抱き抱えた男の人が!!」
「よく分かった。大変なのはお前の頭の方だな」
「それも違うううう!!」
とにかくパニック起こしてるカナエでは話にならないと玄関まで出てきたC.C.と何故かフライパンで武装しているアーシア。
「はわっ!?イリナさん!?酷い怪我です!!」
「ケーキ作りどころか母親を錬成しようとして上手くいかなかった結果こうなりました的な感じじゃないか」
「「それ鋼の錬金術師!!」」
怪我してるけど両手両足付いてるからね。
「漸く話せそうだな。急で悪いんだが彼女の治療を頼みたい。レジェンドさんの眷属と見込んで」
「え……!?」
「なんでレジェンド様の……あら?」
男性と話していると突然カナエのウルフォンから『三羽烏漢唄』が流れた。
「リアスから着信?タイミング悪いなぁ」
「「何だ今の歌!?」」
「私の趣味よ。もしもしリアス?悪いんだけどちょっと立て込んでて……」
『無理を承知で単刀直入に言うわ!今から駒王学園まで至急来て頂戴!かなりマズい事になってるの!!』
「え?マズいのはこっちもよ。こないだの聖剣使いの片割れをボロボロの状態で連れてきた男の人が『彼女を治療してくれ』って言ってるの。理由も聞いてないのに」
『えええ!?あーもう!あの子達、仲間思いなのはいいけどなんでこんな勝手な事を!!』
「……そっちも大分切羽詰まった状況みたいね。分かったわ、とりあえずこの場はアーシアちゃんに「それには及びませんよ」……卯ノ花先生!?」
こっちだけでなくリアスの方も何やら非常事態だと理解したカナエはアーシアに治療を任せ、単独で向かおうと考えた時、奥の部屋から卯ノ花がやってきた。
「彼女は私が看ておきましょう。カナエさんはアーシアさんと共に学園へと向かって下さい」
「「お願いします!」」
「なら俺もついて行こうか。乗りかかった船というか……聖剣が絡んでいるとなると、見過ごすわけにもいかないんでね」
「もしかして、貴方は教会関係者……じゃないですね。そもそも許可を貰ってなければここまで来れないはずですし」
何よりあの方の名前を知っていた。カナエがそう考えるとそれを肯定するように男性が告げる。
「ああ、俺は『聖剣』には関係あるが教会なんかとは無関係だ。さ、早く案内してくれ。取り返しの付かない事になる前に」
「分かりました」
「あ……あの!せめてお名前だけでも教えて下さい!なんて呼べばいいか分からないと、不便ですし……」
アーシアの言葉に対し、男性は小さく笑い帽子を被り直してこう答えた。
「クレナイガイ。風来坊さ」
☆
彼がイリナを運んで来た理由だが、話は少し前に遡る。聖剣破壊同好会を結成した一誠、小猫、裕斗、匙、イリナ、ゼノヴィア、そしてトライスクワッドの三人は元凶がかつてアーシアを捕らえていたレイナーレ達の潜伏していた廃教会だと突き止め、そこに突入した。
ただし、万が一に備えて小猫と匙はリアスらへ連絡に行かせている。
そして最初に出会ったのは……
「ん〜?どっかで見た事あるようなないような?ま、ここでスパッと行っちゃうから関係ないか」
「お前っ……あのイカれ神父!」
「フリード・セルゼン……!」
本作登場時、カナエに花の呼吸第二幕で瞬殺されたフリードだった。パッと見る限り顔や腕などに夥しい傷痕が残っている。余程深々と斬られていたらしい。
「あれあれ?俺ってば有名人?嬉しいね〜と思ったけどクソ悪魔やアバズレに覚えてもらっても嬉しかねーっての!何よりあの花ビラ女がいねーじゃん!折角このエクスカリバーで今度はこっちがズタズタのバラバラにしてやろうと思ったのによ!!」
「それは……!」
フリードは奪われたエクスカリバーを四本全て所持していた。この場で倒せば一気に奪還出来るだろう、またとない好機……先程の発言、レジェンド一家が聞いたら悲惨などという生温い言葉では済まなそうな気がするが。
「すげーっしょ?これぜーんぶ俺っちが持ってんの。うちのボスってば超太っ腹!」
「……しかしいくら聖剣を使えたとして、全部同時には使えまい!」
「確かに……ならこっちにも十分に勝機はあるって事「イッセー!皆避けろっ!!」タイガ?……ッ!?」
タイガの焦るような声と共に急激な悪寒が背筋をよぎり、思わずその場から後ろへと飛ぶといきなり床が爆発した。正確には何かが投げつけられたようだ。
「何をそんな所でウダウダやっている」
その声に全員が上を向くと黒いローブを纏った堕天使がいた。その翼の数は、十。
「今の攻撃はアイツか!」
「気をつけろイッセー……!あの野郎、相当な手練だぞ!」
「フン……何かと思えばたかが下級悪魔と申し訳程度の聖剣使い二体ずつか。いや……実体化していないだけで楽しめそうなのは三体いるな。もっとも結局は実体化していなければ無力だろうが」
「貴様が今回の事件の元凶か!」
「だったらどうする?直接戦えんその体でいくら叫ぼうがどうにもならんだろう」
「ぬうぅぅぅ!!」
堕天使の言葉にタイタスは口惜しく唸った。一誠はタイタスを宥めつつ裕斗に尋ねる。
「なあ……まさか、アイツが……」
「ああ……堕ちた天使の幹部……『神の子を見張る者』の一人、コカビエル。聖書に記された堕天使だよ…!」
「やっぱりか……!」
裕斗の言葉にタイガはプレッシャーに納得がいった。父・タロウがレジェンドや他のウルトラ六兄弟と共に参戦したレイブラッド事変、そこに目の前の堕天使もいたのだ。するとコカビエルはタイガを見てどうやら勘付いたらしい。
「ん……?お前は……そうか!奴の縁者か!いいぞ、お前をエサにすれば奴も来るかもしれん!あの双角の闘神がな!!」
「双角の……?まさか、父さんの事か!!」
「なるほど、奴の息子か!ますます良いエサだ!奴の息子だと言うなら奴だけでなく、その友人という
こいつは何を言ってるんだ。タイガを始めタイタスやフーマ、一誠も疑問に思っている。まるでタイガを人質にタロウやサーゼクスと戦うのが目的のような。
「だがまずはやるべき事をやってからだ。フリード、例の場所へ向かえ。バルパーは既にそちらにいるはずだ」
「合点承知!」
「バルパー……!?待てっ!!」
裕斗がフリードを追おうとするが、コカビエルの放った光の槍に阻まれ逃してしまう。
「これでいい……さて、奴の息子と一番繋がりがあるのは……貴様か、小僧」
「タイガをどうする気だ!?」
「今しがた言ったばかりだろう?奴らを釣るエサになってもらうのさ」
「ふざけんな!ここでテメーをブッ飛ばしてそんな事出来なくしてやるぜ!ドライグ、やるぞ!!」
『短期決戦で一気に決めろ、いくら相棒でもまだ奴の本気とやり合うには早すぎる。油断している隙に畳みかけろ!』
「おう!
一誠が禁手化しようとした時、妨害するかのように今度は『赤い剣』が飛んできた。
「うわっ!?」
「イッセー君!?今のは……!!」
飛んできた方向へ視線を向けると、コカビエルの近くにはもう一人の悪魔のような翼を持った『堕天使』らしき人物が現れていた。
「なっ……悪魔!?悪魔と堕天使が手を組んでいたのか!?」
「いや、違う……!アイツから悪魔の気配は感じない!」
「ご名答。そこの少年の言う通り、俺は悪魔じゃない」
「……何しに来た、新入り」
「おいおい、助けに来たのにいきなり喧嘩腰はないだろ?」
困ったように笑いながら新たに現れた堕天使らしき男はコカビエルに抗議するが、意識がその男へ向いている事を好機と思ったのかイリナはコカビエルへと飛びかかる。
「はあぁぁぁっ!!」
「……ッ!よせっ!イリナ!!」
「フンッ!!」
「そんッ……きゃあああぁぁ!!」
「「イリナッ!!」」
しかしそれは容易く弾かれ、無防備になった身体に光の槍を叩き込まれて教会の外へと吹き飛ばされるイリナ。
「あんな事しちゃって勿体無い。堕天使らしく、あの子の純潔でも奪った方がスマートじゃないか?」
「生憎貴様のような性癖は持ち合わせていないんでな。それより助けに来たとはどういう意味だ?俺は貴様の助けなど必要ない」
「おっとこいつは手厳しい。確かに今いる面子ならアンタにそんなものは要らないだろうさ。けどな……今から来る奴は別格なんてモンじゃない。アンタが目的を達成したいなら早めに逃走ルートを確保しておくのを薦めるぜ?」
「今から来る奴、だと……?」
男からの忠告とも言えるそれに怪訝に思ったコカビエルだったが、それが嘘ではなく事実だとすぐ気付く事になる。
「!!!」
突如、恐ろしい程の無数の斬撃がコカビエルと男目掛けて飛んでくる。男はギリギリ回避出来たものの、コカビエルは何発か受けてしまう。
その凄まじさに一誠、裕斗、ゼノヴィア、さらにトライスクワッドさえ言葉を失った。
「ぐぅっ……!何だ、今のは!?」
「……辛うじて避けたようだな。鬼ではなくなった今、出来るかどうか不安ではあったが、血鬼術の代わりにあの方より授かった光気で代用して放ってみたところ問題なく……いや、むしろ強化されたらしい」
「「「「!?」」」」
先程の斬撃を放った者……それは聖剣破壊同好会が発足した日に初めて会った人物、継国巌勝であった。
先日この場所を突き止めて以来、常に堕天使の行動を監視していたのだ。動き出すだろうその時を狙って一網打尽にする為に。フリードとバルパーはいないが連中の規模は大きくない為、頭を潰してしまえば後はどうとでもなる。
「「み……巌勝さん!?」」
「ペドロの人!!」
「「「「「ペドロって何!?」」」」」
「……言われてみれば自己紹介していなかったな」
ゼノヴィアからの呼ばれ方に今更ながら彼女らには自己紹介していなかった事を思い出した巌勝。ペドロの人と言われて、『となりのペドロ』の動画再生中のウルフォンを印籠の如く見せながら勇ましく佇む自分を想像した巌勝は我ながら笑いそうになった。
緊張感漂う雰囲気だがペドロのインパクトが半端ないせいである。
「この際、細かい話は後でするとしよう。お前達は聖剣の方を追うがいい。何やら良からぬ事を企んでいそうな雰囲気だ。アレらは私が引き受ける」
「でも、一人じゃいくらなんでも無理です!コカビエルは当然として、向こうの悪魔みたいな堕天使の実力は未知数なんだ!」
「お前はそれをやろうとしたと、縁壱の継子から聞いている。私がやって何の問題がある」
「そ、それは……」
巌勝に単独行動を取ろうとした事を指摘された裕斗は口籠る。さらに巌勝は続けて言い放つ。
「今のお前達にとって最優先すべきなのは聖剣だ。事態は一刻を争うやもしれぬ。行け!!」
「皆、彼の言う通りだ。あの神父や聖剣計画の元凶とやらをこのまま逃すわけにはいかない!」
「タイタス、けど!」
「イッセー、詳しく説明している暇はないが、彼はとてつもない実力者だ。なにせ私達ではお目にかかる事さえ滅多にないあの人の付き人であるようだからな」
これに一誠は驚愕したが、改めて思い直してみると確かにそうかもしれない。縁壱の実兄であり、先程の発言からカナエらとも面識はあるだろう。何よりイリナが失敗した奇襲をより遠くから成功させた。
「……分かりました。ここはお願いします!」
「奴らの行き先は駒王学園だ、急げ!それからもう一つ……外に吹き飛ばされていたあの少女だが、突入前に合流したもう一人に託し、仮住居まで運んでもらっている。今日は幸いアーシアや卯ノ花殿が待機していた筈だ、安心するがいい。ただその少女の持っていた聖剣が見つからなかったが……」
「イリナの事か!一度ならず二度までも……恩に切る!イリナのエクスカリバーに関してはおそらくフリードが持って行った可能性が高い、それはこちらで何とかする!」
撤退していく三人(+三人)をコカビエルが狙おうとするも巌勝の放った衝撃波を伴う斬撃に阻まれる。
「チィッ……!確かに大口を叩くだけの事はあるようだな」
「……温い。かつて私を討った柱達の方が余程手強かった。どうやら貴様は単純に戦闘狂なだけ、鍛錬など碌にしていなかったと見える」
巌勝の推測は正しい。コカビエルは常に戦争において最前線で戦う事で己を高めてきた。逆に言えばそれ以外では精々鈍らぬようにする程度、巌勝のように縁壱やアムロという凄まじき目標を目指して己を鍛え続けていたわけではない。
故に小手先だけの技術は通じず、単純な力勝負でも巌勝が圧倒的に上回っている。
「……行けよ。彼の相手は俺が引き受ける」
「寝言をほざくな。俺を傷付ける程の相手を貴様のような六枚羽程度が……!」
「六枚羽程度、ねぇ……じゃあアンタのその羽を全部毟ったら……アンタはどんな声を聞かせてくれるのかな?」
その瞬間、コカビエルは背筋が凍るのを感じた。
何だこいつは。本当に『堕天使』なのか?
「ただの冗談だろ。本気にするなよ」
もはや冗談か本気かなどどうでもいい。一刻も早く
コカビエルは翼を広げ、そこから離脱しようとするがそれを黙って見過ごす巌勝ではない。先程と同じように殺傷力のある月のエフェクトを伴った斬撃を放つが、堕天使らしき男の放つ赤い剣によって防がれる。
しかし、圧倒的な斬撃量の全ては防ぎきれず……
「ぐあぁぁぁっ!!」
いくつかの斬撃はコカビエルへ直撃し、その身体を傷付けただけでなく翼を二枚斬り落とした。しかし、そんな事はお構いなしにコカビエルは飛び去っていく。
斬られた翼は落ちて来たところを男に確保された。
「いやホント恐ろしいね、その斬撃は」
「……どういうつもりだ」
「何がだい?あれを助けた理由なら」
「助けただと?恍けるな。貴様は最初から奴を助ける気などなかっただろう。傍から見れば私の斬撃を防ぎきれず数撃もらったように見えるだろうが私の目は誤魔化せん」
巌勝の言葉に男は笑みを浮かべたまま黙っている。
「貴様の発生させるその赤い剣……大した強度だ。それを上手く使えば一人程度なら私の斬撃からも問題なく防げるはず。にも関わらず奴に放った斬撃に対して防御の意思を見せながらも後少しで止められる、というところでそれは途端に動かなくなった。私は斬撃にそのような効果を付随してはおらず、同時に貴様も然程消耗していない以上、残る原因は貴様が自分の意思で止めたという事に他ならない」
「……恐ろしいのは斬撃だけじゃなかったみたいだな。大した観察眼だよ。あの状況でそこまで見抜くとは」
やれやれ、と先程同様困ったように笑いながら男は言葉を紡いだ。即ち、コカビエルを巌勝の攻撃から助ける気など毛頭なかったという事。
「……何故、あのような行動をとった」
「理由はコレだよ。コレが欲しくてね。無理矢理奪うよりこうした方がスマートだろ?言い訳も十分に立つからな」
男が見せてきたのは先程巌勝の斬撃で斬り落とされた二枚のコカビエルの翼。
同じ堕天使ならば何故そんなものが必要なのか。その悪魔のような翼を変質化させる気なのか。
「ああ、予め伝えておくが俺が俺に使うわけじゃない。研究の為に欲しがってる人達がいてね。俺は只のお使いってやつだよ」
「何……?それはどういう」
「悪いが話はここまでだ。さて、ちょっとしたサプライズゲストでも呼んでみようか。もっとも、一度呼んだらこの世界と『繋がり』が出来てしまうかもしれないが、まあそれも含めて楽しんでくれ」
男は小さな『核』のようなものを地面へと落とす。すると空間が歪み、瘴気を伴ったワームホールのようなものが現れた。その光景に巌勝は見覚えがある。
「これは……馬鹿な、そんな事が……!」
「さあて……どんな『鬼』が出て来るかな?」
男の言葉が終わった瞬間、そのワームホールのようなものから勢いよく何かが飛び出して来た。巌勝は間一髪回避するが、飛び出して来たものの正体を見て愕然とする。
獅子のような姿に、鋭い牙や爪、長い尾。それだけならば何かの動物だと思うだろうが、問題はその大きさ。比較的恵まれた体躯の巌勝数人分もの巨体なのだから。
「カゼキリ……!?」
「信じられないって顔してるけど、それはソイツに限った事じゃない。俺達がゲームの登場人物だったり、本の中だけの架空の存在だったりする場合だってある。世界や宇宙っていうのは無数に存在するのさ。一つだけ教えてあげようか、そいつらは元々こっちの【エリア】出身……弾かれて来たわけじゃない」
「!!」
【エリア】の事も、弾かれるという現象の事も知っている。その事に巌勝は驚くもカゼキリが攻撃を仕掛けてきた為、それについて考える余裕が消えた。
「では、サヨウナラ月の侍。生き延びる事が出来たならまた会おう」
「待て……!ちっ……」
男はその場から離脱するが、巌勝はそれより眼前の『鬼』を対処すべく構え直した。
―カゼキリ―
以前縁壱が話していたゲーム『討鬼伝』シリーズに登場する、大型の『鬼』である。巌勝達の出身世界の鬼とは根本的に違い、人間ではなく人間の魂を喰らう。さらに、人体に有害な瘴気を発生させ、さらに自身のいる場所を中心にその地を『異界化』させる能力さえ有する。
大型の鬼は基本的に『表層』と呼ばれる、言わば外殻とも言えるものを纏っており、それを破壊して『マガツヒ』状態になってから漸くダメージが与えられる上、時間が経てばまた表層を纏う。加えて己が危機に瀕した時、力を暴走させて『タマハミ』状態となり形態や戦闘方法が変化する。
これ以外に相手の戦力を弱体化させる手段として『部位破壊』を行い、腕や脚など破壊した部位によってはさらに『鬼祓い』をする必要もある。そのままにしておけば鬼がそれを自分の元に引き寄せ部位再生してしまうからだ。もっともタマハミ時に失った部位を再生・変質化するものもいるのだが……。
何より厄介なのが……
(カゼキリのような『鬼』を討つには『鬼から作られた武器』以外には不可能……レジェンド様やサーガ様ならいざ知らず、私のこの刀で討てるのか……?今だ
そう、あの世界において鬼を討つ事が出来るのは、同じく鬼の素材から作られた武器のみなのである。
実力そのもので言えば巌勝が負ける事はない、むしろ複数同時に来ても難無く討てる程だ。しかしそれは攻撃が通用する場合であり、通じなければただ体力を消耗していくだけの無駄な戦いに過ぎなくなる。
「ガアァァァ!!」
「ふんっ!!」
ガキン!!という刃と爪がぶつかる音がすると、巌勝は続けざまに斬撃を放つもののダメージはおろか表層を削れている気配さえ無い。
(浅い……!?いや、やはり効いていないのが正しい。ではどうする?レジェンドやサーガ様に連絡……駄目だ。あの方々は不測の事態に備えている。ここは私が独力でどうにかせねば……だが……)
このままでは目の前にいるカゼキリ一体にさえ対処出来ない。己の不甲斐なさを悔いる巌勝。ここは任せろと言っておきながら堕天使二人を逃し、あまつさえ呼び出された鬼一体さえ倒すどころか傷さえ付けられない。
(結局私は生き恥だけを晒すのか。ならばいっその事ここで……)
辛うじてカゼキリを吹き飛ばし、目を瞬くとそこは真っ暗な空間だった。
「何だ?カゼキリは何処へ行った?そもそもここは……」
「貴様は……何故生きている……?」
「!?」
聞き覚えのある声を聞いて後ろを向くと、そこにいたのは……
「な……」
「鬼から人間に戻り……新たな力を得て天狗になっていたか……その結果がその様だ……」
紛れもなく
「素直に死んでおくべきだった……貴様が調子に乗った事で異界より鬼が呼ばれ……この世界に新たな不穏因子が現れた」
「それは……」
「どれだけ力を得、それを他者の為に振るおうと……
しかし己の命を捨てればその苦しみから解放される。
だが巌勝は思う。自分は本当にそれでいいのか?
差し伸べてくれた手を掴み、漸く縁壱と共に歩むと決意し今まで努力を積んで来たものを、楽になりたいが為に捨てていいのかと。多くの罪を重ねた自分を許し、家族として迎えてくれたレジェンドやサーガ、超次元グレン団の者達の期待を……また、自分の我が儘で裏切るのかと。
そう、答えは当に決まっている。
「たとえそうだとしても、手にした刃を捨てる気など毛頭無い」
「愚かな……遅かれ早かれ……
「それは全てを捨てた結果だ。その結果が
「……」
「しかし、今は違う。私が今度過ちを犯そうとすれば、縁壱やサーガ様、レジェンド様、グレン団の皆……家族が力づくでも止めるだろう」
「他者頼みである事に変わりはない……無惨様に頼り鬼として生きていく事を決めた時とそう違いはない」
「いや、違う」
「私は母上や妻、子供達に誓ったのだ。たとえ贖罪の為の戦いがどれだけ続こうと、どれだけ恨み辛みを向けられようと刀を手放す事なく戦い続けると。だからこそ、まず私は
「……何?」
「たとえ口で何と言おうとも、心の底ではまだ燻りがあったのだろうな。だからこうして
「無駄な事を……不可能だ。いくら光気を浴びようと……人の身に戻った以上それは叶わぬ……だがそれに納得出来ぬというなら身を持って知れ……!」
お互い刀を抜いて構える。音も何もない漆黒の空間。ただ、ホオォォォという互いの呼吸音が聞こえるだけ。
刹那、互いが踏み込み刀を振るい、すれ違った。
「何故……そこまで強くなれた……?」
「理解したからだ。私が縁壱と同じである必要はないのだと。私は私らしく強くなれば良い。たとえ歩み方は違えども、私達は共に歩み、同じ場所へ行く。心は、常に共にある」
「漸くしがらみを捨てたか……見事だ……私よ」
黒死牟の刀が、巌勝の刀によって折られていた。
巌勝はこの瞬間、本当の意味で鬼であった頃の自分を超えた。それを祝福するかのように黒死牟は光となって消えていく。その間際に巌勝へ最後の言葉を残す。
「これが本当の最後だ……忘れるな……その背中を押しているのは今の家族だけではないという事を……」
黒死牟が消えるのを見届け、ふと気配を感じて後ろをふりむと、そこには巌勝が鬼狩りになる為に捨てて行った妻や子達、そして自身の子孫であり刃を交えた霞柱・時透無一郎が佇んでいた。
しかし、皆表情は穏やかであり、恨みの念など微塵も感じさせない。特に無一郎は自分を憎んでいても無理はないというのに。
「お前達……」
『頑張って、あなた』
『父上なら大丈夫です!』
『お父様は最高の侍だもん!』
『もし逃げたりしたら今度こそ許さないよ、おじさん』
彼らから送られたのは、各々の言葉による激励だった。どれだけ詫びても足らぬ事をしたというのに、それを責めずに後押ししてくれる彼らに、巌勝は静かに涙する。魂だったとしても、存在する【エリア】が違う彼らがどうして自分とこうやって対面出来ているかは分からない。ただの自分の理想かもしれないと思ったが、先程言われたばかりだ。『背中を押しているのは今の家族だけではない』―それが、この答えであると。
だからこそもう二度と、道を違える事はしない。その決意を込めて―
「ああ……約束だ。私は……」
あの『鬼』を討つ。
その言葉を紡いだ時、暗闇は光へと変わっていく。そして、意識が遠くなっていく最中、ある声が聞こえた。
《新タナ主、見ツケタリ》
巌勝が再び意識を取り戻すと、初めに見たのは吹き飛ばしたカゼキリが身体を起こそうともがいている姿だった。あれから時間は殆ど経っていないのだろうが、随分長い事あそこにいた気がする。
さっきまでの事は決して幻ではない。その証拠に心が軽い。今まで突っ掛かっていたものが全て取れたように。
そんな事を考えていたらカゼキリは勢いよく飛び起きた。同時に巌勝はカゼキリを見据え、手にした刀を強く握り締める。
「異界の鬼よ。先程までの私と思うな。たとえこの刃が通じずとも私は決して引き下がりはしない」
唸り声を上げ、今にも飛びかからんとするカゼキリに対し、巌勝は怯む事なく言葉を紡ぐ。
「どんな苦しく辛い状況であろうと、最後まで勝利を諦めず立ち向かい、戦い抜く。信じる心、その心の強さが……不可能を可能にするのだ!」
かつてマン、セブン、ジャック、エースからメビウスが教わった言葉。グレイフィアと共にミライと親交を深めた時に教わった、心に響いた言葉だ。
「来るがいい!何度襲いかかって来ようとも、貴様が戦意を失うまで吹き飛ばし続けてくれる!」
「グゥアァァァァ!!」
「おおおおお!!」
巌勝の刀とカゼキリの爪が再びぶつかり合い、一層激しい音を立てた時、巌勝の持つ刀の刀身が眩い光を発した。それを至近距離で浴びたカゼキリは巌勝ではなく刀そのものによって吹き飛ばされる。
「何だ……これは……!?」
光の中で刀身は、より長く、より強固になり、刃は黄金に輝き、峰には日輪を模したような装飾が追加された。巌勝は手にしたそれが、外見のみならず凄まじい力を持っている事を感じ取る。
カゼキリが再度飛び起きようとしたその時……
「俺達空から参上ォォォ!!!」
「さんじょー」
「ウルトラ参上!!」
「「!!」」
まさかのレジェンドがオーフィスをお姫様抱っこしつつゼットを首にしがみつかせながら開きっぱなしの天井(そもそもアーシア救出時にレジェンドがぶっ壊した)から突入してきた。丁度巌勝とカゼキリの間に割り込むように勢いよく着地した為、多大な砂煙が舞い上がりカゼキリはまたもや吹っ飛ばされた。
「うおおお!?なんか巌勝さんウルトラスゲー武器持ってる!何だアレ!?」
「レジェンド、あれが言ってたやつ?」
「ああ。巌勝……漸く、所有者が正式に替わったようだな」
「正式に……?これは神衛隊所属となった祝にとサーガ様から賜った物ですが……」
「そいつの名前は『鬼神刀』。俺がある世界で手に入れた、悪鬼羅刹を討ち滅ぼす伝説の刀だ。リガウ島……だっけな?そこで手に入れた錆び付いた刀を打ち直し、さらに使い込んで馴染ませ、さらに各種研磨材で打ち直し、それを繰り返し……それが極限まで行われた時、ある鬼が刀から現れた」
「鬼が刀から……!?」
「ああ。その鬼の名は『刀鬼』。鬼神刀は、極限まで鍛えられた古刀を以て刀鬼を打倒し、その魂を古刀に再び吸収する事で完成した、鬼そのものが武器となったと言っても過言ではない代物だ。鬼の魂を吸収して悪鬼羅刹を屠る刀となる……皮肉といえば皮肉だが、それがその刀を目指した刀匠の夢だったんだろうさ」
レジェンドはこの刀を使いその世界で戦い抜いた後、悪用する者が現れぬよう惑星レジェンドの自宅に保管していたのだが、縁壱が弾かれて来た際、試しに抜かせてみたところ鬼神刀に変化する前の古刀になっていた。以後は何度やっても鬼神刀になる事はなく、サーガに預けておいたのだ。その後、巌勝がこちら側にやって来た際に微弱ながら反応した事でレジェンドはサーガに鬼神刀を正式に譲渡し、それから巌勝の手に渡ったのである。
「そんな事が……それ程の代物だったとは」
「伝説の刀とかウルトラ格好良いんですが!!」
「間違いなく神滅具並みの希少品」
「そういうわけでお前は俺に継ぐ二代目の所有者というわけだ。三代目が出て来るか分からんけどな。いざとなったら俺も使えるし……まあ、あんまり気を張り詰めなさんな」
各々の感想を述べつつ、レジェンドだけは軽く言う。
そうこうしているうちにカゼキリは体勢を立て直し終えている。幾度となく吹っ飛ばされて些か機嫌が悪そうだ。
「そういや、アレなんでいるの?どっかから呼び出されたの?厄介なもの呼んでくれたな全く……」
「グゥアァァァァ!!」
「やかましい」
バゴォッ!!!
レジェンドはカゼキリの方を向かず鼻っ柱に裏拳を一発叩き込んだ。それを受けたカゼキリはダイナミックに回転しながら後方へとブッ飛んで行き、勢いよく壁に激突、弾け飛ぶように表層が剥がれた。
これには巌勝も唖然としていた。レジェンドは戦闘コスチュームにこそ着替えていたが、その衣装は精々ずば抜けて丈夫である以外に特筆すべきところは無い。つまり本来鬼から作られた武器以外では痛手さえ与えられない筈の鬼に対し、自力のみで表層を木っ端微塵にしたのである。
さすが規格外。理不尽だ。
「おわっ!?なんか毒々しい色になった!!」
「表層が剥がれてマガツヒ状態になったのだ。しかし、心なしか少々ダメージがあるような……」
「まあ、人間その気になれば何でも出来るというやつだな」
その言葉にオーフィス、ゼット、巌勝が一斉にレジェンドの方を向く。
「レジェンド、人間体でも人間の強さじゃない」
「その姿、ウルトラマンからみても人間やめてます体ですよね超師匠」
「そもそもどんな姿であれ光神スペックでは能力的に人間と呼べないかと」
「お前ら鬼じゃなくて俺を精神的に討伐する気かこの野郎」
盛大に人間じゃない発言されてレジェンドはダメージを受けた。たぶん味方になってくれそうなのはアーシアとサーガくらいだと思う。ノアやキングはスルーしそうだし。
「ともかく、後はお前達でやってみろ。俺は後衛に下がり完全援護に回ってやる」
「え!?俺もですか超師匠!?」
「そうだ。ウルトラフュージョンは使えんが、俺が傍にいればある程度戦闘は可能だろう。経験を積む意味でも良い機会だ。共闘相手がオーフィスと巌勝ならば問題あるまい」
「しかしレジェンド様……あの鬼には」
「鬼の素材から作られた武器でなければ傷すら付けられない、か。そこは心配要らん。俺が同伴しているなら俺の光気を共闘している者の武器や身体に纏わせれば、一時的に攻撃が通用するようになる。巌勝の鬼神刀のように単体でダメージを食らわせられるのが一番なんだがな」
今回の場合、ゼットとオーフィスがその対象となる。とはいえ、瘴気の関係で活動限界の問題もある。
「活動限界は基本的に約一時間だったな……長引けば奴がここを異界化する可能性もあるし、瘴気の浄化も必要だ。短期決戦で行くぞ、準備はいいか三人とも」
「問題なく」
「準備よーし」
「ウルトラ万端です!」
「さっきも言ったが俺は後衛からの援護に回る。前衛の指揮は巌勝に任せるぞ」
「承知しました。では……」
巌勝は一拍置いて号令を掛ける。
「あの鬼を討つ!私に続けぇ!!」
「おおー!!」「おー」
巌勝の号令にそれぞれいつものテンションで返事をし、突撃していく三人。そこから一歩下がってレジェンドが追う。神衛隊、ウルトラマン、そして龍神と光神による初の合同作戦……『カゼキリの討伐』が開始された。
マガツヒ状態であればあらゆる部位への攻撃が鬼へのダメージとなる。表層に覆われている時のように部位を破壊し、鬼祓いをするという手順を踏まずとも良いのだ。
「まずはその厄介な前脚をもらおうか!!」
完全に迷いを捨て、過去を超え、レジェンドより受け継いだ鬼神刀を振るう巌勝の剣技は堕天使に放った時よりも冴え渡り、カゼキリの両前脚を容易く斬り飛ばした。
「おおー」
「やっぱりウルトラ凄いぜ、神衛隊最強の剣士!」
「レジェンド様!鬼祓いは可能ですか!?」
「問題無い!お前達はそのままカゼキリとやらに集中しろ!」
「御意!」
レジェンドは鬼祓いの効力をフルムーンレクトに込め、斬り飛ばされた二つの前脚に放つと、光の粒子に変化してレジェンドの手元に収まった。これは戦闘後、素材へと変化する事が分かっている。鬼祓いを行った事でカゼキリの両前脚は霊体に近い半透明のままだ。これにより両前脚の攻撃能力も一気に下がり攻めやすくなる。
カゼキリは前脚がまともに使えなくなったと知るや突進攻撃に切り替えようとするが、突如尻尾に違和感を覚える。
「うぅおおああぁぁぁ!!!」
「グゥアァァァァ!?」
なんといつの間にやら背後に回り込んでいたゼットが、綱引きのようにカゼキリの尾を引っ張り突進しようとしていたところを思い切り引き倒したのだ。予想外のファインプレーである。
「二人とも、今のうちに総攻撃ぃぃぃ!!」
「ゼット、実は凄い?」
「良い働きだゼット殿!畳み掛けるぞ!!」
オーフィスはカゼキリの顔面を強く蹴り飛ばし、巌勝は前脚に続けて後脚も斬り飛ばす。それを確認したゼットはカゼキリの尻尾を掴んだまま肩に担ぎ後ろを向き……
「チェェストォォォ!!!」
今度は背負い投げの要領で尻尾を離さぬまま思い切り弧を描くように叩きつけた。ゼットが予想外の大活躍だ。それもそのはず、彼はダイブハンガーへ来て以来、特訓を欠かした事はなかった。己が未熟である事を理解している彼は少しでも力を付けようと、普段のノリからは分からないが努力を重ねており、今漸く芽が出始めたのだ。
「まだまだ荒削りだが、確実に成長している。今後はこういう形であいつにも戦わせた方が伸びていくだろうな」
レジェンドはゼットの成長を嬉しく思う。その行動に手を焼かされているものの、別にゼットを嫌っているわけでも苦手なわけでもない。むしろ新しい光として成長する事を楽しみにしている。いつか彼にとっての先輩や師と同様に、彼が後輩達を導くようになる事を信じ、見守っているのだ。
そんな時、カゼキリが変化を見せる。
「グガアァァァァ!!」
「うわっ!?」
「なんか空まで変になった」
「タマハミだ!力を暴走させた事で瘴気の影響が空にも出る!だがこれは同時に奴が生命の危機に瀕している証でもある!ここが正念場だ!体勢を立て直せ!」
タマハミ状態となったカゼキリの頭には左右対称に巨大な刃の如き横角が生えている。巌勝の言葉通りならいよいよ最終局面に突入したという事だ。
「グゥオオオォォォ!!」
「うぇっ!?おわあああああ!!」
「ゼット殿!!」
カゼキリはその場で高速回転し、短時間ながら竜巻を発生させてゼットを天高く打ち上げてしまう。しかし、ド根性体育会系なゼットはそのままでは終わらない。
落下しながらもゼットは両手を自分の頭部に沿え、一気に振り下ろす。
「ゼェェェットスラッガァァァ!!」
アイスラッガーやゼロスラッガーのように直接飛ばすわけではないが、光波として飛んでいったそれは今まさに攻撃しようとしていたカゼキリの尻尾を両断する。
「ゴァァァ!?」
「いでッ!!」
「ゼット、大丈夫?」
技の為に姿勢制御が疎かになっていたゼットは着地に盛大に失敗していた。だが、それ以上に功績は大きい。あの尾はタマハミ時にさらに厄介な攻撃方法を持つのでそれがなくなったのは大きなアドバンテージだ。既に尾は巌勝が斬り飛ばした両後脚共々、レジェンドが鬼祓いを完了させている。ゼットもすぐに立ち上がった。
「残る厄介な部位はあの横角のみ!」
「んじゃ、ここはこのレジェンドお兄さんが一肌脱ぎますかね」
「グガアァァァァ!!」
怒りをぶつけるかのようにその横角を利用し、回転しながら飛び掛かってくるカゼキリ。しかしレジェンドは殆ど動こうとせず、右手だけを前方へ差し出すとカゼキリが宙で動きを止めた。頭だけがもがくように少しだけ動いているが他はまるで動かせない。普段ならウルトラエアキャッチという物体停止光線でも使ったかと思うだろうがそうではない。
レジェンドキネシスという、以前も使ったレジェンド版ウルトラ念力だ。大抵の場合これだけで決まってしまう為、他の技をお目にかかる事が中々出来なかったりするのだがそれはさておき。
「オーフィスとゼットはそれぞれあの横角を破壊し、巌勝は」
「それを確認次第……奴を討ち取ります!」
「ん、分かった。我も新技やる」
「じゃあ俺もやっちゃったりしますですよ!」
誰一人異論はない。今、カゼキリに対して最後の攻撃が三人から放たれる。
ゼットは両手を水平にしてゼスティウムエネルギーを解放し、Zを描くように手刀を切り十字に腕を組む。
「ゼスティウム光線!!」
ゼットの必殺光線、ゼスティウム光線。
それと同時にオーフィスはレジェンドがスパークレジェンドを放つようなポーズを取った後、腕を✕に組んでいつもと変わらぬテンションで言う。
「オーフィスびーむ」
可愛らしい名前だがその威力はぶっちゃけ究極フォームのウルトラ戦士の必殺光線に近いというチート技。
二つの必殺光線はそれぞれカゼキリの横角を破壊し、丸腰となったカゼキリの目に映ったのは圧倒的な気迫を放つ巌勝だった。
ホオォォォ!!
月の呼吸の呼吸音が一層強くなる。いよいよ、巌勝の本気の一端が見せられる。
巌勝の技が放たれる直前、レジェンドは己の技を解除しており、カゼキリは身体が自由になった事で回避し、逃走しようとするもそれは叶わなかった。
巌勝の使う月の呼吸。長射程・高威力・広範囲と三拍子揃った呼吸法であり、おそらく単体で超えられる呼吸は日の呼吸……それも縁壱が使い手である場合くらいのものというレベルの凄まじさだ。その第二幕ともなれば想像を絶する威力なのは当然である。
地面を無数の巨大な斬撃が月輪を帯びて迫って来ているのを見たカゼキリは逃げようとしたが、なんと空中に天井があるかのように、空中を斬るのではなく『走る』斬撃が地上同様に無数に迫って来ていた。もはや、回避も防御も出来ない。陸と空、双方からまるで鋭利な牙に挟まれるように全身に斬撃を受けたカゼキリは、光を発しつつ断末魔の声を上げながら息絶えた。すかさずレジェンドはカゼキリ本体を鬼祓いする。
遂に、この世界に初めて現れた『鬼』―カゼキリを討伐する事が出来たのだ。
「鬼討ち……完了……!」
「ぃよっしゃあああああ!!」
「我達、大勝利」
「三人ともお疲れ様だな。よし、ちと休憩していくか」
「いえ……まだコカビエルとやら達が残って……」
「そっちは一先ず三日月やあいつに任せとけ。サーガもじきにそっちへ合流する。少しは休め。折角グレイフィアやミライが弁当作ってくれたんだぞ、四人分」
そう言ってレジェンドが取り出したのは少し大きめの四つ分の弁当箱。一つだけ少しばかり大きいのがある。
「この大きいの、巌勝のぶん」
「む……?いや、オーフィス殿は良く食べるだろう。私はこれでも長男なのでな、多少は我慢しなくては」
「我はもう『お弁当が欲しい』って我が儘言った。だから今度は我が我慢する。だからこれは巌勝のぶん」
「受け取ってやれ。ゼットもオーフィスも毎日張り込んでたお前に弁当持って行くんだと聞かなくてな。グレイフィアとミライも乗り気だったから作ってきたんだよ」
それを聞いた巌勝は溜息をつきながらも穏やかな表情で受け取る。それだけ多くの者から気を遣ってもらったのなら無下にするわけにはいかない。
「ならばありがたく頂こう。二人も協力したのだろう?」
「俺も頑張りまくったのですよ!……盛り付け」
「我も頑張った。味見」
「オーフィス、お前それ誇るような事か?」
漸く、いつものレジェンド一家が戻ってきた。ゼットは割と頑張ったのかもしれない。見栄えというのも割と重要だったりするのだから。オーフィスは……うん、いつもと同じだった。
「ゼット、俺の身体使っていいぞ。今日のお前は良くやった。俺の分は後で食えばいいし、頑張った御褒美みたいなものだと思え」
「ありがとうございます超師匠!では失礼してっと……」
ゼットが一体化してるレジェンドの身体に戻り、意識が表に出てきたところで三人はいつの間に出していたのか、レジェンドが敷いておいたビニールシートの上に座る。
「「「頂きます」」」
それぞれの弁当箱を開けると中身はそれぞれ違うものの、豪華である事に違いはなかった。そこでと巌勝が提案する。
「少しずつ、交換しようか。二人の視線がそれぞれ別の者の弁当に注がれているみたいだからな」
「いいの?」
「ああ」
「巌勝さんウルトラ優しい長男だ……!まるでゾフィー隊長みたいな器の大きさだぜ!」
「弁当一つでそこまで言われるのは些か困惑するが、喜んでくれているのは分かった」
ワイワイガヤガヤと互いのおかずを交換しながら弁当を食す三人をゼットの中から(身体はレジェンドのものだが)温かく見守りつつ、レジェンドは瘴気の浄化を完了させた。聖剣事件はまだ終わらず、この後も取り逃がしたコカビエルらとの決戦が控えているが、今は種族や世界、【エリア】をも超えて生まれた絆を育む時間を大事にしてやりたい。これから先の戦いはそれが必要となってくるからだ。
賑やかに束の間の休息を楽しむ彼らを、月は穏やかに照らしていた。
〈続く〉
「三日月、オルガ。先輩から連絡があった。聖剣計画の元凶は駒王学園で何かをしようとしているらしい」
「わざわざ伝えてくれてありがとな、大将。ミカ、準備出来てるか」
「大丈夫。俺もバルバトスも、いつでもいける」
「なら……」
「元凶は、俺が潰すよ」
格好良い兄上が書きたいという欲望に忠実になったらこうなってしまいました。後悔はしていない。
兄上がレジェンドから受け継いだ鬼神刀、分かる人は分かるであろう「ロマンシングサガ ミンストレルソング」のグレイを主人公にした時のみ手に入る最強クラスの刀です。そりゃレジェンドとか兄上とかバグキャラみたいな連中が手にすりゃ邪神だの鬼だの関係なくぶった切るわな。
次回、いよいよクレナイガイと三日月、生まれ変わったバルバトスの活躍回になります。ついでにアンケート、さり気なく更新しました。
それではまた次回。
二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?
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真ゲッタードラゴン(大決戦版)
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真・ゲッター1(スパロボα仕様)