ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

137 / 301
お待たせしました。バルパー&フリードと決着回です。
同時にガイ&三日月(バルバトス)活躍回でもあります。お二方のファンの皆様、本当にお待たせしました。
結果、前回並に長くなってしまったのですが。

ガイの変身は次話へ持ち越しですが、生身で重要な役割を果たしますので楽しんで頂ければと思います。


それでは本編をどうぞ。


力と思いを重ねて、猛激せし鋼の悪魔(バルバトス)

 巌勝を中心とした混成チームによってカゼキリが討伐された頃、駒王学園にはリアスと朱乃、小猫に加えてソーナ率いる生徒会メンバーが集結していた。

生徒会メンバーは学園に結界を張り、被害が可能な限り抑えられるようにしているものの、相手が相手でありオカルト研究部側も当初より劇的にパワーアップしている事を考えるとどうしても不安が残る。

 

 

「カナエには連絡ついたわ。アーシアとこっちに向かってくれるみたい。聖剣使いの一人が仮住居に運ばれて来たそうよ」

 

「仮住居……?」

 

「ソーナ、その話は今度ゆっくりと。欲を言えば卯ノ花先生にも来てほしかったけど怪我人を放っておくわけにいかないもの、仕方ないわね」

 

「部長、矢的先生は……」

 

「呼んだけど、間に合うか分からないわ。全く、優秀だからって矢的先生ばかり出張に行かせすぎよ!」

 

 

カナエやアーシア以外にも矢的にも連絡したところ、明日帰るはずだったところを繰り上げて今戻っている最中らしい。なまじ彼が優秀過ぎた為に緊急事態に対処しきれない状況を作ってしまっていた。

そこへいつもの鬼殺隊の服に身を包んだカナエと、『輝煌なる祈り』を着込んだアーシア、さらに風来坊ことクレナイガイが到着する。

 

 

「カナエ、アーシア!……と、どちら様?」

 

「クレナイガイさん。風来坊だそうよ」

 

「飛び入り参加で悪いが、よろしくな」

 

 

ウルトラマンは別としても現時点でオカ研最強戦力のカナエと、回復や支援に特化したアーシアが間に合ってくれたのはありがたい。……が、正直素性も分からぬ一般人をこれから向かう戦場へと連れて行くわけにはいかない。

 

 

「貴方が聖剣使いの一人を仮住居へ送り届けたっていう人ね。それには感謝してるけど、ここから先は……」

 

「一般人が立ち入っていい話でも場所でもない、そんなところだな。安心してくれ、俺はここにいる誰よりも戦闘経験が多い。おまけに聖剣って事なら関係者と呼んで差し支えないぜ」

 

「ッ!?まさか……貴方も聖剣計画の……」

 

「いや、それとは無関係。なにせ関係があるのは聖剣って部分だ。聖剣計画なんて()()()に来て初めて聞いたからな。なんとなくロクでもないってのは予想がつく」

 

 

どうやら無関係なのは事実らしい。しかし気になるのは誰よりも戦闘経験が多い、という部分だ。本来なら鬼殺隊の頃も含めてカナエが一番多いはずだが、彼はどう見ても精々喧嘩とかいざこざに巻き込まれた事を言ってるようにしか見えない……しかし、だとしたら聖剣云々言うのも妙な話である。

 

 

「とにかく、状況が状況だし戦力は一人でも多い方がいいだろ。他に援軍は?魔王の妹さんが二人も揃ってるんだ、どっちかの魔王くらいは期待していいよな?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

思わずリアスとソーナはカナエとアーシアを見たが、二人は首を横に振り彼女らの事は話していない事を伝える。

本当に何者なのだ、この風来坊。話してもいないのに悪魔、それも魔王の妹だと一目で見抜くなど。

 

 

「あ、貴方いったい……」

 

「リアス、そこまでですわ。先程私から連絡しました。後一時間程でサーゼクス様率いる部隊が到着する手筈になっています」

 

「朱乃!?」

 

「もうこれは私達だけで手に負える問題ではありません。貴女は私達の王なのですよ?いつものようにプライドがどうのと言っている場合ではないわ」

 

「……そうね。朱乃の言う通りだわ」

 

「正直、私もリアスのように卯ノ花先生や縁壱先生がいてくれたらとは思います。ですが、いつでもあのお二人を頼れるわけではありません。カナエやアーシアさんと違い基本的にあの方々は部外者です、安易に巻き込む事は得策ではないかと」

 

 

いや、あの二人の主は思いっきり自分から突っ込んでいってるんですが。しかも一人であっさり解決してしまう為、普段は何故か出番が……ゲフンゲフン。

理由はどうあれ、幾ら頼りになろうがこの件に関しては三大勢力の問題だろう。三大勢力ではない彼らを頼るのはお門違いと確かに言えるが……

 

 

「……駄目だ、一時間では間に合わない」

 

「「「え?」」」

 

 

ガイが重要な事を呟き、リアスと朱乃、ソーナは一斉に彼の方を向く。ガイは顎に手を当てて何やら思考しているようだ。

 

 

「間に合わないってどういう事?」

 

「……エネルギーの流れからの推測になるが、タイムリミットはおそらく残り約30分弱。それを過ぎればアウトだ」

 

『!!』

 

 

その言葉にオカルト研究部と生徒会全員が戦慄した。こうしている時間さえ惜しい事態だという事を再認識する。

 

 

「急いだ方がいい。予想外な事が起きる可能性だってある。それに……」

 

「そ、それに……?」

 

 

リアスが恐る恐る聞いてくるが、これに対してガイはニッと笑いながら安心させるように言う。

 

 

「あの人直属の部隊『神衛隊』が既に動いている。もしかするとタイミングよく間に合ってくれるかもしれない」

 

「しんえいたい……?」

 

「まさか……!C.C.さんが言っていたように巌勝さんがここ最近出掛けていたのも……!」

 

「巌勝さんっていうのは羽織と和服を着込んだ侍みたいな人かい?あの人ならあの子を俺に任せて廃れた教会に突入して行ったぜ。しかもそれからすぐに三日月みたいな斬撃が地下から地上へ向けて飛び出てきたな」

 

 

間違いなく巌勝だ。しかも月の呼吸まで使っている。という事はガイの言葉に偽りは無い事の証明になる。

 

 

「誰?その巌勝って……」

 

「以前話した縁壱先生のお兄さん……元上弦の壱、即ち鬼舞辻無惨に次ぐ実力を持っていた最強の鬼だった方よ。私も一度手合わせしたけど……まるで歯が立たなかったわ。しかも彼は全然本気ではなかったし」

 

 

日の呼吸を会得し、痣まで発現させたカナエでも歯が立たないという巌勝の実力を聞いて驚愕するガイとアーシア以外の者達。その中でただ一人、小猫だけは別の事を考えていた。

 

 

(巌勝さんってソランさんと一緒にいた……?その巌勝さんがその神衛隊の一員だとしたら、もう一人一緒にいた三日月さんって人ももしかすると……じゃあ、ソランさんは……?確か三日月さんはソランさんをサーガ様って……)

 

 

小猫はあの日以来、ある人物の事をよく考えるようになっていた。一見無愛想だが、話してみると無愛想というより感情表現が下手というか、どことなく自分に似ている気がする。でもさり気ない気遣いや真面目な部分から印象は悪くない。しかもあの時、最後に見た笑顔が―

 

 

「〜〜〜!!」

 

「ど、どうしたの小猫ちゃん!?」

 

「な……なんでもありませんムッコロ先輩」

 

「違うぅぅぅ!!やっぱりなんか変よ!?」

 

 

真っ赤になってブンブン頭を振っていた小猫を心配したカナエだったが、今だ混乱しているのか、カナエのあの発現にインパクトがあったからか変な呼び方をしてしまっている。頑張れカナエ、ゼノヴィアも似たような目にあったし、巌勝もペドロの人呼ばわりされたぞ。

 

 

「そちらの事情は分からないけど、ともかく強力な援軍が来てくれるかもしれないのは理解したわ。イッセーと裕斗、タイガ達がいないのは痛いけどここは私達が頑張らないといけないわね。ライザーの時と違い今度は死線よ……けど、こちらも体調はほぼ万全。生きてまたこの学園に通うわよ、皆!」

 

 

力強く頷くオカ研メンバー。ガイもそれを見て笑みが溢れる。

 

 

(この逆境にも気持ち負けしていない。レジェンドさんの言っていたように彼女らがこの世界での『防衛チーム』ってやつだな)

 

 

リアスの号令で、学園へと突入していくカナエ達。ガイもまたそれに続いていく。

 

 

 

 

 月が照らす校庭に、普段はあるはずのない巨大な魔方陣があり、その中には五本のエクスカリバーが浮かんでいる。

 

 

「バルパー、エクスカリバーの統合にはあとどれくらい掛かる?」

 

「術式は安定している。五分もかからんよ、コカビエル」

 

「そうか、では頼むぞ。俺はその間に余興でも楽しませてもらう」

 

 

廃教会より命からがら脱出してきたコカビエルは既にバルパーらと合流していた。斬られた箇所からの流血も止まっているが、コカビエルはあの二人を忌々しく思う。片や超絶的な戦闘力で、片や底知れぬ何かで、自身に恐怖を植え付けたあの二人を。

 

 

(戦争を望んでいるこの俺が戦う事を自然と拒否するような奴らだと……!?何なんだ奴らは……!!)

 

 

今思い出しても背筋が凍る。光の槍さえも容易に斬り裂き迫り来る月の斬撃。同じ堕天使のはずでありながらまるで次元が違う威圧感。なんとしてもあの場は切り抜けねばならなかった。事実、あそこにそのままいればレジェンドやオーフィスとも正面切って戦うハメになり、まず死んでいただろう。

 

そこにリアスやガイ達がやって来る。リアス達はその光景に息を飲むが、ガイに関しては何やら似たような経験があるのか、険しい表情でそれを見ていた。

 

 

「何をしているのかしら?バルパー・ガリレイ」

 

「おやおや、紅蓮の滅殺姫リアス・グレモリー殿。今まさにエクスカリバーが一つになるのだよ。本来なら四本を統合するはずだったのだが、予定外に一本追加で手に入れる事が出来たのでね。五本のエクスカリバーを統合する事が出来そうだ」

 

(……何か既視感があると思ったが、そうだ。マガタノオロチが誕生する直前に似ている。あれは場所が東京タワーだったな)

 

 

原理としては違うが、雰囲気としてはその通りだろう。ガイがそんな事を考えていると上空のコカビエルがこちらを吟味するように見ていた。

 

 

「あれが……コカビエル!」

 

「ほう……未熟な連中が徒党を組んで来るかと思ったが……どういうわけか知らんが予想より楽しめそうな感じがするな。特にそこの剣士の娘と唯一の男」

 

「カナエだけじゃなくて彼まで!?」

 

「ふん、やはりまだ小物の域は出ていないか。そこの男、飄々としているが相当な実力を隠し持っている。しかも天才という言葉で片付けられないようなものをな。どうやら余程戦いを経験してきたようだ」

 

「無ければ無い方が良いんだがな、そんなのは」

 

 

コカビエルは興味深くガイを見ているが、ガイはそれに対して短く吐き捨てる。

 

 

「まあいい。それよりも折角この学園を狙ったのだ、魔王の妹の通うこの学園をな。サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?」

 

「その二人の代わりに私達が―」

 

 

その瞬間、コカビエルから光の槍が放たれるが、リアスは咄嗟に滅びの魔力を発動し間一髪相殺する事に成功する。もっともだいぶ魔力を持っていかれたが。

 

 

「ふむ。つまらんと思っていたが、楽しめそうな予感から確信に変わった。簡単に終わってくれるなよ。まずは……そうだな、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか」

 

「それはコイツの事か?」

 

「……何?」

 

 

ガイの声が聞こえた方向を向くと、そこには一方的にやられたであろうケルベロスが虫の息で横たわっていた。しかもガイは傷一つ付くどころか息さえ切らしていない。

 

 

『!?』

 

「悪いな、そっちが話し込んでる時に妙な気配を感じたんで先にやらせてもらったぜ。レジェンドさんから生身での戦闘をレクチャーされてて助かった。おかげで苦もなく倒せたよ。俺を驚かせたいならケルベロスじゃなくてヘルべロスを連れてきな」

 

 

ケルベロスを単独で戦闘不能にしたガイの手には、見慣れぬ短剣が握られていた。

 

 

「貴様……!まさか短剣(それ)でケルベロスを倒したというのか!?」

 

「だったらどうした?」

 

「クックック……ハァーッハッハッハ!!これはいい!余興程度にはなればと思ったが、奴に続いて思わぬ獲物がかかったな!!」

 

 

戦闘狂の血が騒ぐのか、ガイを見るコカビエルの目はさらに好奇に満ちている。対するガイの目は冷ややかだ。

すると突如新たな気配を感じたガイがそちらへ視線を向けると……

 

 

「グルォアアアアア!!」

 

「はわっ!?」

 

「二体目がいたのか!!」

 

 

どうやらその通りらしく、背後からもう一体のケルベロスがアーシアらに襲いかかってきた。……のだが。

 

 

日の呼吸 参ノ型

 

烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

 

 

「ガ……!?」

 

「ふぅ……モスちゃんやゴモちゃんと違って可愛げがないわね」

 

 

カナエの日の呼吸の剣技によっていとも簡単に真っ二つにされた。これが巌勝なら微塵切りに、縁壱なら木っ端微塵にされていたところである。

 

 

「へえ……大したもんだ」

 

「まだまだですよ。縁壱先生ならいちいち相手を見なくてもその場から動かず斬れますので」

 

「……悪い、その人と比べちゃいけない気がするんだが」

 

「同感よ。お兄様が戦う前から本気で恐怖した縁壱先生を引き合いに出すのはやめなさい、カナエ」

 

「……おい、待て。あのサーゼクスが戦わずして恐怖しただと……?」

 

 

リアスの発言にコカビエルが反応した。おかしな事を聞いたからだ。サーゼクスが恐怖した?何に?

 

 

「運が良かったわね、コカビエル。縁壱先生は先日一仕事終えて、この町を離れたばかりよ」

 

「ちっ……」

 

 

戦闘狂であるコカビエルが縁壱と戦いたいと思わないのは巌勝の血縁と本能的に察知しているからだろうか?そう思ってコカビエルを改めて見ると……

 

 

「……?翼が八枚……?」

 

「それは何かおかしい事なのか?」

 

「え、ええ。確かコカビエルの翼は十枚だったはずよ」

 

「あの剣士だ!!」

 

 

突然コカビエルが激昂し大声で叫びリアス達は驚くが、ガイは平然としている。心当たりがあるからだ。

 

 

「それ、巌勝って人にやられたんだろ。俺が最初に見た斬撃のそれか、その後にやり合った結果かは分からないけどな」

 

「そうだ……!あの妙な剣技を使う剣士のおかげでこのザマだ!次にあった時は奴を殺す!何があろうとな!」

 

 

これを聞いてカナエは思った。絶対無理だと。

しかもこの台詞、縁壱に聞かれようものならサーゼクスの時以上に圧をかけられた挙句細切れにされるだろう。だって兄上大好きだもんあの人。

そうこう言っているうちに、廃教会へ行っていた一誠、裕斗、ゼノヴィアとトライスクワッドが合流した。

 

 

「部長!」

 

「イッセー!裕斗も!無事だったのね!」

 

「はい!お仕置きは後で受けるんで、今はエクスカリバーを……あれ、タイガ達どうしたんだ?」

 

「ぅえ!?い、いや……なんでも」

 

「そうか?まあいいや」

 

 

タイガやタイタス、フーマが動揺しているのは先日のサーガに続いて……

 

 

((なんであの人までいるんだよォォォ!!))

 

(最近やたら著名人に会うな)

 

(言ってる場合か!?だって……ほらァァァ!!こっち向いて嫌な笑顔向けてるし!絶対イジられるの目に見えてるしぃぃぃ!!)

 

(スンマセーン!俺正真正銘アンタの後輩なんですが!イジるならこっちの二人に……)

 

(フーマァァァ!?おまっ……俺達を売る気か!?一蓮托生だ!!)

 

(こうなったらロッソブルグリージョの三兄妹を盾にするしかない!)

 

(おい旦那ァァァ!?アンタ賢者だろ!?兄貴二人はともかくグリージョはヒドくねーか!?)

 

(むしろ彼女ならば彼もイジらないかもしれん!)

 

(いやそれ以前にあの二人を犠牲にしてる時点で駄目だろ!!ともかくとかそういう問題じゃないからな!?)

 

 

彼らがアタフタする理由は意地悪そうな笑みを浮かべてるガイである。絶対ちょっかいかけそうな雰囲気だ。無論、そこまで悪い事するわけではなくスキンシップの一環に近いのだが。

 

 

「元気そうだな、トライスクワッド?」

 

「「「ぎゃあああああ!?」」」

 

 

ニヤニヤと笑いながらガイはレジェンドからプレゼントされたらしいウルフォンを取り出した。

 

 

「とりあえずタイガのその姿を写真にしてタロウさんに送っとくか。タイトルは『不思議の国のタイガ』で」

 

「うわああああ!?待ってくださいよ先輩!!」

 

「え、先輩!?」

 

 

タイガの叫びに一誠はもちろん他のオカ研メンバーも驚いていた。タイガにとって先輩だとしたら、ガイの正体は即ち……と、その時。

 

 

「―完成だ」

 

 

一同が声のした方向を向くと、それまで校庭で光を放ち続けていたエクスカリバーの輝きが一層高まり、五本の聖剣が重なるように一つになっていき、一瞬更に強く光を放った後その場には青白いオーラを纏う一本の剣があった。

 

 

「エクスカリバーが一本になった光で下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない。もっともそれが出来れば、の話だがね」

 

「出来ればじゃない!やるんだよ!」

 

「バルパーとか言ったな。お前、とんでもなくヤバい連中に目をつけられてるぜ」

 

「ほう?」

 

 

ガイの言葉に対し、相変わらず見下すような態度を崩さないバルパーだったが、カナエやアーシアは思い出す。自分達もその行いは許せないが、自分達とは比べ物にならない程の憎悪をバルパーに抱く者がいる事を。下手すれば裕斗のそれより遥かに凄まじいそれはすぐ近くにまで来ている。

 

 

「そんな事はどうでもいい。フリード、陣のエクスカリバーを使え。最後の余興だ。五本の力を得たエクスカリバーで戦ってみせろ」

 

「はいよーボス。丁度お誂え向きに花ビラ女もいることですし?ここは神父らしく誓い守ってズタバラにしちゃいましょーかねぇ!」

 

 

コカビエルに呼ばれて現れたフリードが統合されたエクスカリバーを手に取り、一誠達……特に因縁のあるカナエに対して切っ先を向ける。

 

 

「……最早ああなった以上、エクスカリバーの核だけでも持ち帰れればいい。あの剣はここで破壊した方が得策だ」

 

 

ゼノヴィアが決意したように言う。倒されてここにはいないイリナもそれには同意していた。何かあれば最悪核だけでも無事ならば構わないと。彼女の意見にその場の者達が頷くと同時に、裕斗がバルパーを睨みながら一歩前に出る。

 

 

「バルパー・ガリレイ。僕はお前が引き起こした『聖剣計画』の生き残り……否、その怨霊だ」

 

「ほぅ、あの時のか。こんな極東の地で巡り会うとは。どんな運命なのやら……しかし君達の尊い犠牲によって、あの計画は成功したんだよ」

 

「何だと? お前は僕達を失敗作として処分したじゃないか」

 

 

裕斗の言葉にカナエやアーシアはサーガの言葉を思い出す。『適応出来なかった者は全員処分された』―しかも計画に関しては既に廃棄されている。つまり計画は失敗に終わったはずだ。継続されているとも思えない。

 

 

「聖剣を使うのに必要な因子がある事に気付いた私は、その因子の数値で適正を調べた。被験者の少年少女、ほぼ全員に因子はあるものの、どれもこれもエクスカリバーを扱える数値に満たなかったのだ。そこで私は一つの結論に至った。ならば『因子だけを抽出し、集めることはできないか?』とな」

 

「つまり塵も積もれば山となる、の理論でその集めた因子を一つにして能力の優秀な被験体に投与し、人工的に聖剣に適応した人材を作ろうとしたってわけか……腐ってるな、お前」

 

 

バルパーの言葉に続けるようにしてガイが語る。最後の言葉から分かるようにガイも相当頭に来ているようだ。そのガイの言葉を気にも止めず、バルパーは懐から光輝く玉を取り出す。

 

 

「何とでも言うがいい。そしてこれはその時の物だ。三つほどフリードに使ったがね。これは最後の一つだ」

 

「 俺以外の奴らは途中で因子に体がついていけなくなって、死んじまったけどな! うーん、そう考えると俺様はスペシャルだねぇ」

 

「バルパー……貴様ッ!!」

 

「オルガさんが言ってたわ……自分達がいたところでは『ヒューマンデブリ』宇宙に漂うゴミのように履いて捨てるほどあるもの……そういう扱いを受けた子供達がいるって……」

 

「んー?ゴミはゴミでもリサイクル出来たんだからマシでしょーよ。使えない奴が持ってたって宝の持ち腐れだし?」

 

 

裕斗はもちろん、カナエも最早爆発寸前だった。意思に関係なく痣は発現し、握られていた日輪刀は既に赫刀と化している。バルパーはそんなものお構いなしに嘲笑う。

 

 

「まぁ直にこいつを量産することが出来る。これは餞別だ、お前にくれてやろう。最もたった一つの因子の結晶ではどうにもならんがね」

 

 

手にしていた最後の一個を裕斗に向かって投げ捨てるように放った。足元にやってきたそれを、彼は屈んで手にする。ガイは自然と裕斗の傍に近寄っていく。

 

 

「……皆……」

 

「……」

 

 

涙を流す裕斗をガイは黙って傍らで見守っている。そして涙の一滴が因子の結晶に落ちた時、その結晶から眩い光が迸り、裕斗とガイを囲むようにその光が一つ、また一つと人の形になっていく。徐々にそれははっきりとした少年少女の姿になり、裕斗とガイの前に現れた。

 

 

「これは……一体何が起こっているんだ?」

 

「これが君が築いてきた『絆』だ」

 

「え?」

 

「君は復讐を誓ってなお、死んでいった彼らの事を想い続けた。それが、今それを介して形になったんだ。君に……『託す』為に」

 

 

穏やかにガイが裕斗に諭す。それを聞いた裕斗は人の形を取った霊魂達に自分の胸のうちを語る。

 

 

「……ずっと、ずっと考えてきたんだ。僕より夢を……意思を持っていた君達ではなく……僕一人が生きてていいのかって……」

 

 

思いを吐露する裕斗を、穏やかな顔で見つめ続ける少年少女達。彼らの思いを代弁するかのようにガイは裕斗に再び告げる。

 

 

「生きていいのかじゃない。生きるべきなんだ。彼らを忘れない為に。彼らが本当の意味で生き続ける為に」

 

「生き続ける、為に……」

 

「君が生き続ける限り、彼らの想いは消えない。これから先もずっと」

 

 

その言葉を告げると、ガイは懐からハーモニカを取り出し、ある曲を吹き始める。その音色に合わせるかのように霊魂達はリズミカルな口調で唇を動かす。すると今度はアーシアがそれを読み取った。

 

 

「聖歌……」

 

 

ガイの吹くハーモニカの音色に合わせ歌う少年少女の霊魂達。涙を流して同じように口ずさむ裕斗。いつのまにか彼らを包むように光が強くなり、やがてそれは校庭を眩く照らし出す。

 

 

『僕らは、一人ではダメだった』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど』

 

『皆が集まれば、きっと大丈夫』

 

『諦めなければ、勇者が力を貸してくれる』

 

 

はっきりとした声が聞こえた中のキーワード『勇者』―それに裕斗は何かを思い出した。かつて同志達と全く同じ夢を見た時の事。強大な異形の怪物に剣を携えた光の巨人が立ち向かう光景。皆その姿に、憧れた。自分達もあの巨人のようになりたい。あの巨人がきっと『勇者』なのだろう。懐かしい気持ちになる裕斗の中に霊魂達は一つずつ吸い込まれていく。

 

 

『聖剣を受け入れるんだ』

 

『怖くなんてない』

 

『たとえ神がいなくても』

 

『僕達の心はいつだって』

 

 

 

 

 

「―ひとつだ」

 

 

巌勝に続き迷いを振り切った騎士が、そこにはいた。

 

 

「僕は剣になる。部長、仲間たちの剣となる! 今こそ僕の想いに応えてくれ! 『魔剣創造』!!」

 

 

魔剣創造によって作り出されようとする剣に変化があった。先程の裕斗のように魂が今度は剣へと同化していく。

それは『聖』と『魔』が一つになる証。

 

 

『至った……あの『騎士』は至ったんだ』

 

「ドライグ……?」

 

「至ったって……まさか、裕斗は」

 

『神器は所有者の想いを糧に変化と進化をしながら強くなってゆく。だが、それとは別の領域がある。所有者の想いが、願いが、この世界に漂う流れに逆らうほどの劇的な転じ方をしたとき、神器は至る。そう、それこそが』

 

 

ドライグは一誠とタイガに答える。一誠は既に手にしていた、その力の名を。

 

 

『禁手だ』

 

 

裕斗の手に握られていた『騎士殺し』。外見こそかつてと同じそれは二つの力の結晶とも言えるもの。

禁手『双覇の聖魔剣(ソードオブビトレイヤー)』によって生み出された新たなる大剣だった。

 

 

「見せてもらったぜ、君達の絆」

 

「ありがとうございます……えっと」

 

「クレナイガイ。風来坊だ」

 

 

そうは思えない、と苦笑しながらも納得する。彼が自分を、自分達を後押ししてくれたのは紛れもない事実。さらに、そんな彼らを見てゼノヴィアも奮起した。

 

 

「先輩……でいいのかな?さすがだ。私も負けないように力を解放するとしよう……ぺトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ。この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!!」

 

 

ゼノヴィアが呪文らしきものを唱えると、目の前に空間の歪みが発生しゼノヴィアはそこに手を突っ込みそこからエクスカリバーとは違う一本の聖剣を取り出した。それを見たバルパーとコカビエルは同時に驚愕の表情になる。

 

 

「デュランダルだと!?」

 

「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!?」

 

「残念。私は元々聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない」

 

「バカな! 私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達してはいないぞ!?」

 

「それはそうだろう。ヴァチカンでも人工的なデュランダル使いは造れていない」

 

「では何故だ!?」

 

「簡単だ。人工的ではなく天然物、天賦の才ってやつさ」

 

「そういうことだ、イリナを助けてくれた風来坊さん」

 

 

デュランダルはかなり有名な聖剣であるが、ガイはともかくカナエはどれ程のものかあまり理解していない。とりあえず「エクスカリバーより凄い剣」程度の認識だ。というのもジェントらが所有する七星剣がぶっ飛び過ぎて余程のものでない限りさして気にも止めなくなっているだけなのだが。

 

 

「君は良いのかな?」

 

「ええ。私の呼吸法は実戦になってからが本番ですので」

 

「じゃ、次は俺だな」

 

 

カナエの元々の呼吸法である花の呼吸にせよ、後天的に体得出来た日の呼吸にせよ、いずれも型というのは基本的に戦闘になってこそ使われる。後者に限り『ヒノカミ神楽』として神楽舞扱いにする事も可能ではあるが。

ガイはカナエの言葉を聞くや否や手にした短剣に手を添えると、短剣が光輝きリングの部分が小さくなって刀身が長くなった。形状としては長剣と言った方が正しい。

 

 

「短剣が別の形に……!」

 

「これでも本来の形じゃなくてね。取り回しがいいからさっきの短剣形態と平行して普段は使ってるんだ」

 

「本来の形じゃない!?まだ別の形態があるのか!」

 

「ああ。その形態でこそ、この剣は真価を発揮する。この勇者の聖剣オーブカリバーはな」

 

『ゆ、勇者の聖剣オーブカリバー!?』

 

 

ここにきてガイの持つそれの名前が明らかになり、トライスクワッドを除きバルパーやコカビエルさえも驚愕する。エクスカリバーでもデュランダルでもなく、全く聞いた事のない聖剣だったのだ。

 

 

「オーブカリバー!?何だそのエクスカリバーの紛い物のような名の聖剣は!!」

 

「紛い物はそれの事だろ。コイツはれっきとした聖剣だ。剣だけじゃ真価を発揮出来なくて、エレメントを四つ分手に入れるのも苦労したんだぜ」

 

「エレメント……?」

 

「このオーブカリバーには火・水・土・風のエレメントが込められているが、何も最初から込められてたわけじゃない。広い宇宙を巡り巡って漸く集めたんだ。しかも、それから使いこなすのにかなり時間が掛かったしな」

 

 

次々と明らかになる事実に愕然とする。宇宙を巡り聖剣の為のエレメントとやらを集め、それを使いこなす為に修行を重ねたガイ。そしてタイガが口走った先輩という単語。そして極めつけがフーマの話だ。

 

 

「……俺の生まれ、惑星Oー50のある場所にはある剣があった。辿り着くだけでも困難なその場所に一本の剣が。必死の思いでそこに辿り着いてもそれに選ばれる者は長らく現れなかった」

 

『……』

 

 

フーマは感慨深く続ける。

 

 

「でもある時、そこに辿り着き……その聖剣に選ばれ力を授かった者が現れた。その者はウルトラマンとなり、聖剣を手に数々の星を巡り、後に魔王獣と呼ばれる厄災を打ち倒し、英雄と呼ばれるようになった」

 

 

これを聞いた裕斗は目を見開いた。もしや、同志達と共に見た夢に現れた光の巨人と異形の怪物はそれなのではないかと。

 

 

「勇者の聖剣オーブカリバーに選ばれたその者の名はクレナイガイ、又の名を……」

 

 

 

 

 

ウルトラマンオーブ

 

 

 

 

 

『ウ、ウルトラマンオーブ!?』

 

「風来坊じゃなかったの!?」

 

「これでも遊撃隊に所属してるんだぜ?総司令からは『ちゃんと仕事さえしてくれるなら自由にしてていい』って許可貰ってるから気ままにあちこち行ってるだけさ」

 

 

まさかの正体に驚きを隠せないリアス達だったが、あまりの逆転展開にフリードが苛立ち始めた。

 

 

「ふッざけんなよォォォ!!なんでここまできてワケの分かんねー聖剣を風来坊だがプータローだかが持ってんだよ!!いらねーんだよそんなクソ展開はァァァ!!」

 

「だからプータローじゃなくて就職してるっての。割と自由な職種だし、先輩方や総司令も良い人だしな。お前も真っ当に生きろよ」

 

「ウゼーんだよこのぽっと出野郎!!そぉーだ、お前をエクスカリバーでぶった斬ってその聖剣も俺様のモンにしちゃおー!」

 

「お断りだ。聖剣が何たるか、その本質を知らないお前にコイツは渡せない」

 

 

ガイとフリードが舌戦を繰り広げる中、バルパーは再び笑みを浮かべる。

 

 

「クッ……ククク……」

 

「何が可笑しい?気でも触れたかバルパー」

 

「やはり保険は掛けていて正解だったな。私が不測の事態に対して何も対策を取っていないとでも思ったのか?」

 

「何……!?」

 

「……!皆下がれ!」

 

 

ガイの指示に自然と身体が動きその場を離れると、空から多数の()()()()が勢いよく降りてきた。まるでスタンバイしていたかのように。

 

 

「何だ、これは……!?」

 

「これ……MS(モビルスーツ)……!」

 

 

未知の存在に驚くゼノヴィアに対し、カナエはそれの正体を知っている。シミュレーターで何度か見た事のある機体ばかりだ。

 

 

「ほう?これを知っているのか。何故……かはどうでもいいな。実はある者から提供されてね。使い心地を知りたいそうなので私達に協力してくれているはぐれ神父や堕天使達に乗ってもらっているのだよ。思いの外扱いやすいようだぞ?」

 

「くそっ……ここに来てこんな邪魔が……!」

 

 

はぐれ神父や堕天使が乗っているMSはかの宇宙世紀世界におけるグリプス戦役以降の機体―マラサイやハイザック、バーザム。さらにはバウやガザD、ジェガンやネモなど軍を問わない混成機部隊だ。殆ど量産機とはいえ如何せん数が多い。タイムリミットが迫る中、まさに万事休すである。

何とかしてコカビエルを倒すか、もしくは魔方陣そのものを術式ごとどうにかするしかないのだが……

 

 

「誤算なのはお前達だったな。精々足掻いてみるといい。どれだけ抵抗しようが結局は無駄になるだろうがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、魔方陣(それ)を最初に潰すから」

 

その言葉と共に、何かが降ってきた。

 

 

 

 

 

ズドォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬の事だった。

何かを突き刺す姿勢で空から降ってきたそれは、そのまま校庭に勢いよく異様に巨大な鉄塊を突き刺す。轟音と振動を発生させながら、魔方陣はひび割れるように砕け散った。

 

 

「バ……バカな!?この町を壊滅させる程の威力を持った魔方陣を力任せに破壊するな……ど……」

 

 

バルパーは信じられない表情で破壊された魔方陣を見、その破壊した存在を睨みつけようとして言葉を失った。

 

四本の角状のアンテナに、鋭利な爪を持った長い腕や脚。背部には折り畳まれた巨大な何かを背負い、尻尾のような物も見える。そして一際目を引くのがあり得ないほど巨大な鈍器を手にしていた。そしてその緑の双貌がバルパーを射抜く。

 

 

「ひいっ!?」

 

 

バルパーは無意識にそれに恐怖を覚えた。明らかに自分に対して圧倒的な憎悪を放つ目の前の存在がこの上ない程恐ろしいものだと、直感的に身体が歯向かう事を拒否している。逃げなければ、と思うが恐怖のあまり身体が動かない。

そこでカナエの一言によってさらなる衝撃が投下される。

 

 

「バルバトス……!!」

 

「バッ……バルバトスですって!?」

 

「そんな筈はない!あのバルバトス家は既に滅び去ったはずだ!まさか機械の身体になって存続していたとでも言うのか!?」

 

 

この世界では冥界においてバルバトス家は滅亡しているらしい。が、そんな事は『彼』の知った事ではない。

 

 

「カナエ、アーシア。二人とも無事?」

 

「「三日月さん!!」」

 

「三日月さんって……やっぱりあのソランさんと一緒にいた……!」

 

 

小猫の予想通り、三日月は関係者だった。もっともこの場でそれ以上に食いついてきたのは別の者だが。

 

 

「カナエ!今これをバルバトスって言ったわよね!?どういう事なの!?」

 

「リアス、これは貴女達の知ってるバルバトスではないの。ある世界で厄災戦という戦があり、その最中に開発されたガンダム・フレームと呼ばれる特別な機体の内の一機。正確にはそれを一から作り直したものらしいけど」

 

「厄……災戦?」

 

「目の前にいるMSと同種のものであり、同時に異なるものでもある。それがこのネオ・ガンダムバルバトスルプスレクスだと言っていたわ。彼ら『鉄華団』の使うガンダム・フレームは皆ネオ・カテゴリに属しているとかなんとか……う〜ん……巌勝さんとかグレイフィアさんとかミライさんの方が詳しいかも。特に巌勝さんはまだ一機しかないターンタイプってカテゴリのMSに乗ってる同じ神衛隊所属の方だし」

 

「情報が多過ぎて混乱してきたわ……とりあえず、敵ではないのよね?」

 

「ええ、もちろん。敵どころかこの上ない頼もしい味方よ。なにせ鉄華団のトップエースだもの」

 

 

カナエは嬉しそうな声でバルバトスを見上げながら告げた。ガイの言葉通り、バルパーやコカビエルにとってはとんでもない相手が最悪のタイミングで、リアス達にとっては危機一髪のタイミングで凄まじい援軍が到着したという事だ。

 

 

「ねえ、大剣の人」

 

「僕の事……で、いいのかな?」

 

「うん。さっきの会話、風来坊さんのウルフォンを通じてバルバトスの中で聴いてた。全部」

 

 

バルバトスの中で、というからには一体化していると思われがちだが(あながち間違いでもない)MSである以上、通信を傍受したかそれに準ずる方法で聴いていたのだろう。

 

 

「アンタがバルパー(そいつ)に怨みがあるのもわかった。けど、アイツは俺にやらせてほしい」

 

「理由を聞いてもいいかな?」

 

「……ヒューマンデブリ」

 

『!!』

 

 

たった一言で全てを理解した。彼は、三日月はヒューマンデブリと深い関わりがある。カナエの話が事実なら彼がバルパーを仕留めたくなる理由は明確。

 

 

「アイツを俺に任せてくれるなら、アンタが超えるべき聖剣までの道は俺が作る」

 

 

つまりフリードは裕斗に任せるから、バルパーは自分に任せろと言う事。少し前の裕斗なら反発したかもしれないが、今は違う。ガイが裕斗の方を優しく叩き、笑みを浮かべながら頷く。

 

 

「もう一つだけ、条件がある」

 

「何?」

 

「やるなら、完璧にお願いしたい。頼めるかな」

 

「分かってる。アイツはここで終わらせる。何があっても」

 

 

その言葉には確かな決意が込められてた。彼なら、信頼出来る。裕斗は了承した。

 

 

「頼んだよ、三日月さん……でいいんだよね?」

 

「うん。あと……」

 

 

良い剣だな、それ。

 

三日月は裕斗が新たに生み出した剣を短く、しかしハッキリと褒めた。言葉は少ないが、逆に彼の気持ちがストレートに伝わった裕斗は自然と顔が綻ぶ。剣が褒められたという事は同志達も褒められたという事だから。

 

 

「俺は神衛隊(ここ)で大切なものを沢山貰った。大切なものが沢山出来た。今も、志を同じくする仲間が出来た。全部、俺の宝物だ。だから」

 

 

三日月はバルバトスをガイや裕斗の方を向けて、片膝をついて鉄塊を持っていない腕を握り拳にさせてゆっくりと突き出す。

 

 

 

 

 

宝物(みんな)は俺が護るよ」

 

 

 

 

 

穏やかで、しかし力強い言葉。

三日月がバルバトスを介してやろうとした事に気付いたガイ、裕斗、カナエ、ゼノヴィアはそれぞれ笑顔になり、突き出されたバルバトスの拳に自分達の拳を合わせる。

戦士達の、約束。生まれた絆。

 

 

「た、確かに驚きはしたが……所詮は機械人形一機。機械である以上、動きにある程度の制限はあるだろう。ましてやそのお仲間とやらを護りながらどれだけ戦えるかな?」

 

 

暫く視線が外されたからか、再び強気になるバルパーだったがそれが間違いである事に気付くはずもない。ネオ・ガンダム・フレームには新生阿頼耶識システムがある。

 

 

「まずは皆があの聖剣持ちのところに行くまでの道をつくる。行くぞ、バルバトス」

 

 

今、鋼の悪魔(バルバトス)が始動する。

 

 

 

 

 

まずは一撃。そう、たった一撃だけ。

一撃だけで、少し離れていたガザDはズズン……と音を立てて墜ちた。()()()()()()()()が。

 

 

『……え?』

 

 

バルパーやコカビエルを含めた全員が惚ける中、もう一箇所にいた機体……ハイザックが倒れていた。その機体のコックピット部分に、ひしゃげたガザDの上半身をめり込ませて、中から……()()()()()()結果であろう血を垂れ流しながら。

 

 

「思ってたより脆かったな」

 

 

そうではない。バルバトスの一撃が異常なまでに重く、速かったのだ。手にした鉄塊―可変式超大型メイスの一撃は容易く二機のMSを叩き潰した。

 

 

「う……うわああああ!!」

 

「ひ、怯むな!敵は一機、しかも見た感じ近接戦闘重視だ!近づかなければ」

 

 

ゴ シ ャ ッ

 

 

指示を出していたバウが、恐ろしい速度で接近したバルバトスによってパイロット諸共鉄屑と化す。やはりと言うか、潰されたコックピット部分からは血が流れている。

 

 

「うるさいな」

 

 

短く呟く三日月。だが、それ故に恐ろしさがあった。ガザDをハイザックごと屠った時も、たった今バウを潰した時も、相手を叩き潰す事にまるで抵抗がない。

少なからず命を奪う事に躊躇するだろうと考えていたバルパーの目論見は一瞬で瓦解した。殺される―バルパーの脳裏には最早それしか浮かんで来なかった。

 

 

「遠距離から集中砲火だ!奴に接近を許……」

 

 

声が途中で途切れた事に危機感を感じつつ見てみると、バーザムのコックピットにメイスが形を変えて突き刺さっていた。可変式と頭に付いているように、バルバトスのメインウェポンである今の超大型メイスは三形態に変形させる事が出来る。基本となるメイス形態、パワーこそ下がるがリーチに優れ取り回しやすいソードメイス形態、そして逆にリーチは短いものの圧倒的な威力を誇るレンチメイス形態。バーザムにはソードメイス形態にしてそれを投擲したのだ。

 

 

「しめたぞ!今の奴は丸腰だ!」

 

「畳み掛けろ!反撃させるな!」

 

 

それぞれ機体に乗った神父や堕天使がこれ幸いにと攻撃を仕掛ける。しかし、それが甘い考えだとすぐに知る。

 

 

「くらえ!化け……」

 

 

ズ シ ャ ン ! !

 

 

突然ジェガンが縦に真っ二つになった。当然中のパイロットもだ。何が起こったのか周りの者は気付いていない。そのまま続けて一機、また一機と斬り裂かれる。

 

 

「何だこれは……!?何なんだこれは!?」

 

「……!!あれは!!」

 

 

誰かが気付いた。バルバトスの背後から何かが伸びており、それが次々と味方機を斬り裂いているのだと。

 

 

「尻尾……!?」

 

 

だが、反応が遅かった。三日月の駆るバルバトスが目の前まで接近し―

 

 

「ひっ!!やめ……」

 

 

グシャアァッ!!

 

 

ネオ・レクスネイルで胴を貫き、コックピットを握り潰す。もはやバルパーやコカビエルのみならず、リアスや朱乃さえ口元に手を当てて青ざめている。悪魔よりも悪魔らしい凄惨な戦い方だ。元々そういう戦い方とはいえ、今の三日月には遠慮がない。それだけ凄まじい怒りがあるという事。そして、さらに堕天使達は絶望を知る。

 

 

「何でだ!?ビームがまるで効いていない!確かに当たっているのに!!」

 

「それだけじゃない……実弾武器でほんの少し傷付けられたと思ったのにすぐに修復される!何なんだあれは!?」

 

 

そもそもナノラミネートアーマーによってビーム兵器は余程のものでない限り無効になる。シミュレーターにてアムロのCPUが超出力のハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーを至近距離……ほぼ零距離で発射したのもそれが原因である。特別な粒子ビームか、前述の武装のような超出力のものでない限り、ビーム兵器ではまともに傷一つ付けられないのだ。

加えて、これは開発した束によってつい最近施されたものなのだが、巌勝の機体であるターンXと同じナノスキンをバルバトスに試験的に導入しやがったのである。なんつーモンをこの化け物に搭載したんだよあの天災。当初からナノスキン装甲であったターンX程ではないが、これによってバルバトスはさらなる防御力と自己修復機能まで持ってしまった。

故に外見からは判断出来ない程にビーム・実弾問わず耐性があるのだ。

 

そして、三日月とバルバトスは想像を更に超えてきた。

新たにマラサイをパイロットごと葬ったバルバトスを狙い、ネモが背後から撃とうとするがその瞬間、()()()()()()

 

 

「何だと!?一体何……が……」

 

 

あるパイロットが見たものは、先程味方を斬り裂きまくっていたテイルブレード……その先端になんと投擲されたはずの可変式超大型メイスが連結されており、尻尾で振るっているのだ。束が新たに開発した圧倒的強度を誇るワイヤーは、あの大きさのメイスさえ余裕で振り回す事が可能な凄まじい強度としなやかさを兼ね備えており、以前にも増して三日月の変幻自在な戦い方を可能とした。

 

 

「数はかなり減った……今だ、皆……!」

 

「ああ、いくぜ三人とも!」

 

「「はい!」」 

 

「了解だッ!」

 

 

三日月からの指示を受け、ガイの号令を皮切りにカナエ、裕斗、ゼノヴィアもフリードへと突撃する。今だ残っている機体が邪魔しようとするもその度にバルバトスによって撃破され、数を減らす事になっていく。

 

 

「あーもうコイツら結局壁にもならね……!?」

 

 

フリードがボヤいた直後、ガイとカナエが一気に斬り込んできた。ウルトラマンであるガイと全集中・常中を使えるカナエは裕斗とゼノヴィアよりも身体能力が高く、先行してフリードへ攻撃を仕掛けたのだ。

 

 

「最初の自殺志願者はプータロー君と花ビラ女かよ!二名様地獄へご案なぶへっ!?」

 

「隙丸だしとは随分余裕だな?ゲス神父」

 

 

フリードがエクスカリバーを構えようとした直前、ガイの飛び膝蹴りがフリードの顔面に炸裂する。

 

 

「テメエ!意味不明な聖剣ぶん回して調子こいてんじゃねえですよ!!」

 

 

フリードは統合されたエクスカリバーの一つ『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』とイリナから奪った『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』の能力を組み合わせ、無数の斬撃を放つ。しかし、ここでカナエの切り札が発動した。

 

 

呼吸重ね 花日

 

光陽桜嵐(こうようおうらん)!!

 

 

カナエの放った新たなる技によりフリードの放った斬撃は逆に全て斬り裂かれ、そのままフリードへとダメージを与える。

本来、全集中の呼吸における型を放つ際の水や風などは単なるエフェクトに過ぎないのだが、それらを極め且つ第二幕以降へ昇華させる事でそのエフェクトは正しく型……即ち技の一部となる。例外は巌勝の使う月の呼吸で、あれは第二幕以前にも鬼の頃は血鬼術と、そして現在は光気との兼ね合いによる『闘技』として三日月状のエフェクトにも斬撃効果がある。

カナエの場合は花の呼吸を第二幕まで昇華させていた為、後天的に体得した日の呼吸にもそれが適用されている。

 

つまり、先程の技は日の呼吸の持つ凄まじい威力と、花の呼吸第二幕の特徴である無数の花弁状斬撃を組み合わせた複合奥義というわけだ。

 

 

「会う度に傷が物凄い量増えていくわね、貴方」

 

「誰のせいだこのクソ○ッチがァァァ!!」

 

 

激昂したフリードは最早エクスカリバーの能力より直接斬り込もうとするものの、ガイとカナエが下がる事で今度は裕斗とゼノヴィアが斬りかかる。

 

 

「あれが噂の呼吸法とやらか、全く私はとんでもない人物に喧嘩を売っていたのだと実感するよ!」

 

「その師匠である縁壱先生はカナエさんでさえ太刀打ち出来ないデタラメスペックだしね!」

 

 

軽口を叩きながらも二人はフリードへ、聖剣へと猛進する。フリードはどうにか防御しようとエクスカリバーの能力を発動させたのだが……

 

 

「デュランダルの一閃、受けてみよ!覇ァッ!!」

 

 

大きく振りかぶって放たれた一撃によってエクスカリバーは一気にひび割れていき、最後には根元まで粉砕。

 

 

「所詮は一度折れた聖剣、こんなものか。これでは勝負にならん。後は任せたぞ、先輩、呼吸法の剣士、風来坊!」

 

ゼノヴィアの振るう暴君・デュランダルの前には、劣化したエクスカリバーなど相手では無かった。まさかエクスカリバーがこうも簡単に、と焦るフリードに対し、裕斗は慈悲などかける必要はないとばかりに連撃を叩き込んでいく。

そして、その裕斗を後押しすべくガイとカナエは裕斗が一時的に後退したタイミングで左右から再度突撃する。

 

 

「命を軽んじる貴方には……!」

 

「明日の光を見る資格は無いッ!!」

 

 

フリードの右眼をカナエの日輪刀が、左眼をガイのオーブカリバーが同時に貫いた。

 

 

「あッぎゃあァァァァァ!!俺っちの……眼っ……両眼ッ……!!」

 

 

あまりの激痛に両眼を抑えながらのたうち回るフリードだが、この男が今までやってきた事を考えれば情も失せる。君が決めろ、とガイが裕斗に目配せすると裕斗は力強く頷き、ジェントに師事しライザー眷属と相対した時の、あの鬼気迫る表情になる。

 

 

「おおおおおォォォ!!!」

 

―見ていてくれたかい? 僕らの力は、エクスカリバーを越えたよ―

 

 

まさに鬼神の咆哮と気迫。しかし、裕斗の心の中は同志達を思い穏やかである。

そして、聖と魔、二つの力を宿した『騎士殺し』はフリードを一撃で斬り伏せた。

遂に裕斗は、己の悲願を達成する事が出来たのだ。

同時に三日月とバルバトスもまた、最後の一機を粉砕し堕天使・はぐれ神父の駆るMS軍団は壊滅。絶対優勢かと思われていた戦局はガイや三日月らの参戦によって逆転された。

 

 

「せ、聖魔剣だと……? あり得ない……反発しあう二つの要素がまじり合うなどあり得ないのだ……」

 

「生憎そう珍しくはないぜ。俺も闇と光、両方の力を併せ持つ『サンダーブレスター』って形態にフュージョンアップした事あるしな。自分の物差しだけで物事を捉えるなよ」

 

 

呆然としているバルパーにガイは言い放つが、バルパーには聞こえていないのかもしれない。すると突然バルパーは何かに勘付いたように笑い出した。

 

 

「フ……フフ……そうかわかったぞ!聖と魔、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているとするならば説明はつく! つまり「黙れよ」ひい!?」

 

 

バルパーはこの瞬間思い出した。自分はバルバトス(この悪魔)に狙われている事を。今、自分を叩き潰さんと両手で超大型メイスを振りかぶっている存在を。

 

 

「ま……待ってくれ!今私は重大な事に気がついたのだ!それを……」

 

「アンタの事情なんて知らない。アンタが子供達を処分したようにアンタも―」

 

「あ……あ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潰れろよ」

 

 

 

 

 

三日月は、バルバトスは何の躊躇もなく、可変式超大型メイス(手にした鈍器)を振り降ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グ シ ャ ア ァ ッ !!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夥しい鮮血を撒き散らしながら……バルパーは今、肉塊と化した。

 

 

 

〈続く〉




漸くエクスカリバー編も最終局面になりました。
あんまり長いのが続くのもアレなので次回は流石に少し短めに区切ろうかと。投稿までに時間が掛かってしまいますし。

いよいよ御大将降臨!


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。