ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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大変お待たせしました。前回から約十日、やっと完成です。
正直分割した方が良かったんじゃないか、でも一話ずつと言っちゃったし、でも短くすると……などなど考えながら執筆していたら過去最高を大きく更新する文字数になってしまいました。

ガイアは私にとっても思い入れのあるウルトラマンだし、今回を逃すと次回登場は『どう蒼』まで待つ必要があるので思い切って色々詰め込み。
投げの鬼たる公式戦無敗の最強形態はお預けですが、やはり後輩達にもその凄さを見せるため、そちらは今しばらくお待ち下さいませ。

戦闘終盤は是非とも主題歌「ウルトラマンガイア!」を聴きながらお楽しみ下さい。


それでは本編をどうぞ。


SIDE GAIA 救国の忠騎士と赤き大地の巨人

 ゴジラと神衛隊によるビオランテとの戦いに決着がついたのと同じ頃、『空の世界』でウルトラ騎空団の一員として活動中の我夢や藤宮もまた様々な事件を解決していた。

 

 先日、ある島で調査を行っていた我夢は漆黒の鎧を纏ったジークフリートという騎士に出会う。我夢の世界にて有名な人物と同じ名を持つ彼は元はとある国の騎士団長であったが、先代国王殺害という冤罪を被せられて国を追われ、秘密裏に行動しているという。

 

 彼を罪人に仕立て上げた人物は国の重要な役職におり、その立場を隠れ蓑にして裏では悪事を働いているらしく、ジークフリートはそれを表沙汰にする為のある情報を手に入れていた。

 

 王都フェードラッへ――星晶獣シルフの加護によって繁栄したその国では不老長寿の霊薬『アルマ』が存在していた。しかし、そのアルマを精製する際に猛毒『カルマ』が発生する事を突き止めたジークフリートは、同時に自身を陥れた執政官イザベラがその事を隠し辺境の村にそのカルマを流して処分していた事を知る。

 

 義憤に駆られた我夢はジークフリートへの協力を決意する。そして我夢の協力により、事態は大きく好転する事になる。

 

 かつてレジェンドに同行したある世界にて同じような症状を見た事のある我夢は、レジェンドが帰還する前に彼から手渡された卯ノ花直筆の医療薬学の本と自身の知識と経験から、カルマに然るべき手順を踏んである種の薬草を加えていけば、アルマには及ばずとも万能薬として機能する事を発見。この世界の薬草について知識があったジークフリートからありふれた薬草である事を知った我夢はジークフリートと共にすぐさまカルマの万能薬化に着手し、村を救う。

 

 とはいえこのままでは根本的な解決にはならないと踏んだ二人は、村の長老や村人達を味方につけ、イザベラの罪を暴く作戦に出た。

 

 我夢は王都フェードラッへの白竜騎士団に協力者として参加し、義に厚い団長のランスロットやその幼馴染で同じく白竜騎士団に属するヴェインと共にジークフリートを追い捕縛しようとするフリをして件の村へと誘い込みカルマの事、そしてイザベラの所業を教える。

 

 証拠を見せられ動揺するランスロットとヴェイン。さらに味方のはずの白竜騎士団の団員が二人を襲撃した事によって我夢とジークフリートの話は真実味を増していき、直接イザベラに問い正すべく四人は王都フェードラッへへと向かう。

 

 そしてカール国王と共に謁見の間にいたイザベラに糾弾すると案の定しらを切るが、後に続くように現れた長老や村人の証言によってイザベラはその本性を表わにし星晶獣シルフをけしかける。

 

 白竜騎士団の前身である黒竜騎士団団長だったジークフリートや、協力者である我夢の援護もありシルフは鎮められ静かに眠りにつき、イザベラは捕縛・投獄される事となった。

 

 かくして事件は解決、ジークフリートに被せられた冤罪も解け、協力してくれた我夢の恩義に報いるべくジークフリートはウルトラ騎空団へ加入する。

 

 今回は、その直後……彼らがフェードラッへを出立する前に起こった出来事である。

 

 

 

 

 その日、我夢はあてがわれた客室にてジークフリートやランスロット、ヴェインにウルフォンを使って見せていた。小さい機器にも関わらず様々な機能が明らかになる度に三人は感嘆の声を上げる。

ちなみに事件の協力者には他にソフィアという、ゼエン教の僧侶の女性もいたのだが巡礼の途中という事で名残惜しくも別れる事となった為、この場にはいない。

実は後で再会する事になるのだが……

 

 

「うおー!すっげーなこれ!どうなってんだ!?」

 

「計算機にもなるのか!経費の計算が捗りそうな機能じゃないか!」

 

「確か、通信も出来るんだったな。同じようなものを持っている者に限るようだが、情報伝達がスムーズかつ迅速に行えるのは大きな利点だ」

 

「まあ、ジークフリートさんが言っているように通信・通話が本来の使い方なんですけど、最近は色々な機能も付いてて……あ、こんな事も出来るんですよ」

 

 

三人で並んで下さい、という我夢の言葉に促され並んだ三人をウルフォンのカメラ機能で撮影し、三人に見せてみる。

 

 

「「おおお!?」」

 

「これは驚いたな。模写とは違う……さっきの俺達の姿や姿勢にブレがない」

 

「これは写真っていうもので、これを撮るために使ったのはカメラ機能です。ジークフリートさんも使ってみますか?まずはこの画面でこのアイコンをタップ……軽く触れるんです。それから……」

 

 

我夢の説明を聞きながら、今度はジークフリートがランスロットとヴェインを撮ってみる。

 

 

「あ、良い感じに撮れてますよ。なんかホントに仲良いって分かるなぁ」

 

「お!良いじゃんこれ!ランちゃんも見てみろって!」

 

「どれどれ……ははっ、本当だ。なんか子供の頃を思い出すな」

 

 

実はこの二人、幼馴染である。ランスロットの方が2歳年上だが、あまりそうは見えない。

 

 

「気に入ったのあれば、今度来た時に写真プリントアウトしたの持ってきますけど」

 

「「プリントアウト?」」

 

「早い話がこの映像を紙にそのまま移せるんです。ある程度大きさなんかも調整出来ますから、白竜騎士団の勧誘ポスターとかにもどうですか?」

 

「ほう……まさに黒竜騎士団の頃にも欲しかった機能だな。どうだランスロット、せっかくだし次回来たとき用に一枚撮ってもらったらいいんじゃないか?」

 

 

すっかりウルフォンの多機能性に夢中な三人。ジークフリートのみならずヴェインにも勧められ、ランスロットは新規入団募集用ポスターに使うべく一枚撮ってもらった。この時の写真は予告通りポスターとなり、暫く後にこれを見た女性達からのポスター注文が殺到するハメになったらしい。

 

 そんな時、ジークフリートは思い出したようにランスロットとヴェインに尋ねた。

 

 

「そういえばお前達、今日は他国からの学者が滞在する初日じゃなかったか?確か陛下への挨拶の場に白竜騎士団も同席する事になっていたと思うが」

 

「へ……?ああっ!ランちゃん、時間は!?」

 

「えっと……よし、まだ余裕はある!すぐに準備して謁見の間に急ぐぞ!騎士たるもの時間は遵守すべし、ジークフリートさん、我夢、俺達はこれで!」

 

「もし出立前に時間があったらまた色々教えてくれよ、我夢!ジークフリートさん、ランちゃん共々失礼しますっ!」

 

「ああ、焦って行動して下手を踏まないようにな」

 

「二人とも気をつけて!」

 

 

急ぎ足で出て行く二人を見送った我夢とジークフリート。そしてすぐにジークフリートは我夢に提案する。

 

 

「我夢、どうせなら陛下への出立前の挨拶も前倒しで行っておこうか。急な案件が出来てその日に挨拶出来なくなるかもしれんし……俺達も謁見の間に行くとしよう。二人と違って焦る必要はないがな」

 

「そうですね……あ、ジークフリートさん。これ」

 

 

我夢が収納用ブレスレットから取り出したのは、ジークフリートの鎧と同じ色のブレスレットとウルフォン。

 

 

「これは……」

 

「うちの騎空団では連絡や緊急時の対応を円滑にする為に団員皆が持ってるんです。僕や藤宮みたいな単独行動をする時もあるメンバーは、旅先で入団希望者がいた時にすぐ渡せるよう、予備もいくつか持ち合わせてて……丁度ジークフリートさんにピッタリの色のを持ってて良かった」

 

「良いのか?先程の機能からかなり高価な物のようだが」

 

「大丈夫です。なんかチーフがべらぼうに創り出した上、無駄に在庫もあるらしいので……文字通り『創った』から心配なのは値段よりもチーフの体調かなぁ……何でしたら代金替わりにチーフ達が来た時、美味しい外食店でも教えて上げてください。少なくとも一人、よく食べる娘がいますから」

 

 

言わずもがな、オーフィスである。団員の何名かとフードファイトした挙げ句、レッドラックという男性ドラフの僧侶兼フードファイターと互角だった。

……ここに近々おおとりゲン率いるダイブハンガー武闘派組が加わってスーパーフードファイターウルトラが発足しそうな気がする。全空最強のフードファイター軍団……十天衆とは別の意味で全空の脅威だ。

それはさておき、ウルフォンに興味はあったし、ブレスレットは鎧の上からでも装着出来てカムフラージュが出来る。何より新たに出来た友人の厚意である以上、ここで拒否するのは騎士として如何なものか。

 

 

「分かった。俺も騎空団の一員となった以上、受け取るのが筋というものだな。有り難く使わせてもらおう」

 

「ええ、そうしてくれると助かります。出した手前、引っ込め辛くて……あ、言い忘れてましたけど、これかなり丈夫なので戦闘時の衝撃にも耐えられますから。この間は盾代わりしてる人がいて藤宮に怒られてたっけ。なんでチーフこんな頑丈に創ったんだろ……」

 

「通信機器が盾代わりか……想像でも珍妙な光景しか浮かばんな」

 

 

二人して思い浮かべたのは剣や槍と共にウルフォンを構えて突撃する白竜騎士団である。変な意味でインパクト大、なんだその販促CMみたいな連中は。

 

 

「おっと、つい話し込んでしまったな。少し急ぐか」

 

 

ジークフリートの言葉に我夢は頷き、ランスロットとヴェイン同様二人は急ぎ足で謁見の間に向かった。

 

 

 

 

 謁見の間。白竜騎士団及びジークフリートや客人扱いの我夢の立ち会いの下、フェードラッへの王であるカール国王に挨拶に来たのは他の島から来たという学者のシャーカーンという人物であった。

 

 彼は植物学者だった亡き父の跡を継ぎ、同じく植物学者になるべく島々を回っているという。自身はまだまだ駆け出しであり、勉強の為に自然が多く残るフェードラッへに暫し滞在したいとの事で、カール国王もそれを了承。滞在中は我夢と同じく客人扱いとして城のゲストルームに宿泊してもらう事になった。

 

 そして現在、シャーカーンはヴェインにゲストルームへ案内されていた。

 

 

「シャーカーンさん、ここがゲストルームです。何かあれば遠慮なく俺……あ、いえ私達に言ってください!」

 

「ありがとうございます。ところで、この城は何製ですか?」

 

「へ?ええっと……普通にレンガとか……石とかだと思います」

 

「しかし所々特殊な鉱物が使われている」

 

「は?」

 

 

不可解な言葉を呟いた後、呆けたヴェインを放っておいてさっさと部屋に入って行くシャーカーン。ヴェインは釈然としないまま、その場を立ち去る事にする。

 

 

 

 

 

 それからランスロットと合流したヴェインは、再び我夢の部屋に訪れた。そこにはジークフリートもおり、二人は何やら難しい顔で何かを話し合っていたようだが、ランスロットとヴェインに気付くと少し安心したような表情になる。

 

 

「あ、お二人共ご苦労様です」

 

「あ……ああ。我夢も客人だというのにわざわざ謁見の間まで来てくれてありがとう」

 

「えっと……二人は何を話してたんだ?なんかこう、雰囲気が重かったっていうか……」

 

「……あのシャーカーンという学者の事だ。どうも腑に落ちなくてな」

 

 

ランスロットとヴェインは驚いた様に目を合わせる。何故ならヴェインは先程までそれをランスロットに伝えていたからだ。ランスロット自身もどことなくそう感じてはいたが、騎士団長という立場上それを顔に出さないようにしていた。

 

 

「天然の自然を観察するというならば、ここよりも自然が豊富な場所はいくらでもある。特にルーマシー群島などは格好の場だろう。だがそんな素振りは全くなかった。もしかするとフェードラッへ特有の植物が群生しているかもしれんが、そもそも駆け出しだというのにそこまで調べているとは思えん。だとすれば、別の何かが目的でここに来た可能性が高い」

 

「ジークフリートさんの言う通りです。僕は植物の専門ではありませんが、彼の目は学者のそれに見えませんでした。まるで獲物を狙うかのような、そんな感じがしました」

 

「ジークフリートさんや科学者の我夢が言うと、なんか真実味が一気に増すよな」

 

「実は俺とヴェインも同じ事を思っていたんです。少なくとも俺やヴェインが黒竜騎士団に入団した頃から植物学者がこの国に着目した事はなかった。最近になって新種が発見されたという報告もないし、どうも違和感があって……それに、ヴェインが変な質問をされたんです」

 

「「変な質問?」」

 

 

我夢とジークフリートは怪訝な顔をし、ヴェインは先刻質問された内容、そしてその後の呟きも二人に伝えた。

さらに訝しげな表情になる二人。

 

 

「僕はこの城の事を詳しくは知りませんが、やはりおかしい。もしそうだとしても、安易にそんな事を聞いて外部に漏れでもしたら悪用される可能性だってある」

 

「我夢の言う通り、そうであるならば機密事項になるはずだ。いくら学者といえど、他国の機密事項に突っ込んだ質問をするだろうか?こんな事を言うと責められるかもしれんが、彼には細心の注意を払った方がいいだろう……悪い意味でな」

 

 

責められるかも、とジークフリートは言うがこの場の全員がその気持ちである。但しこれはあくまでこの場にいる四人だけの秘密として扱い、他の人物……特にシャーカーン自身に気付かれぬように調査する事になった。

 

 

 

 

 その夜、ジークフリートは我夢から渡されたウルフォンの使い方ガイドを読んでいた。実はレジェンドが施した術式によってウルフォンの画面やこの使い方ガイドは、その人物の最も馴染み深い言語に自動変換される仕様だ。故にジークフリートも問題無く読めて使用出来ている。

 

 

「ふむ……昼間の写真というものは複数種保存しておけるのか。これはかなり有用性があるな……通話以外にもこれの持ち主同士で文面も送れると。声を発しなくても必要事項を伝えられるとは……便利な分、悪用されたら厄介だな。己を律して使用と保管をしなければ……」

 

 

そこまで考え、今日はこれくらいにしようと寝床に入ろうとしたジークフリートだったが、何やら不穏な空気を察知して武器を手にゆっくりと部屋から出る。すると……

 

 

「……何?」

 

 

どういうことか、灯り……松明の火が全て消えている。少なくとも彼の部屋周辺は。風が吹き抜けているわけでもないのにこの状況はどういうことか気になったジークフリートは、近くを巡回に来て混乱している衛兵達に問うことにした。

 

 

「すまない。これは一体どういうことか、分かる者はいるか?」

 

「ジ、ジークフリート元団長!それが、我々にもさっぱり……」

 

「風が吹き抜けるにしても場所的に無理です。しかも、今日は比較的穏やかな風の為、いきなり強風が吹く事も有り得ません」

 

「そうか。お前達も混乱しているところを問い詰めて悪かった。十分に注意しろ。何かが潜んでいるやもしれん」

 

 

そう言うと、ジークフリートはある場所へ向かう。シャーカーンの部屋……ではなく、我夢の部屋だ。部屋の前に行くと、ジークフリートは先程覚えた通話方法でわざわざ我夢に電話する。今、このフェードラッへでウルフォンを持っており、かつ使用出来るのはこの二人だけだ。念には念を入れ自分だと証明する為である。

 

 

『はい、我夢です』

 

「我夢、夜分遅くにすまない。俺だ、ジークフリートだ。話があって今部屋の前に来ているんだが、訳あってこうして電話している。開けてもらえるか」

 

『……何かあったんですね。分かりました、ちょっと待ってて下さい』

 

 

そこで通話を切ると、部屋から我夢が寝間着で出てきた。

 

 

「すいません、こんな格好で」

 

「いや、俺がこんな時間に訪ねたからだろう。謝るのはこちらの方だ」

 

「とにかく、一旦中へ」

 

 

ジークフリートを招き入れると、我夢は周囲を確認してある事に気付き、ドアを閉めて鍵を掛けた。

 

 

「我夢も気付いたようだな」

 

「はい。松明の灯りが全て消えています。いや、消されているという方が正しい」

 

「……やはりな」

 

 

もしかすると城中の個室以外の灯りが消されている可能性がある。ジークフリートは腕組みしつつ考える。闇に紛れて行動する何かなのかもしれない。そこでジークフリートは最近フェードラッへの街中で見たあるものを思い出し、我夢に聞く。

 

 

「……我夢、実はこの間フェードラッへでは見た事のない植物を見かけた。本当につい最近……カルマを発見した少し後だ。生憎とその時は気にする程の余裕もなくてな、サンプルも何も無いんだが……」

 

「どんな形かだけでも覚えてますか?絵か何かにしてもらえれば、検討をつける事が出来るかもしれません」

 

「分かった。大分特徴的だったから鮮明に思い出せる」

 

 

ジークフリートは我夢から渡された紙にその植物の詳しい特徴の説明を追記しつつ絵にしていく。我夢は完成した絵を、いつの間にかブレスレットから出していたスキャナーと連動させた、レジェンドお手製の図鑑がインプットされているノートパソコンにスキャナーから取り込んだ情報を入力し検索する。するとある植物がそれに該当した。

 

 

「「ケロニア……」」

 

 

二人は揃ってその名を口にする。そして読み進めていくと様々な事が明らかになった。

 

 

「移動能力を持ち、動物の血液を啜る……」

 

「まるで魔物だな。しかも見た目は珍しいといえどただの植物……こんな危険なものが何故フェードラッへに……」

 

「分かりません……チーフがいれば詳しく聞けたかもしれません。チーフはかつてこのケロニアが何かの事件の発端になったのを解決した事があったそうですから」

 

「無い物ねだりしても仕方ない。とにかく、何かが起ころうとしているのは確かだ。もしかするとこのケロニアとやらが関わっているかもしれん。くれぐれも気をつけてくれ」

 

「はい、ジークフリートさんも。また何かあれば僕のウルフォンに連絡を」

 

「ああ、随時連絡を取り合っていこう」

 

 

そう言うと、ジークフリートは周りを警戒しつつ部屋に戻る。我夢もまた、今までの経験から良くない事が起きるのを薄々と感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 一方、ヴェインはランスロットに頼まれシャーカーンに案内したゲストルームの調査をしていた。ゆっくり部屋に入り中を見渡すと、何かの機械が置いてある。

 

 

「何だこりゃ?確か我夢の話じゃ機械ってのは電気が通ってないと駄目なもんが多いって言ってたよな……これ、どっから電気供給してんだ?」

 

 

ヴェインがその機械を調べようとすると、背後のクローゼットがゆっくりと開く。悪寒を感じ、さらに気配を察知して後ろを振り向くと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に緑色の怪人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああ!?」

 

 

異形か突然目の前に現れた事でヴェインはさすがに驚き、その怪人が目から発した光線を受けて倒れてしまう。

彼の叫び声に駆けつけた衛兵、そしてランスロットが見たのは倒れているヴェインだけであった。

 

 

「ヴェイン!?しっかりしろ!俺が分かるか!?」

 

「う……うう……ランちゃん……」

 

「目立った外傷は無いが……すぐに医務室に連れて行ってやるからな!」

 

「怪人……緑の怪人が、衣装棚から……」

 

「何……!?」

 

 

ランスロットは双剣を構え、二人の衛兵に左右から一気にクローゼットを開かせるが、そこには何もいなかった。

 

 

(誰もいないな……いや、ヴェインは軽い冗談は言うが決して嘘は言わない真っ直ぐな男だ。おそらくは俺達が駆けつける前に逃げたと考えるのが妥当だが……いないならば今はヴェインを医務室へ連れて行く方が先決か。後で今ここにいないシャーカーン殿に何をしていたか聴く必要があるな)

 

 

ランスロットは双剣を収め、ヴェインに肩を貸しつつ医務室へ向かう。

 

 

 

 

 数時間後、ランスロットはジークフリートを伴ってシャーカーンに事件当時何処で何をしていたか尋ねる為、現場検証も兼ねて再び部屋を訪れていた。ランスロットが廊下にシャーカーンを連れ出し、その隙にジークフリートは部屋の中を捜索する。

 

 

(謎の機械もそうだが、問題は怪人が現れたというこの衣装棚の中だな)

 

 

ジークフリートは意を決してクローゼットを開けるが、やはり何もいない。

 

 

(完全に姿を晦ましたか……ん?)

 

 

ジークフリートが見つけたのは空の世界でも時折見かけるスーツケース。この世界ではあまり一般的ではないが一応それなりに普及しているものだが、ジークフリートはそのスーツケースに対して直感的なものが働いた。

 

 

(一見するとただのスーツケースのようだが……悪いが調べさせてもらうぞ)

 

 

スーツケースを慎重に開けるジークフリート。その中にあった物は……

 

 

「何だ、これは……!?」

 

 

服などではなく、不気味に蠢く緑の物体であった。

 

 

「いよいよもって怪しさが増してきたな、シャーカーン……一先ずこれを我夢のところに持って行くか。研究分野は畑違いらしいが、俺よりもこの状況の突破口を見い出せる可能性が高い」

 

 

そのままそれを採取してスーツケースをクローゼットに戻してその場を立ち去るジークフリート。しかし百戦錬磨の彼でさえ気付いていなかった。

 

 尋問を終えたシャーカーンが、彼の後をゆっくりついていく事を。

 

 

 

 

 ジークフリートは我夢に先程採取した物体の調査を依頼し、調査結果をすぐに聞くべく彼から離れずにいた。どうも嫌な空気を感じているからでもある。

 

 

「ジークフリートさん」

 

「何か分かったか?」

 

「はい、これは……ケロニアの幼生態です……!」

 

「幼生態……!?」

 

「それだけじゃありません。幼生態とはいえ少なからず知能を持ち、さらに人間の血液反応も僅かながらに検知されました」

 

「……!確かケロニアは動物の血液を啜るという……まさか、野生動物だけでなく人間さえ対象なのか!?」

 

「もう既にケロニアはこの世界で高等な文明を持っている筈です。でなければスーツケースに隠して幼生態を持ち込むなど考えたりしない……普通ならバレる可能性が高くて危険ですから。しかし、そうする事が問題なく出来る自信があるという事……つまり、()()()()というわけじゃなく、()()()()()進化した彼らにとって格好の栄養源なんです……!」

 

 

我夢の言葉にジークフリートは戦慄する。だとしたらこれを持ち込んだシャーカーンは……二人が最悪の事態を想定した時、ガチャリとドアが開き、シャーカーンが侵入して来た。

 

 

「……シャーカーン殿、少々不躾ではないでしょうか?ノックも何も無しにいきなり入室とは……」

 

 

そう言いながらもジークフリートは兜を装着し、自身の背負った大剣に手を掛けている。異様な雰囲気を感じ取り、既に戦闘態勢だ。我夢もノートパソコンなどをブレスレットに収納し、ジェクターガンを構えていつでも迎撃出来るよう警戒を緩めない。

 

 

「やはりお前達二人は最優先で排除すべき人間のようだ」

 

「「!!」」

 

 

シャーカーンはそう言葉を発するや否や、その姿を全く別の存在へと変える。

 

 

「緑色の怪人……!ヴェインさんが言っていたのはお前だな!」

 

「とうとう本性を表したか、シャーカーン!」

 

「シャーカーンではない。我々はケロニア。これ以上嗅ぎ回られる前にお前達には退場してもらおう」

 

 

シャーカーンもといケロニアは、ヴェインに放ったように二人に向けて怪光線を発射するが、ヴェインの時と違って二人は既に戦闘態勢を取っており、かつ片方は白竜騎士団団長であるランスロットが師事したジークフリートだ。

怪光線は回避され、我夢の銃撃を受けダメージはなかったものの隙が出来たケロニアはジークフリートの接近を許してしまう。

 

 

「退場するのは貴様の方だ!」

 

 

真龍ファフニールをも討ち倒した剣撃がケロニアに放たれるも、ケロニアは寸でのところで避けそのまま逃走する。

 

 

「逃さん!追うぞ、我夢!」

 

「はい!」

 

 

ジークフリートは一足早くケロニアを追い、我夢はそれをウルフォンの端末リンクGPSで確認しながら追いかけようとすると、騒ぎが聞こえたのだろう、ランスロットと衛兵が駆けつけてくる。

 

 

「どうした我夢!?今何か凄い音が……」

 

「ランスロットさん!カール国王に伝えて下さい!シャーカーンがヴェインさんを襲った緑色の怪人、ケロニアだったんです!僕の部屋でジークフリートさんとあるものを調べていた時、奴が入って来て……その姿を表し僕達に襲いかかってきたのを反撃したら逃走しました!今ジークフリートさんが先行して追跡しています!」

 

「何だって!?」

 

「人間の血液が何よりも奴らにとって美味いものと知ったケロニアは人間征服の野望を持ったんです!急いで下さい!もしかするとウルトラマンの力を使う事になるかもしれない!」

 

「人間征服……!ウルトラマンとは一体……いや、今はどうでもいい!分かった、すぐに伝えて俺達も追う!」

 

「お願いします!」

 

 

我夢の切羽詰まった様子から真実だと確信したランスロットはこの事をカール国王へと伝える為に謁見の間へと急ぎ、我夢も再度ジークフリートとケロニアの追跡を再開する。願わくば、()()が間に合ってくれる事を信じて。

 

 

 

 

 ジークフリートとケロニアは王都フェードラッへから出た草原地帯へと戦場を移していた。如何に人知を超えた怪人であろうと、簡単に遅れをとるジークフリートではない。

 

 

「ここなら先程の室内と違って俺の武器も存分に振るう事が出来る。おまけに障害物の類も無い……大人しく降伏しろ。次は外さんぞ……!」

 

 

雑兵どころか歴戦の将さえ身を竦ませるだろう闘気を発しながらケロニアに言うジークフリート。しかしケロニアは表情一つ崩そうとしない。そこに我夢も駆けつけてくる。

 

 

「ジークフリートさん!ランスロットさんと会う事が出来たので状況を伝えました!カール国王に報告次第、こちらに来てくれるそうです!」

 

「よし……!ならばやはり、残るはこいつだけだな」

 

「ハッハッハッハ……やはり人間はその血以外で我々に大きく劣っている」

 

「何だって……!?」

 

「往生際が悪いな。追い詰められているのは貴様だぞ。仮に仲間がいたとして、こちら側もじきに増援が到着するという事を今知ったばかりだろう?」

 

 

ジークフリートはそういうものの、相手は驚くべき知能と文明を手に入れた怪奇植物だ。何を仕掛けてくるか予想もつかない。

 

 

 

 

 

 そう、ケロニアは突如巨大化したのだ。

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

我夢とジークフリートは驚愕する。そして、巨大化したケロニアの姿は王都フェードラッへの住民達も目撃し、恐怖と混乱に陥った。

 

 

「な、何だあれは!?」

 

「化け物だ!とてつもなくデカイ化け物だ!!」

 

「まさかここを狙っているのか!?」

 

 

無論、住民だけでなくカール国王や、ランスロットを始めとした白竜騎士団も巨大化したケロニアの姿を目にしている。

 

 

「あれが、シャーカーン殿だというのか……!?」

 

「陛下、最初からシャーカーンという人物は存在しなかったのです。あのケロニアという化け物は人間になりすまし、フェードラッへに侵入していたんです!ジークフリートさんや我夢が追跡していましたが、まさか……」

 

「……信じるのだ。あの二人は簡単には倒されまい。ランスロット、白竜騎士団を率いて可能な限り住民を城に避難させるのだ」

 

「はっ!」

 

 

その時、ケロニア自身から王都フェードラッへを含む周囲へと目的が語られる。

 

 

「おごれる人間共よ。もうお前達の世界は終わりだ。我々植物人間がお前達にとって変わるのだ。瘴流域の向こうから、我々の仲間が。我々はついに高度の文明を持つようになった。お前達人間共を滅ぼして植物人間の王国を打ち立てるのだ」

 

 

この言葉にフェードラッへ中が愕然とした。瘴流域とは空域そのものを分断する、その名の通り瘴気に満ちた空間だ。瘴気と共に強烈な嵐が常時吹き荒れ、さらに瘴気の影響で強力になった魔物も存在する。本来なら空図の欠片を集めるか、もしくは特殊な力によってのみ通る事が可能な場所なのである。

そこをケロニアの仲間達は通ってやってくるという。

 

 

「バカな……!奴らは既に当たり前のように瘴流域さえ超えられるのか!?」

 

 

ランスロットの叫ぶと、その通りだと言わんばかりに遥か遠くの空から何かがやって来た。

植物人間の開発した円盤群(エアシップコンビナート)である。いよいよ本格的に人間侵略を開始したのだ。知名度もあるフェードラッへはその足掛かりにするべく最初に狙われたというわけだった。

 

 

 

 

 

 巨大化したケロニアの攻撃から退避するように間合いをとる我夢とジークフリート。人間大の大きさの時は麻痺させる程度であった怪光線―アイ・スパークは威力が格段に上がっており、ダメージを覚悟でなどと言えるレベルではなかった。同時に二人は徐々に近付いてくる円盤群を目にし、焦り始める。

 

 

「くそっ……このままではフェードラッへが……!しかし相手は空の上、目の前のケロニアにも対処方法が……」

 

 

仮に騎空艇があったとしても、瘴流域さえ超える科学力を持った植物人間の円盤に対抗できるかは不安が残るが、それ以前に戦う事さえ出来ず、ただ一方的にやられるしかない状況だ。どうする事も出来ない。

 

……そんな時だった。

 

 

「……ジークフリートさん、これを。もしかしたら役に立つかもしれません」

 

 

我夢が自身の武器であるジェクターガンをジークフリートに渡してきたのだ。だが、それを受け取れば我夢は丸腰になってしまう。

 

 

「使い方はこちらに……」

 

「待て、我夢。何をする気か分からないが、まさか死ぬ気か……!?」

 

「違います。僕は死ぬつもりなんてありません。チーフに怒られますから」

 

「ならば何故……!」

 

「僕が、ケロニアや円盤と戦います」

 

 

ジークフリートに衝撃が走る。今、目の前の青年は『自分が戦う』そう言ったのだ。あの未知なる怪物達に、武器も持たずに挑もうとしている。

 

 

「何を言い出すんだ。たった今俺に武器を託したばかりだろう!」

 

「はい。ウルトラマンの姿になったらどのみち使えませんから」

 

「ウルトラマンの、姿……!?」

 

「僕には光があります。根源的破滅招来体から地球を守る為に、地球自身が生み出した光が」

 

 

我夢は決意を込めた表情で変身アイテムであるエスプレンダーを取り出した。ジークフリートは一見武器には見えないそれのクリスタル部分に赤い光が宿っているのを確認する。

 

 

「それは……」

 

「もしかしたら、チーフはこうなる事を知っていて僕達に調査を任せたのかもしれません。ただ調査の為だけじゃない……今、次元を超えて【エリア】全体に危機が迫っている以上、奴らみたいな侵略者がこの世界にも現れる可能性は十分にあった。その抑止力として僕達を呼んだんだと思います」

 

 

ジークフリートを見つめる我夢の目は真剣だ。冗談などではなく、彼は重大な使命を帯びてこの世界にいるのだと納得させられる。

 

 

「ケロニアは僕に任せて、ジークフリートさんは王都の方へ行って下さい!避難させるにしても人手が足りないのは明白です!」

 

 

そう言うと我夢はケロニアを見据え、ある名前を叫びながらエスプレンダーを掲げる。『地球』を意味する、ウルトラマンの名を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガイアァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、その場にいたジークフリートだけでなくフェードラッへに住む人々、そしてケロニアでさえも青天の霹靂であった。突然巨大な赤い光が空に現れ、その光は徐々に形を変えていき、最終的には巨人へと姿を変えたのだ。

 

 

 

 

 

「ダァァァァッ!!」

 

 

 

 

 

フェードラッへの地に両足で力強く着地する巨人。赤と銀の体色に黒いプロテクター、青く輝くライフゲージ。

砂埃を巻き上げ、大地を震わせながら出現した巨人に、その地にいた者達は各々様々な感情を抱く。

 

ウルトラマンガイア。

 

かつてもう一人の青き巨人、そして宇宙伝説に燦然と輝く神と共に地球を救いし赤き巨人が今、フェードラッへの危機にその雄姿を現した。

 

 

「ジュアッ!!」

 

 

ガイアはどっしりと腰を落とし、右手はチョップの形に、左手は握り拳でボクシングの如き構えで顔の近くへ。

ガイアの基本的な構えとも言うべき体勢をとった事で、ケロニアはガイアを敵として認識する。

 

遂にガイアとケロニアの死闘が幕を開けた。

 

 

「ケェェェェッ!!」

 

 

ケロニアがガイアに向けて駆け出し、同時にガイアもケロニアに向けて駆け出した。ケロニアは組み付く気だったが、接触直前でガイアが右肩を突き出してショルダータックルしてきた為、その衝撃でバランスを崩す。

 

 

「ダァッ!!」

 

 

ガイアはその隙を逃さず、ケロニアの腹部にキックを叩き込み仰向けに倒させる。対するケロニアはすぐに起き上がり、再び組み付こうとしてくるが、ガイアの左ジャブを受け怯んだところに右腕で肘打ち、裏拳を続けざまに浴びせられた上、左腕を抱え込まれ身体ごとすくい上げる様に再び仰向けに倒される。

最後のすくい上げはガイアも一緒に倒れ込んだがガイア自身そうなる事が分かっていた為、さり気なく受け身を取っておりダメージは無い。

 

 

 

 

 

「強い……!」

 

 

 フェードラッへに無事帰還出来たジークフリートはガイアの戦い方を見てそう零した。我夢の時はどちらかと言えば後方支援が得意分野だったのだが、ガイアの時は一変、身体ごとぶつかって行く豪快なパワーファイターだ。しかも我夢自身の知力がずば抜けているのも相まって搦め手も上手い。

そこへランスロットが駆けつけてくる。

 

 

「ジークフリートさん!無事だったんですね!」

 

「ああ、なんとかな。だが無事と言うにはまだ早い。ケロニアはもちろん、奴の仲間が乗っているあの奇妙な形の騎空艇の大群をどうにかせねば……」

 

「はい……そうだ!ジークフリートさん、我夢は!?」

 

「……戦っている。俺をここに向かわせて、ただ一人でな」

 

「一人?戦って……まさか!?」

 

「お前の思っている通りだ、ランスロット。今ケロニアとぶつかり合っているあの巨人、あれが我夢だ」

 

 

その言葉にランスロットはケロニアと戦っているガイアを凝視する。彼は「ウルトラマンの力を使う事になるかもしれない」そう言っていた。つまりあの姿がそうなのだろう。

 

 

「彼は『ウルトラマンの姿になったら』確かにそう言った。そしてその後に『ガイア』とも叫んだ。言うなればあの姿はガイアウルトラマン……いや、ウルトラマンを種族と仮定するならウルトラマンガイアの方が良いか」

 

「ウルトラマン、ガイア……」

 

「む……!?ガイアが何かをする気だぞ!」

 

 

 

 

 

 フェードラッへにてジークフリートがランスロットと合流出来たのを遠目で確認したガイアは、ケロニアとの勝負を付けるべく必殺技の構えを取る。

 

 

「ジュアッ!ハァァァァ……」

 

 

左腕に右腕を伸ばして合わせ、半円を描くように動かしていく。そして最後は左手を握り拳のまま二の腕に乗せるようにしてL字型にした瞬間、真紅の光線が発射される!

 

 

「デアアァァァァァッ!!」

 

 

クァンタムストリーム――ガイアの必殺技の一つであると同時に、数ある技の中でも多く使われた技の一つでもある。破滅魔虫ドビシの殲滅もこの技で成し遂げた。赤き光の奔流は寸分狂いなくケロニアに直撃する。

 

 

「やったか!?」

 

「今のは間違いなく直撃……何っ!?」

 

 

ランスロットが驚いたのも当然だ。何故ならば……

 

 

「ケェェェェッ!!」

 

「ジャァッ!?」

 

 

クァンタムストリームがケロニアにまるで効いていないのだ。倒すまではいかずとも確実にダメージは入るだろうと思っていたガイアも、これには流石に動揺してしまい隙が出来てしまう。それを見逃さずケロニアはアイ・スパークをガイアに放つ。

 

 

「ウアッ!!」

 

 

ケロニアの攻撃をまともに受けてしまい、ガイアは仰向けに倒れ込んでしまう。遂に円盤群はガイアとケロニアの頭上を通過し、フェードラッへに迫る。

これに気を取られ、円盤群の方を向きながら起き上がってしまったガイアは背後からのケロニアに組み付かれ、両腕でL字を組むように首をホールドされてしまった。

 

 

「グアッ……!」

 

 

なんとか外そうとするが、植物だというのに恐るべき力を発揮しており振り解く事が出来ない。戦闘開始時からケロニアが組み付こうとしていたのはこれが理由だった。ケロニアは怪光線アイ・スパークだけでなく、見かけによらない相当な怪力を持っており、それが強大な武器になる。

 

 

(くそっ……このままじゃフェードラッへが……!)

 

 

ガイアは焦る。そしてそれはジークフリートやランスロットも同じ。

 

 

 

 

 迫りくる円盤群。相手が空中にいる為に空を飛ぶ事が出来ないジークフリートやランスロットには対抗以前に手出しする事すら不可能であった。

 

 

「このままただやられるのを待つしかないのか……!」

 

 

ガイアならばなんとか出来るかもしれない。ランスロットはそう思ったもののそうするにはあのケロニアをどうにかしなければならない。しかし自分達ではケロニアにも対抗出来ない……堂々巡りである。

そんな中、ジークフリートは考えていた。本当にこのまま黙ってやられていいのかと。

 

 

(ガイアが……フェードラッへの民ではない我夢がああして命を賭してまで戦っているというのに、俺は言われるがまま逃げ帰って来た……何が忠騎士だ。フェードラッへの為に戦ってくれている我夢を見捨てるような騎士など、忠騎士どころか騎士ですらない……!)

 

 

ジークフリートは我夢が変身する間際に託されたジェクターガンを握り締めて決意した。

 

 

「ランスロット……俺がケロニアを引き付けてガイアにあの物体の相手を頼む。お前は民のために可能な限り街の被害を抑えろ。人命第一ではあるが、この街もその人々の暮らす大切な場所だ」

 

「ジークフリートさん!?一人では無理です!」

 

「ガイアは、我夢はああして一人で戦っている。対抗出来るからどうだとか、無理だ無茶だという問題ではない」

 

「……!」

 

「このフェードラッへは俺達の国だ。俺達がやらないでどうする。俺達ここに生きる者達がやらずにどうする!」

 

 

まるで自分に言い聞かせるようにジークフリートは声を荒げる。そして、その声に呼応するかのように一機の騎空艇……いや、戦闘機が二人の前に飛来した。

それはXIGファイターEX。当時我夢が専用機として使っていたものをレジェンドが様々な技術を追加で盛り込んで再開発した戦闘機だ。無論、我夢の手によって()も搭載済み。

この島に来た時、人目につきにくい場所にカムフラージュを施して保管しており、定期的に我夢から入っていた連絡が途絶えた事で緊急事態と独自に判断し、飛行してきたのである。

 

 

「何だ!?いきなり飛んできたぞ!?しかも操縦席らしき場所には誰もいない……まさか、これもケロニアの……」

 

「いや、どうやら違うらしい」

 

 

そう答えるジークフリートのウルフォンのディスプレイには、『PAL』と表示され同時に『乗ッテクダサイ、ジークフリートサン』と文字が映し出されている。

 

 

(そうか、これが我夢の言っていたファイターEXとやらか。人工知能とかいう物を搭載してあるから自律行動が出来る、とも言っていたな……)

 

 

飛行出来る手段を得たのは大きい。しかし、ケロニアに対抗するにはまだ足りない。そう思ったジークフリートはふとある事に気づく。

 

 

(いや待て……城内廊下の松明が全て消えていたのはあの夜、奴が来てからだ。最初は闇に紛れて行動する為かと思ったが、今こうして太陽の下で活動している以上、奴が日の光で弱体化したり、闇の中で力を増すというわけではないはずだ。だとしたら……そうか、分かったぞ……!)

 

 

ジークフリートは我夢から渡されたジェクターガンの使い方にザッと目を通し、装填済みのカートリッジを確認した後よし、と頷く。

 

 

(やはり我夢も気付いていたな。その上で準備したこれを俺に託してくれた。全く……どこまでも気が回るやつだ)

 

 

何かに確信したジークフリートはPALに質問する。

 

 

「PAL、と言うのか。この小型騎空艇にロープはあるか?出来れば任意のタイミングで切り離しが出来るやつならば一番いいが……」

 

『束博士ニ作製サレタ特殊ワイヤーガアリマス。指示ヲモラエレバコチラデ切リ離シ可能デス』

 

「文句なしだ……!それを出してくれ。俺がそのワイヤーに掴まる。あとは奴の頭上……いや、出来るだけ近くまで行って、俺の指示したタイミングで切り離してくれればいい」

 

「分カリマシタ」

 

 

短く応えた後、ファイターから足掛け部分の付いたワイヤーが射出された。ジークフリートはそれに片足を掛けつつ左手で掴み、ジェクターガンをしまい愛用の大剣を右手に持つ。準備完了した事を確認したPAL……ファイターEXは少しずつ離陸する。

 

 

「ジークフリートさん!」

 

「ランスロット!白竜騎士団団長として、何より騎士として、お前が成すべき事を成せ!」

 

 

そしてファイターEXはジークフリートをぶら下げつつ円盤群を迂回するようにしながらケロニアへと向かっていく。ガイアを援護する為に。

 

 

「騎士として……俺は……」

 

「俺達も行こうぜ、ランちゃん!」

 

「ヴェイン……!?もう大丈夫なのか!?」

 

 

突然声をかけてきたのはケロニアにやられたヴェインであった。それだけではない。白竜騎士団が集結している。

 

 

「ちょっとばかし麻痺ってたけど、もうピンピンしてるぜ!少しだけしか聞こえなかったけどさ、あの銀色の……我夢なんだろ?」

 

「……ああ」

 

「こうなったらさ、もう自分の思うように行動するしかないんじゃねえかな。ランちゃんだってあの騎空艇もどきをなんとかするには我夢の力が必要だって思ってるんだろ。だったら俺達も我夢を助けに行けばいいんだよ。俺達があの緑色の化け物を抑えて、我夢に騎空艇もどきを任せる!出来るなら俺達だけであの怪物を倒したいけどさ、どうにもならないかもしれない。でもよ、ギリギリまで頑張ってみようぜ!」

 

 

病み上がりだというのに闘志爆発しているヴェインの活力は他の団員にも伝染しているようで、ところどころから賛同する声が聞こえる。

 

 

(そうだ……皆がこの国と、ここに生きる者たちの為に戦おうとしているのに、団長の俺が燻ぶっているわけにいかないじゃないか!)

 

 

ジークフリートに言われた成すべき事。彼から団長の座を引き継いだランスロットがやらなければならないのは国と民を守る事。どちらかを、などとは出来ない。どちらも守るのだ。

 

 

「よし、奴らの攻撃に備えて防御や消火の為の人員を残し、他の団員はケロニア討伐に向かうぞ!あの巨人……ガイアならば奴らの艇を打倒出来るはずだ!その為にケロニアを俺達で引き付ける!」

 

「「「「「オォォォォ!!!」」」」」

 

 

団員達が剣や槍、各々の武器を掲げランスロットの指示に応える。そんな中、ヴェインは自信満々にあるものを持ってきた。

 

 

「へへ……こいつを皆で持っていこうぜ、ランちゃん!」

 

「ヴェイン、それは……」

 

 

 

 

 ケロニアは勝利を確信していた。巨人さえ封じてしまえばフェードラッへ側になす術はない。確かにそうだった。しかし、ケロニアの予想は思いもよらぬ形で覆される。

 

キィィィィィン……

 

 

「……?」

 

 

ケロニアはガイアを拘束しつつ音の近付いてくる方向を向く。そこには機体からワイヤーをぶら下げ、それに捕まるジークフリートと共に高速で接近するファイターEXの姿が。

 

 

「ケェッ!?」

 

「ジュワッ……!?」

 

 

まさかの一人と一機の襲撃にケロニアだけでなく、双方を知るガイアさえ驚く。ファイターEXは速度を落とさぬまま、ケロニアの近くまで来ていた。それを撃ち落とそうとアイ・スパークを放とうとするケロニアだったが、ジークフリートはその瞬間を狙っていたのだ。

 

 

「今だ!PAL、ワイヤーを切り離せ!」

 

「了解シマシタ」

 

 

アイ・スパークが放たれる直前、ファイターEXに繋がれていたワイヤーが切り離され、ケロニアの攻撃は両者に当たる事はなかった。だがジークフリートは落下しながらも切り離されたワイヤーを思い切り投げてケロニアの腕に巻きつかせ、空中ブランコの要領でぐるりと回転しつつケロニアの肩に飛び移ろうとする。そして……

 

 

「シュヴァルツ・ファング!!」

 

 

全力で大剣をケロニアの右肩に叩き込んだ。大剣の刀身がケロニアの肩に食い込むが、ダメージは殆ど無い。所詮は人間の力、そう思ったのも束の間。ジークフリートは片手で大剣を離さぬようにガッシリ掴みつつ、懐からジェクターガンを取り出し、刀身が食い込んでいる所に銃口を押し込む。

 

 

「我夢が残しておいてくれたとっておきだ……!存分に味わえ化け物!!」

 

 

ドオォォォォォン!!

 

 

ジークフリートはジェクターガンのトリガーを引くと、食い込んだ部分に爆発が起こった!

 

 

「ケェェェェッ!?」

 

 

爆発、即ち火薬が炸裂してケロニアの体に火が着いたのだ。我夢がジークフリートへ渡したジェクターガンに装填されていたのは、熱戦弾よりも射程距離は短いが爆発による威力や点火力の高い我夢お手製の新型カートリッジ・ハイパーナパーム弾だ。威力が高すぎる為、屋内や仲間が近くにいる時は使いどころを選ぶモノなのだが。

 

そう、ケロニアの弱点は炎である。

 

それにいち早く気付いていた我夢は万が一に備えてケロニアを追跡している時にカートリッジを換装しておいたのだ。肩に火が着いたケロニアは堪らずガイアを離してしまう。その間もジークフリートは押し込んだ部分からケロニア体内へジェクターガンを撃ち続けている。

そして撃ちながらもガイアへと叫ぶ。

 

 

「我夢!こいつは俺が抑える!お前はあの騎空艇モドキの相手を!!行ってくれ、俺達の国を……フェードラッへを頼む!!」

 

 

ケロニアの拘束から逃れたガイアはジークフリートの願いを、今フェードラッへからこちらへと向かって来るある集団を見た上で聞き入れる。

 

 

「デアッ!」

 

 

頷いた上で力強く返事を返す。そしてフェードラッへに攻撃を仕掛けんとする円盤群を撃破すべく、文字通り飛び立った。

まさかあの巨体で翼や装備も無しに飛ぶとは思わなかったジークフリートとケロニア。前者はおお、と感嘆の声を挙げ後者は焦りを見せる。向かって来ていた集団も驚いていたが、先頭にいた二人に『こちらは任せろ』と決意を込めた表情を見せられ、ジークフリートにしたように二人へも頷く。彼らを信じ、自分は目の前の円盤群を掃討する。

ガイアが決意を新たにした時、それを援護するようにPALが動かすファイターEXがガイアに追随してくる。

 

そして今、さらなる援軍が到着しようとしていた。

 

 

 

 

 

「ケェェェェッ!!」

 

「ぐうっ!!」

 

 

 ガイアを見送ったジークフリートは、右肩に大剣を突き刺しつつジェクターガンによる攻撃を続けていたものの、同時にケロニアの左手で攻撃を受けていた。

不幸中の幸いというべきか、既に発火している右肩から左手まで引火しないように、ケロニアは叩き潰すのではなく叩いて落とそうとしているところだろうか。

しかし、そうであってもその巨体から繰り出される攻撃を受けて無事でいられるはずがない。ジークフリートのレベルで特注の鎧を纏っているからこそ堪えられているだけであり、常人や多少鍛えられただけの者ならば当に絶命していた筈だ。

 

 

「まだだ……!我夢があれらを壊滅させるまで、俺は決して貴様から離れんぞ!!」

 

 

既に幾度となくケロニアからの攻撃をその身に受けているジークフリートは、騎士としての誇りと祖国への忠義、そして我夢()との約束を糧に耐え続けていた。

しかし、それも限界を迎えようとしたその時、聞き覚えのある声が戦場へ木霊する。

 

 

「白竜騎士団、総員突撃せよ!!」

 

『ウオォォォォォ!!』

 

「!!」

 

 

被害の抑制に必要な人員を王都に残し、ランスロットが白竜騎士団を率いてケロニアとの戦いに駆け付けたのだ。ガイアが見たのは彼らだったのである。

ケロニアは最初、有象無象の連中にしか思っていなかったが、ランスロット以外の騎士達が手にしていた物を見て動揺した。

 

松明。

 

弱点である火をほぼ全ての団員が武器と共にその手に持って突撃してきている。

特にランスロットの傍にいるヴェインに至っては、自身の武器であるハルバードは後ろに背負って両脇に大量の松明を纏めて抱えており、まさに炎の弾丸状態。大火傷を負うかも、既に負っているかもしれないというのに大量の汗を流しつつも一本も落とそうとしない。

彼らから感じる気迫にいよいよケロニアも恐怖し始めた。

なんとかして防がねばと思った直後、再びジークフリートによる零距離射撃が右肩を襲う。

 

 

「やらせんぞ……!我夢も、あいつらも、フェードラッへも!人間の意地と底力、その身で味わえ!!」

 

 

ジークフリートが作った一瞬の隙を突いて、ケロニアへと辿り着いたランスロットが斬撃で傷を作り、ヴェインがそこに松明の束を抱えたまま身体ごとぶつかっていく。

 

 

「行け、ヴェイン!!」

 

「うおらあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ドォォン!と音を立てながらぶつかると同時にケロニアの片足から火の手が上がり、ランスロットとヴェインは即座に離れる。これにはさすがのケロニアも苦しみ始めた。なんとか超能力で火が回るのを抑えているもののジークフリートや白竜騎士団に回す余力がなくなっている。

 

 

「よし!効いているぞ!!」

 

「どんなもんだ!しっかり借りは返したぜ怪人野郎!!」

 

 

効果があった事に喜ぶランスロットと、少しばかり火傷を負いつつも無事な姿のヴェイン。この松明作戦はヴェインの発案であった。

これに勢いづく白竜騎士団はケロニアの下へと辿り着いた者から次々と松明を投げつけて火力を強めていく。

 

その時、ケロニアの頭上を一機の騎空艇……いや、大きめの戦闘機が通り過ぎ、その戦闘機から二つの人影が飛び降りた。

一つは大地へ大きな音を立てて着地し、もう一つはケロニアの左肩へ。そしてすかさず攻撃を叩き込んだ。

 

 

「アルベスの槍よ!我らが信条、示し、貫くための牙となれ!」

 

「大鎌グロウノス!星の獣の血を啜り、その魂を刃となせ!」

 

 

二つの影――ゼタとバザラガは己の武器の力を開放する。

バザラガのグロウノスによる一撃はケロニアの足に大きく傷を付け、その傷口から炎が入り込んだ事でさらに燃え上がっていく。

そして今回、最も効果的なのがゼタの持つアルベスの槍だ。彼女がケロニアの左肩にアルベスの槍を突き刺して開放した事で、一発で右肩や足元よりも大きく燃え上がる。

アルベスの槍は炎を発する事が可能であり、ケロニアにとって天敵にも等しい武器であった。

 

 

「あぁっつ!?自分でやっておいて何だけど燃えすぎでしょ!!」

 

「やはり俺がそちらを担当すべきだったか」

 

「あのね!あたしはあんた程頑丈じゃないの!あの高さからこいつの上に飛び降りたのだってやっとなんだから!」

 

「それだけの元気があるなら、別に落ちても死にはせん」

 

「なんですってぇ!?ちょっとは心配ぐらいしたらどうなのよ!」

 

「信頼してやっているんだ。責められる言われはない」

 

 

片や苦しむケロニアの上で、片や燃え盛るケロニアの足元で言い合いを始める二人。呆気にとられるケロニア以外の面々だったが、ジークフリートはすぐさま尋ねた。

 

 

「二人は我夢の……ガイアの仲間なのか?」

 

「ガイアって確か我夢のもう一つの名前よね?熱っ!そうよ、同じ騎空団に属してあっつ!?あぁもう!暴れんじゃないっての!!」

 

「ケェェェェッ!!!」

 

 

超能力で火の回りを抑えると同時にジークフリートとゼタを振り落とそうとするケロニア。

 

 

「そこの鎧の人!もう少しだけ頑張って!そろそろ我夢やあたし達の仲間があの騎空艇モドキを全滅させて戻ってくるから!」

 

「心配せずとも最初からそのつもりだ!我夢は必ずやり遂げて戻ってくる!」

 

「オッケー!あたしも踏ん張んないとね!」

 

 

ゼタの言葉に再びジークフリートに闘志が宿る。我夢は事前に仲間達に連絡を取り、迎えついでに救援を要請していたのである。

いよいよ、戦いは最終局面だ。

 

 

 

 

 我夢とファイターEXは植物人間の円盤群を順調に撃墜していた。ケロニアに通用しなかったクァンタムストリームも、円盤群には問題なく効いている為、攻撃方法を選ばずとも撃破する事を考えるだけでいいのである。とはいえ数が多い。あまり時間を掛けていたらジークフリートらが倒されてしまうかもしれない。

 

 

(確実に減っては来ているけど……せめてあと少しだけ手数があれば……!)

 

 

ガイアとアグル、この二人のウルトラマンは地球が生み出した存在故に三分という変身時間の制限が無い為、プラズマスパーク・ブレスのエネルギーサポートはガイアがフォームチェンジする最強形態維持の補助を除けば、基本的に二人のブレスの機能は必殺技を使う為のエネルギーサポートに集中しており、大技を連続して使用可能なように調整されている。

 

しかし、王都フェードラッへ上空である事と円盤群が分散している事も相まって、今回は大技よりも効率重視の技……即ち広範囲に放てる技の方が効果的。

ガイアは連射出来る技を持ってはいても広範囲と攻撃能力の双方を兼ね備えた技に乏しいのだ。

こういう時は流石に光線技のエキスパートであるエースやコスモスが羨ましい。そう考えていると、先程ゼタとバザラガが飛び降りた戦闘機……いや、正しくは宇宙輸送艦がガイアと並ぶように飛行してきた。

青く輝くその機体、そしてそのパイロットは……

 

 

「はっはー!我夢ちゃん、いやガイアちゃん!ウルトラ騎空団団長代理にして十天衆頭目!天星剣王シエテが、団長ちゃんの残してくれたこのスペースペンドラゴンで仲間達と共に助けに駆け付けたぞー!!」

 

「ジュワッ!?」

 

 

なんとレジェンドから団長代理を任されたシエテ自らスペースペンドラゴンを操縦して救援にやって来たのである。

この島までエリアル・ベースで送ってもらったのかと思ったら、まさか宇宙輸送艦を持ち出してくるなど考えてもいなかったのでさしものガイアも別の意味で驚いた。

 

このスペースペンドラゴン、乗員が一人でも問題なく機体の全性能をフル活用出来るように開発された、本来はレジェンド専用の艦。正式名称はグレートペンドラゴンであり、スペックもスペースペンドラゴンの五倍以上という超高性能艦なのだが、それはあくまでレジェンドが個人で運用する場合に限る。高スペック過ぎて彼以外か同乗していると全力が発揮出来ない為だ。

 

万が一の有事の際、迅速に現場へ急行する必要がある時は使え、とレジェンドが性能にリミッターを掛けて置いていったそれを使い、ゼタとバザラガの二人を乗せてきたわけである。

 

 

「あの緑の化け物にはゼタとバザラガが対応してる!他の十天衆のメンバーや団員も来たがってたけどね!彼らには博也ちゃんと一緒にアウギュステに向かってもらったよ!」

 

 

アウギュステ――そこには『海』があり、そこでも怪奇現象が起こっているとの事で藤宮らにはエリアル・ベースごとそちらに向かってもらったらしい。とはいえ、性能にリミッターが掛かっていてもレジェンドの手によって開発されたペンドラゴンは十分過ぎる戦力だ。

 

 

「さてと、ガイアちゃん!君はあの緑の化け物との最後も締めくくらなきゃならないだろ?ここはシエテお兄さんに任せておきなさい!」

 

 

シエテはスペースペンドラゴンをガイアの前に出し、ある武装を起動する準備に入る。

その強力さ故に機体のリミッターを掛けるだけでなく、艦長のIDカードによる承認が必要な最強武装。本来ならばレジェンド自身の光気に反応してアンロックするが、彼以外が艦長を務める場合はレジェンドがその都度作る艦長IDカードを承認用のスロットに装填する事でアンロックされる。

シエテはレジェンドに作ってもらったIDカードをスロットに装填し、その武装をアンロックし砲身を展開する。コクピットには専用のトリガーがせり上がりシエテはそれを握り照準を定めた。

スペースペンドラゴン―いや、グレートペンドラゴンの最強武装、その名は……

 

 

「スペリオルランチャー、発射ぁ!!」

 

 

全長40mの艦からは予想出来ない程の極太のビームが放射され、前方の円盤群が回避する間もなくビームに飲み込まれ爆発する。凄まじい威力だが、レジェンド単独搭乗時に発揮される威力はこの比ではない。

これに動揺したのか他の円盤の動きが緩慢になり、残り僅かだった円盤はガイアとファイターEXによって撃破された。

 

残るはケロニアだけだ。

 

 

 

 

「……む?」

 

 

 バザラガは自分のウルフォンへと届いたメッセージを確認する。そこには『円盤群全撃破』と簡潔ながらも重要な事が書かれていた。

 

 

「何かあったのか!?」

 

「……ああ。我夢やうちの団長代理が騎空艇モドキを全滅させたようだ」

 

「ホ、ホントか!?」

 

 

ランスロットとヴェインがフェードラッへの方を向くと、大勢いた円盤群が一機残らず消えていた。そういえば先程轟音が聞こえたが。

 

 

「団長が置いていった小型の騎空艇の最強装備を使ったようだ。アレは大型戦艦の主砲とさえ比べ物にならん威力らしいからな、騎空艇モドキでは耐えられまい」

 

 

とんでもない事を聞いた気がする。小型騎空艇サイズで大型艦の主砲より遥か上の威力って何それ。ランスロットとヴェインは真っ青な表情をしているが、それを気にせず今もケロニアの肩で抵抗しているジークフリートとゼタを見る。そして、何かを察して叫んだ。

 

 

「二人とも、そこから飛び降りろ!!」

 

「はあ!?」

 

「よく分からんが考えているヒマはなさそうだな!飛ぶぞ!」

 

「えぇ!?ちょっ……あーもうどうにでもなれっての!」

 

 

二人が飛び降りる覚悟を決めた時、バザラガがそう叫んだ理由が分かった。

 

 

 

 

 

「ダァァァァッ!!」

 

 

 

 

 

ガイアが両手を突き出し回転しながらケロニアに突っ込んできたからである。咄嗟の事でケロニアは防御など出来るはずもなく、顔面に思い切り直撃し倒れ込む。

ジークフリートとゼタは体当たり後にすぐ体勢を整えたガイアの両手で受け止められ、静かに地面へと降ろされた。

 

 

「い、今のはさすがにヤバいと思ったわ……」

 

「同感だ……今回ばかりは俺も体力が限界で無事に着地出来る気がしなかった」

 

 

ガイアの掌から降りた二人は漸く安堵の息を吐く。二人が無事である事を確認したガイアはケロニアとの決着をつけるべく向き直る。

ジークフリート、ランスロットやヴェインら白竜騎士団、そしてゼタとバザラガによってケロニアはかなり消耗していた。さらにケロニアは仲間の円盤群まで壊滅した事に愕然とする。

 

 

何故だ。何処で計画が狂った。

 

そうだ、あの巨人……そしてそれに変身した人間のせいだ。

 

 

そう思ったケロニアはなりふり構わずガイアに襲いかかってきたが、あれだけ戦った後だというのに逆にパワーの増したダブルパンチを叩き込まれ、続けざまに飛び蹴りを食らい再度倒れ込んだ。

もはや、事態はケロニアの理解の範疇を超えていた。

人間は脆弱であり、文明も自分達の方が上。フェードラッへ侵略を皮切りに全空を支配する気でいたケロニアこそ、おごっていたのである。

たとえ一人一人が小さくとも、いくつも集まれば強大な力になる。それに誇りや覚悟が組み合わされば尚の事だ。

 

ガイアはある事を試すべく、右腕を軽く振るうとアグルブレードを発生させる。まさかそんな事まで出来ると思わずその場にいた者達は驚きを隠せない。

そんなギャラリーを気にせず、ガイアはケロニアへとアグルブレードを『突き刺した』。

 

 

「ケェアァァァァァ!?」

 

「ダァッ!!」

 

 

アグルブレードを引き抜きケロニアを蹴り飛ばすガイア。これで推測したある事は事実だと確信した。

 

 

(思った通り、奴に効かないのは()()だ!)

 

 

光線が効かない……しかし今のアグルブレードのよう光そのものが効かないわけでないのなら、ガイアにケロニアを撃つ手立てはあるのだ。そう、ガイアの代名詞とも言えるあの技が。

 

 

「デアッ!ダァァァァ……」

 

 

ケロニアとの戦いに終止符を打つべく、ガイアは両腕を大きく開く。一瞬赤い光が輝くと、ガイアはさらに頭部に握り拳のまま両手を当ててエネルギーを集中させながら身を縮こませる。

キラリと頭部が光ったかと思うと、なんとガイアの頭頂部から光の鞭のようなものが発生した。

 

 

「うおっ!?何だありゃ!?」

 

「遠目から見ていたが光線では奴に通じないぞ!?」

 

「へ!?何それ、あの化け物そんな特性持ってんの!?」

 

「……いや、あれは光線とは違う……!」

 

「「「え?」」」

 

 

バザラガの言葉にヴェイン、ランスロット、ゼタは声を揃えてバザラガの方を向くと、ジークフリートも同じように答える。

 

 

「よく見ろ。光線ならば光が流れるように見えるはずだ。だが、あれは高密度で圧縮されているのかそうは見えん。あれは先程の剣と同じ……いや、遥かに強力な光の刃だ!!」

 

 

フォトンエッジ――ガイアの得意技にして彼を象徴する必殺技だ。そして仲間達の声援を受けつつ、ガイアは頭頂に構築した光の刃を撓らせながら立ち上がり、腕を背後にピンと伸ばしつつ気合と共に頭部をケロニアへと突き出す!

 

 

『いけぇぇぇぇぇ!!』

 

「ジャァアアアアアッ!!!」

 

 

突き出された頭部に連動し、フォトンエッジは真っ直ぐケロニアへと伸び、直撃する。直撃したフォトンエッジはケロニアの身体を切り刻み、そして……

 

 

「ゲェァァァァァ!!」

 

 

断末魔の叫びと共に、ケロニアは爆散した。

その瞬間、その場にいた者達のみならずフェードラッへの城に避難していた国民や、カール国王さえも大歓声を上げる。ガイアやジークフリート、白竜騎士団、人工知能であるPAL、そしてウルトラ騎空団、多くの者達が団結して手に入れた勝利だ。

しかし、まだガイアにはやるべき事が残っていた。

 

 

「ジュワッ!!」

 

「我夢?」

 

 

ジークフリートはもちろん、他の者達も再びフェードラッへに向かって飛んだガイアをどうしたのかと思いつつ追いかける。

ガイアは王都フェードラッへを見渡せる位置に空中静止し、被害にあった街を見た後に頷くとライフゲージに両手を添え、ゆっくりと左右へ開くとフェードラッへに穏やかな光が降り注ぐ。

 

レジェンドから教わったリカバリーオーラだ。彼ほど使いこなせるわけではないが、多少大きくても街一つくらいなら十分に修復出来る。

 

見る見る街が元通りになっていくのをその目で見た者達はガイアから神の如き後光が見えた。完全にフェードラッへが修復されると同時にガイアのライフゲージが音を立てて点滅しだした。慣れない大技を使った事で余計にエネルギーを消費したからである。

心配そうに見守るジークフリート達であったが『大丈夫』と頷きゆっくり地面に降り立つガイア。夕日をバックに雄々しく立つその姿は、赤いボディと合わさって非常に芸術的であった。

この日、この瞬間を忘れまいと、ジークフリートは我夢に教わったウルフォンのカメラ機能でその姿を撮る。

 

ガイアは赤く光り輝き、光が徐々に小さくなるとその中から我夢が歩いて来た。無事やるべき事をやり遂げた者がする、笑顔で。

 

 

「皆さん、ありがとうございました。それから、お疲れ様でした……僕達の勝利です!」

 

 

英雄から出た勝利の二文字に再び沸き上がる白竜騎士団と、城から街へと帰ってきた国民達。

 

 

「やっと終わった〜……あの化け物がやたら燃えるせいで汗かきまくり。早くお風呂入りたいわ」

 

「生憎だがな、エリアル・ベースはアウギュステだ」

 

「知ってるわよそんな事。スペースペンドラゴンにも付いてるんだしそっちでも十分」

 

「いや、でしたら城の大浴場を使って頂きたい」

 

 

突然ゼタもバザラガも聞いたことの無い声を耳にし、その声をした方へ顔を向けるとカール国王が護衛と共に一行の前にやってきた。

 

 

「「「陛下!」」」

 

 

ジークフリートやランスロット、ヴェインら白竜騎士団はすぐに跪こうとするがカール国王に制される。

 

 

「我らがフェードラッへの為に命をかけて奮闘してくれた客人らを礼の一つもせぬまま帰しては、王として、国としても恥ずべき事。今日の疲れと傷を癒やしていただく為、是非城の方へ泊まってもらいたいのだが」

 

「え!?いいの!?あ、いいんですか!?」

 

「どのみち我夢も疲労困憊でこれ以上無理に動けば倒れるやもしれん。せっかくの申し出だ、ありがたく受けさせてもらうとしよう」

 

 

ゼタとバザラガは俄然乗り気であった。スペースペンドラゴンを収納ブレスレットに仕舞ったシエテもやってきて我夢からそれを聞くと……

 

 

「いいんじゃない?頑張った御褒美って事でさ」

 

「……なんか胡散臭く感じるんだけど」

 

「シエテ、お前はその表情で損をしているな」

 

「……我夢ちゃん、俺……泣いていい?」

 

 

ゼタとバザラガによってちゃんと功労者の一人でもあるシエテは落ち込み、我夢やジークフリートから慰められる結果となった。頑張れ頭目。

 

 

「我夢殿。イザベラの件に続き、此度の事件解決の恩、どれだけ頭を下げて礼をしても足りぬ。国民だけでなく街をも救って頂いたというのに満足のいく礼を用意出来ず申し訳無い」

 

「あ、いえ……僕は僕がやらなければならない事をしただけなので……ですから、お礼なんてその言葉だけで十分すぎます」

 

「では陛下、今日だけでなく、もう一日宿泊してもらってはどうでしょう。今はなんともなくても、翌日一気に疲労が来るという事もあります」

 

「おお、それがいい。ジークフリートの言うとおり、出立は二日後に延ばしては如何だろうか。無理にとは言わぬが……」

 

 

我夢達は軽く相談し、自分達は良いのだが向こうはどうだろうと連絡をその場で連絡してみる事にした。ウルフォンの機能を見せるのに良い機会だ。

 

 

「……ってわけなんだよ博也ちゃん」

 

『博也ちゃんはやめろって言ってるだろ。公園のベンチに座ってる青いツナギの男に差し出すぞお前』

 

「藤宮、それだとシエテさんが戻れなくなるぞ。色んな意味で」

 

「何それ怖いんだけど!?」

 

『何にせよこっちは心配するな。騎空団のほぼ全戦力が集中しているからな。傷を癒やして疲れも取って、万全の状態で帰って来い』

 

「分かった。ありがとう、藤宮」

 

『ああ、じゃあな』

 

 

そう言って通話を切ると、普通に周りがざわついていた。どうやらここまで優れた通信機器がこちらにはまだ存在しないのかもしれない。

 

 

「お待たせしてすいません、カール国王。少しの間、お世話になります」

 

「いやいや、こんな事しか出来ぬが、実家だと思って寛いでほしい」

 

 

申し出を了承した後で、我夢は思い出したように進言する。

 

 

「あ、それから後でいいんですが、少しばかり倒したケロニアの破片が残っていると思うので回収をお願いしたいんです」

 

「ふむ、確かにそのまま放置しては同じ事が起きる可能性があるな」

 

「それだけではなく、見ての通りケロニアは乾燥させると良く燃えるんです。燃料や薪代わり効果的かと」

 

 

……大丈夫なのだろうか、そんな事して。しかしこの疑問はさして問題もなく、後日何故かケロニアの破片が競りに出されるという珍事が起きたそうだ。

 

その夜、祝勝会も兼ねた晩餐会が城にて催され、やはりというかウルトラマン、引いては彼が属する銀河遊撃隊の話題で持ちきりだった。

 

 

「へ〜……じゃあそのレジェンドってウルトラマンが我夢達の騎空団の団長なのか。あれ?銀河遊撃隊の方は?」

 

「そっちはウルトラマンベリアルっていうチーフの直弟子の一人が務めてるんです。彼の息子のジードも遊撃隊に所属していて、騎空団の皆もあった事があるんですよ」

 

「あ〜あの子ね。レジェンドもリク……ジードもウルトラマンの姿はまだあたし達も見た事ないんだけどさ」

 

「だが、話を聞く限り親の七光りで務まる仕事ではあるまい。相当鍛えられたと見える」

 

「まあ、チーフはベリアル総司令達を人間体にして強力な怪獣達の巣窟に放り込んだそうですし」

 

「「「「「何それ怖すぎる!!」」」」」

 

 

ちなみにウルトラの父ことケンや、ゾフィーの父親もそれをやられた。最近ではゼロも経験させられた。ゼロ曰く「ウルトラマンのやる修行じゃねえ」。目の前で人間体のまま余裕で名だたる強敵怪獣をまとめて瞬殺しまくるレジェンドを見てそう零したそうだ。

 

 

「しかし、なんで吸血植物のケロニアが高度な文明を持ったんだ?最初は移動能力を持っているくらいだったんだろう?」

 

 

ランスロットの疑問は最もなのだが……

 

 

「それはまだ全く分かりません。人間から吸血している内に知能に目覚めたのか、それとも別の何かがあったのか……でも、今回のような事が今後起きないとは限りません。むしろ、これからも起きると予想した方がいいと思います」

 

 

我夢の言葉になんとも言えない表情になるランスロット達。重い空気を吹き飛ばすように、シエテが話題を変える。

 

 

「ま、何にしてもさ。今は目の前の問題を解決していくしかないって事だよ。しっかし博也ちゃんの方はアウギュステかぁ……今頃さっさと事件解決して一足早くバカンスしてたりして」

 

「シエテって水着にブーメランパンツとか選びそうよね」

 

「以前見た時、チーフの水着は赤褌だったけど」

 

「ええ!?」

 

「……意外と似合うかもしれん」

 

 

似合い過ぎて反応に困っていた少年少女がいました。

何はともあれシエテによる話題反らしは成功し、その後は賑やかかつ楽しい話題で晩餐会は終わり、激動の一日は漸く終わりを告げる。

 

 しかし、我夢達が暫しの安息を手に入れたのと入れ替わるように、アウギュステでも一波乱起きようとしているのは、こちらにいる彼らには分かるはずもない事であった。

 

 

 

〈続く〉




ガイアに対してアグルは海、グラブルで海と言えばアウギュステ!というわけで藤宮他ウルトラ騎空団のメンバーはそちらに行きました。

アグルの話は三すくみの会談前にやろうと思ってます。つまり、やっとこさ次回は授業参観の話です。
殆どシリアスだった今回と違ってほのぼのやギャグ色が濃くなりそう。束の間休息的な。
次回更新はそこまで時間はかからない……ハズ。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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