ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

157 / 301
大変お待たせしました。ガイア編と対を成す空の世界・アグル編です。
約二週間もお待たせした割にガイア編の3分の2くらいの長さです……月が変わって色々あった為、遅くなってすいません。

ついでに参戦してるグラブルキャラは作者の好みや話に絡められそうなキャラを独断と偏見で選出しておりますが、登場希望キャラがございましたら活動報告までどうぞ。上手く書けるかは別問題ですが……


それでは本編をどうぞ。


SIDE AGUL 大海戦!巨人対巨人

 空の世界――

 

 我夢=ガイアがジークフリートや白竜騎士団、ゼタやバザラガにシエテらとフェードラッへで起きた事件を解決した頃、時を同じくして残りのウルトラ騎空団メンバーはアウギュステに居た。

別にバカンスというわけではなく、最近謎の飛行物体がよく目撃されるという情報を仕入れ、それの調査を行う為である。

総指揮を取るのはやはりアルケミースターズの一員でもある藤宮博也。その補佐には十天衆創始者のウーノが抜擢され、他の者は聞き込みやエリアル・ベースの警護に当たっている。

 

 

「……空飛ぶ四本槍?」

 

「はい〜。目撃者の話だと、何でも銀色の巨大な槍が四本、このアウギュステの海に飛んでいくのを見たそうです〜」

 

 

藤宮とウーノは現在、アウギュステに商談に来ていた万屋を営むハーヴィンの女性・シェロカルテに話を聞いている。

彼女にはレジェンド一家に先んじて我夢と共に空の世界へ来て以来、藤宮にとっては顔馴染みの相手であり、同時にウーノとも十天衆の中で特に親しい。

 

 

「そういう姿の星晶獣……とも考えられなくはないが」

 

「ウーノでも分からないのか」

 

「すまない。そもそも星晶獣自体、我々にとって未だ未知の存在である部分が多くてね。どれほどの種類がいるのかさえ定かではないから、今の見解ももしかしたらという可能性でしかない」

 

「四本……槍……空を飛ぶ……っ!」

 

「藤宮、どうかしたのかい?」

 

 

顎に手を当てて考える素振りを見せていた藤宮だが、何かを思い出したような反応をしたのでウーノは藤宮に問う。

 

 

「ああ。一つだけ思い当たる節がある。思い出したくもないし、当たっていてほしくもないがな」

 

「もしや……君の言っていた根源的破滅招来体に関係しているのか?」

 

「例の槍が俺の予想している奴と同じなら関連性はある。連中が根源的破滅招来体に送り込まれている確証はないが、おそらくその可能性が高い」

 

「なら、一刻も早く調査した方がよさそうだ。シェロカルテ、その目撃情報はどの方向に?」

 

「え〜とですね〜……って言ってるそばから出ました〜!もしかしてあれじゃないでしょうか〜!」

 

「「!?」」

 

 

シェロカルテが指差した方向を向くと、そこには目撃情報に違わぬ形の四本の槍がアウギュステの海へ飛んでいくのが見えた。

藤宮はそれを見て自身の予想が当たった事を確信する。

 

 

「間違いない……!奴は金属生命体だ!」

 

「「金属生命体!?」」

 

「俺と我夢、チーフもやり合った事がある。ウーノ、どうやら本格的にこの世界も無関係ではなくなってきたぞ」

 

 

藤宮は金属生命体が飛び去って行った方向を睨みつつ、根源的破滅招来体がこの世界にも関わりだした事を告げる。

なお、シェロカルテには事前に説明していた為、こうしてこの場でも包み隠さずに言う事が出来た。

 

 

「何にせよ追って撃破するぞ。あの方向には確か……」

 

「ソーンとサラーサがいたはずだ。すぐ彼女らに連絡して、迎撃態勢を取ろう。あわよくば彼女らだけで仕留められればいいんだが……」

 

「それに関しては奴の特性上、あまり期待しない方がいい。近くにいる団員に集合をかけて、一気に畳み掛ける!」

 

 

ウーノは藤宮の言葉に頷くと、藤宮と共にウルフォンで周囲の団員に呼びかけながら金属生命体の飛んで行った方向……ベネーラビーチへと急行する。

 

 

 

 

 多くのリゾート地があるアウギュステでも特に有名なベネーラビーチ。そこに向かって飛んでいた金属生命体を、ウルトラマン並と言っても過言ではない視力を持つ十天衆のソーンが捕捉した。

 

 

「あれね。連絡にあった金属生命体って。確かに珍妙な形だわ」

 

「んー……?あ!あたしにも見えた!でもなーあんま強そうに見えないぞ?グレイフィアの方が強そうだ!」

 

「まあ、彼女は団長お付きのメイドだし……っていうかそこはゼットとかじゃないの?」

 

「ゼットはウルトラマンだから別枠だ!あと、レジェンドとリク、我夢と藤宮も!それよりソーン、そろそろ近づいてきたぞ?倒さなくていいのか?」

 

「そうね。手早く片付けるとしましょうか」

 

 

同じ十天衆のサラーサと会話も程々に、金属生命体を討つべく魔導弓を構えるソーン。同様にサラーサは斧を構えた。

……そこ、別の世界にいる世界チャンピオンの娘とか、身体は子供・頭脳は大人な名探偵と声が似ているから素手とかキック力増強シューズで戦えとか言わない。

 

 

「悪いけど、最初から本気で行くわ。アストラルハウザー!」

 

 

ソーンの魔力で精製された無数の矢が魔導弓から放たれ、四本の槍の形で飛んで来た金属生命体に一つ残らず直撃し大爆発する。

 

 

「あー!ソーンズルいぞ!あたし空飛べないんだからちょっとは叩き落とすぐらいにしてくれよ!」

 

 

容赦なく奥義をぶっ放したソーンに対して、戦いたくてしょうがなかったサラーサは猛抗議。

 

 

「……サラーサ、心配しなくても大丈夫みたいよ。喜ばしくない事だけど」

 

「へ?何でだ?」

 

 

真剣なソーンとは裏腹に間抜けな声を出したサラーサだったが、直後にそれは訪れた。

爆発の煙の中から何かが現れたのだ。四本の槍ではなく、鋼鉄の鎧を着込んだ騎士か戦士のような外見、最近では駒王の隣町でメビウスが交戦した金属生命体に酷似している。

それもそのはず、同じ金属生命体にカテゴライズされる存在なのだから。

 

 金属生命体アルギュロス。

 

かの存在はソーンとサラーサを敵と見定め両手を向ける。魔導弓による遠距離広範囲殲滅を得意とするソーンは一先ず浮遊術で間合いを取ろうとするが、サラーサは相手が何だろうとお構いなしに突撃していく。

 

 

「よっしゃ!あたしもやるぞー!」

 

「ちょっと、サラーサ!?」

 

「グラウンド・ゼロ!!」

 

 

ソーンの静止に耳を貸さず得意技の一つをアルギュロスにぶっ放すサラーサ。

怪力乱神な彼女の一撃は凄まじく、巨大な爆風と衝撃波がアルギュロスに直撃する。よもやドラフの少女とはいえ想像を遥かに超えた攻撃をしてくるとは思いもよらずアルギュロスはよろめく。

 

 

「おおっ!?なんか普通に耐えた!お前凄いな〜!」

 

「感心してる場合じゃないわ!早くそこから離れ……!?」

 

 

何故か喜ぶサラーサを諌めて一時後退を促すソーンだったが、悪寒を感じてアルギュロスを見るとアルギュロスの両手が大砲に変化していた。そして驚くソーンや未だ喜んでいるサラーサへ向けて連射する。

 

 

「くっ!!」

 

「へ?うわっ!?」

 

 

二人は回避するが、アルギュロスは休む間もなく右手を剣に変え、より遠くへ後退したソーンを一瞥しつつサラーサへとその右手を振り下ろす。

 

 

「サラーサっ!!」

 

 

ガキィィィン!!!

 

 

「んっ……ぐっ……お……重いぃぃぃ……」

 

 

腰まで砂浜に埋まりつつも斧でギリギリ受け止めて、なんとか耐えているサラーサ。ぶっちゃけこの時点で色々とんでもない。

急いでソーンはサラーサを救出しようと魔導弓を向けるが、それよりも早くまたもアルギュロスにとって予想外の事態が巻き起こる。

 

 

 

 

 

「蓮天紅我正拳突きいいい!!」

 

ドゴォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

突如アルギュロスが吹っ飛ばされたのだ。

 

 拳で。

 

大きくではないものの、サラーサが危機を脱するには十分過ぎる一撃だ。

そのままアルギュロスを吹っ飛ばした声の主はサラーサの両手を片手で掴んで砂浜から引っこ抜く。

 

 

「間に合ったようで何よりだ」

 

「おおー!ガンダゴウザのじーさん!」

 

「如何にも!儂が古今無双流が開祖!ガンダゴウザであぁぁるッ!!」

 

 

 ウルトラ騎空団のメンバーの一人、古今無双流開祖である空の世界において伝説の格闘家・ガンダゴウザ。

御年72歳にして老いて尚盛んどころではない筋肉隆々の肉体を持つドラフの老人である。

隕石を拳で破壊するとかその巨体で魚並みの速さで泳ぐとか色々逸話(なんてレベルじゃない)を持つ御仁で、あろう事かレジェンド……ではなくゼットを弟子にしようとした。まあ、結局弟子にはならないが修行に付き合うという事で落ち着いている。

なんとなく東方不敗と仲良くなりそうだが、それはさておき彼以外にも騎空団メンバーが何人かが後から駆けつけてきた。

 

 

「あかん、出遅れた〜!せっかく活躍して団長にアピールする作戦パーになってもうた〜!」

 

「ユ、ユエルちゃん……さすがにあれをウチらだけでどうにかするんは無理やと思うよ?それに、団長はん今は居らへんし……」

 

 

 ユエルとソシエの幼馴染な女性エルーンコンビ。元気な方がユエルで、ちょっと控えめなのがソシエ。この二人、とある王家出身らしく、エルーンでも珍しい尻尾持ちだ。しかも、もふもふ。……しのぶは大丈夫なのだろうか、割と本気で。

 

 

「しかし……これは骨が折れそうだな。いや、金属生命体というからには雷は予想外の効果が出るかも分からんか」

 

 

 レヴィオン騎士団の団長でもある、雷迅卿の二つ名を持つヒューマンの男性・アルベール。別に鏡を使った攻撃が得意だったりするわけではないし、鏡の中で体育座りしてたりもしない。

渾名はビリビリおじさん、略してビリおじだ!

 

 

「俺はおじさんと呼ばれる歳じゃない!!」

 

 

アルベール、現在25歳。全然お兄さんの部類だ。ついでに説明するとこの場にいる者達の年齢だが、ソーンは22歳、ユエルとソシエは19歳、サラーサは拾われた為不明、そしてガンダゴウザは72歳。……おまけでレジェンドは(最低でも)桁が50万個歳。50万歳ではない。兆とか京とかでも全然桁が足りない。

……そりゃ、誰とくっついてもロリコン扱いされるんだから色々吹っ切れるわな。

最後にサーガの年齢は桁が30万個。こっちも大概だが、レジェンドはサーガが生まれてから育ててきたので正確な年齢は分かるらしい。こんな年齢じゃ覚えてても大して意味が無さそうな気もするけど。

 

 

「む?奴が起き上がる……いや、海に逃げる気か!?」

 

「なんで金属なのに海に逃げるん?錆付くだけやん。てか沈んで浮いて来んかったりして」

 

「でも、ウチらの常識と違うかもしれへんし……油断出来へんよ」

 

(確かに彼女らの言う通りだ。いくらこちらに戦力が集まりつつあると言っても逃げに転ずるのが早すぎる。奴があの姿をとったのはソーンの魔導弓が直撃してからだったはず)

 

 

怪訝な表情をする周りの中で唯一、アルベールはアルギュロスを深く観察していた。

アルギュロスは最初のように四本にはならなかったが、巨大な一本槍に姿を変えて海と飛び込み、海中へと消える。

 

 

「……ホンマに逃げよった」

 

「ど……どないしよう……?」

 

「簡単だろ、海を真っ二つにして一緒にあいつも真っ二つだ!」

 

「もう……何言ってるの。あれがまた仕掛けてくるかもしれないし、避難とか注意喚起するのが先よ。手分けして……」

 

「待たれよ!何やら海の方に動きが見えおる」

 

「「「「え?」」」」

 

 

女性陣が一斉に海の方を向くと、海が波打ったかと思えば巨大な水柱が立った。

 

 

「おっ!やっぱりやる気だったんだな!」

 

「待て、あれは……!」

 

 

ドォォォン!と砂埃を舞い上がらせて砂浜に着地した、水柱の中より現れたものは先程の金属生命体アルギュロスではなかった。

青い体色が目を引く、ゼットによく似た存在。

 

 

『ウルトラマン!?』

 

(確かにゼットに似ている。しかし何だ、この違和感は……)

 

 

アルベール以外は純粋に驚いているが、訝しげな表情の彼と違い他の者達は逆に安堵している。一部はガッカリしていたが。

 

 

「なんや、逃げ込んだ先にあのウルトラマンがいて返り討ちにされたんやな、きっと」

 

「本当にそれならええんやけど……」

 

「むう……儂は一撃しか打ち込めなんだ……」

 

「あたしもー!不完全燃焼ってやつだー!」

 

「あら?藤宮とウーノ、ようやく来たのね。実はたった今「今すぐそいつから離れろ!!」……え?」

 

 

藤宮の叫びにソーンや、アルベール以外の仲間達もどうしたと思った瞬間、光弾が彼らのいる場所へと放たれた。

 

 

「「きゃあああっ!?」」

 

「「うわあっ!?」」

 

「ぬおっ!?」

 

「くっ!?」

 

 

辛うじて六人は回避するが、何発もの光弾が彼ら……ではなく、近くの船着き場に停泊していた多くの漁船へと直撃し、激しく燃え上がる。

 

 

「うわあっ!俺達の船が!」

 

「早く消火しろ!どんどん燃え移るぞ!」

 

 

漁師達がてんやわんや状態に陥り、藤宮やウーノ、ソーン達騎空団のメンバーもそちらに向かおうとする。

追撃に警戒していた彼らだが、その気配は全く無く怪訝に思った全員がそのウルトラマンを見るが、その場の全員が注目した瞬間、藤宮以外が驚愕した。

 

 

「フッハッハッハ……」

 

 

なんとウルトラマンが口元を歪めて笑ったのだ。

ウルトラマンはそういった事はほぼ無いに等しく、彼らの知るゼットも感情の変化は声色や動作などで分かるが表情は変化しなかった。

他の者が驚愕する中、藤宮は忌々しいものを見る目で睨みつけるが、そのウルトラマンらしきものは再び海中へと消えてしまう。

 

 

「な、何やアイツ!ウルトラマンやからって安心させてこれかいな!」

 

「違う……!」

 

「ふ、藤宮はん?どないしたん?」

 

「奴はウルトラマンじゃない……!」

 

 

藤宮はそう短く答えると再び船着き場へと向かい、漁師達に混じって消火活動を行いだす。それを見て他の者達も急いでそれに倣って消火を手伝うが、殆どの船が使い物にならなくなってしまった。

僅かに船は残っているが、それも片手で数えて足りてしまう程度だ。

 

 

「そんな……これからが忙しくなるって時に……」

 

「あの巨人のせいだ!あんな奴がいなければ……!」

 

「きっと直前に現れた化け物もあの巨人の手先だったんだ!」

 

「……」

 

 

次々と怒りや恨みを口にする漁師達の言葉を聞き、藤宮は俯いて唇を噛みつつ拳を強く握りしめる。いつもと違う彼のその様子を仲間達は心配そうに見守っていた。

 

 

 

 

 空の世界の宇宙。

地球に相当する空の世界と、それと共にある『月』。その二つの星を宇宙空間で見つめる一つの存在。

 

 

「なるほど……既に何者かが先手を打って干渉し始めているのか。だがそれはこちらとしても都合がいい。我々もそれに便乗させてもらうとしよう」

 

 

空の世界を見てそう呟くと、その存在は月の方を向く。

 

 

「数多の世界において、月は古来より神秘的な場所と見られていると同時に、魔力の象徴として扱われる事も多い……そして、それは事実だ」

 

 

その存在が月に手を翳すと、月が淡く発光する。

ここで『月の民』が異常を感知するも、まるで理由は判明せずそれを起こした存在を突き止める事さえ出来ない。

 

 

「あの世界には精霊が当たり前のように存在する。目視出来るものかは分からないが、その精霊が月の『魔力』の影響を受ければどうなるか……もっとも、月に住まう者達は自分達の住処としてる場所に秘められていた力を知らなかったようだがな」

 

 

愚か者を見るように、その存在は徐々に光が収まり元のような静寂に戻っていく月を見ながらそう言うと、一瞬でその場から消えた。

 

 

 

 

 その日の夜、藤宮らは一旦エリアル・ベースへと戻り今後の対策を考える事にしたが、こういった事態に一番遭遇した経験がある藤宮はすぐに自室へと戻ってしまい、結局まともな意見が出ずにお開きとなった。

 ウーノが何か思い悩んでいると、同じ十天衆のニオが声をかけてくる。

 

 

「どうしたの、ウーノ。雰囲気もそうだけど、いつもの旋律が乱れてる」

 

「ああ、ニオ……何でもない、というのは君には通用しないか。ちょっと藤宮の事でね」

 

「私も気になってた。ここへ彼が帰ってきた時、彼の旋律が酷く不安定だったから」

 

「そうか……やはりあのウルトラマン……に似た存在が原因だろうね」

 

 

ニオはそれを聞いて、昼間ウーノ達が遭遇したという金属生命体、及びウルトラマンに酷似している存在を思い出した。藤宮はあれと遭遇してから今の状態になったようなものだ。

 

 

「私の方からそれとなく聞いてみるよ。彼とはよく話すからね。ニオ達はあまり彼に突っ込んで聞かないようにしてほしい」

 

「うん、分かった」

 

 

短く頷くと、ニオも自室へと戻る。その際「団長、早く帰って来ないかな」と呟いたのをウーノは聞き漏らさなかった。

 

 

(彼が元の世界に戻って暫くだが、相変わらず愛されているな。彼なら藤宮の悩みを解決出来たかもしれない……が、いない者を頼ったところで事態は好転しない。今日はもう遅いし藤宮も休んでいる。無理に起こしてもまともな会話が出来るとも思えないし、明日改めて話すとしようか)

 

 

そう結論を出すと、ウーノも自室へと戻った。

 

 しかし彼らがエリアル・ベースで夜を明かしている間に、ベネーラビーチの船着き場ではさらなる被害が齎されていた。

 

 

 

 

 

 翌日、あのウルトラマン似の存在への対抗策を練るべく再びベネーラビーチを訪れた一行だったが、何やら船着き場から騒ぎが聞こえてくる。

何事かと思いそちらに行ってみると、そこには昨日残っていた僅かな船は見るも無残な姿になっており、数名が大きな声で訴えていた。

 

 

「確かに見たんだ!海の中にいた何かが、触手みたいなものを幾つも伸ばして船を壊したんだ!」

 

「ああ、間違いない!俺も見た!昨日の奴とは違う怪物だ!またあの巨人が何か差し向けてきたに違いない!」

 

 

 どうやら金属生命体とは別の怪物によって残りの船が破壊されてしまったようなのだが、漁師達はそれすらも先日のウルトラマン似の巨人の手引きによるものだと言い出し、藤宮はそれを聞くと昨日と同じ表情になる。

 

 

「ね、ねえ藤宮?昨日から何か変よ?大丈夫?」

 

「……別に、どうもしていない」

 

 

ソーンが藤宮を心配するが、ぶっきらぼうに言うと一人で別方向へ行ってしまう。

 

 

「あ!藤宮、ちょっと!」

 

「ここは私に任せてくれないか。ソーンは皆と情報収集を頼む。細かい事でも構わない、そこから何か糸口が掴めるかもしれない」

 

「ウーノ……ええ、分かったわ。彼の事、宜しくね」

 

「期待に応えられるかは分からないが、全力を尽くそう」

 

 

ソーンはウーノの返事を聞き、昨日と同じメンバーを連れて情報収集にあたる事にする。ただ、ガンダゴウザとかサラーサはまともにそれが出来るか不安だったが。

それを見送ったウーノは急いで藤宮を追う。おそらくだが彼はある方法を取るはずだ、と予想していた場所へ急ぐ。

 

 

 

 

 藤宮はエリアル・ベースの格納庫から一つボートを持ち出そうとしていた。潜水艇の類の方が良かったが、自動操縦装置が付いているか確認する時間も惜しく、一度壊れると修理に時間が掛かる為、ボートの方にしたのだ。

 

 

「万が一と我夢が追加で作っていった予備のジェクターガン、それから……雨具。こっちはなんで用意したんだろうな、俺は……まあいい。奴が出て来ないならこっちからおびき出してやる」

 

 

そう、怪物の方はともかく、ウルトラマンに似た姿の方はこの世界でのウルトラマンの信用を失わせるべく現れたと考えた藤宮は自ら囮となっておびき出し、自身の手で決着をつけようと思い立ったのである。

 

 

「ヒカリという奴が言っていたな……疑惑を晴らすには、まずは相手を戦いの場に引きずり出す事から始める必要があると。あのアグルもどき、二度も俺を怒らせた事を後悔させてやるぜ……!」

 

「……やはり、アレは君がウルトラマンになった時の姿を模したものだったのか」

 

「!?」

 

 

準備を終え、戦いの場に向かおうとする藤宮はそれ以外の事に注意散漫になっておりウーノが近くに来ていた事に気付かなかった。

 

 

「ウーノ……」

 

「すまない。本当ならこういった形ではなく、ちゃんと落ち着いた場で聞きたかったのだが、君があまりにも切羽詰まった様子だったのでね」

 

「……いや、俺が勝手に喋っただけだ」

 

「藤宮、まさか君は一人で戦うつもりかい?だとしたら無謀すぎる」

 

「……俺はかつてアイツと全く同じ奴と戦った事がある。俺が倒さなければ、俺は……アグルは一生誤解されたままだ。そして、それはこの世界でウルトラマンがその存在を認められない事にも繋がる。これは俺だけの問題じゃない」

 

 

この言葉にウーノは何も言えなくなった。仮にその偽物を自分達が倒しても、藤宮の言う通りウルトラマンそのものが認められないとなれば、再びレジェンドやゼットらが来た時……特にまだ人間体になれないゼットへ風当たりが凄まじい事になる。アストラル体とはいえタイガ達トライスクワッドに関してもそうだ。

そうならない為に、彼はたった一人で死地へと向かおうとしていた。

 

 

「そうか……」

 

「止めるのは構わないが、そうなったら力づくでも行かせてもらうぞ」

 

「そこまで考えているのに止めはしないさ」

 

「……以外だな。単純な強さならウルトラマンになっていない俺とあんたではあんたの方が比べるべくもなく強いだろうに」

 

「君がただのプライドだけで動こうとしていたならそうしていた。だが、君はここにいない者達の事もしっかり考えている。ならば止める方が間違っているだろう」

 

 

ウーノが引き下がった事に若干驚きつつも、藤宮は感謝しつつ三度ベネーラビーチへと向かおうとするが、ある事に気付く。

 

 

「ウーノ」

 

「なんだい?心配しなくても他の皆は私が説得するよ」

 

「それはありがたいが、俺が今聞きたいのはその事じゃない」

 

「?」

 

「いくら何でも……天気が変わり過ぎだ」

 

 

外を見ると、雷が鳴り大雨が降り強風が吹いていた。

 

 

「なっ……!?さっきまでは雲一つ無い快晴だったというのにこれは……!」

 

「この島にそういう星晶獣がいるという話は?」

 

「いや……水や海に関する星晶獣ならともかく、天候にこれ程まで関与するとなるとティアマトくらいの力が必要だ……そのティアマトは確かポートブリーズに加護を与えているはず。この島まで影響を及ぼすまでは到らないだろう」

 

「……あのアグルもどきにこんな力はない。あるとすれば……」

 

「新たに現れたという怪物か……!」

 

 

ウーノのその言葉に頷いた藤宮は、彼と共にベネーラビーチへと急行する。

 

 

 

 

 突然大荒れとなった天気にソーンらは急遽シェロカルテの有する海の家へ避難していた。正直、強風のおかげで完全には雨風を防げないが、屋根があるだけで大違いなので文句は無い。

 

 

「あ〜もう何なん!?山の天気は変わりやすい言うけどここは海やんか!」

 

「この天候では何か合っても天雷剣を全力で振るえないな……雨水のせいで身体が濡れているから全員に感電しかねない」

 

「おかしいですね〜。アウギュステではこの時期多少荒れる事はあってもここまで酷くなる事はないはずなんだすが〜。しかもこんな急に〜」

 

 

長らく商売をしてる彼女からしてもこの島でこんな荒天は今までで初めてのようだ。さすがにこれは異常だと全員が感じた瞬間、それは現れた。

 

 

「沖に何か見えおるな……」

 

「あたしにも見えた!なんかドラゴンっぽいけどドラゴンじゃないような、あとウネウネしたのもあるぞ」

 

「う、うちはあんまり見えへんのやけど……ソーンはんは見えはるやない?」

 

「……何、あれ……!?」

 

 

ガンダゴウザやサラーサという視力がおかしい面々に囲まれたソシエがおどおどしつつソーンに聞くと、彼女が見たのは正に異形の怪物。

 

 

「ギシャアァァァッ!!」

 

 

雷鳴轟く嵐の海に姿を現したのは龍……海龍の上半身と巨大な魚の尾のような下半身を持った化け物。

謎の存在が月の魔力をこの空の世界の海にいる精霊に注ぎ込んで作り上げた魔獣。

 

 海神ムーバ。

 

星晶獣や金属生命体とは全く違う怪物の出現に騎空団のメンバーのみならず、一緒に避難していた漁師達も戦慄した。

 

 

「あ……あいつだ!昨日見た化け物は!」

 

「俺達の船を壊したのはアイツか!」

 

「どうするんだ!あんなのに勝てるわけがない!ましてこの嵐の海で!」

 

 

漁師達はさすがに怖気づいてしまっている。無理もない、漁師だからこそ嵐の海の恐ろしさを知っており、しかもそこで暴れているのは規格外の化け物だ。

さらに……

 

 

「ぬう……この悪天候でさえなければあの怪物に拳の一つも叩き込めたものを……」

 

「ソーンはんの魔導弓でも厳しいん……?」

 

「狙えなくはないけど……時折雷で空が強く光るから目が……」

 

 

騎空団のメンバーも一撃必殺型のガンダゴウザは飛び道具を持たず、頼みの綱のソーンも超視力の魔眼が雷光に対して逆に裏目に出てしまい満足に攻撃が出来ない。

サラーサに至っては威力は十分だが射程距離的に難しく、そこから下手に威力を上げれば周りの方が被害を受ける可能性が大きい。

本気で手詰まり状態のところへ雨具を着たウーノが駆けつけてきた。

 

 

「皆、揃っているね」

 

「ウーノ!藤宮は?」

 

 

その問い掛けにウーノは船着き場を見る。その場にいたメンバーもそちらを向くと、なんと藤宮が既に持ち出したボートに乗ってムーバへと向かって行くのが見えた。

 

 

「なっ!?何をしているんだ!!無茶にも程があるぞ!!」

 

「えー!藤宮だけ戦いに行くのか!?ズルいぞ!」

 

「そうじゃないやろ!なんであんな命捨てるようなマネするんや!」

 

「ウーノ、なんで止めなかったの!?」

 

「……彼が望んだ事だ。あの巨人を倒す為に」

 

 

ウーノ以外が絶句した。巨人を倒すとは言うが今日はまだその姿を現していない上に出てきたのは未知の怪物。

この嵐の海でまともな対抗手段を持っていない藤宮では自殺行為でしかない。

 

 

「彼はこう言っていた。『おそらく奴は俺が絶体絶命の時を狙って現れる』とね。しかも狙うのは彼ではなく我々だろうとも」

 

「え……?よう分からんのやけど……なんで藤宮はんが危険な時にトドメをささへんの?」

 

「絶体絶命の時ならば自分が手を下さずともその命が消える、奴ならそう考えるだろう……そうも言っていたよ。しかもお誂え向きにあの怪物まで出てきている。条件としては願ってもない好機だ」

 

 

見たところ、サラーサが言っていたウネウネとはムーバの触手。藤宮はそれで自分を海中に引き込むだろう事を予想していた。そして引きずり込まれたタイミングで巨人……アグルもどき改めニセアグルは姿を現すはずだ。

 

 

「それは……藤宮を犠牲にするという事か!?」

 

「いや、違う」

 

「ならばどうする?儂らだけで昨日の奴も含めて二体、倒しきれるとは思えぬぞ。無論、やる気ではあるが」

 

「考えてみたまえ。何故彼があの巨人に執着しているのか。何故あんな無謀な方法をとったのか」

 

「……なんでだ?」

 

「分からないか、サラーサ。彼は()()()()()であり、我々から見て絶体絶命の状況に陥っても、それを脱する方法を有しているという事だ」

 

 

これを聞いてようやく合点が言った。先日サラーサ自身が言ったのだ。『ウルトラマンだから別枠だ』と。

今まで変身した姿を見たことがなく、今回もすぐに変身しなかった上に藤宮の様子がおかしかった事も相まってすっかり頭から抜けていた。

 

 

「彼の話を聞いたが、あの巨人は藤宮が変身したウルトラマンを模した存在らしい。名前はアグルというそうだ」

 

「アグル……」

 

「なるほどなぁ。ならアイツは藤宮の偽モンやし、ニセアグルやな!」

 

「あれをそのままにしておけばウルトラマン全体が悪者扱いされかねないと、彼が彼自身で決着をつけようとしている。我々に出来るのは偽物が出てきた時、藤宮がウルトラマンになるまで偽物を食い止める事。問題は奴が藤宮の思惑を外れ、彼が命を落としてから現れないかという事だ。ウルトラマンとなった藤宮が偽物を倒して、被害を出したのがウルトラマンではないと証明しなければならないのだから」

 

「……そこは、賭けるしかないわね。藤宮の考えが当たる事に」

 

 

そう言っている間にも藤宮はボートでムーバの近くへと進んでいく。手にしたジェクターガンで銃撃しつつ注意を自身へと向けさせている。

ついにムーバが海中から触手を伸ばして藤宮を捕らえ、自分が海中へと潜る時に一緒に引きずり込んだ。

……藤宮はしっかりと右手は動かせるよう、右手を防御しながら。

 

 

「藤宮はん……!」

 

「彼を信じよう。あとは……!」

 

「出てこい昨日のデカいやつー!!」

 

 

サラーサが斧を構えて叫ぶ。こんな状況だというのにいつもと変わらぬ調子なのが少し羨ましい。

そんなサラーサを見つつ、ウーノも槍を構える。年の離れた、世界を超えて出来た友人を気にかけながら。

 

 

(藤宮……もう少しだけ頑張ってくれ。私の勘がもうすぐ奴が現れる事を告げている。あと少しの辛抱だ……!)

 

 

 

 

 海中に引きずり込まれた藤宮は、遊撃隊での訓練やレジェンドによる修行のおかげで少しだけ余裕があった。

とはいえ、そう長くは持たない。そう思った時、横を向くとある程度距離はあったが、ニセアグルが海中におり捕らえられた藤宮を見て先日同様に口元を歪めて嘲笑う。

 

 

(やっぱりいたな……アグルもどき!)

 

 

藤宮のその姿を確認したニセアグルは即座に海中から飛び出す。

そう、藤宮の狙い通りに。

もはや海中で耐える必要は無い。藤宮はこの状況を打破すべく、右手の拳を握り、右手首をムーバへ見せるように手前に構えた。

その瞬間、藤宮の右手首に装着されていたアグレイターが回転展開され、青いエネルギー波を放出する。

 

 今こそ、逆境を覆す時。

 

 

 

 

 藤宮が海中へ引きずり込まれて間もなく、入れ替わるようにニセアグルが海中から飛び出してきた。

 

 

「来たか……!」

 

「偽モンやって認識変えると納得出来たわ!よくよく見れば同じウルトラマンのゼットと違って目の色とか怪しさ満点やないか!」

 

「んん?くんくん……あの偽物からなんか変なニオイするぞ?どっかで嗅いだ事あるような……」

 

「うちもよく聴くと変な音が聴こえるんや……ガコンガコンって……」

 

『え?』

 

「まさか……!」

 

 

アルベールが何かに気付くと同時に、海中から強い光が発せられ、その光はムーバを海上へ吹き飛ばしながら雷雲を貫き再びアウギュステへと太陽の光が差し込んでくる。

目が良すぎるソーンは突然の事に目を覆うが、他の者達は光が放たれた場所を見た。

青く、穏やかで巨大な光が海中で輝いている。

 

 

「あれは……」

 

「いよいよ、本物の登場だ……!」

 

 

その青い光をウーノ達だけでなく、漁師達や、さらには吹き飛ばされたムーバ、攻撃しようとしていたニセアグルまでも見入っている。

光の放つ輝きはアウギュステの町へも届き、何事かと住民や観光客も次々と窓を開けたり外へ出たりしだした。

そしてさらに驚くべき事が起こる。

 

 

「おい、あれ!」

 

「あれって……」

 

「リヴァイアサンだ!この島に加護を齎す星晶獣だ!」

 

 

その光の輝きに呼応するかのようにアウギュステ列島に加護を与えている星晶獣リヴァイアサンまでも顕現したのだ。

光は輝きを維持したまま少しずつ人の形をとっていく。それと同時に最大級の驚愕が巻き起こった。

 

なんと海が光を中心に割れていくのである。

 

まるでその光から生まれいずるものを祝福するかのように、アウギュステの海は真っ二つに割れた。そして、光は完全に人の形を形成し――

 

 

 

 

 

「ディアァッ!!!」

 

 

 

 

 

 ライフゲージを力強く輝かせ、青き海の巨人ウルトラマンアグルがその姿を現した。

 

アグルは跳躍し、ニセアグルと向かい合うように砂埃を上げて着地する。ニセアグルはまさかあの状況を脱して本物のアグルが出てくると思わなかったのか動揺しているのが見て取れた。

そんなニセアグルに対してアグルは逆手で手招きする。

 

 

――かかってこい――

 

 

正しく挑発であるその行為を目にしたニセアグルはアグルに向かって突進するが、真正面から受け止められただけでなく顎を打ち上げられた。

 

 

「ディアッ!!」

 

「ヴオッ!?」

 

 

その結果足が大地から離れたのをアグルは見逃さず、さらに蹴り上げ、自身も跳躍し追撃を加える。

 

 

「ハアァァァ!!ディアァッ!!」

 

「オ゛アッ!!」

 

 

連続キックで打ち上げられ続け、最後の強烈な一撃で海へと蹴り飛ばされたニセアグルはそのまま海へと落下。アグルもそれを追い、戦いの舞台はアウギュステの海へと移る。

そんな時、サラーサとソシエは揃ってある事を思い出した。

 

 

「あー!思い出したぞ!偽物のニオイ、あの時のデカい奴と同じニオイだ!」

 

「なんと!?」

 

「うちもや……!ほんの少ししか聴いとらんかったから思い出すのに時間かかったけど……昨日、偽物が出る前に出てきた銀色の怪物からも聴こえた音や……!」

 

「ホンマかソシエ!?つまり、あの偽モンは昨日の銀色の奴が化けてるっちゅうことやな!」

 

「確かに……言われてみれば目の色以外に身体の模様や色合いにも違いがあるな」

 

 

そう、ニセアグル――金属生命体アルギュロスが擬態したアグルはかつてのアグルの姿であり、藤宮が変身した真のアグルはV2と呼ばれる姿だ。

何故アグルの姿を知っていたかはともかく、どうやら以前戦った奴から情報が更新されていないらしい。同個体かは判別出来ないが、今のアグルはさらにパワーアップし、加えて経験もかなり蓄積されている。

同じ土俵へ上がれば決して負けはしない。

 

しかし、ここでやはり横槍が入った。

 

 

「ギシャアアァァァァ!!」

 

「オアッ!?」

 

 

吹き飛ばされていたムーバが接近し、同時にアグルの首と左腕を両手の触手で絡めとったのだ。

これ幸いにとニセアグルはアグルを攻撃しようと体勢を整え、アグルスラッシュを発射しようとしたが、アグルがムーバに捕縛されたのと同様にニセアグルも意外なところから攻撃された。

 

 

「オ゛ォッ!?」

 

 

強烈な水流がニセアグルに直撃する。アグルも一体誰が、と思ったもののすぐに正体は判明した。

リヴァイアサンである。アウギュステの島々に加護を与える星晶獣が世界は違えど同胞ともいえる海の巨人たるアグルに味方し、ニセアグルの攻撃を妨害したのだ。

 

即ちこの戦いはアグル&リヴァイアサンとニセアグル=アルギュロス&ムーバの二対二のタッグマッチ。

 

それを見た人々は歓喜の声を上げる。

船を破壊したものが巨人―アグルの偽物であったと判明すると同時に、先の登場―いや、あまりの神々しさに降臨と称すべきか―の仕方のおかげで神秘的な存在と思われているアグルがアウギュステの守り神と言われるリヴァイアサンと共闘した事でアグルが味方だと認識し、二つの大いなる存在が手を組んで自分達やアウギュステを守ろうと戦っている事に感動を隠せなかったのだ。

アグルこと藤宮は元々身の潔白を証明する為だったのだが、ここでそれを言うのは無粋だろう。

 

 

「ふじ……アグル、気張りぃー!」

 

「ズールーいー!あたしも戦いたいー!」

 

「ユエルはいいとして、サラーサ……お前、どれだけ戦いに飢えてるんだ」

 

「だってあんな奴と戦えるなんて滅多にないぞ!」

 

「うむ、気持ちはわからんでもないが、今は漢の決意というもの見守るがよい。なぁに、藤宮殿や我夢殿もいるこの騎空団に属しておればまた機会はあるであろう!ぬぅわははは!!」

 

「ええっと……それ、喜んでええん?」

 

「……この二人はそうなんじゃないかしら」

 

 

先程までの緊迫感が思いっきり薄れているが、それだけアグルとリヴァイアサンが希望を届けてくれたからだろう。

ウーノもようやく笑顔になり、アグルの戦いを見守る事にする。

 

 

(たくさんの思いを受けた君は負けない。そうだろう?藤宮……いや、ウルトラマンアグル)

 

 

 

 

 

 アグルだけでなく、リヴァイアサンにもアウギュステに生きる人々の声援は届いていた。

 

 

「ギシャアアァァァァ!!」

 

「ギュオオオオオッ!!」

 

 

 星晶獣リヴァイアサンと海神ムーバは互いが特異な体型である事もあり、その身体を活かした激戦を繰り広げている。

ムーバの額の水鏡から発せられる緑色の光線を回避しつつその身体で巻き付き、至近距離から強烈な水流でダメージを与えるリヴァイアサン。対するムーバも自身の触手をリヴァイアサンに絡み付かせて締め付ける。

一進一退の攻防を繰り返しつつもリヴァイアサンは自身の攻撃ではムーバやニセアグルに決定打を与えられない事に気付いていた。

やはりこの二体を打ち倒すにはアグルの力が必要だとも。

 

 

「オォア!」

 

「ハァッ!!」

 

 

 一方、アグルとニセアグルの激闘は元々のスペックの違いからアグルが優勢だった。

身体の半分が海に浸かりながらもパンチとキックの応酬が続くが、やはり経験の差は明確に現れておりニセアグルの攻撃を捌きながらアグルの攻撃が一撃、また一撃と決まっていく。

さらにここでニセアグルの動きが鈍ってきた。

特別とはいえ海水に長時間浸かり続けたからか、それともアグルの攻撃によるダメージが蓄積したからか、その両方かは不明だが、元は金属生命体……即ち金属の腐食が始まっていたのである。

 

 

「ギュオオッ!!」

 

「……!」

 

 

リヴァイアサンの咆哮にアグルは何かに感づいたのか頷き、右手にアグルセイバーを出現させてリヴァイアサンを拘束していた触手を切断する。

拘束から脱出出来たリヴァイアサンは上空へと舞い上がりムーバとニセアグルへと水流をぶつけて油断させ、そのスキにアグルはニセアグルを持ち上げる。

 

 

「ダアァァァッ……!」

 

「オォッ!?」

 

「ハァァッ!!」

 

 

そしてそのまま藻掻いているムーバへと放り投げ、二体まとめて一時的に海中へと沈む。

しかし、アグルとリヴァイアサンはこれで終わりにはしない。アウギュステに不安の種を残さぬよう完全に倒す。

 

 

「ディアァッ!」

 

 

アグルもリヴァイアサン同様に空中へと舞い上がり、リヴァイアサンの前に静止し必殺技の構えを取る。

 

 

「ヌン!ハアァァァッ……!」

 

 

ライフゲージに手を添え、そのまま左右に開きエネルギーを集中。右手を空に掲げた後、円を描くように両手を動かし内部で光が渦巻く光球を発生させる。

 

フォトンスクリュー。

 

アグルの得意技リキデイターの上位技と言えるがその威力はリキデイターの比ではない。

だが、アグルはフォトンスクリューを発射する様子を見せない。どうしたのだとその戦いを見守っていた者達が不安になったのも束の間、ここでリヴァイアサンが動いた。

 

 

「ギュオオオオオッ!!」

 

 

アウギュステの海から幾つも水柱が立ち上がり、それぞれが渦巻くようにしてアグルのフォトンスクリューへと集まっていく。

 

 

「もしかしてあれって……!」

 

「ああ、アグルとリヴァイアサンの合体技!」

 

 

アグルが形成していたフォトンスクリューの光球はリヴァイアサンが起こした渦巻状の海水を光エネルギーへ変換吸収し、最初の何倍にも巨大化している。

体勢を立て直したニセアグルとムーバがそれを見た瞬間、逃走しようとするもここまできてそれを見逃すアグルではない。

リヴァイアサンの協力によって完成した技を一気呵成に解き放つアグル。

 

 

「ディアァァァァッ!!!」

 

 

巨大化した光球を放つのではなく、その光球から膨大な量の光が放射された。

ウルトラマンと星晶獣の合体技・フォトンフォール。

アグルが海の巨人であった事、リヴァイアサンが海を司る星晶獣であった事、そしてその一人と一体の相性が良く、かつアウギュステの『海があった』事――いくつもの要素が積み重なり実現した大技だ。

圧倒的な光が完全に二体を飲み込むと、光の中で大爆発が起こる。

断末魔の叫びが外界に届く事無く、ニセアグルとムーバは消滅した。

その瞬間、人々から大歓声が湧き上がる。

 

 

「あの巨人とリヴァイアサンが勝ったぞ!」

 

「バカ野郎!巨人なんて失礼な呼び方すんな!あれは伝説の海神(うみがみ)様だ!!」

 

 

実はアウギュステにはある伝説があった。

 

『アウギュステに未曾有の危機が訪れし時、遠き異界の海より遣わされし神が救いの手を差し伸べるだろう』

 

奇しくも今回の騒動は正にその通りだが、アグルがそうだというのかは定かではない。だがアグルの勇姿はその伝説に相応しいものだったという人々の認識は間違いではなかった。

去る前にアグルはリヴァイアサンの何かを訴える眼差しを見て理解し、船の残骸が残っていた船着き場全域にリカバリーオーラを放射する。

その輝きによって残骸と化していた漁船が次々と元の姿を取り戻し、漁師やその家族は驚愕の声を上げた。

 

 

「お、おい……俺達の船が!」

 

「ああ!元通りになったぞ!これで漁に出られる!」

 

「本物だ……本物の海神様だ!」

 

 

喜びの表情を見せる漁師達に、ガッツポーズをしつつ頷くアグルに両手を振ったり頭を下げたり、中には土下座までする漁師もいた。

それを見届け、アグルは飛び去り、リヴァイアサンも姿を消す。

金属生命体の出現を発端とする一連の騒動はようやく幕を閉じたのである。

 

 

 

 

 翌日、一通り買い出しを済ませた藤宮達はエリアル・ベースで寛いでいた。連絡によれば今日、我夢達が戻ってくるという話だ。

 

 

「どうやら向こうでも一悶着あったらしい。ついでに新メンバーを一人連れてくるようだ」

 

「それはいいが……ある程度実力が伴わないとキツいぞ?戦闘でなければ別だが」

 

「そこは心配ない。加入者名は元黒竜騎士団団長、ジークフリート」

 

「ぶっ!?」

 

「うわっ!?いきなりどないしたん!?」

 

 

アルベールが珈琲を吹き出し、ユエルは自分の珈琲を即座に抱えて退避。

レヴィオン騎士団団長であるアルベールがジークフリートの勇名を知らぬはずがなく、まさか彼が加入するなど予想だにしていなかった。

 

 

「よりによって竜殺しの英雄を引っ張ってくるとは……」

 

「なんでも我夢に返しきれないほどの恩義があるとか」

 

「またなのね……」

 

「団長はんを筆頭にゼットはんもリクはんも我夢はんも、よく人助けしよるし……」

 

「それに加えて団長は天然ジゴロのケがあるしな〜まだまだ増えるで、きっと」

 

 

本人達の預かり知らぬところで言われまくっているレジェンド達のウルトラマン。

そんな中、何食わぬ顔でいた藤宮だが……

 

 

「ただいま〜!シエテ団長代理と愉快な仲間達のご帰還だよ〜!」

 

「「「「……」」」」

 

「い、いや冗談だよ冗談……」

 

 

帰って来たシエテは、その言い方のおかげで一緒に帰って来た我夢、ゼタ、バザラガ、そして新たに加入したジークフリートからジト目で見られるハメになった。

というかあちらでのMVPは我夢だし、ジークフリートはもちろんゼタやバザラガもケロニア討伐の立役者なのだが。

 

 

「藤宮、話はさっきガンダゴウザさんとサラーサちゃんに聞いたよ。お疲れ様」

 

「ああ。そっちもそっちで大変だったみたいだな」

 

「まさか瘴流域を超えてくる技術と知能を持った、会話する吸血植物が相手になるなんて思いもよらなかったよ」

 

「な、なんか凄いのと戦ったんやね……」

 

「こっちは藤宮とリヴァイアサンが海上で敵さんとやり合ったから、ウチらなーんもする事なかったわ」

 

「……ソーンは援護くらい出来そうなものだが」

 

「日差しが眩しすぎてね。初戦は太陽だけ雲に隠れてたからなんとかなったけど、二回目は雷とか、太陽がしっかり出てて……私、戦いだとアウギュステとは相性が悪いみたい」

 

 

若干落ち込み気味のソーンを見たゼタはバザラガに軽く肘打ちをかます。バザラガには効いていないが。

 

 

「あ、そうそう……さっきアウギュステの町で貰ったんだけどさ」

 

 

何やら我夢が少しばかり意地悪な笑みを浮かべた。

なまじ頭脳が並外れているせいか、我夢のこういった表情の時は皆警戒している。

 

 

「アウギュステ新聞号外!ほら藤宮……賞賛の言葉や記事と一緒にアグルがこんなにデカデカと……」

 

「なっ!?おい我夢、それを渡せ!」

 

「良いじゃないか。悪い事したわけじゃないんだし」

 

「そんなものをエリアル・ベースのあちこちにコピーして貼られたりなんかされたら嫌だろうが!」

 

「心配しなくても我夢の方は既に俺が確保してある」

 

「「!?」」

 

 

我夢にからかわれる藤宮だったが、まさかのジークフリートがフェードラッへ版でガイアの事を書かれた号外を持ってきていた。

 

 

「そうか……あんたがジークフリートか。悪い事は言わない、それを寄越せ」

 

「ジークフリートさん、藤宮に渡さずにこっちにお願いします」

 

「すまないな、我夢。それから藤宮だったか。こればっかりは俺も譲れん」

 

 

じりじりと寄っていく二人から、じりじりと下がり後ろを向いてエリアル・ベースを逃走するジークフリート。それを追う我夢と、我夢を追う藤宮。

 

 

「どうやら、藤宮も完全に調子が戻ったみたいだね」

 

「しかし、彼がジークフリートか……早速この団に馴染んでいるな」

 

「ま、ここにはビリおじとかニヤケ頭目とかクセの強いのぎょーさんおるしな」

 

「おい、誰がビリおじだ!?」

 

「ユエルちゃん、ニヤケ頭目ってもしかして俺の事?」

 

「なんや名前言ってないのに自覚してるやん」

 

 

いたずらっ娘な笑みを浮かべてユエルは三人に続いて退散する。さすがに散々ビリおじ呼ばわりされて頭に血が上ったのかアルベールがユエルを追いかけて、置いてかれたソシエも少しオロオロしたあとユエルを追いかけに行く。

 

 

「やはりここは賑やかでなくてはね」

 

「組織からしばらく待機って言われてるし、あたしものんびりしちゃおっと」

 

「腹を出して寝るなよ、ゼタ」

 

「あんたはあたしの母親か!その台詞まんま返すわよ!」

 

「この体は特別製だ。普通に生活していれば体調不良になどならん」

 

 

もうすぐレジェンド一家もこちらに来て一層騒がしくなるだろう。ユエルが言った通りまだまだ団員も増えるかもしれない。

ウーノは様々な種族だけでなく、世界や生まれという垣根を超えて一つの『家族』を形成しているこの騎空団の発展を願い、ニヤケ頭目と呼ばれて凹んでいるシエテを慰める事にする。

 

 

 

〈続く〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙空間のどこか――そこで五つの影が会話している。影の一つは他の四つよりも高い場所に座しており、格上である事が見て取れた。

 

 

「やはりウルトラ戦士がこの世界にも現れたようだな」

 

「たかが二人、我が力を持って早々に駆逐してやろう」

 

「強きものが弱きものを滅ぼして支配するのは宇宙の真理……」

 

「して……どうされますか、陛下」

 

 

陛下と呼ばれた存在は暫しの沈黙の後、口を開く。

 

 

「今は静観していろ」

 

「「「「は……?」」」」

 

「あのウルトラ戦士共は所詮先遣隊……あれらを倒したところで後続が来るのみ。大した理など無い」

 

 

絶大な能力を示したガイアとアグルにさえ興味を持たないかのような口ぶりに四つの影は困惑する。

 

 

「もう暫く時を待ち……しかる後にインペライザーを送り込め。そしてその結果次第では貴様達が出向く事を許してやろう」

 

「「「「承知致しました」」」」

 

(レイバトス……メンシュハイト……サンドロス……そしてスーパーヒッポリト星人。果たしてこの新たな四天王はどこまでやれるのか、見極めるのに良い機会だ)

 

 

恐るべき能力を持った者達を配下に従えたそれは、かつてとは比べ物にならない強大な闇を纏う。

 

 

(戯れで滅びるならばそれまでの存在……この世界の者達と手を組んで何処までやれるか……精々楽しませるがよい)

 

 

それは、光への復讐の始まり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして宇宙のもう一箇所、空の世界と月が見える場所――カムフラージュによって隠されていた、『月の民』の衛星基地はある存在によって壊滅しようとしていた。

 

 

「所詮はこんなものか……いや、この『機神』とやらは使い方によっては役立つやもしれんな」

 

[き……貴様は一体……!?]

 

[何故、ここが……!?]

 

「お前達は自分達が優れた技術を有していると思っているのだろうが……お前達よりも上の技術を持つものはいくらでもいる。そう、例えば……ウルトラ族」

 

 

月の民の衛星基地を壊滅させた張本人は、月の民を嘲笑うかのように告げる。

 

 

「お前達の技術の結晶たるこの機神……我々が有効に使わせてもらうとしよう。お前達では宝の持ち腐れだ」

 

[こ、後悔するぞ……!ここがどういう場所か知って攻めてきたのだろうな……!]

 

[もしここが壊滅したと分かれば、機関(セントラル・アクシズ)も黙ってはいない……!]

 

「……巨大機神ディアスポラ」

 

[[な、何故それの事を!?]]

 

「いずれそれも我らの手中に収める事にしよう。さて、お別れだ」

 

 

バチバチと凄まじいエネルギーがその存在の両手に集束し――

 

 

 

 

 

「アブソリュートデストラクション!!」

 

 

 

 

 

[[せ……機関!黄金の巨人に……]]

 

 

その言葉を最期に、衛星基地は完全に壊滅。そしてこの世界から跡形も無く消し飛んだ。

 

 

「あの忌々しいウルトラマンレジェンドのおかげで時間移動に大幅な制限がかかっている。使えるものは何でも使わせてもらわなければな……次元移動が出来るのはせめてもの救いか。では、もう一つ……」

 

 

その存在が虚空へと手を翳し、何度か発光させる。

 

 

「これで良い……随分と遥か遠くまで飛ばされていたようだな。どれくらいの時をかけて戻ってくるかは分からないが……月の民とやらは、自分達の住処に『魔王』が帰還してきたらどういう反応をするかな?同じ名の星晶獣を星の民が作ったそうだが……そちらとは危険度が段違いだ」

 

 

そう言うとその存在は月を一瞥した後、空の世界を見る。

 

 

「やはり狙うならば……月でも星の世界でもなく、空の世界か」

 

 

小さく呟き、機神(戦利品)を収納してその存在は黄金の輝きと共に消えていく。

 

 

 

 二つの陰謀が、今少しずつ胎動を始めた。




今回のアグル登場はアグル復活〜アグル・ヴァージョンアップファイトの曲をイメージしつつ書きました。

海神ムーバですが、今や知る人ぞ知る特撮映画、実写版ヤマトタケルに登場した怪物です。これが分かれば今回黄金のアイツが呼び寄せたのも何か分かると思います。

そして最後……なんかハイD世界よりこっちのが明らかにヤバそうな気がしてきました。自分で書いといて何ですけど。
片方の勢力に属する4名のうち1名が影が薄いような、場違いなような気もしますが、初代は5兄弟をブロンズ像にして消耗していたとはいえウルトラの父を倒した実績があり、スーパー初出時はメビウスをブロンズ像にしてキングシルバゴンとキングゴルドラスを従えていたツワモノなんで大丈夫!なはず……

次回はいよいよ3大勢力会談開始。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。