ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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お待たせしました。今回で本章の鬼とは決着です。

敢えていうならサブタイトルが全てを物語っていると。


それでは本編をどうぞ。


(ほむら)

 ウルトラ戦士とゴジラを除いて、各戦線では状況が変わり始めていた。神衛隊の増援が功を奏したというべきか。

 

 ハシュマルに産み出された大量のプルーマも、鉄華団のMS部隊と超次元グレン団のガンメンによって急激に減らされている。

 

 三日月の駆るバルバトスを始め、昭弘のグシオンリベイクやシノのフラウロスが獅子奮迅の活躍を見せ、団員らもそれに応えるべく奮起する。

現在の鉄華団の機体はネオ・ガンダム・フレーム系統以外では多岐に及ぶ。

今回出撃しているのはアムロやマリーダら宇宙世紀由来の機体であるジェスタ、ジェスタ・キャノン、そしてグスタフ・カールのカスタム機が主軸の編成。

ナノラミネートアーマーを考慮し、レールガンを始め実弾武器をメインに装備しているため問題なく攻撃は通じる。あとはパイロットの腕次第、というわけだ。

 

 

「第二、第三小隊は俺と流星号に続けぇ!」

 

「第一小隊!俺のバックアップは頼んだぞ!」

 

 

戦闘隊長でありトップエースの三日月とバルバトスはハシュマルとの戦いに赴いているので、代理は必然的に昭弘とシノになる。

もし狛治がいたとしても彼の機体は格闘戦特化のMF。スタンドアローンでの戦闘が前提であるため小隊指揮には向いていない。

正直、相手がMAなのでMFの高い物理攻撃力は是非とも戦力に加わってほしかったが、状況が状況のため仕方ない。

 

代わりに大きな戦力になっているのが基本物理攻撃が主軸のガンメンだ。

特機、即ちスーパーロボットに属する機体群であるため機動力こそMSに劣るもののパワーは一級品。おまけに装甲も分厚く並の攻撃にはビクともしない。特に、キングキタンRXはまさに鉄壁だ。

 

 

「おらおらぁ!プルーマだかプルーンだか知らねえが、可愛い姪っ子達に武勇伝持って帰らなきゃならないんでな!おとなしくブチのめされやがれ!」

 

「そういやキタン、お前の妹とダヤッカんトコ二人目出来たんだってな!めでてぇじゃねぇか!」

 

「おうよ!こりゃ俺もこっちで気張んなきゃならねえって思ってな!ワリィが今回はちっとばかし出番を食わしてもらうぜ、カミナ!」

 

「ヘッ、こっちも俺の左腕の参謀長が生身でタマ張ってんだ。団長の俺がグレン(コイツ)のシートでケツ磨いてるだけでいられるわけねぇだろ!いっちょ競争といくか!?」

 

「上等だ!手ぇ抜くなよ鬼リーダー!」

 

「当然だろ!行くぜ突撃隊長!」

 

「「オラァァァァ!!」」

 

 

片やランスを、片やグラサンカッターを手に突撃していく二機。特異な外見なのにMSも真っ青のアクロバティックな動きをするキングキタンとグレンにその場の者のみならず遠くから見ているサーゼクスら三大勢力の連中も唖然としている。

 

 

「アニキもキタンも張り切ってるな。俺も負けてられねぇ!」

 

「……いや、シモン……アンタもアンタで何してんのよ」

 

 

冷や汗垂らしながら聞くヨーコが見たモニターには、プルーマの一体のコントロールを奪って合体してるラガンの姿が……。

 

 

「ドリルが付いてたからな!コイツらに本当のドリルの使い方ってのを見せてやろうと思ったんだ!」

 

「ああ、そう……」

 

 

シモンは生粋のドリル男児である。しかもちゃんと実績があるからヨーコも何も言えない。現に奪ったプルーマのドリルで他のプルーマを平然とブチ抜いているし。

 

 こちらの戦場にも、変化が起ころうとしていた。

 

 

 

 

 一方鬼との戦いでは激戦の末、巌勝らは無事に鬼の一体であるヤトノヌシを討伐する事が出来た。

 

 しかし、ゴウエンマやヒノマガトリとの戦いはそうもいかない。鬼としての格は先程のヤトノヌシの方が上だが、巌勝やオーフィスら自体が規格外の戦闘力を持っていた事に加えて件の二体は戦闘スタイルが大幅に変化している。

さらに言うなら鬼殺隊であったカナエやしのぶや杏寿郎、神衛隊の一員である狛治はまだしも、オカルト研究部全体が死線を超えるような戦いをした経験が圧倒的に不足していた。

いくら修行をつけたのが百戦錬磨の達人であってもこれ以上激的にステータスアップするにはやはり修羅場の数を踏むしかない。

 

 

(ち……杏寿郎とパム治郎はともかく他の三人の出来る事が限られている……もう少し技の引き出しでもあれば変わってくるんだろうが……)

 

 

やはりというか狛治がそこに気付いた。

型の数は限られるが最大の奥義たる玖ノ型を除けばどんな体勢からでも型を放てる杏寿郎、膨大な数のタマフリを使用でき万全の援護を可能にするパム治郎という万能戦力に対してリアス、裕斗、ゼノヴィアはまだ未熟。

 

ヒノマガトリを相手にしている方も、カナエとしのぶ……特に縁壱の継子であるカナエは狛治と同等にやり合える実力があるが、漸く前に進み始めたギャスパーは元より小猫と朱乃も秘めたるポテンシャルは高いがそれはまだ開花してしない。

 

実力者勢はそれらを守りつつ鬼を撃破しなけれならない。そしてもう一つ、この場において忘れてはいけない重要な人物がいる。

 

アーシアだ。

 

レジェンドの巫女である彼女の身に何かあればおそらくレジェンド自身が黙っていない。それこそ、周りを気にせず暴走に近い状態になりかねないだろう。

事前にその情報を仕入れていた狛治はアーシアに気を配りつつ戦闘している。

彼女自身は可能な限り戦闘の邪魔にならないようにとゴウエンマとヒノマガトリの死角に、かつ離れて見守っていた。ハッキリ言って身の程知らずの三大勢力の護衛らよりよっぽど優秀だ。自身の力量を理解して行動している。

 

 

(うむ!あの位置なら攻撃出来るとしたら俺達が相対している鬼だけ、しかも十分間合いをとっている!)

 

 

狛治が気にしている方向を見た杏寿郎は即座に理由を察した。柱の位にあっただけあり状況把握能力がずば抜けている。

 

しかし、ここで予想を超える攻撃をゴウエンマが繰り出してきた。

タマハミ状態になる前は火球を吐いてきたゴウエンマだが、火炎を吐き出してきたのである。しかも、ヒノマガトリよりも勢いが激しい。

 

 

「えっ!?」

 

「迂闊だった……!タマハミ状態では奴は長射程の火炎を吐き出すのを忘れていた!」

 

「パム〜!」

 

「パム治郎!何か策があるのか!?」

 

「パムパム!」

 

 

空にいるリアス以外の三人に自分と杏寿郎の後ろに回るよう指差すパム治郎と、何をするか分かった狛治は裕斗とゼノヴィアを連れてそちらに移動する。

 

 

「パー……ムー!!」

 

 

『防』のタマフリの一つ、天岩戸を発動させるパム治郎。一定時間敵からの攻撃を完全に無効化するそれで自身と杏寿郎を結界のように包む事で、無敵の防御壁として機能させたのである。

 

 

「おお!こんな事まで出来るのか!」

 

「よし、奴は首を左から右へと移動させ、薙ぎ払うように火炎を吐き出している!この隊列のまま火炎をやり過ごし……!?」

 

 

ここで狛治がある事に気付いて戦慄した。

ゴウエンマの吐き出している火炎は長射程。しかも薙ぎ払うように……そう、先程杏寿郎は位置的に十分だと思っていたが、予想以上に火炎の射程が長く、離れていたアーシアにも届いてしまうのだ。

それに加え離れていたが為に救出に間に合いそうもなく、しかもよりによって現在進行形でゴウエンマの火炎が自身らを通過している最中。

 

 

「まずい!アーシア!」

 

「ダメだ!彼女のところへ行こうにも今動いたらこの炎で誰かが代わりの犠牲になるどころか救出にも間に合わない!」

 

 

ゼノヴィアが叫ぶも、裕斗によって制される。自分達が動いても火炎の餌食になり、杏寿郎とパム治郎が動いたとしても防御壁が無くなって同じようになってしまう。そして、一緒に動くとしても杏寿郎の移動速度に合わせられるのは狛治くらい……正に万事休す。

 

 

「ひっ……!」

 

 

運動能力がそう高くないアーシアは小さく悲鳴を上げて目を瞑る。杏寿郎らだけでなくカナエらも叫ぶが、その瞬間アーシアの着ていた『輝煌なる祈り(オラシオン・グリッター)』が光り輝く。

装束に秘められた力の一つである、巫女を守る為の絶対防御機能が発動したのだ。

この機能、なんとあのグリッターティガの『グリタリングシールド』に匹敵する強度を誇り、攻撃だけでなく巫女への悪意ある行動そのものをシャットアウトする凄まじいものである。

 

 

「あ……」

 

 

アーシアの先程までの恐怖は想い人の力に包まれた感覚によって払拭された。ほとんどの者はアーシアが無事だった事に純粋に喜んでいるが、約2名ほどプラス羨ましがっており、しのぶから青筋を浮かべつつも笑顔の一撃で頭をひっぱたかれている。誰かはお察しだが姉以外へも叩けるあたり、強くなったな……。

 

 誰にも火炎の効果がなかった事に腹立てたのか、再度火炎吐き出そうとするゴウエンマだったが、直後にそれは起こった。

いや、ゴウエンマだけでなくヒノマガトリにもそれは起きていた。

 

 二体とも、何者かに抑えつけられているかのようにもがき始めたのである。

 

 

「何!?一体どうしたの!?」

 

「もしかして吐ける火炎には両者とも限度があったとか?」

 

「いえ……でしたらあちらの鳥型の鬼が火炎を吐いたのはタマハミ状態になる前が最後ですし、それ以降はこの瞬間まで吐く兆候さえ見せませんでした」

 

「となると本当に何が……」

 

 

朱乃の仮説にしのぶはそうではないだろうと理由を述べて説明するが、小猫の言う通りそうなるとますます分からなくなってくる。

 

 

「……食あたり、とか」

 

 

ボソリと呟いたカナエの方を全員が向く。いや、確かに魂を喰らう種類の鬼ではあるが……。

 

 

「姉さん、今日何発目か分からないけどいっとく?」

 

「待ってしのぶ!?こうなったら考えうる限りの予想を並べた方が!」

 

「だとしても食あたりなんてあるはずが「どうやらそうでもないらしい」……は?」

 

 

狛治が発した言葉に間抜けな表情になるしのぶ。というか杏寿郎以外の面々は皆そんな顔だった。

だが、それは再びもがき苦しむ二体を見た瞬間、驚愕に変わる。

 

 

 

 

 

 ゴウエンマを半透明の宇宙人らしき二人が。

 

 

 

 

 

 そして、同じくヒノマガトリを半透明の――パム治郎と同じムーキットが複数、必死で抑えつけるように組み付いていたからだ。

 

 

 

 

 

「パムー!!」

 

『!!』

 

 

それを見たパム治郎が大声を出した事に全員が驚く。慌ててパム治郎を見ると、パム治郎はポロポロと涙を零している。

 

 

「どうしたパム治郎!?まさか同胞を見て……いや、違う!!」

 

 

杏寿郎の優れた観察眼はここでも発揮された。

これはパム治郎をよく見ていた彼だからこそ分かった事なのだが、ヒノマガトリに組み付いているムーキットは六匹……そのうち二匹が他の四匹より大きい。パム治郎は丁度その二匹と四匹の中間くらいの大きさだ。

 

 

「パパ……ママ……」

 

『ッ!!』

 

 

パム治郎の口から聞こえた発言でさらなる衝撃が走る。

 

 

「パム治郎のご両親……!?まさか、ではあの四匹はパム治郎の弟や妹なのか!?」

 

 

涙を零しながら何度も頷くパム治郎。そしてもう一つ……

 

 

「アッチ……ボクタチノゴ主人ダッタファビラス星人……」

 

「そんな……!」

 

 

ゴウエンマを抑えつけているのはパム治郎一家を飼っていたファビラス星人の夫婦であった。

 

実はレジェンドの【エリア】においてムーキットはあまり減少していない。それは惑星衝突よるファビラス星喪失の際、ある勇者の一家の犠牲により十分な時間が稼げた為、資源を始めとする必要な物全てを持ち出せた事にある。

当然、共生関係にあったムーキットの避難も済んだところでその一家は力尽き、ファビラス星は失われた。

 

その一家こそ、眼前で二体の鬼を抑えている夫婦とムーキットの家族。

惑星の衝突を食い止めている最中、衝撃で吹き飛ばされたパム治郎は突如発生したブラックホールに呑まれ、次元を超えてアクアエデンへと落ちたのだ。

ファビラス星人の夫婦やパム治郎の家族が命を落としたのはその後であり、肉体を失い魂だけになった彼らは魂のまま次元を超え、その最中この場にいるゴウエンマとヒノマガトリに喰われた。

つまり、パム治郎は家族や主が死んでいる事さえ今の今まで知らなかったのである。薄々勘付いていたとはいえ、直面した事で抑えていた感情が爆発してしまったのだろう。

 

 

(よもや!よもやだ!魂を喰らうとは聞いていたが、パム治郎の主と両親、家族の魂まで喰らっていたとは!しかもそれらが同時に目の前にいる!偶然とは思えん!)

 

 

パム治郎に引き寄せられたのか、それとも本当に偶然なのか。そう考えていると、頭の中に声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

『我々が抑えている間に!こいつらを討つんだ!』

 

『私達もこのモノ達の中からではそう長く持ちません……早く!』

 

『『『『パムパム〜!』』』』

 

 

 

 

 

ファビラス星人の夫妻とパム治郎の家族が語りかけてきたのだ。どうやら意識を分散させて内側から抑え込んでいるようで、見えている半透明の身体は若干外から抑える為の力の幻影らしい。

 

 だが誰もが迷っている。『彼』を除いて。

 

眼前の鬼を討つことは魂だけとはいえ、漸く再会出来たパム治郎の家族らを再び引き離すという事。それも、今度は永遠にと言っても間違いではない。

もしかしたら奇跡的な事が起こって何らかの形で会えるかもしれないがその可能性はほぼゼロだ。

 

パム治郎自身も両親や弟妹、かつての主人らを見て涙を流しながら嫌だ嫌だと首を振っていた。

何か方法は、必至に考えるも思い浮かばず、刻一刻と拘束から鬼が解き放たれる時間が迫る。

 

 そこに、その声は響いた。

 

 

 

 

 

「心を燃やせ!歩みを止めるな!」

 

『!!』

 

 

 

 

 

それを発したのは杏寿郎。

日輪刀を両手で強く握り、両足で大地を踏みしめ、気を練り始めている。

 

 

「煉獄さん!?」

 

「ここで奴らを討たねば同じような事がいつまでも繰り返される!想像したくもないが!この中の誰かの魂が喰われ、力を増した奴らが喰った者の肉親と相対する事がないとも言えんのだ!」

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

「パム治郎!今から俺がすることはお前に癒えぬ傷を残すことだ!恨んでくれても構わない!憎んでくれても構わない!それでも俺は俺の責務を全うする!!お前達がこれからも生きていく為に!!」

 

 

例え憎悪を向けられようとも、今生きている者達のために――信念のもと、杏寿郎は日輪刀をさらに強く握り締めると、刃が赤く変色する。赫刀だ。

 

 

「煉獄さんの刀が、カナエの時みたく……」

 

「痣が発現しなくてもなるのね、赫刀……」

 

「パム……」

 

 

パム治郎は流れる涙を拭う事はせず、目を瞑る。

思い浮かんでくるのはかつての主人や両親、弟妹との事だ。

長男として生まれ、両親や主人夫妻に喜ばれたことを教えてもらった事。弟妹が生まれるのを主人や父と心配そうに見守った事。お兄ちゃんだから、と必至に弟妹の世話を焼いた事。家族皆で他の星に旅行した事。

そして、ファビラスの民やムーキットの同胞の為に家族全員で命を賭して尽力した事。

 

いずれも忘れられない大切な思い出。

 

それを胸に、パム治郎は決意する。あの時から今に至るまで苦しんでいる家族を、その苦しみから断ち切るのだと。

 

 

「……パム!!」

 

「……そうか!お前も俺と同じ気持ちかパム治郎!ならばやるぞ!俺達の手で!彼らを長い悪夢から断ち切る!!」

 

 

杏寿郎の言葉に、涙を流しながらも強い眼差しでゴウエンマを睨みつつ頷くパム治郎。

同時に先程の『渾身』『科戸ノ風』『韋駄天』に加えて、攻めの型である炎の呼吸の力を最大限に引き出すタマフリを発動する。

 

 

「パムー!!」

 

 

その瞬間、杏寿郎の身体から赤い闘気が溢れ出す。

『攻』のタマフリの最高峰『軍神招来』だ。しかも、それだけではなくさらにアラタマフリ『破軍星光』まで発動し、もはや今の杏寿郎の攻撃力は通常の斬撃さえも全てが一撃必殺級に上昇している。

この状態で玖ノ型を放てば、確実にゴウエンマを葬れるだろう。

だが、一人と一匹はさらにその先へ進む。

 

杏寿郎の顔に炎のような『痣』が発現したのだ。

加えて、複数のタマフリの効果が重なり、一時的に全集中の呼吸・第二幕へと昇華したのである。

そしてそれは杏寿郎の新たな日輪刀が真価を発揮する事に繋がった。

 

一時的にとはいえ第二幕へと至ったことで、エフェクトであった炎は現実のものとなり実際に敵を焼き尽くす高熱を発する。

それは杏寿郎と背に乗っているパム治郎を中心に、喩えるなら炎の竜巻とでもいうような状態で発生している。

 

かなり説明が遅れてしまったが、杏寿郎の日輪刀に秘められた能力は『増幅』。パム治郎のタマフリによって能力を底上げされ痣や赫刀を発現させ、第二幕に至った杏寿郎の呼吸を日輪刀がさらに増幅することで想像を絶する『(ほむら)』を生み出したのだ。

 

 

(ライザーの発していた炎とは威力も根本も違う……彼の炎は欲望の塊だったけど……煉獄さんのものは力強さと安心感がある)

 

 

杏寿郎とパム治郎が生み出した炎を見ながらリアスは思う。後日カナエが言っていたが、ライザーの炎は「風と炎を司る割に汚い炎だった」とのこと。おそらく見た目ではなく込められた想いのことだろう。

だからこそ、本当の意味で数多の未来を背負った杏寿郎らが纏っている炎は眩しく輝いて見える。

 

そして、それに感化されたのか、カナエもヒノマガトリへと歩を進めた。

同時に未だ迷いがあったしのぶへ凛とした雰囲気を纏って諭す。

 

 

「立ちなさい元蟲柱・胡蝶しのぶ。立って相手を見据え、刀を握り、呼吸を整えなさい」

 

「……姉さん」

 

 

しのぶの目の前にいたのは、普段のふわふわした姉ではなく、かつて鬼殺隊最高位の剣士である柱の一人として戦場を駆けていた姉・胡蝶カナエの姿。

そんな姉の姿を見て、しのぶも日輪刀を握り締めてカナエと並ぶ。

 

 

「あれを逃したりすれば私達だけでなく、彼らもこの先苦しみ続ける事になる。今日、ここで……あの鬼を討ち、彼らを解放します。いいわね?しのぶ」

 

「……ええ。あの子と家族を引き離すのは、辛いけど」

 

 

目の前で鬼によって両親を奪われた彼女らだからそう思うのだ。しかし、同時に鬼に喰われていつまでも苦しみ続けるのを黙って見過ごす事も出来ない。

何より、パム治郎も決意して杏寿郎と共にゴウエンマを討とうとしている。その思いを汲まなければ。

 

 

「カナエ、しのぶ……」

 

「リアスさん、私達は大丈夫です。あのクソ野郎に比べれば俄然楽ですよ」

 

「だからリアス達は万が一私達が仕留めそこねた時、お願いするわ。私達よりもあの鬼を討つ事を考えて。頼んだわよ」

 

 

カナエとしのぶはそれぞれの呼吸法独特の呼吸音を発しながら精神統一し、日輪刀を構える。

全集中の呼吸・第二幕へと到達していたカナエの呼吸によって、日の輝きを放つ数多の花弁が戦場に舞う。

 

そして、どちらが合図するでもなく、左右対称になるように駆け出す。

パム治郎の両親や弟妹の魂に抑えられながらもヒノマガトリは火球を放つ。

しかしカナエとしのぶは先程同様、同じタイミングで()()()()で加速し回避する。

続けて鞭のような両腕を二人に伸ばして迎撃するが、これも同じタイミング、()()()()で日輪刀を振るいそれを弾く。

 

ここでカナエとしのぶはある事に気が付いた。

修行を重ねたとはいえ、カナエとしのぶの腕力や速さがここまで全く同じになる事はあり得ない。互いに意思疎通出来ているにしても動作には多少なりとも誤差が生じるはず。そう、普通ならば。

 

そんな時、感覚を研ぎ澄ました二人は何かの力が流れ込んでくるのを感じる。同時に、何かに背中を押され、そして支えられている感覚も。

不意に後ろを見ようとした二人の目にあったのは、仄かな輝きを放つ半透明のウルトラマン。

しのぶにとっては初めて見る者。そして、カナエにとっては少しだけ見た事のある、想い人の真の姿。

 

 

ウルトラマンレジェンド。

 

 

まるで一人がもう一人に置いて行かれないよう、押し出すかのように二人の背に手を添えて浮いている。

カナエが咄嗟に「レジェンド様」と口にするも、そのレジェンドは顔を向ける事も応える事もしない。

幻覚なのか、分身なのか。はたまたそれ以外なのか。全く分からないが、確かな事が一つだけある。

何らかの形で彼が力を貸してくれているということ。

 

そしてそれは同時にある変化をしのぶにも齎した。

しのぶの首に蝶の形の痣が発現し、日輪刀の刀身が赤く―赫刀へと変化したのである。

全ての全集中の呼吸は、日の呼吸の派生。日の輝きは花の生命を育み、花は蝶を始め蟲の生命を育む。

花の呼吸の使い手であったカナエが、特殊な修行を経て日の呼吸を使えるようになった事で紡がれた奇跡。

 

カナエは勿論、しのぶ自身も驚くがそれは一瞬。二人は顔を見合わせて微笑み合うと、気を引き締めヒノマガトリへと一気に加速する。

 

 

 

 

 

 同じく痣と赫刀を発現させていた杏寿郎、そしてパム治郎の方にもある奇跡が起きていた。

レジェンドの幻影が胡蝶姉妹へ力を貸しているように、彼らにも全く見た事のないウルトラマンがその背を支えるように立っていたのである。

そして、それは杏寿郎やパム治郎だけでなく、ゼノヴィア、そして小猫にも薄っすらと見えていた。

 

 

「あれは……!?」

 

「何!?どうしたの!?」

 

「部長達には見えないんですか……?何か、結晶の集合体みたいな姿のウルトラマン?が……」

 

「……サーガ様だ」

 

「「「!?」」」

 

「サーガ様が何らかの形で杏寿郎達を手助けしているんだ。きっとな」

 

(……あれが、ソランさんの本当の姿)

 

 

全体的な輪郭ぐらいしか明確には分からないが、極めて神秘的な姿のウルトラマンであることは間違いない。

初めて見るその姿を目と記憶に焼き付けつつ、今は杏寿郎とパム治郎、そしてカナエとしのぶの勝利を信じる。

その時、杏寿郎も動いた。

 

 

 

 

 

(よくは分からないが、このゼット殿に似た御仁の姿が見えてから力がさらに湧き出てくる!この機を逃すわけにはいかん!)

 

 

杏寿郎は赫刀と化した日輪刀を握り締め、最大限に練った気をゴウエンマに叩き込むべく、パム治郎をその背に乗せ、今もなお激しく自身らの周囲を渦巻く炎と共に一気に踏み込む。

それに対し、ファビラス星人夫妻の魂に抑えられながらもゴウエンマはヒノマガトリ同様に火炎を吐き出すが、さらに驚くべき事象が起きた。

ゴウエンマの吐いた火炎が杏寿郎らの纏う炎の渦に吸収され、さらに激しさを増していくのだ。

杏寿郎の闘気とパム治郎の勇気、その二つの合気がゴウエンマを上回ったからこそ成し得た、未来へと歩む力。

 

 

遂には恐怖からカナエとしのぶ、そして杏寿郎とパム治郎から逃れようともがくヒノマガトリとゴウエンマだが、パム治郎の家族やファビラス夫妻の魂はますます拘束を強める。

もはや逃れる術は無い。

 

 

「「私達の絆は!!」」

 

 

カナエとしのぶの美しくも鋭い刃が。

 

 

「俺達の絆は!!」

 

 

パム治郎の思いも乗せた杏寿郎の力強い刃が。

 

 

 

『何者にも負けはしない!!』

 

 

 

今、輝く炎となって鬼を討つ。

 

 

日・花・蟲 呼吸三ツ積

 

双舞・胡蝶陽花閃(  そうぶ  こちょうようかせん)!!

 

 

カナエとしのぶが交差しながらヒノマガトリを斬りつける。二人の動きと振るわれた刃の軌跡が合わさり、それは炎の蝶を象っていた。

 

 

炎の呼吸 玖ノ型

 

奥義 煉獄!!

 

 

自身の姓と同じ名を持つ炎の呼吸最強の型は、パム治郎の数多の援護を受けて強化された上でゴウエンマに直撃すると、凄まじい爆炎の柱を立ち登らせる。

 

断末魔の叫びを上げ、ヤトノヌシ同様天を仰ぎつつ絶命するヒノマガトリとゴウエンマ。

炎を操る巨躯の鬼を、それをさらに上回る炎の太刀が討ち倒したのだ。

 

 

「やっ……た……の?」

 

「みたい、ですわね」

 

 

不安げなリアスに対して朱乃が応える。

それが事実だというように二体の亡骸は浄化され、素材となった。

 

 

「間違いない、鬼を討てたようだ」

 

『やったあああああ!!』

 

 

狛治の言葉で漸く本当に勝利を確信したオカルト研究部は喜びの声を上げる。

そこに巌勝らも合流すると、巌勝は両目をキュピーンと光らせつつゼノヴィアの肩を掴む。

その瞬間、ゼノヴィアの表情は期末テストが終了した解放感から補習が確定した時のような落胆と絶望感に満ち溢れていた。

 

 

「し……師範……」

 

「……継国式地獄特訓零式、お前が今回然程活躍出来なかった部分も含めて指導してやる。覚悟しておけ」

 

「…………」チーン

 

「ゼノヴィアさぁぁぁん!?」

 

 

巌勝の宣告にゼノヴィアが灰になりアーシアの叫びが木霊する。ゴウエンマを暫し一人で食い止め、ヤトノヌシを屠った巌勝には反論出来なかった。既に指導(死導)入ってる。

 

 

「待って下さい、あの二体が討たれたってことは……」

 

「あ……!あれを見てくださいぃ!」

 

 

裕斗がある事を思い出し、ギャスパーが指差した方を向くとヒノマガトリとゴウエンマに喰われていた魂が解放され、天へと消えていく光景であった。

 

 

「鬼に喰われていた魂が……」

 

「あ……煉獄さん、カナエ先輩、しのぶさん」

 

 

少し離れた所に三人は天を仰ぎつつ佇んでいる。

全員が近くに寄ると、パム治郎が涙を流しながらその光景を見ていた。

そう、本当に別れの時である。

 

 

「パム〜……」

 

「パム治郎……」

 

「パムちゃん……」

 

 

涙の止まらぬパム治郎を見守るしかない一同。

そこに、ファビラス夫妻とパム治郎の家族の声が聞こえた。

 

 

『頑張ったな。立派だったぞ』

 

『あなたは私達の分まで生きて、幸せになってね』

 

『『パムパム〜』』

 

『その子を、よろしくお願いします』

 

『ありがとう、この星の勇者たち。そして、さようなら――』

 

 

その言葉を最後に、彼らの魂も天へと還っていく。

 

 

「パムー!!」

 

 

大きな声を上げたパム治郎だが、追いかけたりはしない。ただ、大きく手を振っている。

もう自分は大丈夫だよ――そう示すかのように。

 

 

「……煉獄杏寿郎、胡蝶カナエ、胡蝶しのぶ。今から私がする動作を倣って行え。此度の鬼討ちをした者はやらねばならぬ事だろう」

 

 

巌勝が前に出て、腰から鬼神刀を鞘ごと抜いて縦向きで前に差し出し、逆手で少しだけ抜くとキンと音を立てつつ再び納刀する。

 

 

「それは……?」

 

金打(きんちょう)と言ってな。江戸時代に武士が約束を守ることを示す際に刀の刃と鍔を打ち合わせた事が由来の、所謂堅い約束をすることだ。私の生まれは戦国時代だが……鬼であった頃、幾度か目にしたことがある。あの時はどうも思わなかったが……」

 

 

そう言って目を瞑る巌勝。それを見た杏寿郎、カナエ、しのぶもそれに続く。

それぞれ日輪刀を使い、各々の誓いを胸に金打を行う。

死して尚、生きている者達を守ろうとした勇者達に最大限の敬意を込めて。

その姿に、本当に最後に、ファビラス夫妻やパム治郎の家族が笑いかけてくれた。

 

気付けばパム治郎だけでなく、その場にいたほとんどの者は涙を流している。

 

 

 

かけがえのない大切な存在へ。

「さよなら」と「ありがとう」を込めて――

 

 

 

見送る、最後の笑顔。

 

 

 

〈続く〉




本作ではダイナの原作と違い、フロンティアスペースのファビラス星人はそれほど荒んでなく、ムーキットも絶滅してません。さらばハネジローにはなったけど。

なんか現在進行形でシモンが変な合体してますが、次回からは鉄華団とグレン団を主軸に神衛隊機動部隊の活躍になります。おやっさんもいよいよ戦線到着。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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