ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

169 / 244
お待たせしました。
ゴーデス決戦編、いよいよ真のクライマックスに突入です。
目まぐるしく場面が変化しますがそこは御勘弁を。
戦場各地で怒涛の展開。
サブタイトルはウルトラギャラクシーファイトのエンディングテーマから。


それでは本編をどうぞ。


RESTART

 ――空の世界――

 

 レジェンド達が夏休みに向かい、活動拠点とするその世界を始め『時間の流れ方』が他の世界と違う世界も存在する。

 それはそれとして、現在ウルトラ騎空団はポートブリーズ周辺で活動しており、エリアル・ベースもその島の港で停泊中だ。

 リパルサーリフトに加えてミノフスキーフライトシステムなど、各種浮遊推進システムを兼ね備えたレジェンド製エリアル・ベースは以前と違い移動や活動場所に殆ど制限が無いのである。

 

 そこの一室で、ジークフリートは我夢に教わりながらパソコンの使い方を学んでいた。

 その周囲で騎空団の団員も多数見学している。

 

 

「よし、ゴー……デ、ス……と。これで『検索』をクリックか」

 

「うわっ!?何かキモい奴出てきよった!」

 

「ユエルちゃん、こいつはまだマシな方だよ。僕が戦った奴の中にはゴキブリと毒蜘蛛が混ざったようなゴキグモンっていう……」

 

「が……我夢はん、言わへんで……ウチ想像してもうた……」

 

「ふむ……ゴキグモン……と」

 

「ちょお待ちぃ!何検索してんねん!?ソシエもっとビビっとるやないか!ウチもやけど!」

 

「ちなみに繁殖目的で来たらしくてビルに大量の卵を――」

 

「「いやあああああ!!」」

 

「……二人とも頭良い分、こういう時タチ悪いわね」

 

 

 狙ってるのか天然なのか分からないが、ジークフリートと我夢によってユエルとソシエの幼馴染コンビは恐怖に震えた。

 それを見ていたゼタがボソッと言うも、いつもはすぐに何かを言ってくるバザラガが黙ったまま外を見ている事に気付き、声をかける。

 

 

「どうしたのよバザラガ。さっきからずっと外見て。組織からの任務が無いのが退屈、なんて言わないでよ」

 

「そうではない。どうも空……というよりこのエリアル・ベースとその周囲の様子がおかしい」

 

 

 は?とゼタが疑問に思いつつ外を見てみると、何やらエリアル・ベースがオーロラに包まれているような状態になっていた。

 

 

「ちょっ……何よこれ!?」

 

「わからん。少なくとも星晶獣が原因ではなさそうだ」

 

「何でハッキリ言えんのよ?」

 

「勘だ」

 

「はあ!?レジェンドみたいな事言わないでよね!あっちは超能力とか超視力とかで信憑性高いから納得だけどさ!」

 

 

 ゼタの大声に気付き、理由を聞いた我夢が簡単に答えを言い放った。

 

 

「これ、確かチーフのいる世界と一時的に時間の流れが同じになってる現象ですよ。原理は不明ですけど。このエリアル・ベースを覆うようになってる部分だけですが」

 

「いやもうレジェンド達と知り合ってから頭ブッ飛ぶような出来事の連続だわ……」

 

「我夢、何か届いたぞ。これはどうすればいい?」

 

「ジークフリートさん、ちょっと見せて下さい。うーん……こっちじゃパソコンが殆ど無いし、ウィルスやスパムじゃない……って!これはチーフが向こうで住んでるダイブハンガーって所からだ!」

 

 

 我夢はそういうと急いで届いたもの……束からの映像コード付きメールを開いて確認する。

 そして内容を読んだ我夢は切羽詰まった様子で映像コードを入力していく。

 

 

「我夢、緊急事態か……!?」

 

「はい……!さっき検索したゴーデスについては先日教えましたけど……」

 

 

 映像コードを入力しそれを出力すると、そこに映っていたのはタイガが倒れ伏し、何かに捕らわれたゼットがエネルギーを吸収され続ける姿。

 そして途方もなく巨大な化け物に立ち向かっていく多数のウルトラマンや機動兵器……現在のゴーデス島の映像だった。

 

 

「なっ……!?」

 

「何やこれ……ゼットどないなっとんねん!?」

 

「あっちのウルトラマンと同じように目に光あらへん……」

 

「ちょっと待って!確かレジェンドとゼットって一体化してるって言ってなかった?って事はまさか……!」

 

 

 最悪な事態を思い浮かべるユエル、ソシエ、ゼタの三人だったが、我夢が付随されていたメッセージからまだギリギリ無事である事を説明すると一安心する。

 さらにバザラガが気付く。

 

 

「もう一つあるようだが」

 

「え?本当だ!こっちは……」

 

 

 もう一つの映像コードを入力・出力すると今度は駒王側の映像、さらに各機動兵器にはパイロットが誰か分かるような映像も付けられている。

 

 

「ロスヴァイセとC.C.も別の場所で戦っとるん!?」

 

「でも、あっちの翼みたいのが付いた方は動かへんし、青くて重そうなのは黒い怪獣みたいなのに苦戦しとる……!」

 

「黒い奴……奴の身体も特別製か」

 

「んな事言ってる場合かって言いたいけどマジでそれっぽいし!」

 

「少なくとも分かるのは、どちらの戦場でも味方の状況は宜しくない、という事だな」

 

「はい……!おそらくはこっちの髑髏……こいつはゴーデスです」

 

 

 我夢の言葉にその場の全員が戦慄するが、我夢の提案により可能な限り騎空団の団員に見てもらおうとエリアル・ベース内の全モニター・ディスプレイに出力する事にする。

 

 願わくば、直接力になれずとも声援だけでも届いてくれる事を祈って。

 

 

 

 

 ――宇宙空間――

 

 遥かに彼方から飛んできた6つの光は、既に地球を肉眼でも確認出来る距離まで迫っていた。

 

 

「ここまで来れば目と鼻の距離だ!受け取った情報によると現時点で最も危険な状態の者が三名いる!」

 

「私達は彼らの元へ行く!君は一刻も早くダイフハンガーへ!」

 

「わかったわ!そちらも気をつけて……!」

 

「ああ!」

 

 

 そう言って一つの光は地球近くで他の光から別れ、ダイフハンガーへと向かって降下する。

 残る光は決戦の場であるゴーデス島へ。

 

 

(待っていて下さい、レジェンド、グレート、皆さん……!私達が、必ず助けます!)

 

 

 

 

 タイガが倒れ、ゼットがマガオロチの卵に捕獲されてエネルギーを吸収・ゴーデス細胞を注入されているという非常事態はすぐさまダイブハンガー全域、そして駒王で戦っている者達にも伝えられた。

 

 

「っ!?」

 

「おや?急に動きが鈍くなったようだが、何か凶事でも起きたのかな?」

 

「貴方には関係ありません……!」

 

 

 アサキムと戦闘中のクロエもその事を知って動揺し、少しずつ押され始める。

 実を言うと、クロエもガリルナガンをまだ完全に扱えているわけではない。

 これに関してはクロエが悪いわけではなく、そもそもガリルナガン自体がかなり特殊な機体であるからだ。

 事実、クロエはガリルナガンの現状発揮出来る性能を限界まで引き出している。

 

 

(まだ『エシュ・アナフ・オート』を使用するシステム『メラフティー・ディーン』は調整が完了していない。束様がその方面の知識はレジェンド様の方が詳しいから、と仰っていましたが……もしや、サイバスターも本来の力を発揮出来ないのは同じような理由では?)

 

 

 

 

 

 アマツミツツカと戦闘中のオカルト研究部や鬼討組も報告を聞き、複数人が多大なショックを受けている。

 

 

「お館様とゼットさんが……?」

 

「甘露寺、気を強く持て!」

 

 

 出会ってまだ日が浅いとはいえ、自分達に良くしてくれていた二人の現状を知った蜜璃はポロポロと涙を流して両膝から崩れ落ち、それを心配した小芭内が駆け寄る。

 セラフォルーは保護者として何とか普段通りに振る舞っているが内心は穏やかではなく、カナエやしのぶも同様だ。

 さらに、オカルト研究部はリアスに続き一誠やトライスクワッドまで倒れたという事に愕然としていた。

 

 

「イッセー君やタイガ君が……!?」

 

「タイタスさん、フーマさん……!」

 

「このままじゃ、リアスに合わせる顔がありませんわ……」

 

「リ……リク兄さんや他のウルトラマンの方々はどうなってるんですか!?」

 

「何とかまだ健在のようだが、彼らの抜けた穴は予想以上に大きく徐々に追い詰められているらしい。師範達も無限に体力があるわけではないからな」

 

 

 ギャスパーの焦り声にゼノヴィアが詳しく伝えるが彼女もまた表面上冷静に取り繕っているだけだ。

 

 こんな状況ではまともに戦えるわけがなく、再び盛り返してきたアマツミツツカと形勢が逆転しつつある。

 

 サタンデロスと相対しているC.C.や杏寿郎も少なからず動揺はあるが、片や付き合いの長さからの信頼が、片や数多の命を背負っている責任感が不安を上回り、どうにか己と機体のポテンシャルを落とさぬまま戦闘を継続出来ていた。

 しかし、圧倒的な防御力を持つサタンデロスに成すすべがなく、状況を打破する方法が見つからない。

 

 親しき存在に起こった凶事、それは予想以上に数多の者に影響を及ぼしていた。

 

 

 

 

 レジェンド一家仮住居の結界前、認識阻害によって普段は気が付かない道に転移してきた二つの影。

 いつもなら時間帯的に多少なりとも声が聞こえるだろうその道も、緊急避難命令が出された事で今や人っ子一人いなくなっている。

 

 

「無事に転移出来たみたいだな」

 

「うん、あっちでは機動兵器が戦闘中だし……何かの鳴き声とかがこっちから聞こえるから、ダイブハンガーへ続くゲートがあるのは多分この先、仮住居のある方よ!」

 

「よし!ならまずはそっちの救援だ!」

 

 

 そう言うと二人は仮住居への道を駆け上がっていく。

 道中、片方は金色のプロテクターか鎧のようなものを装着しながら。

 

 

 

 

 一方、ダイブハンガーでも緊急事態が起きていた。

 

 一誠やトライスクワッドがゴーデスにやられた事を知ったリアスの容態が悪化したのである。

 鬼討組としてアマツミツツカの討伐に赴いたしのぶを除き、卯ノ花を筆頭に涼子や束、グレイフィアとアーシア、さらには先日から光神陣営のブレインとして活躍してくれる事になった黒上博士も加わり、サーゼクスらグレモリー家やアザゼル、ガブリエルらを含めた彼女と親しい者が医務室に押しかけていた。

 

 

「うぅぅぅっ……!あああああ!!」

 

「まずいですね……先程の情報を聞いてから動揺してしまい今まで防げていた部分に綻びが出たのでしょう」

 

「こういう事が起きるかもしれないからってわざと外部の音を遮断する設備整えたのに!誰だよこの状況でりっちゃんに聞こえるように喋った奴は!?」

 

 

 さすがに束も語尾が荒くなる。

 例の如くサーゼクスやアザゼルだったりする。

 束は既に気付いているものの敢えて知らないフリをして糾弾したが、涼子がそれを諌めた。

 

 

「束さん、そっちはそっちの関係者に任せて、私達は私達の出来る事をやりましょう?」

 

「りょーちゃんの言う事は最もなんだけどさぁ……!あーもう!元はと言えば全部あの腐れ髑髏バカのせいじゃん!世界中のICBMハッキングしてブチ込んでやろうかなマジで!」

 

「貴女なら誇張じゃなくて本気でいとも簡単にやれるから笑えないのよね、それ」

 

 

 ぶつくさ文句を言いながらも凄まじい早さで数多の空間ディスプレイを呼び出しては操作する束。

 涼子も以前関わった細胞や菌の類のデータを洗いざらい調べ、似たようなものが無いか確認している。

 

 

「黒上博士、どうですか?」

 

「このゴーデス細胞というのは先日のG細胞より悪い意味で厄介だよ。あちらの細胞は単純に『細胞そのものが強力』なため、それに負けない強い意思があれば多少なりとも制御は可能だろう。だがこちらは『細胞そのものが意思を持っている』もしくはそれに近いものだ。例えるなら知性を兼ね備えたレトロウイルス……一度感染すれば抵抗は出来ても制御はほぼ不可能。除去する以外に方法は無いとみるべきだろう」

 

「そんな……!」

 

「何とかならないのか!?」

 

「そこうっさい!喚くだけなら出てけ!」

 

 

 束の怒声にサーゼクスとジオティクスはビクリと身を震わせて黙り込む。

 魔王とその父親さえ一声で沈黙させるほど、今の束は切羽詰まっている。

 そこでサーゼクスがある事に気付く。

 

 

「……!そうか!滅びの魔力でゴーデス細胞を消しされば……」

 

「この阿呆!親族なられっちゃんから説明されただろ!りっちゃんが感染したゴーデス細胞はりっちゃん自身がギリギリのところでせき止めてたんだ!それをあの情報がりっちゃんにも聞こえるくらいの大声で叫んでくれた結果がこれだよ!既に細胞の一体化が始まってる状態のりっちゃんにそんなもん流し込んだらどうなるかぐらい簡単に想像つくだろうが!!」

 

「ッ!!」

 

 

 これが魔力ならば魔導人形など魔力を根源としない限り命は救われたのかもしれないが、細胞とは肉体を構成するモノ。

 ゴーデス細胞との一体化が始まりつつある状態のリアスの細胞に対し滅びの魔力なぞ使おうものなら、ゴーデス細胞を滅ぼすつもりでリアスの元々の細胞もまとめて滅ぼしてしまう……つまり彼女を殺してしまうことになる。

 

 

「あ……あの!私の神器や回道も併用したらどうでしょうか!?」

 

 

 そこに救いの手を差し伸べたのはアーシア。

 

 しかし……

 

 

「あーちゃんの申し出、普通ならイケるとは思うけどね。でもこの状態だとそれやったらゴーデス細胞まで再生させかねない。話に聞くフェニックスの涙とやらも今のままじゃ逆効果、下手すりゃゴーデス細胞が活性化して侵食が早まるよ」

 

「そ……それじゃつまり……!」

 

「早い話、くろ博士の言うようにゴーデス細胞を除去するワクチンなり何なりを投与する他ないね。もしくはゴーデス本体をブチのめすか。どちらにしても問題はりっちゃんの体力と精神力がそれまで保ってくれるかどうかだよ。正直絶望的過ぎるけど」

 

 

 束の説明でアーシアは再び顔を曇らせる。

 そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めるな!!』

 

 誰もが驚く程、大きな声がダイブハンガーに響いた。

 

 

 

 

 ――レジェンド一家仮住居前――

 

 戦局は再び覆された。

 不安がその場を覆いアマツミツツカの逆襲に苦戦していた鬼討組とオカルト研究部+α。

 そんな彼らを救ったのは黄金のアーマーに身を包み、オレンジ色の長髪を靡かせた人物。

 

 

「諦めなければどんな絶望の中にも光は灯る!そしてその光が集まった時、まだ見ぬ明日への道が開く!諦めない心が生み出す、未来を掴む力!

 

 

 

 

 

 それが勇気だ!!

 

 

 その人物は悪魔ではなく、そして全集中の呼吸を使っているわけでもないのにアマツミツツカよりも高く飛び上がり――

 

 

「ハアァァァァッ!!」

 

 

ドガァァァァッ!!

 

 

「グギャアァァァッ!?」

 

 

 強烈なキックをアマツミツツカに見舞い、地上へと叩き落とした。

 そのスキにもう一人はダイブハンガーへと繋がるゲートのある場所へと走り抜ける。

 

 

「え!?ちょちょちょ!?ちょっと待って!」

 

「ごめんなさい!私の自己紹介は後で!気をつけてね、凱!」

 

「ああ!こっちを片付けたらいよいよ本番だ!頼んだぜ、命!」

 

「もちろん!」

 

 

 セラフォルーの静止を突っぱねてサムズアップを返し合う、凱と呼ばれた男性に命と呼ばれた女性。

 命の方はすぐさまゲートを通ってダイブハンガーへと転移し、残った凱は叩き落としたアマツミツツカへと向き直る。

 凱の背中を黙って見ていたカナエらだったが、それを中断させたのは聞き慣れた声だった。

 

 

「ほれほれ白音、いつまでそうしてショック受けとるつもりじゃ?儂や黒歌が居らねば何も出来なくなったわけではあるまいに。さっさと立たんか」

 

「よ、夜一姉様!?」

 

「裕斗もシャキッとしなさい!ジェントさんが見たらお説教されるわよ。ついでにゼノヴィアだっけ?巌勝から修行メニュー増やされたくなかったら早いとこ立って構え直す!あ、悪いけどあたしそっちは関わる気ないからね。とばっちりは御免だし」

 

「乱菊先生……!」

 

「死ぬ……!これ以上ハードになったら確実に死ぬ!!」

 

「巌勝とか縁壱師範とか、ていうか鬼討組全員一度死んでんだし一回死ぬレベルじゃ止まんないでしょ」

 

「うあああああ!!」

 

 

 夜一はともかく、乱菊は思いっきりゼノヴィアを弄っている。

 「からかい甲斐があるわね〜」と笑っているが、巌勝はこと修行に関しては相当厳しいので本気で黄泉路に旅立つ可能性もある……かもしれない。

 

 

「ま、あんた達でやれるだけやってみなさい。フォローは私らがやってあげるし、それにこの娘達もいるから」

 

「我、捕まった」

 

「ちょっとおおお!?何で私まで連れてくるんですかぁ!私が極度のビビリって知ってますよね!?」

 

「あのねえ、ここいらで一度活躍しとかないと空の世界や異世界で何かと影薄くなるわよ?機動兵器に乗れるわけでもないし、使い魔ムーブもしてないしでチキンハート・ドラゴンって二つ名さえそのうち忘却の彼方へ消え去りそうなんだけど」

 

「だから何でチキンハート・ドラゴンが二つ名なんですか!?天魔の業龍ですよ!!カオス!カルマ!!ドラゴン!!!ですっ!!」

 

「ティアマット、頭の中ならカオス」

 

「オーフィスはやかましーですぅぅぅ!!」

 

「一番喧しいのはお主じゃバカタレ」

 

 

 片手にそれぞれ引っ掴まれていたオーフィスとティアマットを見せながら軽く言う乱菊に少し安心したのか、彼女らのコントのようなやりとりが緊張感を解したのかはともかく、オカ研メンバーや鬼討組は立ち上がる。

 

 

「確かに、自分達からここに来たのに情けなかったですわ」

 

「父さんの後を継ぐ気なのに、この程度でヘタレてたら逆に父さんや他の七星剣の方々にも示しがつかないよね」

 

「……気持ちも戦いも仕切り直し、です」

 

「リク兄さんや皆さんも頑張ってるのに、僕だけ休んでもいられないですぅ……!」

 

「師範にシバかれる師範にシバかれる師範に……!」

 

 

 約1名、理由がおかしい気がするがオカルト研究部は再び己らを奮い立たせた。

 それを見た小芭内と蜜璃は顔を見合わせて頷き合い、カナエとしのぶに声をかける。

 

 

「カナエさんとしのぶちゃんは休んでて!」

 

「あの鬼は俺と甘露寺、あいつらで討伐する」

 

「え?伊黒君?蜜璃ちゃん?」

 

「何か考えがあるんですか?」

 

「単純に俺達も功績を挙げたい……というのもあるが、これからを踏まえてあいつらとの連携を試したいのが本音だ。幸い俺と甘露寺が中衛を務められる上、前衛と後衛も揃っている」

 

「カナエさんはあの子達や私達の中で一番強いから私達が頼り過ぎてもいけないし、しのぶちゃんはこの後にお医者さんとしての仕事もあるだろうからあまり無理はさせられないから!それにパム治郎君も助けてくれそうだし大丈夫!」

 

「パムパム〜」

 

 

 かつて殆どの者を信用しようとしなかった小芭内の成長、普段の調子に戻った蜜璃、その二人を肯定するように周りをクルクルと飛び回るパム治郎。

 二人と一匹を見てカナエとしのぶも頷き合い、それを了承する事にした。

 

 

「わかりました。お言葉に甘えて、後は皆さんに託します」

 

「危なくなったら私と即交代ね!それと、すぐにしのぶに診てもらうように!」

 

 

 胡蝶姉妹の言葉にセラフォルーを含めて頷く中、一人浮かない顔をしている者がいる。

 

 イリナだ。

 

 ハッキリ言ってしまえばこの面子の中では彼女は圧倒的に力不足であり、経験不足。

 鬼殺隊時代からの下積みされた経験がある小芭内や蜜璃、しのぶ、さらにカナエに至っては始まりの剣士であり九極天の一人の縁壱に師事している。

 朱乃を始めオカルト研究部も控えている夜一や乱菊らに鍛えられ、最近ではゼノヴィアも巌勝に師事し厳しい修行を重ねており、セラフォルーは魔王。

 ティアマットは五大龍王の一角でオーフィスは無限の龍神、おまけにオーフィスの連れているゴジラは怪獣王ときた。

 

 

(……私なんかじゃ、足手まといにしかならないんじゃないかな……)

 

 

 心の中で自虐的になっていた彼女だが、そんな彼女の前に雷鳴と共に雷が突き刺さる。

 

 

「きゃあああああ!?」

 

「イリナ!?大丈夫か!」

 

「う……うん。でも、何でいきなり雷が……」

 

 

 雷が落ちた場所を見ると、そこには水晶状の剣が一振り刺さっていた。

 それも、イリナにとって丁度良い大きさで。

 

 

「こ……これって……!」

 

「何だ?新手の聖剣か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何をしている紫藤イリナ!!初対面で俺に喧嘩を売るような事を言った時の貴様の度胸は何処へいった!!」

 

 

 

 

 仲間と別れ、ダイブハンガーへと辿り着いた一つの光はファンタジー物のような衣装に身を包んだ女性へと姿を変える。

 格納庫らしき場所なのは理解したが、あまりに広くキョロキョロと辺りを見渡すが誰もいない。

 

 

「どうしよう……!早くしないと……手遅れになる前に……!」

 

 

 円筒状のカプセルを両腕で抱きしめる女性。

 直後、片腕を思いっきり引っ張られバランスを崩しそうになるが、何とか体勢を立て直す。

 

 

「きゃ!?な、何!?」

 

「医務室行きたいんでしょ?だったらこっちよ!」

 

 

 彼女の手を引っ張りながら駆け出したのは先程仮住居から転移してきたばかりの命という女性だった。

 

 

「あの、貴女は……!?」

 

「詳しく自己紹介してる暇は無いから簡単にね!私は卯都木(うつぎ)(みこと)、レジェンド様お抱えの特別組織GGGの隊員よ!」

 

「レジェンドの!?」

 

「ほら、急いで!」

 

「は……はい!」

 

 

 左手を引かれ、右腕でカプセルを抱え女性は命と共に医務室へと走る。

 

 駒王とダイブハンガーに今、希望が到着した。

 

 そして――

 

 

 

 

 タイガが倒れ、ゼットもまた絶望的状況にあるゴーデス島。

 

 二人の若き戦士がやられた事で戦況はますます光神陣営が不利になっていた。

 ゴーデスだけでなくマガオロチも卵の状態とはいえ出現し、そちらにも気を配らねばならない上にゴーデス細胞を注入されたゼットのタイムリミットも迫っている。

 

 

「ボルフォッグ!突破出来そうな方法はないか!?」

 

「あの様子ではかなり厳しいでしょう。あれだけの触手がある以上、たとえ切り離せたとしてもすぐに捕獲し直されます!」

 

「しかもアタシ達の機体のエネルギーも吸収されかねないってわけね!最悪だよ悪趣味髑髏!」

 

 

 ボルフォッグは昭弘やラフタと共にゼット救出を敢行しようとするもマガオロチの卵の性質上、策もなしに飛び込めばゼットの二の舞いに成りかねない。

 そこにゴーデスはさらなる追撃を仕掛けてきた。

 

 

『そういえばそのマガオロチの卵とそれに捕らわれた若造以外にも我の細胞を体内に持つ者がいたな。しかもこの感じ……少なからず抵抗しているようだ』

 

「……!リアスちゃんの事か!」

 

『この場から感じぬという事は貴様らの拠点かそれに準ずる場所にいるというわけか。では少しばかり貴様らがいう『侵食』とやらを加速させてやろう。結果、その者が怪獣となって貴様らの拠点や大切なものを破壊し尽くす光景……さぞや愉快なものになるだろう』

 

 

 そう言うとゴーデスは両眼を禍々しく発光させる。

 

 

「ゴーデス!やめろ!」

 

「フハハハハ……無様だな、ウルトラマングレート。歴戦の勇士と呼ばれた貴様が何も出来ず、ただ仲間が力尽き、怪獣と化していく事を止められない。レジェンドもそうだ。あの若造と一体化などしなければこうしてここにいる者達が地に這いつくばる事もなかったろうに。つくづくお人好しで身と仲間を滅ぼす光神だ」

 

「てめえ……!!卑怯な手しか使えねえお前がグレート先輩をバカにしてんじゃねえ!!」

 

「確かにゼットはまだ未熟だ……けど彼には決してブレないしっかりした芯の強さと真っ直ぐな心がある!それを見抜いたからこそ、たとえ自分が辛くとも彼と共にある事を選んだんだ!」

 

 

 ゼロとメビウスの言葉もゴーデスにとってはどうでもいいものでしかない。

 

 

『そろそろ貴様らに付き合うのも飽きてきたところだ。中途半端に生かして思わぬ牙を突き立てられる可能性もある。後顧の憂いはここで断たせてもらおうか』

 

 

 ゴーデスはゆっくりと闇のエネルギーを集束しながら口を開いていく。

 タイガを倒した光線――ダークデストリームを放つ気だ。

 超倍加したストリウムブラスターさえ容易に打ち破るその光線を防ぐには余程の防御で防ぎ切るか、相殺するしかない。

 しかし、ゴーデスの猛攻を防ぐために分散してしまったため一点集中の光線や防御で対抗することはほぼ不可能。

 仮にこの一撃を凌げても、次が来るかもしれないし、マガオロチの卵も残っている。

 

 正に絶体絶命。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォガァァァァン!!!

 

 

『ぬぐぅあああああ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もがそう思った時、闇に覆われた空を貫き5つの光線がゴーデスの口内へと一点集中で撃ち込まれた。

 

 今までどれだけの威力の攻撃を受けても怯みさえしなかったゴーデスが明確にダメージを受けた事、そして突如放たれた光線。

 それらに驚くウルトラ戦士と神衛隊にボルフォッグ。

 

 そして暗雲を突き抜け5つの光が彼らの、そしてゴーデスの前に舞い降りる。

 

 

 

 

 

 最強最速の戦士・ウルトラマンマックス。

 

 マックスの相棒・ウルトラマンゼノン。

 

 グレートの盟友・ウルトラマンパワード。

 

 ギャラクシーレスキューフォースの一員にしてパワードとグレートの弟子・ウルトラマンリブット。

 

 そして彼らを率いてやって来たのは元科学技術局長官にしてウルトラ兄弟の一人・ウルトラマンヒカリ。

 

 ゴーデスと戦うゼロ達を救うべく、光の国の精鋭達が遂に決戦の場へと駆けつけたのだ。

 

 

 

〈続く〉




ファンの方、本当にお待たせしました。
凱と命、そして5人のウルトラ戦士が到着です!
しかしタイガやゼットは未だ復活ならず……。

前回冒頭に現れたサイフィスと、彼女の台詞にあったものが次回に関する伏線になっています。


それではまた次回。

特別編で見てみたいのは?

  • 『それは、星を救う物語』の続き
  • 米花町にホームズとモリアーティ来訪
  • 特殊特異点にAチーム+α送り込み
  • リリなの世界に蛇倉苑メンバー出張

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。