ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER 作:ハジケハムスター・ポッポ
ゼットの主役回、やはり長くなりました。
シリアスベースにちょっとのギャグでお送りします。
それでは本編をどうぞ。
――それは、一誠が転生悪魔になる暫く前……夜のバラエティ番組が生放送されている最中に起こった出来事である。
偶然か、それとも狙ったのか知らないが凶悪犯罪者集団が生放送中に乱入し、出演者及び会場の観客を人質に日本政府へ自分達の身の保障と身代金を要求してきたのである。
相手はいずれもかなりの手練であり、人質の数も相当なため政府側は要求を飲まざるを得なかった。
しかし、ある一人の人物の登場によって状況は覆される。
「俺は謎の鉄騎超人『ブラスターブレード』!悪逆非道を行う外道共、俺が成敗してくれる!トウッ!」
何やら全身を白と赤の鎧と仮面で着込んだ人物が異常な早さで犯罪者達を薙ぎ倒していったのだ。無論、人質には一切傷つけさせておらず、珍妙な存在ではあったがまさしく超人であった。
そして、最後に残ったその集団のボスである者に対して技を放ったのである。
「食らうがいい!48の殺人技の一つ――」
それによってボスは致命的な大ダメージを受けて失神、他のメンバーも一人残らず気絶させられているため全員確保、大捕物となった。
ブラスターブレードと名乗った人物はその後、その場の全員が見ている前で背中を向けて霧のように消えていき、完全にいなくなってしまいお茶の間を騒然とさせた。
こうして、『彼ら』の活躍を記した漫画や伝記がないこの世界において、生中継された状態でボスに放たれた『あの技』だけはあまりのインパクトの凄まじさに全世界へ瞬く間に広まり認知され、真似をする者も出てきたが未だ完璧に放てた者はいないという。
ちなみに、それをテレビで見ていた某一家は盛大にお茶やおやつを吹き出したらしい。例の如く、『彼』によるものだったからだ。
☆
ゼットは困惑していた。
突如現れた数十人ものシルエット。異形なものもいるとはいえ、その殆どがシルエットであっても屈強な肉体だと一目で分かるほど鍛え上げられている。
正直、タイタスがこの場にいたら発狂間違いなしだ。
「あ……貴方達は!?」
『フッ……『ナイスガイな謎の王子』とでも呼んでもらおう』
「いや、シルエットなんで顔とか肌の色とかウルトラ分かんないです」
『な……なに〜〜!?』
シルエットの一人がだいぶ大袈裟なリアクションで返してきた。しかし、別に大袈裟ではなかったらしく……
『ハハハハハ!ミーから見ても今のお前は真っ黒だぜ!鏡見てみな!』
『何を〜!そういうお前だって真っ黒じゃないか!』
『コーホー……』
『そうだ、二人ともよせ。今はそんな争いをしている場合ではないだろう』
『『いや■■■■■■は普段も真っ黒だからいいかもしれないけどな!』』
『■■■、私達は生涯マスクを着け続けなければならない以上、素顔は見せられんから結局見た目はマスクで判断されてしまうぞ』
『兄さんそれは言わないお約束ですよ〜!!』
自分そっちのけで騒ぎ出したシルエットを呆然と見ているゼット。それに気付いたのか、全員がハッとした後に咳払いして再び荘厳な雰囲気になる。
『ゴホン!さて、ゼット……お前自身も薄々勘付いているはずだ。お前がある状況下に置かれると決まって凄まじいパワーを発揮する事を』
シルエットの言葉にゼットは思い当たる節があった。
最初は鬼・カゼキリをレジェンド・オーフィス・巌勝と討伐した時。そして二回目が同日、魔王獣マガパンドンの亜種と戦った時だ。
その2戦で共通していた事とは――
「……ピンチになった時?」
『そうだ。我々の中にも似たような力を持つ者がいる』
私とかな!と親指で自分を指しながら言うシルエット。
また脱線しそうになったが、すぐに気を取り直し説明を続ける。
『これは『火事場のクソ力』と呼ばれており、その成長に限界は存在しないのだ』
「成長に限界のない力……!まさか、その火事場のクソ力が俺の中に!?」
『いや、ないけど』
「ないの!?じゃあなんでそんな事言ったんだよ!!」
『すまん、言い方が悪かった!そもそも火事場のクソ力はある種族にのみ使えるものでな、お前にあるのはこれと同種・同質の力だと言いたかったんだ』
「そ……そうだったのか……でも、俺ゴブニュとの戦いだとピンチになっても全然発動出来なかったけど」
確かにピンチになった時に発動するならアルファエッジの時にも発動するはずだ。それがベータスマッシュでも危機に陥っている時にさえ発動しないのは何故なのか?
『もう一度よく思い出せ。その力が引き出せた時、本当にピンチだっただけか?』
「ピンチだけ……?」
そこまで言われてようやくゼットはある事に気付く。
「俺、一緒に戦った人達がいて……その人達のために」
『そう、自分だけでなく誰かの為に力を振るう時。その時にこそお前の中に眠る無限の成長性を持った力は発現するのだ。強いて言うならば、発動条件は即ち『友情』!!』
「友情……!」
『そう、友情パワーが強ければ強い程、お前の中にある力はより強くなっていく。我が友・レジェンドから教えてもらったある言葉をお前に伝えよう!』
シルエットから伝えられた言葉、それは……
――優しさを失わないでくれ
――弱い者をいたわり、互いに助け合い
――どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ
――例えその気持ちが何百回裏切られようと
ウルトラ六兄弟の中でゼットの最も敬愛する人物、エースの言葉。地球を去るまで共にヤプールと戦い続けたレジェンドは、その言葉をシルエットの人物らにも伝えていた。
そして、ゼットも思い出した。レジェンドとの特訓の事と、それを支えてくれていた者達を。
☆
これは杏寿郎やしのぶの新しい日輪刀製作の目処が立った次の日のこと。
「ぐああああっ!!」
「これが『タワーブリッジ』だ、ゼット!今は手加減しているが、本気でやれば身体が上下半身に裂ける程の威力が出せる!!」
ダイブハンガー内のトレーニングルームでゼットは人間体のレジェンドにタワーブリッジと呼ばれる技を掛けられ、その身で威力と恐ろしさを実感していた。
それからレジェンドはゼットを解放すると、ある事を言い出す。
「よし、タワーブリッジを俺にやってみろ」
「えええええ!?」
「お前はタワーブリッジをその身で受け、その威力も恐ろしさも知った。次は実践だ。戦いにおいて役立つのは手取り足取り丁寧に教わった技ではなく、一から十まで己の身体で真に理解した技だということを覚えておけ」
釈然としないゼットだったが、とりあえずレジェンドにタワーブリッジをかけてみるが……
「う……ぐぐ……まっ……曲がらない……っ」
「どうした!半端な力では逆に力任せに脱出されるぞ!こんな風にな!!」
「うわあっ!?」
無理矢理身体を折り畳んでレジェンドは軽々とゼットのタワーブリッジから逃れてしまった。
「これが『実践』だ。自分が掛けられた時と掛けた時、それぞれのケースを体験する事で修得までの問題点を炙り出し、そこをさらに改善していけば完成度の高い技に仕上げた上で会得出来る……というわけだ」
「いや、でも……超師匠大丈夫なんですか?なんか会談に向けて色々やってるし、杏寿郎としのぶちゃんの刀も手ぇつけないとだし……特訓に付き合ってくれるのはウルトラ感謝ですけど超師匠の身体が保たないんじゃ……」
「俺の身体の心配など二の次だ。今はお前自身が実力をつけることを「あのぅ……」ん?」
至極もっともなゼットの意見をバッサリ言い捨てたレジェンドだが、そんな彼もおずおずと声をかけてきた主には言葉を中断せざるを得ない。
「アーシア、見ていたのか」
「はわっ!?ご、ごめんなさい!盗み見とかする気は全然なくて、その……!」
「いや、盗み見も何も隠してないからな。それよりどうした?明日も学校だろう」
「実は、その……何というか、いつもレジェンド様と一緒に寝ているからいないと寝付けなくて……オーフィスちゃんは抱き枕があれば多少寝れるようになってますけど」
アーシアはレジェンドとの幼少期の出会いから今回の再会までの期間が長く、想いが培われてしまった弊害というかなんというか……逆にオーフィスは代替可能な何かがあればある程度は我慢が効くようになったらしい。成長しているようで何よりである。
「あと、ゼットさんの悲鳴が思いの他響いてきたというか……」
「ウルトラすいません」
「すまん、元凶は俺だ」
これには師弟揃って謝罪した。防音対策も考えねばならないようだ。
「それで、お二人ともこんな夜中に特訓されてたんですか?」
「昼間は何かと忙しくて時間が取れんのでな。こうでもしなければ見てやる事も出来ん」
「俺の事は後回しでもって言ったんだけど、超師匠は『お前が使い物にならんと結局は俺が困る』って無理して特訓に付き合ってくれてるのでございます。今教わってる技術も一人だと限界があるし」
「そうだったんですか……」
アーシアは少し考えてから「よし」と握り拳で頷く。
「レジェンド様!ゼットさ……」
「これがスピニング・トゥ・ホールド!!」
「ぎゃあああああ!!」
「はわあああ!?」
何かを決意したアーシアが二人に声を掛けた時、目の前ではある意味惨劇が繰り広げられていた。
「完成版マッスルスパークやアロガントスパークじゃないだけマシと思え!!いいか!スピニング・トゥ・ホールドはここからさらにこうやって……」
「あいだだだだだ!!ギブ!超師匠ギブアップ!!ていうかその二つ超師匠の十八番と同じ単語入ってて桁違いにウルトラヤバそうなんですけど!?比べるのが間違ってそうがあいだぁぁぁぁ!?」
「……食らってみるか?」
「ウルトラ勘弁してくださ……いだだだだァァァァァ!!」
本気でゼットの右足が危険な状態になってきたのでアーシアが止めに入り、かつ目が点になる提案をする。
「私もお手伝いしますっ!」
「「え?」」
グ キ リ
「いぎゃあぁぁぁ――!!」
「ゼットさぁぁぁん!?」
「あ、スマン」
完璧にイッてしまったゼットの右足を即座に治療するアーシア。このように不測の事態があった場合でもアーシアなら治療出来るし、アーシア自身の特訓にもなるから、と押し切られてしまい、結局三人で特訓する事になったのだ。
……初日は。
その翌日にはさらに……
「お館様!ゼット殿!僭越ながら俺も協力に……」
「お医者さんも二人いた方が……」
「フライング・ブレーンバスター!!」
「ごぶにゅうっ!!」
「「ゼット殿(さん)――!!??」」
杏寿郎としのぶもアドバイザー&ドクターとして参加し、加えて……
「ゼット殿、筋肉の動きから比重が右に偏っているぞ。レジェンド様の話では出来る限り均等になるようバランスを保つ必要があるそうだ」
「こ……こんな感じなら……!」
「あ」
「判断が遅い!!」
「うわあああ!?」
「マッスルリベンジャー!!」
「あああああ!!がっ!は…………」
「ゼット殿ー!?」
「レジェンド、やりすぎだと思う」
巌勝とオーフィスまで参戦したせいかレジェンドの特訓は激しさを増した。ちなみに僅か数日間だというのにゼットが生死の境を彷徨った回数は3桁に届くかという程だったらしい。
しかし、杏寿郎の励ましや巌勝の的確なアドバイス、文句の一つ言わず治療してくれたアーシアとしのぶに、応援してくれたオーフィス。
そして……
「あれ?こんなトコにスポーツドリンクと湿布とか包帯……」
「他にも冷感タオルとか入ってますね。あ、手紙入りみたいですよー」
「誰からだろ?えーっと……」
【無茶しすぎて身体壊すんじゃねぇぞ。ドリンクはレジェンドの身体借りて飲めよ。 通りすがりのマイスターより】
「……どこかの隊長さんですね」
「……ゼロ師匠……!」
素直ではないもののゼットの身を案じつつ静かに見守ってくれていたゼロ。
最後に、激務の合間の休息を削ってまで特訓に付き合ってくれているレジェンド。
日輪刀の件が決まった日から会談当日まで数日間しかなかったが、このメンバーでの特訓は確実にゼットの実力を大きく伸ばしていた。
――それだけではない。
その短い期間の間に、彼は多くの絆を育んだのだ。
☆
「…………そうだ。俺がこの場に立っていられるのは、俺を支えてくれる皆がいたからだ。半人前どころか3分の1人前と言われた俺を」
『そうだ。そしてそれはお前が他者を尊重し、誰かの助けになろうとする心を忘れなかったからでもある。それもただ甘やかすだけではなく、互いに高め合う気持ちも持ったままな』
「互いに高め合う気持ち……」
『兄さんの言うそれはまさしく『真・友情パワー』!自立し、本当に必要な時にこそ助け合うその心が常に高みへと導くのだ!』
ゼットはシルエットの言葉を聞いて感銘を受けると共に、「あ、この二人は兄弟なんだ」と何故か親近感が湧いていた。
『今親近感湧いていただろう?まさにその通りさ、私はお前に似ているんだ』
「え?」
『私は子供の頃色々あってな、成長してからもダメ超人ダメ超人と言われ続けたものさ』
シルエットは感慨深くゼットに語る。
『だが、ダメ超人と呼ばれたからこそ分かったものがある。得たものもある。その一つがお前の師を始めとするたくさんの大切な友だ』
「そしてそれが力の源になって……」
『そう。だからゼット、決して友情を忘れるな。先の言葉のように、どれだけ裏切られようとも』
「はい!」
力強く答えるゼットにシルエットは頷き、他のシルエットとも頷き合って再びゼットを見る。
『ならば最後だ。我ら『超人』がレジェンドと共に戦った記憶、そして我らが技の『知識』をお前に伝授しよう!』
「!?」
『レジェンドは気付いているだろうが、おそらくお前は技を繰り出すための何かの『ピース』が欠けている事がなんとなく理解出来ているだろう。それが『知識』!レジェンドは既にお前の身体に技を教え込んでいるだろう、そしてこの『知識』を持って頭と身体、言うなれば天と地が揃い完璧な技となるのだ!』
『無論、高度な技はそこからさらに鍛練を重ね技を磨く必要がある。それは分かるな?』
「もちろんです!これからも粉骨砕身、精進します!!」
『ならば良し!これが我らの記憶と知識じゃーい!』
何故かハイテンションになったシルエットの言葉に、他のシルエット達が光になってゼットの中に吸い込まれていく。同時に吸い込まれた直後から、ゼットの脳裏にはシルエットが鮮明になり、レジェンドと共に、或いは向かい合ってリングで死闘を繰り広げる光景が浮かび上がってきた。
「こ……これが、超師匠達の……!」
『どうだゼットよ。『知識』があれば今まで見た技、掛けられた技でも新鮮に移るだろう?』
「はい!こんな複雑な技を即座に……あれは!?」
『む?おおっ!私にも分かるぞ、兄さんの『ナパームストレッチ』をレジェンドが繰り出し、その上に私が『キン肉バスター』で乗っかるようにした私達の
――行くぞ、■■■■■!!
――これが私達の友情パワー!!
――『『マッスルダイナマイト』』!!
「すげぇ……!ウルトラすげえ!!」
『懐かしいな……またこうしてタッグマッチをやりたいものだ。では、私が最後だがその前に……』
他のシルエットは全てゼットの中に吸収され、最後に残ったシルエットである人物が、どうやらマスクであった部分をめくり……
『フェイスフラーッシュ!!』
シルエットの顔部分から眩い光がゼットに浴びせらせると、ゴブニュから受け、この空間にも持ち越されていたダメージが瞬く間に回復する。
まるでパム治郎とコジローから受けた回復をさらにもう一度受けたような気分になったゼットは驚愕した。
「こ、これは!?」
『私からの餞別だ。さて、お別れだ……ゼット。我らの友を支えてやってくれ。頼んだぞ』
「はい!……ありがとうございました、大先輩!」
『大先輩……いいじゃないか〜!よし、ゼット!本当の最後にお前が自信の持てる言葉を教えよう!決め台詞に使っていいぞ!』
「マジですか!?お願いします!」
『うむ!それはな――』
シルエットがそれを伝え、ゼットの中に消えて行くとその瞬間、ゼットの意識は光に飲み込まれていった。
☆
現実世界、ゼットは意識を取り戻すとゴブニュの腕を掴みながら抵抗している最中……つまり、あの時と同じ状態のままだった。
しかし、先の事が夢でない事を理解する声が聞こえてくる。
「何でしょう……さっき一瞬、ゼットさんが光って……」
アーシアのその言葉でゼットはあの世界で起きた事を瞬時に思い出し、同時に気合を込めて身体全体を思い切り捻るようにしてゴブニュの拘束から脱出した。
それに周りから驚きの声が上がる。
「おお!?ゼット殿が見事拘束から逃れたぞ!」
「あの状態から抜け出せる体力が残っていたのか!?」
(そうだ……あれは夢じゃない、あの人達が俺に力を貸してくれたんだ!)
『おい、ゼット。お前、大丈夫なのか?』
「大丈夫です、超師匠!俺、やっと分かりました!超師匠が教えてくれたこと!」
『何?』
そして、立ち上がってゴブニュに向き直り、シルエットから教えられた自分を奮い立たせる言葉を発した。
「へのつっぱりはいらんですよ!」
『!!』
他の者は何を言っているのか分からなかったが、レジェンドはすぐに理解した。『彼』の言葉だと。
「言葉の意味はわからないけど、とにかくすごい自信ね……!」
リアスのそんな台詞もレジェンドには懐かしく感じる。そんな物思いに耽っていたレジェンドを現実に引き戻したのは体勢を立て直したゼットの動き。
「ダァァァァ!!」
「――!!」
バカの一つ覚えか、と言わんばかりにゴブニュに突撃したかと思えば放たれた電撃をスライディングで回避し、ゴブニュの股下に足が入り込んだ瞬間、両腕をつき身体を持ち上げ、両足でゴブニュの頭を挟みバク転の要領で全身の体重をかけうつ伏せに倒れ込ませた。
突然動きにキレが増したゼットに感嘆の声が上がるが、ゼットはそこから即座に行動を起こす。
ゴブニュが起き上がる前に無理矢理仰向けにするとゴブニュの片足を取り、自身の足を絡ませるように差し込み捻り上げた。
「スピニング・トゥ・ホールドォォォ!!」
「――!?!?」
例え痛覚が無くともフレーム関係や内部機器に明らかな異常を与える技を繰り出されゴブニュは苦しみだす。
(ここから回転を加える!)
ゼットは差し込んだ足を軸に回転を加え、ゴブニュにさらなるダメージを与えていく。
「あれ、レジェンド様がゼットさんにかけていた技ですっ!」
「うむ!どれ程の威力なのか試しに俺もかけてもらったがかなり効いた!脱出は出来ても残る痛みがかなり厳しい!踏ん張りがきかなくなるからな!」
「あれ、人体には相当堪えますよ。私は試しに姉さんにかけてみました」
『!?』
最初に見たアーシアや、実体験を話す杏寿郎に続いてとんでもない爆弾発言をするしのぶ。カナエはその記憶がフラッシュバックして涙目で片足を押さえていた。
基本はテコの要領なので力の弱いしのぶでもちゃんと極められたらしい。
しかし、この技は回転の瞬間に手を離す必要があるのでそのタイミングで脱出される可能性がある。
当然ゴブニュもそれを狙い、先程ゼットがやったように身体全体を捻るようにして脱出した。
「――!!」
「ウアッ!?やっぱり機械相手には効果薄かったか!?」
『いや、効いている!その証拠に奴はフラついているだろう、足元を見ろ』
レジェンドの言う通り技を片足を集中してかけられたため、ゴブニュはバランスが取れておらず明らかなスキが出来ている。何とか平常通りに動こうとするが内部フレームに相当負荷がかかっていたようだ。
ゼットは身体を捻りながらジャンプしてゴブニュの背後にのしかかるようにしつつ両足を内側から引っ掛け、腕をチキンウイングで絞り上げる。
「リバース・パロスペシャルだぁ――!!」
「――!!!」
先程の脚部に加えて今度は肩を始めとする腕部への多大な負荷がゴブニュを襲う。
ベータスマッシュがパワータイプなのも相まってメキメキと音を立てており、何とか外そうとゴブニュはもがく。
満足に動けていなかった先程までに比べ、次々と
『ゼットの奴、いきなり動きが格段に良くなったぞ!?一体何があったんだ!?』
『わかんねぇ!けどアレ絶対やられたらキツいのばっかだろ!?』
『最初のやつはフーマに特に効きそうだよな』
『よし、帰ったら早速試してみよう!』
「いや俺で試そうとすんなよ!?」
スラン星人との高速戦闘をこなしつつツッコミを入れるフーマ。確かに高速移動する相手にスピニング・トゥ・ホールドは相当効くだろうが。
「向こうは大丈夫そうだね」
「ああ、どういうわけか一皮剥けたってやつだ。聞いた事はあったが俺はやった事無い技ばかり繰り出してやがる。ゼットの奴、師匠から他のウルトラ戦士とは別の路線で育てられてんな」
『お前ら模擬戦でアレやられる事想定しといた方がいいんじゃねーか?』
さすが、ベテラン二名とそのうち一人に鍛えられたウルトラマン。こちらはゼットの動きに安心し、ゴブニュを任せきる事に決めた。これでやっと目の前の強敵に集中出来る。
「おっしゃあああ!いいぜいいぜ!赤いマッチョラマン!!」
「マッチョラマンって何よ!?」
「マッチョなウルトラマンの略だよ!それよりもあのピンチからの逆転劇!燃えるじゃねえか!!」
(その呼び名、タイタスってウルトラマンに言った方が喜ばれそうだけど)
やはりというか、赤くてガチバトルを仕掛けるゼット・ベータスマッシュはカミナの好みに刺さるようだ。
ヨーコはヨーコで新しい呼び名について色々考えている。
そしてそうこうしている間に、新たな動きがあった。
何とかゼットを振り解いたゴブニュだが、既に片足と両腕に相当なダメージが蓄積しておりフラフラどころか起きては倒れを繰り返している。
(まだだ!
何かを狙っているゼットはバランスを崩し倒れたゴブニュを仰向けの状態で持ち上げ高くジャンプする。
『この技は!』
「ウオリャアァァァァァ!!」
特訓の最中に見た事のあるアーシアらもその技を知っている。ある人物のフィニッシュホールドとして有名なそれは、ゼット自身もレジェンドから伝授されたシンプルながらも強力なものだ。
正式名称『アルゼンチン・バックブリーカー』、そしてそのある人物は己の故国にある橋の名をその技の名とした。
それこそが……
「超師匠直伝!タワーブリッジィィィ!!」
ガキィィィィッ!!!
落下によるGを加え、『人間マフラー』とも呼ばれるようにゴブニュはゼットに担がれながら弓なりに反らされる。
凄まじい轟音と共にベキベキと言う音がゴブニュから聞こえた事からもその威力は推して知るべし。
「――!!――!!」
「オオオオオオッ!!」
さらに力を込めていくゼットの気迫は見る者を圧倒する。彼が3分の1人前と評価されている理由を知っている者達はともかく、それを知らない者達はこう思うだろう。
――あれのどこが3分の1人前だ――
現に三大勢力の護衛達は、自分達があれを受けて無事でいられるはずがないと認識し青い顔をしていた。
ついでにその近くで観戦していた鬼灯が……
「ああ、私です。すいませんが地獄にリングを作りたいので場所を選定しておいて下さい。とりあえず記念すべき第一戦はレジェンド様と……誰かによるタッグ戦で。相手は無惨と……コカビエルかバルパーあたりでいいですね」
……相手が地獄でさらなる地獄を見る悪夢を味わうとしか言いようがない事をしようとしていた。
間違いなくレジェンドは手加減などしない相手だソレ。
それはそれとして、しぶとくゴブニュは脱するがもはやまともな抵抗が出来ないレベルになりつつあった。
「――……――!……」
「……ウルトラタフだな、お前。さすがティガ先輩が苦戦しただけの事はあるぜ」
ゼットはゴブニュに称賛を送る。敵であっても人質をとったりとか、ギャラリーを狙うような事をせず、ただ自分と真っ向勝負するゴブニュには悪感情など沸かない。
「お前がどんな命令を受けてるのか、何でそれを守ろうとしているのか俺には分からない。けど!俺にも負けられない理由がある!究極的には宇宙の平和のためだけど、今ここに立っているのはそれだけじゃない!」
ゼットが力説し、全身に力を込めると異変が起きる。
大きく変わるわけではない、ある一点にそれはあった。
「俺に力を貸してくれている偉大な兄さん達!俺に特訓をつけてくれた上に身体を貸してくれているレジェンド超師匠!そして!未熟にも程がある俺を支えてくれる仲間達の思いを背負って俺はここにいる!その皆に勝利を届けるためにも、俺は負けられないんだあああ!!」
ゼットの叫びに呼応するように、ゼットの額に彼の名を示すウルトラサインが出現したのだ。
『これは……!』
「『火事場のクソ力』、それと同質のものらしいです超師匠!」
『何だと!?お前、どこでそれを!?』
「ナイスガイな謎の王子と名乗る大先輩に教えてもらいました!」
『ナイスガイな……まさか』
ゼットの変化は元よりその口から出てきた『火事場のクソ力』という単語にその場の者達は首を傾げているが、レジェンドはその後のゼットの言った人物に心当たりがあった。
(そうか……今ゼットは俺の身体を使っている。あちらでの最終決戦の時、皆から分けてもらった超人パワーが俺の身体に消えずに残っており、それが何らかの形でゼットを導いてくれたんだな。ありがとう……スグル、皆。おかげでゼットは、俺を除くウルトラ戦士最初の『正義超人』として目覚めたぞ!)
レジェンドの脳裏に『間違いなくヒーローだ』と断言出来る、慈悲深く不屈の闘志を持った友情に厚い一人の超人が浮かんだ。
それに続くように共に戦った仲間や激突したライバル達も。
『……ゼット』
「超師匠?」
『俺はある世界を離れる時、
「その名前……!あの大先輩も超師匠の事をそう言ってました!」
『やはりな……ならば俺も彼らに名を貰ったように、お前のその力に名前を授けようと思う』
ゼットは彼らから既に何かを授かったのだろう。ならば、自分も光神やウルトラマンとしてではなく、彼らと同じ『超人』の一人として彼に贈り物をしよう。
『劣勢を覆し、勝利を手にする力。お前のその力の名は今、この瞬間から『逆境のウルトラパワー』と呼ぶが良い!』
「おおっ!何かウルトラいい感じ!」
どうやら気に入ってくれたようで一安心。
そうとなれば後はゴブニュを倒すのみ。いくら逆境のウルトラパワーが完全に発現したとして、持続時間はまだそう長くないだろう。
ゼットもそれを本能的に理解したのか即座にゴブニュに向けて走り出して飛びかかり……
「イグニッションラリアット――!!」
勢いをつけたラリアットをゴブニュへと叩き込んだ。
それを受けたゴブニュは地面へと倒され、受けた部位は僅かながらヒビが入っている。
「今だ!!」
倒れたゴブニュの頭部を背負い投げに似た体勢で抱え、タワーブリッジの時よりもさらに高く飛び上がる。
ゴブニュは今までのゼットの技から行動を予測し、かつてない技を仕掛けてくるだろうと考え、ゼットのキックを回避したように頭部の一部を首の如くしなやかにして脱出しようとする。
……だが。
「それを待ってたぜェェェ!!」
ゴブニュのそれは悪手であり、ゼットはむしろそれを狙っていたのだ。
首部を曲げた事でゼットはゴブニュの身体を頭上へ逆さに抱え上げ、そのままゴブニュの首部を肩口に乗せると同時にゴブニュの両足を股裂きにしてクラッチする。
「遂に出すか……あの技を!」
「よもや!あれはお館様がゼット殿にかけた事があるだけでなく、当面の最終課題としていた技では!?」
「確か48の殺人技の一つという……!」
――食らうがいい!48の殺人技の一つ――
――キン肉バスターッ!!――
かつての事件でブラスターブレードなる人物が放った大技、それが今ゼットの放とうとしている技『キン肉バスター』だ。
その事件を知っているリアス達もまさかという表情で見ている。少なくとも簡単に放てるようなモノではない。
だが、彼らは気付いていない。
ゼットが繰り出そうとしているのが
『ゼット、キン肉バスターには最も目立つ弱点がある。それは首のフックが甘い事だ。そこを見抜かれて脱出される事もある。だからこそ、俺と共に特訓の末体得したあの技術を使う時だ!』
「はい!超師匠!ヌゥァァァァァァ!!」
ゼットが力を込めると動かしていたゴブニュの首部が全くと言っていいほど動かなくなる。何かにくっつけられたかのように。
そう、これはウルトラ念力の応用だ。
ウルトラ念力は普通の超能力よりも遥かに強力であり様々な事が可能。そして総合的な超能力ならばキングに軍配が上がるが、こと念力に限っては『レジェンドキネシス』という固有名詞を持つウルトラ念力を使えるレジェンドが一歩先を行く。
そのウルトラ念力使用者の最高峰に座するレジェンドからゼットはある指導を受けた。
あまりウルトラ念力の得意でないゼットが効果的にウルトラ念力を使うには状況・条件を限定すべし、という事である。
そこでゼットが思案した結果、辿り着いたのが今回の『強力な接着力』だ。それも、実はほんのちょっと前……復活時にその答えに至ったばかり。
これは今後もこういった戦い方をしていく上で、技を外されないようガッチリ固定する事に限定してアレンジされた、まさしくレスリング専用のウルトラ念力。
条件は『自分と相手が密着している時のみ発動可能』。相手を吸引するわけでも何かを発射するわけでもなく、ただ自分の身体の一部にやたら強力な接着剤が塗られているようなもののため、例のレスリングでもルール的に問題はない。
これによってバスターの決まる安定性は大幅に上昇した。
「準備完了!!行くぜゴブニュ!これからお前にかけるのは俺だけじゃ完成しなかった大技だ!!」
ゼットの額のウルトラサインが輝きを増す。
アーシアが傷を癒やしてくれなければ特訓は続かなかった。
杏寿郎がスパーリング相手をしてくれなければ技に磨きはかからなかった。
しのぶがアーシアと一緒に的確な処置をしてくれなければ特訓中に誰かが手遅れになっていた。
巌勝が細部をアドバイスしてくれなければ見落としがちなところがいくつもあった。
オーフィスが時々檄を入れてくれなければ気持ちが折れていた。
レイト――ゼロの不器用な優しさがさらなる活力をくれた。
そして、レジェンドがいなければ自分はこんな戦い方など思いつきもしなかった。
大先輩達がいなければ自分の中に眠る力にも、技の知識がない事にも気付けなかった。
何より今、自分を信じて応援してくれている者達がいなければ、こうして再び立ち上がる事が出来なかった。
――だから。
「この
そのゼットの叫びを聞いた者達は、不可思議なものを見た。
大技を繰り出さんとするゼットに、ウルトラセブンのアイスラッガーに似たトサカを持った半透明の筋肉隆々な人物の姿が重なり、それに続くようにかの鉄騎超人ブラスターブレードの姿、そしてウルトラマンレジェンドの姿が重なった瞬間、ゼットの身体が一瞬強く輝く。
今、
「ウオオオォォォ!!」
本来のバスターよりも早く、加速しながら落下していくゼット。これがもう一つの違い、ウルトラ戦士の持つ飛行能力の逆利用。つまり反重力ならぬ加重力を発生させてより落下時の威力を増加させダメージを与えるための技術。
先の念力固定で安定性を、そしてこの加重力落下で威力を増した、ゼットの改良版キン肉バスター。
『叫べ、ゼット!!お前の
「ゼスティウム!!
バスタァァァァァ!!!」
ドガアァァァァァン!!!
ゼットは尻餅をつく体勢で大地に激突し、ゴブニュはその衝撃によって首折り・股裂き・背骨折りを同時に食らう。
機械であるため痛覚が存在しなかったゴブニュだったが、ゼットにスピニング・トゥ・ホールドから始まる一連の技を各所に極められていたゴブニュの身体は既にフレームレベルで限界に達しており、直前のイグニッションラリアットで崩壊寸前であった。
そして極めつけのこのゼスティウムバスターが起爆剤代わりとなり、火花を出しながら全身にヒビが入り点滅していた頭部のランプが消え無抵抗になる。
そんなゴブニュを拘束していたウルトラ念力と両足を解放すると、ゆっくりとゼットの後方へ倒れていき……
轟音と共に大爆発した。
ゴブニュの爆発に飲み込まれたゼットに対して悲鳴を上げる声が聞こえたが、それもすぐに収まる。
その爆発が沈静化していくと同時にその中からゆっくりとゼットが立ち上がり、その無事な姿を見せた。
そして静かに……しかし堂々と右手を握り拳のまま天へと掲げ……
「ジュゥアァァァッ!!」
高らかに勝利の雄叫びを上げた。
これを皮切りに遂に各所から大歓声が上がる。
ウルトラマンゼットは、ベリアルの援護やウルトラメダルの力を借りつつも単独で強敵・ゴブニュ(オグマ)を撃破したのだ。
(皆のおかげで俺は真の初勝利を手に出来た……超師匠、ゼロ師匠、皆……そして大先輩の方々、本当にありがとうございました!!)
自分の為に尽力してくれた者達に心の中で多大な感謝を述べるゼット。
そんな彼を、レジェンドと共に戦った『超人』の先達が笑顔で見守ってくれているような気がした。
〈続く〉
サブタイの元ネタよろしく、ゼットの逆転劇のシーンではハッソマッソを聴きながら読んで頂けたら幸いです。
なお、どっかの伝説が扮していた鉄騎超人、まんま宇宙の騎士の一人がブラスター化した姿です。あれがリングコスチューム。
超人っぽくて全身隠れて仮面(マスク)付きでCV森川さんなら使うしかない!とこうなりました。後悔はしていない。
余談ですが某シリーズ二世にてレジェンドとノア(の中の人)が共演してた事を思い出した。
それではまた次回。
二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?
-
真ゲッタードラゴン(大決戦版)
-
真・ゲッター1(スパロボα仕様)