ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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お待たせしました。
久々にウルトラ六兄弟、他ウルトラ戦士の登場回。
あの兄妹も本作に染まりきって初登場です。


それでは本編をどうぞ。


ゴーデス戦後の各勢力

 さて、前回とは違い今回はウルトラ戦士が属する光の国、銀河遊撃隊を中心に三大勢力以外の現状を見ていこう。

 

 

 

 

 ――M78星雲・光の国――

 

 

「そうか、遂にやってくれたか」

 

『ああ。お前の孫でタロウの息子のタイガやセブンの息子のゼロ、俺の息子のジードも大層な活躍だったぜ。特にタイガは新形態に新装備まで引っさげて復活したからな』

 

「……復活?」

 

 

 ウルトラの父はウルトラ六兄弟も伴ってベリアルからの通信を受けていた。

 そんな中、ベリアルが言った単語にタロウが食いつく。

 

 

「ベリアルさん、タイガが復活って何ですか、何があったんですか!?マイサンタイガに一体何がァァァ!!」

 

「落ち着けタロウ!今こうして普通に通信しているということはタイガは無事だということだ!」

 

『あー……いやな、ゴーデスに一度仮死状態にまで追い詰められて』

 

「グゥォオオオオデェスゥゥゥウウウ!!!」

 

 

 怒りのあまりタロウがウルトラダイナマイト状態と化した……いやソレ寿命二年縮まるけど大丈夫か?

 と思ったがレジェンド効果で体力の消耗のみになっていた。

 

 

『すまねえ、言うんじゃなかった』

 

「いやむしろ黙ったままの方が悪化していただろう。とりあえず落ち着けタロウ!そのままだとタイガに嫌われるかもしれんのだぞ!?」

 

 

 

 

 

「……チーン

 

 

 

 

 

「「「「「タロウー!?」」」」」

 

『効き過ぎだろ!?どんだけ親バカなんだよ!』

 

「いや、タイガの訓練生時代に『自分の息子だからと言われてほしくない』と厳しくした反動というか、宇宙警備隊に所属してくれるかと思ったら銀河遊撃隊に行ってしまって寂しくなってしまったからというか……」

 

『その点、セブンは笑顔で送り出したよな』

 

「我が子が晴れ舞台に上がったのだから、普通はそうなのだろうが」

 

 

 セブンとタロウ(とついでに自分達)の温度差をしみじみと実感しつつ、一先ずスン……なタロウを放置して各種報告に移る。

 

 

『師匠の右腕からこっちにも礼が来てな、ゴーデスの奴は身体作られた挙げ句小さくされ、その状態で地獄の最下層に呪い付きでブチ落とされたそうだ』

 

「ああ、彼か。何となく目に浮かんでしまうあたりさすがお師匠の懐刀というべきか」

 

『亡者に容赦ねえからな、あいつ。逆に生きていようが外道に容赦ねえのが師匠だ。ついでに亡者にも容赦ねえあたりあいつより遥かにやべ……いや、外道以外にも容赦なかったわ師匠』

 

 

 主に被害者でもあった弟子の二人は頷き合って終わりにする。

 ゴーデスは地獄行き、それでいいのだ。

 

 

『それから師匠達の異世界行きの日程も大体決まった。確か世話焼いてる連中の終業式終わって最終準備してからとか言ってたから、遅くとも一週間以内にはこっちを立つ予定だな』

 

「空の世界、でしたね」

 

「聞いた限りでは空路が当たり前らしい。我々みたいな単独で飛行可能な者はだいぶ重宝されるようだ」

 

「それだと海を始めとする海路は?」

 

『大きい湖とかは割とあるが、あっちに行ったアグルからの情報じゃあいつの知る限り島単位で海があるのはアウギュステ列島とか言う所だけらしい。もっとも別の空域には行ってねえとか何とかでそこ以外にあるかもとは言っていたがな』

 

 

 時間の流れが違うとはいえ、遊撃隊には我夢や藤宮から定期的に報告が届く。

 それらに一通り目を通していたベリアルはそういった知識も交えて彼らに説明する。

 

 

『……それからそっちで悪い知らせがある』

 

「悪い知らせ……?」

 

『アグルの奴が向こうで得体の知れない怪獣や、根源的破滅招来体の送り込んだ金属生命体とやり合った。現地の守り神……星晶獣リヴァイアサンとかいうのと共闘してブチのめしたそうだが、連中の手はあっちにも伸びていると考えた方が良さそうだ。現に怪獣の方には金属生命体は手出ししなかったらしいからな』

 

 

 ベリアルの報告にウルトラの父や、復活したタロウを含むウルトラ六兄弟は驚愕する。

 そしてさらに凶事は続けられ――

 

 

『もう一つ、そっちやゴーデスとは別にトレギアの奴が見つかった。詳しい居場所は不明だが、相当イカれた連中と組んで色々やってるようだ。こないだのゴーデスと同時期に師匠らの仮住居がある町を襲ったのもあいつらの派閥だとよ』

 

「!!」

 

(ったく予想通りの反応しやがって)

 

 

 これにはタロウが酷く動揺した。

 ベリアルとしては元々予想しており、タイガが宿主としている一誠……赤龍帝と対立している白龍皇を連れ去ったのもトレギアだということは伏せている。

 それは明確にタイガとトレギア……息子と親友が敵対し、狙っているという証明になるからだ。

 隠すのも遅い気はするが、これだけならまだタイガを狙っているとは思わないだろうというベリアルの細やかな心遣いであった。

 

 

「……そうですか……トレギアが」

 

『ウチのお人好しな鬼畜師匠は無理を承知で連れ戻す気だとよ。だから絶望すんじゃねえぞ、タロウ。その師匠に鍛えられたゼロもぶん殴ってでも正気に戻すと意気込んでるからな』

 

「お師匠の表現が色々とハチャメチャだな」

 

『仕方ねえだろ、あれをどう表現すればいいんだっつーの』

 

「違いないな」

 

『だろ?』

 

 

 最初は悩んでいたタロウだが、一度は悪の道に落ちたベリアルも今はこうして父と笑い合い、銀河遊撃隊総司令官として平和のために尽力し息子と冒険したりしている。

 ならば次は自分の番だな、とタロウは気持ちを新たに一人頷いた。

 

 

「……ではグレートらが戻って来た後、次に向かうのは私が――」

 

「「「「「「いや、お前は駄目だ」」」」」」

 

「何故に!?今の流れで完全に私が行く的な雰囲気じゃないですか!?兄さん達に父さんも!」

 

 

 トレギアについて綺麗に纏まったのはいいが、ここにきて別の事でまた揉め出した。

 

 

「だってお前筆頭教官だろ」

 

「そこはセブン兄さん代わって下さい」

 

「何で俺なんだ。俺は元恒点観測員だぞ。俺の父親が勇士司令部の長官だからって俺がエリートとは限らんぞ!」

 

「いや、ウルトラ六兄弟とか言われてる時点で我々はそう捉えられても仕方ないのでは?」

 

「そう!正にジャック兄さんの言う通りですよ!」

 

「というわけでヒカリと私の父のパイプ役が出来て、かつシェムハザの心労を軽減する為に私が向かいたいのですが」

 

「そこでサラリと自己主張するなジャック!?」

 

「とは言いますが、ゾフィー兄さんがいなくなってからアザゼルがやらかしまくってシェムハザはその火消しに西へ東へと大変だったようですよ」

 

(アザゼルううううう!?)

 

 

 ゾフィーは心の中で親交を深めた友にツッコんだ。

 確かに当時アザゼルの所業についてジャックに愚痴っては慰められるシェムハザを何度か目撃した事はあったが、まさかそこまでとは。

 

 

「父さん、一時的でいいので頃合いを見て私を行かせてくれませんか?順調に成長しているゼットを一目だけでも見ておきたいので」

 

「そうだな。検討しておこう」

 

「「「「おいエース(兄さん)!?」」」」

 

『あれだ、エースはお前らと違ってスポット参戦的な感じだからだろ。少しはマンの奴を見習え』

 

「いや、私はさしあたってすぐ訪問する理由も無いのですが。天界はスペリオルドラゴンがミカエルと共に良い方向へと改革しているようですし」

 

(あー……なるほど。そういやマンとエースは天界で世話になったんだったな。現状三大勢力で一番マシな進み方してる連中だから焦って突撃する必要も無いってわけか)

 

 

 他の四人は、悪魔→派閥がごちゃごちゃしている上に問題が多い、堕天使→トップが自由過ぎて副総督以下が苦労して部下も勝手に動く……と、確かに天使に比べて些か面倒な勢力で世話になっていた。

 冥界にはダンブルドアが赴く事になってるし、今回の件でヒカリも堕天使側へ向かったので幾分状況は変わると思うが……。

 

 

『まあ、何だ。あとは帰還してくる奴らを含めてそっちで話し合って決めてくれ。タイガ達とその宿主の事を考えてレオや80、メビウスは現状維持だろ?元々80は常駐確定してたけどよ』

 

「そうだな。正直、今行っている誰かを残すか、マンとエースどちらかを行かせた方が良い気がするんだが」

 

『ゾフィーはどうなんだよ?』

 

「そのアザゼルという人物のブレーキ役ぐらいにしかなりそうにない上、宇宙警備隊隊長までいなくなるのはマズい」

 

『そりゃそうだ』

 

 

 ウルトラの父による、ある意味前半も合ってそうなゾフィーの評価にベリアルは苦笑しつつ「じゃあな」と通信を終え、ウルトラの父とマン、そしてエースは次は誰が行くかで言い争っている他の四人に頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 ――ガーディアンベース――

 

 通信を終えたベリアルは、休む間もなく次の予定を立てている。

 

 

「ティガは異世界で任務の真っ最中、ダイナとオーブは一度こっちに戻して各種報告をさせた後、休暇を与えて他の任務……っつーかオーブは自由にさせるか。最近あいつ師匠の周り彷徨いてるし。そんでガイアとアグルは引き続き空の世界での活動を続行して……問題は留守番役としてダイブハンガーに誰を送るかだな」

 

 

 誰にするか……と書類片手に頬杖をつき悩むベリアルの元へある人物がやって来た。

 

 

「ベリアル総司令、今大丈夫だろうか?」

 

「お、ジャスティス。どうだったデラシオン側の返答は」

 

「ああ、この件について協力を惜しまない、とのことだ。規模が規模だけに宇宙正義として見過ごせないと」

 

「だろうな。【エリア】レベルじゃ師匠達だけだと手に余る。今は落ち着いちゃいるが何かの拍子に彼方此方で爆発するんじゃねえかとヒヤヒヤしてたところだぜ、『弾かれる』って現象はよ。不幸中の幸いかは知らねえがウルトラマンはその対象にならねえみたいだから他所のウルトラマンがこっちに来る事が無いのは救いだがな」

 

 

 レジェンドがノアやキングと共に現在も調査中のこの現象に関して、調査範囲の拡大のためにデラシオンへと出していた協力要請は問題なく可決されたという。

 

 

「これでちったぁ肩の荷が下りたな。あとはこっちか」

 

「それは?」

 

「今度暫く師匠達がここ以外の世界で修行も兼ねて旅すんだろ?その間の留守番役でダイブハンガーに降ろす奴を選定してるんだが……」

 

 

 色々と癖がある奴ばかりだからな、と続けてベリアルは書類を机に置いた。

 

 

「まあ癖云々は俺が言えたセリフじゃねえけどな」

 

「私も自分の事ながら面倒な性格と自覚しているが……」

 

「ゼロやジードがいるとはいえタイガ達やゼットをそのままには出来ねぇし。ダイナにしろオーブにしろ大仕事終えて戻ってくるんだから休暇の一つもくれてやらにゃマズいだろ。マジでどうすっかな……」

 

 

 そんな時に人間用の扉が勢いよく開き、ある二人が入って来た。

 

 

「ならそこは俺達!」

 

「湊兄弟にお任せあれ!」

 

「「チェンジで」」

 

「「あれ!?ってジャスティスさん!?」」

 

「気付くの遅ぇよ」

 

 

 湊カツミと湊イサミの通称ルーブ兄弟(別名・カップラーメン事件の元凶)。

 そしてそれを追いかけて来たのが出自にちょいと訳ありな湊家の末っ子の湊アサヒ。

 

 

「カツ兄もイサ兄もベリアルおじ様に迷惑をかけちゃ駄目です!」

 

「いやその気遣いは嬉しいけどよ、せめて総司令かさん付け程度にしてくれ」

 

「え?駄目ですか?おじ様」

 

「最初は問題なかったんだがな、最近ケン以外の同姓同年代が血涙出して俺を見てくるから怖ぇんだよ」

 

「「「確かにそれは怖い」」」

 

 

 こてん、と首を傾げるアサヒに申し訳なさそうに言うベリアルと、その理由に納得してしまうイサミとカツミ、そしてジャスティス。

 実際、過去色々あったとはいえ現在はウルトラの父と同格ながらも気さくで話しやすいなど、光の国でのベリアルの人気は高い。

 加えてグリージョ……つまりアサヒの人気も高いため二重の意味でベリアルは嫉妬されているわけだ。

 主に独身から。

 

 

「ったく今更俺は結婚もクソもねえってのに何で独身連中から代わる代わる嫉妬絡みの模擬戦挑まれなきゃならねーんだっつーの」

 

「悪循環だよねえ。結局そこでベリアルさんが格の違い見せつけてベリアルさんの人気が上がるだけなのに」

 

「……これ総司令とトレギア以外に闇堕ちウルトラ戦士が出てくる流れじゃね?」

 

「おいやめろカツミ。ノアかキングの【エリア】の俺はそうやって闇堕ちした気がする上にこっちでそんな理由で悪トラマンが現れたら俺はどんな顔すりゃいいんだ」

 

「笑えばいいと思うよ」

 

「よしイサミお前ちょっと黙っとけ」

 

「こういう時こそハッピーなことを考えるんです!ハッピーは全てを幸せにします!」

 

「何だろう凄く良い娘なのは分かるけど別の意味で暴走しそうっていうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツッコミ足んねーよ!!

 

 

 さすがレジェンドの弟子、やはりツッコミ属性なベリアルであった。

 この場で割と常識人なジャスティスはツッコミ力不足というか……それはさておき。

 

 

「で、何で駄目なんですか総司令?」

 

「まあちゃんと理由があってな。お前らはコンビで真価を発揮するタイプだろ、タイプチェンジ然りルーブ然り」

 

「うん」

 

「だとしたらトレギアの奴はそこを突いてくる。あいつは頭脳派だからな、弱点を当たり前のように狙ってくるぞ。それに対抗するには単独で戦闘能力が完結してる奴の方が望ましい」

 

「つまりTKG三羽烏の方々みたいな人ですね!」

 

「ああ、そう……ちょっと待てそれ言うならTDG!TKGは卵かけご飯の略だ!いやあいつらもソレ好きだけどな!」

 

 

 これアサヒも天然ボケタイプじゃねーかとベリアルは額を抑えるが、そこに救世主と呼ぶべき者達が駆けつけた。

 

 

「何かベリアル総司令がやたらツッコミしてる声が聞こえてきたんだけど」

 

「……ってまたお前らか湊三兄妹」

 

 

 礼堂ヒカルとショウ――即ちウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリー。

 二人はそれぞれが単体で戦力として完成しており、ビクトリーの方はナイトティンバーによる強化形態もある。

 ギンガの方はタロウの助力が必要だが、別に強化形態にならずとも相当な戦闘力があり、ゼロ不在時はニュージェネレーションのまとめ役となっている。

 

 

「ちょうどいい。ヒカル、お前師匠達が異世界に行くのと入れ替わる形でダイブハンガーに滞在出来るか?」

 

「え?別に構わないですよ」

 

「俺はいいのか?」

 

「ショウの方はまだこっちだ。一応宇宙警備隊からも滞在赴任する奴が来るだろうし、ここの方が地球上で何かあった時ピンポイントでそこに向かえるからな」

 

「なるほど、理解出来た」

 

「お前らとは話が早くてホント助かるぜ……」

 

 

 やっと一息つける、とベリアルがぐったりすると、さらに別の声が聞こえてきた。

 

 

「あの、総司令官」

 

「あん?どうした大地……とエックス」

 

「実はエッ『私はいつになったら出番が来るんですかベリアル総司令!あまりに暇過ぎてスペシャルファイティングポーズを考え始めてしまってるんですよ!』……クスが……こんな感じで」

 

「あー……今度師匠達んトコにショートステイさせる奴の候補に入れとくからそう喚くな。しかもエックス、お前は特戦隊か何か作る気か」

 

『いえ、機甲戦隊です』

 

「メンバー的にあとギンガとビクトリーかよ」

 

「え、俺ら!?あれか、絆の力お借りします的な!?」

 

「そんなポーズしたくないぞ!やるならゼアス先輩かナイス先輩に頼め!」

 

「ショウ、お前もサラリと二人をギャグ担当扱いすんな」

 

 

 ゼロ達はいないものの、ニュージェネレーションが揃ってワイワイ始めてしまう。

 仕事が一段落していたからいいものの、溜まっていたりしたらどうなっていたやら。

 

 

「そういやゼット用のプラズマスパーク・ブレスがまだ出来ねぇな。まあ、あいつの成長度合が予想以上に早いって理由だし、師匠には引き続きあいつのお守りを頑張ってもらうとするか。さーてティガはどんな様子かなっと」

 

 

 そう言いつつ、騒ぐニュージェネレーションとそれを眺めるジャスティスを放置してティガの様子をモニターに映そうとするベリアル。

 

 ガーディアンベースは概ね平和である。

 

 

 

 

 ――日本地獄――

 

 

「鬼灯様、ゆで卵の差し入れなのでーすよ」

 

「おや芥子さん。変わった差し入れですね。ともかくありがとうございます」

 

 

 仕事中の鬼灯の元に芥子が一風変わった差し入れを持ってやってくる。

 そんな鬼灯の背後では閻魔大王が犬神家の一族状態で床にぶっ刺さっていた。

 

 

「もしかしてまたサボりですかー?」

 

「ええ。悪魔将軍さんのところに来たサイラオーグさんやその眷属の方々のファイトを観るために抜け出そうとしたのでジャーマン・スープレックスでリングに上がった気分にして差し上げました」

 

 

 正確にはリングに上がってボコボコにされた気分(後半部分はガチ)にしたようだが。

 亡者どころか上司(仮)にさえ容赦ない第一補佐官である。

 そんな彼の所に訪問して来たのは芥子だけではなく……

 

 

「すまんが少々失礼させてもらうぞ、第一補佐官」

 

「これは珍しい。悪魔将軍さん、どうかしましたか?魔闘地獄も最近各方面で好調なようで、おかげさまで地獄も活気づいていますし無茶難題でなければ配慮しますが」

 

「なに、レジェンドが異世界修行とやらに行くタイミングで我々も異世界修行とやらをしてみようと思い立ってな。案ずるな、ファイトの予定はずらす気など無い。私を含む何名かが入れ替わりで魔闘地獄の番を行う」

 

 

 まさかの悪魔将軍が訪問し、これまたまさかの異世界修行の話を持ち出してきた。

 これが予定書だ、と差し出してきた分厚い書類を鬼灯は突っ返す事なく受け取り、ふんふんと頷きながら捲っていく。

 

 

「……なるほど、修行のマンネリ化を防ぐと同時に、壁にぶち当たった時に外部から刺激を与えるような意味での異世界遠征修行ですか。地獄各所への協力要請も根回し済み……さすがですね。ここまでしっかりしているなら問題なく許可出来ますよ。後ろでこっちにケツ向けて地面に刺さってる役立たずに見習わせたいくらいです」

 

 

 鬼灯と悪魔将軍は相変わらず犬神家状態の閻魔大王を見て、同じことを思う。

 

 

((コイツ寝てるんじゃないだろうな?))

 

 

 悪魔将軍は黙って閻魔大王へと近づくと、片腕からソードをジャキンと出すと、それを……

 

 ブスリ

 

 

「アッ――!?」

 

「フン、たぬき寝入りか」

 

「あ」

 

「たぬき寝入り……たぬき……タヌキ……タヌキ死すべしぃぃぃぃ!!」

 

「ちょっ……待っ……ギャアアアアア!?」

 

 

 何気なく言った悪魔将軍の一言がトリガーとなってバーサーカーモードを発動した芥子にボコられる閻魔大王を一瞥し、再び先程の話に戻る二人。

 

 

「ではこの予定書通り、レジェンド様達とは別の世界で、という事で間違いないですか?」

 

「うむ。偶然会ってしまうかもしれんがその時はその時だ。サイラオーグを始め見どころのある連中だからこそ様々な経験を積ませるべきだろう」

 

「確かに。今の悪魔では珍しく好感の持てる若人ですからね。代わりに彼と正反対の……誰でしたっけ?」

 

「ゼファードル・グラシャラボラスだ。第一補佐官もあんな小物の名など覚える気もないか」

 

「ああそうそう、そんな名前でした。まあ単なるチンピラの上位種程度ですし……先日こっちに押しかけては悪魔将軍さんを舐めてかかった挙げ句、眷属諸共全滅して強制送還されていたので印象には残ってますがね」

 

 

 ゼファードル・グラシャラボラス……若手悪魔の一人だが、悪魔将軍いわく『サイラオーグと比べるのも馬鹿らしい』と吐き捨てられてしまった哀れな悪魔である。

 悪魔将軍と彼による修行を馬鹿にしてきたことでサイラオーグやその眷属は当然烈火の如く怒ったのだが、それを制し悪魔将軍が直々にフルボッコにし、鬼灯がしたためた各種令状付きで冥界へ送り返した。

 

 

「……近々荒れるな、冥界は」

 

「もうじきダンブルドア校長が冥界で最後の説得を行う予定ですが、おそらく殆ど変わらないでしょう」

 

 

 その後の結果は分かりきってますし、と鬼灯は続けると悪魔将軍の提出した書類に認印を押し、控えを悪魔将軍に返して彼が退出したことを確認した後、自分の仕事に戻る。

 

 背後で芥子による閻魔大王折檻の爆音をBGMにしながら。

 

 

 

 

 そして、空の世界――

 

 

「カタリナ・アリゼ中尉……本日付けで転属を言い渡す。新たな配属先は――」

 

(やはり二人と関わり過ぎたのがまずかったか……すまない……ルリア、アマリ……願わくば、君達を外の世界へと連れ出してくれる『光』が――)

 

 

 一人の女騎士の願いは、やがて伝説の光と蒼の少女、藍柱石の術士を深く結び付けることとなる。

 

 

 

〈続く〉




やはり初代ウルトラマンことマン兄さんはまともな御方でした。
湊兄妹、思ったより動かしやすかった。
イサミの巫山戯っぷりやアサヒの天然ぶりに比べるとカツミがやや控えめですが、常識人(?)枠と考えればまあ納得。

そしてラスト、いよいよ彼女らの名前が出てきました。
彼女らも第二部序盤で早速登場するのでしばしお待ち下さい。


それではまた次回。

特別編で見てみたいのは?

  • 『それは、星を救う物語』の続き
  • 米花町にホームズとモリアーティ来訪
  • 特殊特異点にAチーム+α送り込み
  • リリなの世界に蛇倉苑メンバー出張

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