ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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大変お待たせしました。
仕事柄、月末月初忙しくなるため中々更新出来ず申し訳ありません。
大分長くなりましたが、今回も詰め込みまくってます。


それでは本編をどうぞ。


帰ってきた男たち!!

 満身創痍のウルトラ騎空団、そして光を失ったタイガとトリガーという絶体絶命の状況の最中、人々の諦めぬ心は無数の金色の光となって『光の道標』を成し、もう一人の超古代の巨人――ウルトラマンティガを空の世界へと呼び寄せた。

 

 

「はわ!?アマリ、あのウルトラマン……トリガーに似てます!」

 

「もしかして、トリガーの御先祖様とか……」

 

『御先祖様かどうかはともかく、あのウルトラマンはティガと言うそうです。その実力はレイトさんが隊長を務める銀河遊撃隊でも最強クラスだと』

 

「え!?ナイン、それ何処からの情報!?」

 

『レジェンド様とゼットさんからです』

 

 

 情報元が信憑性抜群のおかげで一発で納得してしまうルリア、アマリ、千歳。

 そのティガは、彼の身長の二十倍以上もあるモネラマザーに対し構え、臆することなく敢然と立ち向かっていく。

 

 まず狙うは、トリガーの救出。

 

 触手から放たれるヴァーミリオンフレアを巧みに避けながら、あっという間にトリガーが捕らえられた腹部の正面まで到達。

 その勢いを殺さぬまま、外骨格状の檻を粉砕し、トリガーが脱出可能な状態にすると、直感的に地下からティガを捕縛しようとした触手をバク宙で回避。

 着地したティガは額のクリスタルとカラータイマーにエネルギーを集中すると、それをトリガー分け与えるように一直線に放射した。

 

 それによってトリガーの目やカラータイマーは光を取り戻し、同時に意識も復活する。

 

 

(僕は……あれは!)

 

 

 目の前に存在するティガに驚きつつも、邪魔をしていた檻が破壊されていることに気付いたトリガーはパワータイプの持つ剛力で強引に拘束していた蔦を引きちぎり、檻の残っていた部分を破壊しつつ、モネラマザーから脱出した。

 すると、ティガがテレパシーでトリガーに語りかける。

 

 

『身体は大丈夫そうだけど、まだやれるかい?』

 

『は……はい!でもまだタイガさん達が……』

 

『心配ないよ』

 

『え?』

 

 

 ティガのテレパシーを聞いたトリガーはどういうことか尋ねようとするがその直後、空に黄金の光が現れるとその中から一機の機動兵器が飛び出してきた。

 

 

 

 

 

「超師匠!アレはまさか……!」

 

「さすがに宇宙世紀ベースでシミュレーターを使っているお前ならすぐ分かったか。そう、お前の思っている通りアレはGクルーザー、ティガ……ダイゴの機体であり、パートナーでもある」

 

 

 そう、飛び出してきた機体は先日ある世界を旅立ったGクルーザー……レジェンドの言ったようにティガが来たということは、必然的にパートナーたるあの機体も来るということに他ならない。

 

 そしてヒリュウ改から全員に向けて通信が入る。

 

 

『総員、あの光から高エネルギー反応!!気をつけて下さい!!』

 

「いや、その必要は無い」

 

「はい?」

 

 

 ただ一人、レジェンドは目を伏せ口元を緩めながら呟き、ゼットが聞き返せば――

 

 

「英雄のお帰りだ」

 

 

 

 

 

 グランサイファーの甲板ではティガがトリガーにエネルギー与えて復活したことに沸き立っていた。

 

 

「なあなあ!ムサシの兄ちゃんにアサヒの姉ちゃん!あのトリガーに似たやつは何なんだ!?さっきから二人ともすげー喜んでるしよぉ!」

 

「ビィ君、あの人は僕達にとっても憧れの人なんだ」

 

「銀河遊撃隊に所属してる私達だけじゃなくて、光の国でもすっごい有名な方なんですよ!」

 

「二人がそれ程力説する御仁なのか……!」

 

「まあ、グランをあっさり救出して復活させるぐらいだしねぇ。あれで無名はありえないよ」

 

 

 カタリナも驚くが、うんうん頷きながらよりゴツくなったロケットランチャーをスタンバイしてるジータに一同はドン引きしている。

 

 

「いやジータ、お前なんてモン担いでんだよ……」

 

「何言ってんのビィ、次はタイガ救出でしょ。あの可愛くないゆぐゆぐモドキの腹にデカイのブチ込まなきゃいけないんだから」

 

「ジータちゃんって男女問わず姐さんとか呼ばれそうだよね……」

 

「でもムサシさん、地上でも流さんがレールガン構えてますよ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

 アサヒに言われて地上を見てみれば、オリジンになれないならとばかりに火野え……もとい、前宮流がいつの間に持ち込んでいたのか、大型レールガンを構えてモネラマザーに狙いを定めている。

 

 

「いやいやいや!?一応あの人もウルトラマンだろう!?何故ジータと同じ思考に!?」

 

「変身出来ないからじゃない?諦めたらそこで試合終了だよ」

 

 

 フェリのツッコミにジータは普段の調子で言い放ち、ロケットランチャーを構え直すが……

 

 

「……あれ?」

 

 

 ジータが気になって見た黄金の光から赤い光が飛び出し、一直線にモネラマザー……いや、捕らわれたタイガへと突き進んでいく。

 それは徐々に人の形を成していき、その姿を見たある者は驚愕し、ある者は混乱し――ある者は笑顔になる。

 

 

「ちょっ……!?」

 

「おい、ありゃあ……!」

 

 

 

 

 

 笑顔になった者達――言わずもがな駒王町、正確にはダイブハンガーで生活していた者達だ。

 

 何故ならその光の正体は――

 

 

「……ダイナ……!ウルトラマンダイナだ!」

 

「ちゃんとプラズマスパーク・ブレスもある!もう片方にも何か着けてるけど……」

 

「じゃあ、あれは!」

 

「はい、本物のダイナ……アスカさんです」

 

「一誠やタイガが兄と慕ったあの人が……彼らを助けに来てくれたのね!」

 

 

 リアスが涙しつつも笑顔になる。

 彼女の言葉を体現するかのように、今のダイナはストロングタイプ……かつてモネラ星人と戦った時の姿であり、同じくティガに助けられた時の姿でもある。

 ダイナは一切スピードを落とさず、そして脇目も振らずタイガの捕らわれた檻へと飛ぶ。

 

 レジェンド、ティガに続き、ダイナというモネラ星人にとって宿敵とも言える三人のウルトラマン(一人は生身)が集結したこともあり、モネラマザーはタイガ救出を妨害せんとダイナへとヴァーミリオンフレアを連射する。

 しかし、モネラマザーは今のダイナを甘く見ていた。

 ヴァーミリオンフレアが何発か直撃したにも関わらず、ダイナは怯むことも速度を落とすこともせず、むしろグングン加速してくるのだ。

 

 

「シュワッ!!」

 

 

 両腕を伸ばした飛行体勢から右手を突き出すような体勢、即ちパンチの構えになり、ダイナ……いやアスカ持ち前のド根性によって檻に当たる直前で更に一気に加速し、檻を木っ端微塵に粉砕する。

 その衝撃たるや大地に根を張ったモネラマザーが大きく揺れてしまうほどであり、混乱に乗じてダイナはタイガを拘束している蔦を容赦無く引きちぎり、プラズマスパーク・ブレスとは別のもう一つのアイテム――ウルトラコンバーターをタイガの腕に装着する。

 コンバーターに充填されていたエネルギーが急速にタイガへと供給され、タイガの目とカラータイマーに光が戻った。

 

 

「う……お、俺は……」

 

「しっかりしろタイガ!闘いはまだ終わっちゃいないぜ!!」

 

「……!!ダ……ダイナ兄さん!?」

 

『アスカ兄さん!?マジモン!?』

 

「マジもマジだ!マジ無敵のアスカ様もといダイナ様だ!」

 

 

 タイガの肩を叩きながらサムズアップをするダイナを見た一誠とタイガは確信する。

 紛れも無く目の前にいるのは本物のダイナだと。

 

 

「よく頑張ったな。モネラ星人の奴ら、俺を次元牢獄に幽閉しただけじゃなく、その状態の俺からエネルギーを奪い取って、それを素に俺のコピーなんて造りやがったんだ!そいつもここら辺にいそうなんだが……」

 

「やっぱり……!それなら俺達が倒しました!」

 

「マジか!?」

 

『マジっす!』

 

「強くなったなあ!超ファインプレーだぜ!」

 

 

 和気藹々としている彼らだが、破壊したとはいえまだここはモネラマザーの檻の中。

 混乱から立ち直ったモネラマザーがM2アブゾーブサンダーを放とうとしてきたが、ストロングタイプのダイナと赤龍帝の籠手でブーストをかけたタイガが息の合ったダブルパンチを檻の中でモネラマザーにブチ込んだ。

 

 

「「『オォォォラァァァァァ!!!』」」

 

 

 たった二発のパンチなのに、内側からに近い攻撃ということもあってモネラマザーは文字通りの大打撃を受けた。

 そのスキにダイナとタイガは脱出し、ティガとトリガーの隣へ並び立つ。

 

 

「よし……!」

 

「そういえばダイナ兄さん、さっき次元牢獄に幽閉されてたって言ってたけど、どうやって脱出を……」

 

「おお、それはな……」

 

 

 

 

 

「きゃあっ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

 

 

 

 

 女性の悲鳴が聞こえたかと思えば、声のした方を向くとソウルゲインを吹っ飛ばしたウルティノイドゼロが四人のウルトラ戦士達へと構えていた。

 

 

「ウルトラマンティガ、そしてウルトラマンダイナ……ウルトラマンレジェンドと並び最優先排除対象。そして……ウルトラマンダイナ、何故次元牢獄から逃れられた」

 

「何でって?タイガにも聞かれたし教えてやるぜ。何故も何もお前が原因なんだよ!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 ダイナが告げた事実にタイガらだけでなくウルティノイドゼロ自身も驚きを禁じ得ない。

 自分が原因とはどういうことかと問い詰めようとするも、ダイナが一足先に先手を打つ。

 

 

「意味が分からないなら直接聞いてみりゃいいだろ?あっちの方な!」

 

 

 

 

 

 地上側で一悶着起きている頃、ヒリュウ改では新たに黄金の光から高エネルギー反応が発せられていることを感知。

 

 

「ミツバ艦長、空の黄金の光から再度高エネルギー反応……え!?」

 

「どうしました!?」

 

「そんな、この波長は……でも……ううん、可能性は……」

 

 

 混乱していた命だが、その混乱は絶望や焦りからではない、むしろその逆だ。

 

 

「この高エネルギー反応の識別は――」

 

 

 

 

 

 ダイナが告げ、命が見たエネルギーの識別――それは他の者達もそうだが、何よりもウルティノイドゼロにとってイレギュラーが過ぎた。

 

 黄金の光より現れたのはダイナであった赤い光とは真逆の青い光、それが地上に近付くと一瞬で巨人、即ちウルトラマンの姿になってソウルゲインの、そしてウルティノイドゼロの前に降り立ったのだが……その姿が衝撃的だった。

 

 まるでジャケットを着ているかのような上半身を始め、外骨格に覆われたとも言える外見と、光が示した青と紺がメインの体色、何より――一度見れば忘れないであろう、特徴的なその『目』を持つ顔。

 

 

「嘘……あれって……!」

 

「姿が全然変わってるけど、あの顔……!」

 

 

 黒歌とロスヴァイセが他の者達の心を代弁したように口を開いたが、彼女ら以上に衝撃を受け、その表情が花開いたように涙しつつも笑顔になる人物がいた。

 

 当然それは『彼』に憧れ、慕い、そして兄と呼ぶようになった少年。

 

 

「ギャスパー、あれは……!?」

 

「バーン、あの人は――」

 

 

 万感の思いを込め、ギャスパーは『彼』の名を呼ぶ。

 

 

「リク兄さん……ウルトラマンジードです!!」

 

「フゥアッ!!」

 

 

 ウルトラマンジード・ギャラクシーライジング――ウルティノイドゼロに次元断層に放流されたはずのジードが、新たな姿と力を手に入れ空の世界へと帰ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 全身の各部を一瞬強く発光させ、周囲にデジタル光のようなものを発生させつつジード・ギャラクシーライジングは構えを取り、ウルティノイドゼロへと粉塵を巻き上げながら大地を駆け抜け向かっていく。

 

 

「デアッ!!」

 

「ヌウッ!?」

 

 

 ジードの先制攻撃を寸でのところで防御に成功したウルティノイドゼロだが、予想以上に攻撃が重く、そして早い。

 

 

「アアアアアッ!!」

 

「グゥアッ!?」

 

 

 連続ラッシュによってウルティノイドゼロの防御を崩し、ボディに何発も叩き込んだところでジードはウルティノイドゼロから回し蹴りによる反撃を食らい、よろけて背後を取られる形になってしまう。

 この機を逃すまいとヘッドロックをかけるウルティノイドゼロだったが――

 

 

「ギャラクシーカッティング!!」

 

「ガアッ!!」

 

 

 ジードの腕の突起部分が黄色く発光し、光の刃となった状態での両肘打ちがウルティノイドゼロに叩き込まれた。

 予想外の攻撃は威力抜群であり、拘束を脱したジードは気合を入れるかのように咆哮する。

 

 

「ウゥアァァァァァ!!」

 

 

 光の刃となった突起を利用し、怒涛の連続攻撃を仕掛けるジードと、それをまともに受け続けるウルティノイドゼロ。

 そんな光景を見ている彼を良く知る人物らは驚きと共に興奮を隠せない。

 

 

 

 

 

「あのリクが変身したというウルトラマン……強いぞ!」

 

「動きのキレが前より全然良くなってる……!たった数日と、新しい姿を得るだけであそこまで変わるものなの!?」

 

「忘れておるかもしれぬが、あの者の父親であるウルトラマンベリアルは歴史を書き換えんとした者と一対一で闘い、闘いの中で進化し見事勝利した程の実力者。その息子であるジードもまた同じような事を成そうと不思議ではあるまい」

 

 

 アルベールとカナエに、京都からの付き合いであるスカーサハが言う。

 ベリアルはエタルカオスとの死闘の果てにカオティックオーバーの姿を得て、エタルカオスを圧倒し正面から撃破した――そして、ジードもまた京都においてキリエロイドⅡと戦いの最中、シャイニングミスティックの力を手にして見事打倒した経験もある。

 やはり生まれが特殊であろうと血筋なのだろう。

 

 

 

 

 

「何故だ……!何故お前が……!」

 

 

 いよいよ余裕が無くなってきたウルティノイドゼロが焦りを含んだ声でジードへと問う。

 対してそんなウルティノイドゼロへ、ジードははっきりとした声で答えた。

 

 

「あの時、僕はお前の放った一撃で次元断層へと放逐された――」

 

 

 クリオモス島での戦い――そこでグランサイファーを庇い、ジードはディメンションゼロを受け次元断層へと放逐されたのだが、奇跡的にも放逐された先がダイナの幽閉されていた次元牢獄のある場所だった。

 次元断層に放り込まれたジードは勢いが弱まらぬまま、これまた偶然次元牢獄に激突。

 実はモネラ星人の作った次元牢獄、内部からの攻撃には滅法強かったのだが、場所が場所だけに見つけることが不可能に近いということもあり……外部からの衝撃に弱かった。

 これにより次元牢獄は崩壊し、ダイナは脱出。

 負傷していたジードを連れて一度ガーディアンベースへと帰還し、十分な治療と休息を終えた後、別の世界から戻ってきたティガを加えて三人と一機で空の世界へと向かったというわけだ。

 

 一応モネラ星人はこれにも対策を練っており、クリオモス島での一件以降この世界に外界から侵入されないよう遮断フィールドで次元断層に壁を作っていた。

 だが本質が光であり、三人中唯一突破出来る可能性があったティガがGクルーザーから出て先行する形でアーシアらが作った光の道標を通りこの場に顕現したことで遮断フィールドが弱まり、Gクルーザーによる強行突破を皮切りにダイナとジードもこちらへと来る事が出来た、というのが事の顛末である。

 

 そう、ダイナが言っていたようにウルティノイドゼロが放ったディメンションゼロが、ジードを次元放流させるどころかダイナを解放し、ジードに新形態・ギャラクシーライジングを得る機会を与えてしまったのだ。

 

 

「まさか、そんなことが……!?」

 

「ベリアル総司令に協力してもらって、ギリギリまで隠してもらってたんだよ。敵を騙すにはまず味方からってな」

 

 

 つまりベリアルがレジェンドに言ったという『ダイナが消息不明になった』――クリオモス島の事件後にレジェンドからウルトラ騎空団に伝えられたその情報は、ほぼ同じタイミングで『消息不明になっていたダイナが、ジードを連れて帰ってきた』に変わっていたということ。

 そしてそれをベリアルはダイナ達の頼みもあり、モネラ星人を欺くために敢えてレジェンドへ伝えなかった。

 

 結果はこの通り大成功。

 

 幾重にもモネラ星人が策を用意していたことは驚きだったが、レジェンド&ゼットを筆頭にタイガやトリガー、黒歌らの奮闘によってそれも粉砕。

 この世界に生きる者達が諦めなかったことでアーシア達の尽力も実を結び、ティガ達を空の世界へと呼び込めたことで遂に戦局が逆転し始めた。

 

 

「認めはしない……!お前達はここで朽ち果てさせる!」

 

「中途半端に難しく言ってるからか、ゼロのような迫力をまるで感じないな。ゼロなら『だったらお前ら全員まとめてブッ倒す!』ぐらい強く言い切るのに」

 

 

 ウルティノイドゼロに対してジードは逆に余裕が出てきている。

 何故ならギャラクシーライジングはギンガ・エックス・オーブのウルトラメダルを使用した強化形態であるがそれだけではない。

 この戦いに駆けつけ問題なくその力を振るうべく、ジードは先輩であるビクトリーに加えて父・ベリアルから短い期間ながらこの姿で特訓を受けてきた。

 

 

「お前に辛酸を舐めさせられた人達は大勢いるんだ……お前はここで僕が倒す!ここにいないゼロの代わりに!!」

 

「ジェアッ!!」

 

「フッ!!」

 

 

 ジードの言葉にウルティノイドゼロはエメリウムスラッシュで返事を返し、ジードは大きくバックステップで回避しその勢いでアスファルトを砕きながら後退する。

 ウルティノイドゼロスラッガーで追撃するもジードは冷静に対応。

 

 

「プラズマ光輪!!」

 

 

 一つでは弾けないかもしれないと念を入れて一つのスラッガーに対し、四つ発生させたプラズマ光輪をそれぞれ二つずつ放って弾き飛ばす。

 

 

 

 

 

『リ……リクさんすげぇ!!』

 

『ヤベーよあの形態、青くて光輪使うって俺の出番取られそうなんだけど!?』

 

『それを言ったら赤くて超パワーを発揮しているダイナやトリガーに活躍の場を奪われている私はどうなるんだ!』

 

『ジードにもあるだろ、赤くて超パワー。ついでにあいつ、ある形態だとお前のような体色に下手したらお前以上の筋肉になるらしいぞ』

 

『!?』

 

 

 純粋にジードを尊敬の眼差しで見ている一誠と、出番や活躍を心配しているフーマやタイタス、ついでにタイタスに追い打ちをかけているドライグ。

 

 

「これが、本当に一流のウルトラ戦士……!」

 

 

 タイガは自身より年下ながら銀河遊撃隊創設時にメンバーとされたジードの凄さを改めて実感する。

 周囲のプレッシャーを跳ね除け、遊撃隊員の座を勝ち取った、ニュージェネレーションの先輩の力と心を強さを。

 

 

 

 

 

 仕掛ける攻撃を悉く捌かれ、ウルティノイドゼロの焦りは既に臨界点になっていた。

 ならば、と弾き飛ばされ戻ってきたスラッガーを掴み、カラータイマーの左右へと装着する。

 ゼロの得意技であるゼロツインシュートの模倣技もウルティノイドゼロは使用可能なのだが、それを見たジードも決着をつけるべく自身の新たな必殺技を発動。

 

 

「ハアァァァァァ……!」

 

 

 突如ジードの背中から炎が発生し、それは翼のような形を形成する。

 それを見たオカルト研究部の面々はあるもの――レイヴェルが零したものを連想した。

 

 

「……フェニックス……!?」

 

 

 不死鳥(フェニックス)――敗北から不屈の闘志で立ち上がり、力を増して帰ってきた彼に相応しい名。

 兄も彼のようにいつか舞い戻ってほしいと願いつつ、レイヴェルは他の者達同様、ジードから目を離さない。

 

 衝撃で大地の破片が巻き上がり、両目と全身から光を放ちながらエネルギーを集中するジード。

 やがて一つの光が形成されると背中の炎と共にジードに吸収され、一瞬強く輝き――

 

 

「レッキング!フェニックス!!」

 

 

ズゴオォォォォォ!!!

 

 

 

 L字型に組まれたジードの右腕から、レッキングバーストとは比べ物にならない威力の光線が発射された。

 余波で瓦礫が宙を舞い、激しくスパークしながらウルティノイドゼロに突き進むそれに対し、ウルティノイドゼロもゼロツインシュートを放ち対抗する。

 

 やがて二つの光線は激突。

 

 一見拮抗しているかに見えたそれは実のところ、クリオモス島で焦りがあったゼロと同じ状態のウルティノイドゼロが押されており、「皆のためにも必ず勝つ」という強い思いを持ち、迷いの無いジードは一歩も下がらない。

 

 

「リクさん頑張って!」

 

「ブッ飛ばせぇ!ウルトラマンジード!」

 

「今の君ならそいつに絶対負けはしない!」

 

「勝って皆をハッピーにして下さい!」

 

 

 グランサイファーからジータ、ビィ、ムサシ、アサヒの声援が聞こえる。

 そして――

 

 

「いっけぇぇぇ!ジィィィィィドッ!!」

 

 

 あの怖がりだった弟分が自らこの戦場に出て、後押ししてくれる――ならばそれに応えよう。

 生まれが特殊であり、一人ぼっちだと思っていた自分を引き取って厳しくも愛情深く育ててくれた父のベリアル、自分を助け何かと面倒を見てくれた兄貴分のゼロ、優しく見守りつつ手助けをしてくれることもあった、父の師であるレジェンド……彼らだけではなく、多くの者達に支えられ、たくさんの笑顔を貰った。

 これからは自分が笑顔をあげる番だ――タイガやゼット、トリガー……そしてまだ見ぬ後輩達へ。

 今も支え合う仲間達へ。

 

 その一歩――自身が尊敬するゼロを貶すような行動をするウルティノイドゼロをこのままにはしておけない。

 

 

「ハァァァァァァ!!」

 

 

 ジードが気合を入れると、再びジードの全身が一瞬強く光を放ち、レッキングフェニックスの威力が上昇する。

 何故なのか理解出来ないウルティノイドゼロはゼロツインシュートを撃ちながらも狼狽えており、一気に押し切られ遂には――

 

 

「グゥアァァァァァ!!」

 

 

 ウルティノイドゼロに、レッキングフェニックスが直撃した……にも関わらず、僅かながらに堪えている。

 

 

「あの野郎!どんだけしぶといんだ!?」

 

「いや、様子がおかしい!」

 

 

 ヴェインが悪態をつくが、ランスロットは何かに気付く。

 そしてウルティノイドゼロが口を開いた。

 

 

「忘れるな……!『皇帝』は既に……動き……っ……!!」

 

 

ドオォォォォォン!!!

 

 

 意味深な言葉を遺してウルティノイドゼロは爆発し、消滅。

 言葉の意味は後々考えるとして、漸く強敵であったウルティノイドゼロを打ち倒せたことにウルトラ騎空団は更に沸き立った。

 

 残るは此度の首魁……モネラマザー。

 

 ダイナとタイガによって大打撃を受けていたモネラマザーもウルティノイドゼロの敗北と共に漸く本調子を取り戻したようで、ティガを始めとするウルトラマンやレジェンドの駆るグランティードを睨みつける。

 

 

 

 

 

 ……が、モネラマザーにとってさらなる凶事が舞い降りた。

 

 

 

 

 

「ジャアァァァッ!!」

 

「ディアァァァッ!!」

 

 

 突如再び赤い光と青い光が現れたかと思うと、なんとガイアとアグルが土煙をド派手に舞い上げながらロアーヌ島に降臨したのである。

 

 これにはモネラマザーは勿論、ティガどころかレジェンドすら度肝を抜かれた。

 さらに、よく見るとガイアの手は杏寿郎とパム治郎、さらにジークフリートにパーシヴァルまでいる。

 ガイアは静かに三人と一匹を降ろすようにロアーヌ島の地へとその手を下げた。

 

 

「煉獄さん!?」

 

「ジークフリートさんにパーさん!?」

 

「パムちゃーん!」

 

「とりあえずカナエは空気読みなさい」

 

 

 驚く蜜璃とヴェインに紛れてカナエが嬉しそうな声を上げるが、リアスにペシリと頭をはたかれる。

 

 

「甘露寺!伊黒!お館様は健在か!?」

 

「う、うん!」

 

「誰よりも前線で戦っておられる。健在ではあるがこれ以上は危険だ」

 

「そうか!ならば俺達が来たのは間違いではなかったようだな!お館様は俺に任せろ!パム治郎、皆を頼むぞ!」

 

「パムー!!」

 

「行くぞ頑治郎!!」

 

 

 この状況でも相変わらずなコンビに少しだけ緊張感が解れた。

 杏寿郎はすぐさま収納ブレスレットからグルンガスト参式を呼び出して搭乗し、グランティードの元へ向かう。

 そしてランスロットとヴェインは、ジークフリートとパーシヴァルから手短に理由を聞いていた。

 

 

「つまり特別な方法でもないと間に合わないから……」

 

「我夢と藤宮が変身してジークフリートさん達を連れてきたと……」

 

「あまり大勢だと二人もスピードを出せんだろうからな。資格ももらったことだし、俺達も機動兵器とやらで初陣ということになったのさ」

 

「「…………俺『達』?」」

 

「フン、駄犬はともかくランスロットまで鳩が豆鉄砲食らった顔をするとはな。俺もジークフリート同様、先日団長から合格を貰い、さらにこの炎帝パーシヴァルに相応しい機体を用意してくれたのだ」

 

「「「「「何ィィィィィ!?」」」」」

 

 

 これには白竜騎士団の二人のみならず近くにいたウルトラ騎空団の殆どが大絶叫。

 そんなことはレジェンドからこれっぽっちも聞かされていない。

 

 

「ちょ……!?パーさんいつの間に!?」

 

「その話は後にしろ!今はあの化け物を骨の髄まで焼き尽くすのが先決だ」

 

 

 そう告げるとパーシヴァルは己の剣を抜き、刃に炎を纏わせながら天へと掲げる。 

 

 

「炎の上位精霊にして精霊王が一柱グランバよ!我が愛機にその加護を与え、今こそ共に悪鬼羅刹を討たん!来たれ!炎の魔装機神、グランヴェール!!

 

 

 やけに気合いの入った詠唱と共に、パーシヴァルを周囲諸共炎が包み込み、炎が晴れると一体の機動兵器が鎮座していた。

 それこそがパーシヴァルの機体にして、ロスヴァイセのサイバスターと同じ魔装機神の一体、グランヴェール。

 唖然とするランスロット達を一瞥し、ふふんと笑いグランヴェールへと搭乗するパーシヴァル。

 

 

「では俺も我夢をサポートするために行くとしよう」

 

 

 唯一落ち着いて機体を呼び出したのはジークフリート。

 託されし機体・グルンガスト零式に急ぎ搭乗し、ガイアの隣に並び立つ。

 

 その光景、誠に壮観。

 

 

 

 

 

「あの、超師匠。何か対モネラ星人特効みたいな機体が出て来たんですけど」

 

「四体しかない魔装機神の一体、グランヴェールだ。しかし……このままでは団長の立場にいながら立つ瀬がないな」

 

「いやいや超師匠、ウルトラ頑張ってますからね。ジード先輩が目立ってたかもしれませんけど超師匠も凄かったですからね」

 

「……俺もちょっとした『奇跡』でも見せてやるとするか」

 

「はい?」

 

「まだ今回限りだがサプライズには十分だろ」

 

 

 ゼットが間抜けな声を出したが、直後にレジェンドがやらかしたことはこれまたぶっ飛んでいた。

 

 

 

 

 

 突然、タイガの身体が淡く発光し出す。

 

 

「ッ!?な……何だ!?」

 

 

 タイガだけでなくダイナやトリガーも混乱するが、ティガだけは何が起こっているのか予想がついていた。

 そしてレジェンドマントを羽織ったウルトラマンレジェンドの幻影が大きく現れ、光となってタイガとその周辺を包む。

 光が弾け飛び、そこにいたのは―― 

 

 

「あれ?タイガ?」

 

「……え?」

 

「サイドチェストォォォ!!」

 

「「『『全然ブレな……!はい?』』」」

 

 

 現在一人ずつしか変身出来ないはずなのに、タイガ、タイタス、フーマの三人が並び立っていた。

 しかも、全員が赤龍帝の籠手を装備しているという光景に、神器(セイクリッドギア)を知る者は皆それぞれブッ飛んだ驚きに襲われる。

 

 

「なぁにぃぃぃ!?どういうことだそりゃ!?同じ神滅具(ロンギヌス)が幾つも存在するとか有り得ねぇぞ!?マジでどうなってんだよ!?」

 

「さっすがレジェンド様ミラクル☆……で流しちゃっても良いよねソーナちゃん☆」

 

「それでいいと思います。あの方の規格外ぶりは常軌を逸していますから」

 

 

 アザゼルはパニック状態になり、セラフォルーとソーナはもう気にしないことにした。

 レジェンドが本気になったら、やることなす事何でもあり状態なのはもはや周知の事実。

 実際、朱乃など「あらあら、勢揃いですわね」とあっさり順応してしまっているし。

 

「まあ、こんなものだ」と言い放ったレジェンドにゼットはこうツッコんだ。

 

 

「……タイガ先輩が来た時点でやってあげればよかったんじゃ……?」

 

「最悪二人もモネラ星人に捕まって、もっと大変な状況に陥ってたぞ」

 

「ごもっともでございました」

 

 

 レジェンドもちゃんと考えていたようだ……取ってつけた理由かもしれないが。

 

 そして――この場を締めくくる援軍は『彼女』。

 

 

 

 

 

 もうじき光の道標が消える――つまり、次元断層に再びモネラ星人の遮断フィールドが発生するだろう。

 そうなった場合、残る解除方法はモネラマザーを倒しその遮断フィールドを崩壊させるしかない。

 

 ただ、この光の道標が開かれていることで、あるものが正常に作用していなくなっている。

 風船に小さな穴が空いている状態、とでも言えばいいのだろうか。

 

 そう、アンチディファレーターのことだ。

 

 完全に消えたわけではないが、今ならこの場にいるウルトラ戦士の変身アイテムをリンクさせ、変身反発電流によるダメージを分散させることでどうにか一人は変身させることが可能だと矢的が突き止めた。

 

 

「本当か、80!?」

 

「はい、レオ兄さん。しかしあの光の道標とやらが消えるまでの時間や分散させるダメージ量を考慮しても、やはり一人の壁は超えられない。誰を変身させるか、考える時間もそう長くは――」

 

『僕に提案があります』

 

 

 そう通信を送ってきたのはムサシだ。

 なるほど彼なら、と思ったゲンと矢的だったがムサシの提案は予想外の人物を挙げてきた。

 

 

『アサヒちゃんを変身させて下さい』

 

「「は!?」」

 

『ええっ!?』

 

『……どういうことだ、ムサシ』

 

 

 背後でゼットが騒いでいるのを流しつつ、レジェンドが落ち着いて尋ねる。

 

 

『エネルギーを分け与えられて救出されたとはいえ、タイガやトリガー、それに突撃戦法でタイガを救出したダイナにはダメージが残ってます。この状況で回復可能なのは僕が知る限りではチーフか僕、そしてアサヒちゃん……ウルトラウーマングリージョだけ。しかもチーフはゼットと一体化してる以上、必然的にゼットにならざるを得ないし、僕とコスモスも回復はモードチェンジしてから可能になるしで、基本形態のまま出来るとすれば彼女ぐらいなんです』

 

『まあ、今リカバリーオーラを使っている時間もないし、使っている最中にやられかねんしな』

 

 

 しかも、レジェンドが教えたリカバリーオーラは得手不得手があるときた。

 そうなると確実に回復出来る方が優先度は高い。

 加えて、グリージョ――アサヒはレジェンドから回復・防御特化で特別な訓練を受けたため、ウルトラ戦士の中でもサポート能力は屈指のものなのだ。

 

 

『俺は異論は無い。どのみち俺は俺でこのまま指揮を取らねばならん』

 

『頼んますよ、グリージョの姐さん!』

 

「俺の弟子達を、君に託す!」

 

「僕も信じよう。君の可能性を!」

 

『当然僕もね、アサヒちゃん』

 

『皆さん……』

 

 

 次々と上がる声にアサヒは嬉しさ、そして使命感が心の底より湧き上がってくる。

 さらに、彼もがアサヒを後押しした。

 

 

『俺の分も頑張ってね、アサヒちゃん!』

 

『流さん……!』

 

『君が伸ばした手で誰かを助けられるんだ。だったら後悔する前にやった方がいい。ウルトラマンは助け合いでしょ』

 

 

 戦闘力のみで言えば彼女より流を含めた他のウルトラ戦士の方が高い。

 だが、全員が無事な状態でこの戦いに勝つためには、後ろで支える者も必要不可欠。

 だからこそ彼らは彼女に託すのだ。

 

 皆で明日を迎えるために。

 

 

『分かりました!皆さん、お願いします!』

 

 

 

 

 

 グランサイファーの甲板でアサヒはルーブジャイロを再び取り出した。

 アンチディファレーターの機能が阻害されているとはいえ、そのまま変身しようとすれば少なからず先刻のように電流が流れてくるだろう。

 レジェンドを始めとしたウルトラ戦士達が変身アイテムをリンクさせ(例の如くゼットは痛がったがド根性でなんとかした)、それぞれのアイテムが淡く発光し出すとルーブジャイロにあった違和感が無くなる。

 

 今しかない、皆がくれたチャンスを無駄にしないために――託された願いを叶えるために、アサヒは亡き友から受け継いだルーブジャイロを三回、回転させた。

 

 

「星まで届け、乙女のハッピー!」

 

 

『ウルトラウーマングリージョ!』

 

 

 

 

 

 ガイア、アグルに続いてタイタス、フーマの実体化……その後に現れたのは初めて見るだけでなく、空の世界で初めて現れた女性ウルトラ戦士。

 さすがに驚くなと言う方が無理というもの。

 

 

「グッ……グリージョちゃん!?」

 

「はい!レジェンドさんやたくさんの人達に後押しされて、ウルトラウーマングリージョ……皆さんをお助けします!」

 

『……フーマの気持ちがよく分かるぜ。こいつぁアイドルだ……!』

 

「分かってくれるかイッセー……!」

 

 

 元気一杯なグリージョに、一誠がフーマと同調してしまう。

 地上ではそれを察して少しばかり嫉妬でむくれるリアスやレイヴェルがいたのだが、むしろ彼女の兄二人に目をつけられるかもしれない一誠を心配するべきだと気付くのはもう少し後のようだ。

 

 

 

 

 

 ――役者は揃った。

 

 ウルトラ騎空団とモネラマザー。

 

 ゲランダの襲来に始まったモネラ星人との戦い、その終止符を打つ時が来たのだ。

 

 

 

〈続く〉




違うぜ!作品!

しっかり活躍したティガは良いとして、本章にも名が乗っているトリガーや、タイガからも活躍の場をかっさらった男。
色々登場しましたが、最後の最後でウルトラマン妹と名高い彼女も現れフーマ大歓喜。
とりあえず一誠のヒロインにはならないのでリアス達は安心しよう。

いよいよ次回、本章クライマックス!


それではまた次回。

特別編で見てみたいのは?

  • 『それは、星を救う物語』の続き
  • 米花町にホームズとモリアーティ来訪
  • 特殊特異点にAチーム+α送り込み
  • リリなの世界に蛇倉苑メンバー出張

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