ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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お待たせしました。
長い。やっぱり長い。第一クールの見せ場の一つとはいえ、ここまで長くなるとは思っていませんでした。

今回も大分弄っております。


それでは本編をどうぞ。


分かたれた道

 ――アメノミハシラ――

 

 先日の『鬼』に続いて出現した新たな脅威『円盤生物』……レジェンドより齎された情報を見たゲンは、巌勝ら強者さえも息を呑む程の怒りを静かに放っていた。

 

 

(円盤生物……それも『奴』が連合の艦と乗組員を捕食し、チーフの機体による猛攻を凌ぎ地球へと向かった……俺には分かる。チーフがどれ程無念だったかを)

 

 

 かつてMACが全滅した際、唯一脱出することが出来たゲン=レオと、不在だったことで難を逃れたレジェンド。奇しくもあの時とは立場がそのまま変わった形である。

 ただし、今回は脱出というより遭遇したのち本格的な直接戦闘をしたのがレジェンドのみ(サーガは救出活動、他はその援護だった為)ということだが。

 

 あの時はその場にいれば、そして今度は変身出来ていれば――レジェンドはそう思ったはずだ。ゼットと一体化したのは自分の意志だと言っていたし、その点でゼットを責めるような事はしないだろうが、逆にその事でゼット自身が気に病む可能性もある。そのフォローはさすがにレジェンドに頼む他ない。

 

 

(だが円盤生物、貴様はミスを犯した。あの時と同じ個体が蘇ったのか、それとも別個体なのかは知らんが……俺もチーフもあの時より成長している上、こちらの戦力も以前の比ではない。たとえ地球に行こうと好き勝手やれるとは思うなよ……!)

 

 

 ――この後、シミュレーターにてゲンはレジェンドから『万が一に』と託されていた自身の機体・ゴッドガンダムのデータをインストールし、鬱憤を晴らすかのようにサバイバルモードで無双したという。

 

 レイトいわく『頭部を破壊する技が、頭部を基点として全身爆発させてくるヤベー技になってた』らしい。

 

 

 

 

 時は少し遡り――アークエンジェルの格納庫。

 

 シルバーブルーメにより、人員も含めほぼ全滅に近い形になってしまった先遣隊。生き残ったのはコープマン少佐とアルスター事務次官を含めて僅か数人という大惨事。

 そしてその小型艇を受け入れている最中に、やはりザフトは仕掛けてきた。このままでは救出した彼らの命が失われてしまうと思ったマリューらはどうにかしようとするも、よりによって格納庫で受け入れ作業をしておりアルトアイゼン・リーゼも離れていた為に万事休すの状態。

 

 そんな時、何を血迷ったのかフレイがラクスを無理矢理ブリッジまで連れてきて『これ以上攻撃するならこの子を殺すと言え』と言ってきたのだ。

 恐らくやっと助かった父親が死んでしまうかもしれないという恐怖から起こした行動なのだろうが、彼女はこの時点で二つのとんでもないことをしでかしていた。

 

 一つは文字通り『民間人を盾にした』こと。

 

 もう一つは――ラクスを連れ出す際、止めようとしたダイゴを突き飛ばし机に後頭部を強打させ、しかもぶつけた時に少し切ってしまったようで流血もあった。あまりに予想外の行動だった為、三日月達も咄嗟に反応が出来ず後手に回ってしまい、フレイの暴挙を許してしまうこととなったらしい。

 

 特に二つ目はその場にいなかったレジェンドやサーガ、キラ、それにアークエンジェルに乗っていないとはいえグランの怒りを買うこと間違いなし。しかもレジェンドはシルバーブルーメの件で気が立っている。ついでにサーガは先刻説教したばかり。

 

 そんなことは露知らず、ナタルはこの機に乗じてラクスを保護している(保護したのも面倒を見ているのもウルトラ騎空団だが)ことを宙域に放送し、言い方を柔らかくしたとはいえフレイの言ったことをヴェサリウスへと伝えた。

 

 結果として攻撃は一時的に止めさせられたものの、シルバーブルーメの件に続き多くの者の心に傷を残す事になってしまう。

 

 ……この時点で浮かれていたのは、アルスター父娘ぐらいであった。

 

 

 

 

「一難去ってまた一難……どころじゃないか。こりゃ連合のイメージがますます悪くなっていくな」

 

「そんな軽口を叩いてる場合かよ!あの子はアイドルっつってもガチの民間人だろ!?」

 

「少なくとも副長はそう考えてないみたいだぜ?確かに現プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの娘ってだけで、普通の民間人とは言えないってのは合ってるが」

 

「けど!」

 

 

 尚も食い下がる一誠にムウはどうしたもんかと困り顔で頭を掻く。考えてみればザフトのミゲルとラスティにせよ民間人のラクスにせよ、元々ウルトラ騎空団が拾ってきて面倒を見ているわけで。

 いくら状況が状況だったと言っても、特務大使のダイゴに傷を負わせてまでラクスを連れ出し殺す発言をしたフレイは勿論、それに便乗したナタルも恐らくタダでは済まないだろう。

 

 

(俺達が弱いからこうなった、なんて考えてたが……ウルトラ騎空団はコープマン少佐達の救出やあの化け物の対処でてんてこ舞いだったしなあ……というか俺らが責められても仕方ないだろ、これ)

 

 

 正直フレイが余計な事をせず、マリューらも落ち着いて対処していれば三日月とバルバトスが出撃し、ジン三機撃墜とイージス戦闘不能はほぼ確実だったはず。

 最近出番無いとぶーたれてたぐらいだし、下手したらベリアルのエゼキエルすら墜としてた可能性すらある。

 

 

 

 

 

「……何の騒ぎだ、これは」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 

 

 

 そんな会話をしているうちにレジェンドが戻ってきたものの、普段の彼でも戦闘中の彼でもない、静かな怒りを燃やしているような雰囲気を纏っていた。

 当然、シルバーブルーメ関係で苛立っている状態なのだが……タイミングが最悪すぎる。

 仕方ないとリアスがレジェンドに一連の出来事の説明を行う。

 

 

「実は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェル全体を圧倒的な何かが支配した。言うまでもなく、レジェンドの怒気である。何かあっても対処出来るようにと事前策を用意しており、三日月もスタンバイしていたにも関わらず、勝手な行動を取った連中……それに対する怒りを収めろというのは無理な話だ。

 

 

「例によってあの我儘娘か……!」

 

 

 今回ばかりは皆サーガの意見に同意。父親が心配でもやっていいことと悪いことの区別くらいつくだろう、という考えが甘かったのは認めるが、行動が斜め上過ぎた。

 ちなみに当のアルスター父娘は再会を喜んでいるが、そんな姿を今のレジェンドが見たら割と冗談抜きで鉄拳を飛ばしかねない。

 

 

「ブリッジでその放送をしたのは誰だ」

 

「へ?」

 

「誰だと聞いている」

 

「ヒッ……!た、多分バジルール副長かと……」

 

 

 整備班の一人が怯えながらレジェンドの問いに答え、それを聞いたレジェンドはゆっくりとブリッジに歩を進めていく。

 

 ――あれはヤバい――

 

 付き合いの長いサーガはそう思ったが、自業自得だとマリューらを見捨てることにした。一番逆鱗に触れたのはナタルだろうが、それを(半ば強制的に)許したマリューにも雷が落ちる確率は高い。

 

 尚、他の面々はレジェンドのブチ切れ具合を見たことで逆に怒りが収まり、返って冷静になれたらしい。良いのか悪いのか……。

 

 

 

 

 ヴェサリウスではラクスがアークエンジェル(というよりウルトラ騎空団)に保護されていると聞き、やむを得ず攻撃中止したもののどうにか奪還出来ないのかと頭を悩ませていた。

 ただし、クルーゼとベリアル以外。この二人にとっては彼女の無事如何など些末な問題でしかない。

 

 

(あの娘が乗っていると知らない間に墜とせていたら楽だったんだけどなあ……ラウさん)

 

(全くだ。その方が後々の面倒も省けたし、良いプロパガンダにもなったのだが)

 

 

 あわよくば偶然を装って始末し、その死を利用しようと考えている。弟であるガルマ・ザビの死を利用し士気高揚の策とした、かのギレン・ザビと同じ思考……いや、ジオンの勝利という目的があったあちらと違い、この二人は連合もザフトも被害を被ってしまえ的な思考なので尚の事タチが悪い。

 

 

「ん?ちょっと待てよ……そういやあの足つきに乗ってるぶっ飛び軍団、月艦隊と合流されると連中にとっても面倒なんじゃないか?」

 

「ベリアル参謀、それはどういう意味ですか?」

 

 

 ベリアルの言葉にアデスが気になったように尋ねる。アスランも訳が分からず首を傾げるが、クルーゼだけは理解した。

 

 

「よく考えてくれ。元々連合はアークエンジェルとストライクさえ秘匿して作っていたぐらいだ。そこにあの連中が偶然とは居合わせて乗艦したわけだが……」

 

「連合とて一枚岩ではない。未知の技術を使った未知の機体と、それを扱う凄腕のパイロット……そんなものが徒党を組んで自軍の艦に同乗していたとあればタダでは返すまい。そうだろう?」

 

「ビンゴ。さすがラウさん、よく分かってらっしゃる」

 

 

 パチンと指を鳴らし、御名答とクルーゼを指差すベリアルにクルーゼも口角を上げる。

 

 

「まさか……!ラクスを見捨てるんですか!?」

 

「そうは言ってないさ。ただ、ある意味合流されたとしてもチャンスがあるってことだ。アスランも知ってるだろうが俺も連中とは因縁があってね、もし強制的に従わせようとしようものなら連中は逆襲するだろうさ。で、混乱に乗じて強襲し、お姫様を奪還しつつ二重の意味で慌てふためく連合をドカン!……てな」

 

 

 ベリアルの案では確実に乱戦になるだろう。混乱に乗じて行動出来るのはザフトだけではなく、独自の目的があるクルーゼやベリアルもなのだ。

 戦場がそういう状況であれば流れ弾だの何だのでも十分言い訳が通用するし、『作戦を無視した隊員が命令違反をした結果こうなった』と報告することだって出来る。運良く奪還して無事に帰っても問題は無し……つまりクルーゼとベリアルはこの策を実行して得をすることはあれど、デメリットは殆ど無い。

 

 

「そういうわけで、焦って考えるなよ。お姫様が心配なのは分かるが、無茶な奪還を強行して目も当てられない結果にはなりたくないだろ?」

 

(そう、どう転ぼうが私達にとっては問題ではないのだよ)

 

 

 渋々引き下がるアスランと、ガモフとの連携を考慮に入れて再度考えるアデスを余所に、狂気を秘めた二人は静かにほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 割り当てられた部屋よりダイゴ達ウルトラ騎空団の部屋に入り浸っているキラは、パイロットスーツから着替え終わると、偶然出歩いていた三日月と一緒に部屋へ向かっていた。

 途中、フレイの蛮行を聞いて「やっぱり僕と合わないと思ってたけど、さすがに酷過ぎる」と苛立ちを隠さずまたも三日月と仲良くなる。

 

 そして食堂の前を通ると話題のアルスター父娘がサイや他の学生と話し込んでいたので、そのままスルー。サイやトール達はいいのだが、アルスター父娘と顔を合わせるとダイゴやラクスの事が絡んで嫌な気持ちになるのは間違いないからだ。

 

 しかし、そういうときに限って――。

 

 

「あ!キラ!……と、三日月……さん?」

 

「キラ、どうしよう。俺ついでみたいに言われたんだけど」

 

「ぶっちゃけ僕より三日月さんの方がキャラ立ってると思うんですけどね」

 

 

 ミリアリアに声をかけられた。扱いに不満気な三日月と苦笑するキラを前にして、フレイはバツが悪そうな表情になる。少なからず罪悪感があったのはまだマシなのだろうが、キラとしては早くダイゴの見舞いに行きたい。

 

 

「ごめん、ミリィ。僕達やらなきゃいけないことがあるから。それじゃ、また後で」

 

「え?あ、うん。引き止めてゴメンね?」

 

「大丈夫だよ。行きましょう、三日月さん」

 

「うん。あ、キラは辛子とわさび、どっち派?」

 

「う〜ん……メニューによるかな。でもおでんに辛子は必須ですよね」

 

「分かってるじゃん」

 

 

 和気藹々と話しながら去っていく二人に「私達より仲良くなってる気がする」とミリアリアも笑う。キラがどうこう言わないし、自分達が蒸し返すのも良くないだろうとアルスター父娘以外の面々は無言で意思疎通。

 許したわけではない、というか許す理由が思いつかないぐらいだが、キラは勿論として藪をつついて蛇を出すどころか悪魔を出してきそうな三日月を下手に刺激する必要も無いだろう。

 

 そんなほんの少しだけ穏やかな艦内――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――なら良かった。

 

 別の区画ではレジェンドが異常な怒気を隠さずマリューやナタルを問い詰めていた。助けられた側のコープマン少佐は隅で小さくなっている。

 

 

「お前達は聞いていたはずだ。俺や三日月が代わる形で出るとな。俺だけ先行して出てしまったのは反省すべきだとは思うが、何故小型艇の搬入作業を冷静に行えない?」

 

「そ……それはラクス嬢の身の安全と――」

 

「脱出してきた連中の安全も確保したかった、と?ならば尚の事その場であの我儘娘を取り押さえて三日月の出撃を待てばよかった。不測の事態があったらしいが、それでもあいつは自分の受けた指示を実行しようとスタンバイしていた。だというのにお前達が馬鹿げた放送をしでかした結果、それが無駄になり状況は悪化したんだ」

 

「「あ、悪化!?」」

 

 

 マリューとナタルは驚きの声を上げ、コープマンもどういうことかと目を見開く。

 

 

「人質は無事だから意味があるんだ。もしあの桃姫に何かあってみろ。それこそこの艦、ひいては地球連合軍全体が『自分達が助かるためなら民間人を躊躇なく人質にし、犠牲とする連中』というレッテルを貼られ、そこいらの一般人からも敵意を向けられかねないんだぞ。『何かあれば自分達も盾や交渉材料に利用されるかもしれない』という疑心暗鬼状態になって、最悪『やられる前に殺れ』と極端な思考にならんとも限らん。こんな御時世だしな」

 

 

 そうなれば補給云々どころではない。日常的に一分一秒一瞬でも気を抜けば銃弾が全方位から飛んでくることも極論では有り得てしまうのだ。正直アークエンジェルの面々にそんな覚悟があるとは思えない。戦争において人質作戦というのはそれこそ成否関係なく軍全体に影響が出るものである。

 かのデラーズ紛争にてシーマ・ガラハウがエギーユ・デラーズを人質にし、降伏を迫るもデラーズ自身が死を覚悟して指示を出して撃たれたものの、逆にデラーズの死がデラーズ・フリートの士気を高めた。

 結果としてコロニー落としは成功するなど、相手に闘志を燃やさせることになる場合も多く、大抵は失敗して相手の怒りを増幅してしまうだけ。

 

 故にレジェンドはそういった方法を好まず、相手に人質作戦を取られようものなら自身の規格外スペックをフル活用して真っ向から無力化と奪還を行ってしまうぐらいである。

 

 

「しかもよりによってあの悪知恵の回るベリアルと、やけに頭の切れるクルーゼとやらの隊にやったのもマズイ。人質が桃姫だからといって、あいつらがこのままバカ正直に矛を収めていると思うのか?」

 

「「え?」」

 

「クルーゼの方はいざ知らず、ベリアルは適当な理由を付けて桃姫ごとこの艦を撃沈することも考えられる。そんなベリアルを参謀にするような奴だし、クルーゼとやらも似た者同士な気がしないでもないが」

 

 

 そんな馬鹿な事を、とマリューらは思うも因縁があるらしいレジェンドの言葉は説得力がある。ましてや彼女らはベリアルと直接会ったことがない為、それはないなどと言い切ることも出来ない。

 

 

「ついでにだ。これは別にお前達が悪いわけではないが……今後の事を考えて忠告しておく。先のザフトの一時撤退から円盤生物……あの化け物の襲撃による先遣隊全滅、そしてザフトの再襲撃。一連の流れから目撃した連中が今回の事で口を滑らせた場合、『あの化け物はプラントが作り出した新しい生物兵器』と連合側が誤解するかもしれん。もしそうなれば今以上に泥沼化するぞ。早めに箝口令を敷くなり何なりしなければ、この手の話は恐ろしいほど急速に広まるからな」

 

 

 言いたいことだけ言ってレジェンドは踵を返す。何やら呼ばれているが、後の事は自分達で考えろとばかりに無視して退出する。怒鳴られるより迫力があったものの、どうにかその場を乗り切った……と安堵する間もなく、自分達の置かれた境遇に頭を悩ませるマリュー達であった。

 

 ちなみにその後、空気が読めずあっけらかんとしたムウが入室した際、マリューとナタル、おまけでコープマンは少し苛ついたらしい。

 

 

 

 

 一方、隠れてアークエンジェルに追随しているペガサスAでは、不穏な空気が漂っていた。その理由とは……。

 

 

「…………チッ」

 

「な……何か勇治さん、機嫌悪くない?」

 

『マスターは軍というものが嫌いなのです。特に先の戦闘で放送したような、民間人を盾にするような軍人は尚更。無論、全ての軍や軍人が嫌いというわけではありませんが』

 

「理由は……聞かない方がいいみたいだね」

 

『お心遣いに感謝します』

 

 

 勇治の機嫌が仮面越しにも分かるほど悪いからである。先のように舌打ちしたり、片手で頬杖をつきながらもう片手の人差し指でコンソールパネルをカンカンと凄まじい速度で叩いている。何かを操作しているわけではなく、単純に苛立ちを表す動作だ。

 

 これには彼の過去が由来しているのだが、おそらくアークエンジェルにレジェンド一行が乗っていなければ、確実にクルーゼ隊より先に撃沈させていたんじゃないかと思われるくらい腹を立てていた。

 

 

「……シエル」

 

『何でしょうか、マスター』

 

「今度あの船からふざけた放送が流されたら最大出力のメガ粒子砲を叩き込め。ブリッジに撃ち込んでも構わん」

 

『了解しました』

 

「ちょっと待ったあああ!?あれにはレジェンドさん達乗ってるよね!?シエルもなんで了解しちゃってんの!?」

 

「心配ない。連中がバカやらなければいいだけのことだ」

 

「やらないと言い切れないから心配なんですが!!」

 

 

 なんとまあ信用のないアークエンジェルのクルー達。仕方ないといえば仕方ないが、先刻の出来事の発案が民間人だとしてもレジェンドや勇治より更にお人好しと言われる流にまで『やらないと言い切れない』と思われているのは如何なものか。

 

 連中が勇治の地雷をこれ以上踏まないよう祈りつつ、ご飯待ちしてるアリゲラに食事を用意する流であった。

 ちなみにエースキラーは就寝中、リムエレキングは充電器に乗っかって充電中。盛大にやらかしたシルバーブルーメとは違い、実にほのぼのした光景だ。

 

 

 

 

 アークエンジェルの一室、ウルトラ騎空団に割り当てられた部屋ではダイゴがしのぶから治療を受けている。傍にいたのにフレイを止められなかったとアズが落ち込んでいるが、沙耶はガヴァドン化してたのでそう落ち込むこともないと思う。

 

 

「はい、これでよし。暫くは安静になさってくださいね」

 

「ありがとう。しかし僕も鈍ったかな……」

 

「敵意はあっても完全に敵というわけではなかったので仕方ないですよ。私も咄嗟の事で動けませんでしたし。ロスヴァイセさんとアズさん、それに沙耶さん……は、アレどう言えばいいんでしょうか……」

 

「チーフが言っていたんだけど、あれは人をダメにする寝袋みたいだね」

 

 

 加えて沙耶のふわもふへの執念。それが今回悪い意味でファイナルフュージョンしてしまったらしい。未だに起きない。

 

 そこへ次々と出撃したメンバーが帰ってきて、最後にレジェンドと三日月、キラが到着。すっかりウルトラ騎空団の一員と言われたら納得してしまうほど馴染んでいるキラはさておき、明るかったラクスが顔を俯かせている。ダイゴが怪我をした責任を感じているようだが、彼女は利用されただけで原因はフレイの方だ。

 

 

「申し訳ありません、ダイゴ様……私の所為で、お怪我を……」

 

「君の所為じゃない。僕の油断と、鍛え方が足りなかったんだ。仮に僕の代わりにチーフだったらまず突き飛ばされないだろうし、机にぶつかったくらいじゃ怪我もしないだろうから」

 

「待て、ティガ。先輩では例えが極端過ぎる。ここはレオを引き合いに出した方が的確だ」

 

「いやスンマセンサーガ様、師匠も例に挙げちゃ駄目じゃないかと思うんだけど。俺が未熟過ぎだったっていっても神器で倍化した一撃を顔面に食らったのに、無傷でカウンターしてくるんスよ?」

 

 

 円盤生物に殺意を抱く人物ツートップは何やら理不尽な例えにされている……が、事実だから何とも言えない。つーんと拗ねているレジェンドをアマリが宥めている。ルリアはラクスの方をだ。

 

 そんな彼女を見て、キラは一人決意する。彼女をここに置いていては駄目だと。

 ウルトラ騎空団は良いのだが、彼女にとっては一歩ここを離れれば敵陣も同様の状態。何かあってからでは遅い、そう考えたキラは反対されることを承知でレジェンド達に自分の思っている事を告げた。

 

 

「あの……皆さん」

 

「む、どうした?もしや細めの身体に筋肉を付けたいと思ったのか?」

 

「さすがにこの状況でそれはねぇだろ旦那……キラは確かに細いけどさ」

 

「そろそろ沙耶さんを起こしたほうが良くないかしら?」

 

 

 タイタスとフーマのやり取りはともかく、リアスの言う通りだろう。どうやって起こすかと一行は考えていたら、レジェンドが無言で沙耶の鼻をつまんだ。

 

 

「…………」

 

「……うう……」

 

「「「「「地味だけど効果覿面……!」」」」」

 

 

 中々シュールな絵柄だった。改めて言っておくが、沙耶は月王国の女王である。女王がそんなでいいのかと思うだろうが、先代女王も色々はっちゃけたりしているので言うだけ無駄だとレジェンドは判断。実力行使で叩き起こすのが一番らしい。

 

 

「俺ではあまり効果が無かったが……」

 

「団長さんだからじゃねーの?」

 

「「「「「ああ……」」」」」

 

 

 サーガの呟きにラスティが言った一言は周りを納得させるのに十分だった。シンプルイズベスト。愛は強し……いやこの行為が愛かどうかは疑問だが。

 それはさておき、漸く起きた沙耶も交えてキラの話を聞くことにする。

 

 

「僕は……彼女を、プラントへ帰そうと思います」

 

「キラ様?」

 

「貴女はここにいるべきじゃない。ダイゴさん達は違うけど、ここにいれば貴女はまた利用されてしまうかもしれない。僕は嫌なんだ!こんなの……」

 

「駄目よ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 ミゲルやラスティはキラの判断を讃えようとしていたが、反対の声がまさかの沙耶から出たことに殆どの者は驚きを隠せない。

 

 

「ッ……どうしてですか!?彼女は民間人で!」

 

「落ち着きなさい。私は別に彼女を帰すことに反対してるわけじゃない」

 

 

 ……と思ったらそうではなかった。毒気を抜かれたキラや他の者達がポカンとする中、沙耶は反対した真の理由を話す。

 

 

「貴方は仮ではあっても一応地球連合の預かり。彼女を返すにしても独力では不可能だからどうしてもストライクを使うことになる」

 

「軍とは色々面倒でな。軍のものを勝手に持ち出して違反しようものなら最悪銃殺刑は免れん」

 

 

 銃殺刑、という言葉にその場の誰もが真っ青になるが、ミゲルとラスティは軍属のためそれが当然であることに納得している。ましてアークエンジェルやストライクは徐々に連合内部に知られ始めているとはいえトップシークレット扱い……そんなものを持ち出せばどうなるかは一目瞭然だろう。

 

 

「でも、脱出ポッドに乗せるのだって結局はバレてしまうし……」

 

「安心しなさい。私が送り届けるわ」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「ウルトラ騎空団である私なら連合に属しているわけではないし、異性とコックピットに二人きりというのもアレでしょう?他の子は戦力的に隠しておきたいとか、フォローが必要とか色々あって厳しいみたいだし、その点私なら単独で問題ないもの」

 

 

 それに元々ラクスはウルトラ騎空団預かり。ならばウルトラ騎空団所属の沙耶が彼女を引き渡そうが何の問題もない。レジェンドが締め上げた上で忠告したわけだし、また今度難癖をつけてこようものなら今度は本格的に脅しに移行するだけ。特に沙耶の煽りスキルは半端ないため、こちらにとってプラスになる言質を引き出しそうでもある。

 

 そんなこんなでドンドン決まっていく『ラクス返還計画』。キラは自分と同じ気持ちを持つ人々がいることをありがたく思いつつ、これだけは言っておこうと口を開く。

 

 

「ありがとうございます、沙耶さん……ただ、一つだけ」

 

「何かしら?」

 

 

 

 

 

その格好(ガヴァドン寝袋)のままだから台無しです」

 

 

 

 

 

 キラの言葉にレジェンドを含む一同、満場一致で頷いた。

 

 

「……だって、ふわもふなんだもの……」

 

『トリィ!』

 

「「「「「は?」」」」」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

 機械的だがどこか可愛らしい鳴き声が聞こえ、発信源を探すとすぐに見つかった。意外に近い場所――キラの背中辺りから、緑色の小さなロボット鳥が姿を現したのである。

 幼年学校時代にアスランからキラへ送られた鳥型のロボット『トリィ』――まんまなネーミングだが、可愛いので良しとしよう。

 

 

「わあ!可愛いです!」

 

 

 早速ルリアが食いついた。ビィみたいだからもあるだろうが、その動作はごく自然なもので本物かと思うような出来だ。

 

 

「ほう?小型で精巧、かつ飛行出来るロボットか。飛行出来るロボットというのは色々難しくてな。小型であればあるほどその難易度は上がる。これを作った奴は大した腕だ」

 

 

 その飛行可能なロボットをポンポン作るレジェンドや束はどうなんだとツッコまれそうだが、レジェンドがアスランのくれたものを褒めてくれたことにキラは嬉しくなった。

 

 

「これはアスランが……昔とても仲が良かった友達がくれたものなんです。あのイージスって機体に乗ってた……」

 

「アスラン……もしかして、アスラン・ザラですの?」

 

 

 イージスの事を聞いて事情を知っている一誠やリアス、タイガにゼットは俯く。ゼットもあの場では問題なく振る舞っていたが、彼としても思うところはあったようだ。

 それはそれとして、ラクスが何故アスランを知っているのかが疑問である。一応クルーゼ隊が有名だと言うのは分かるが、彼女の感じからして親しい人物のような雰囲気を感じた。

 

 

「アスランを、知っているんですか?」

 

「アスラン・ザラは私がいずれ結婚する方ですわ。優しいけど、とても無口な人」

 

「はわっ!?」

 

「この世界って婚約が流行ってるのかしら」

 

 

 まさかの衝撃発言にルリアは驚き、沙耶は冷静に見えてレジェンドとミナの事があったばかりなので内心穏やかではなかった。

 

 かくいう沙耶自身、立場上縁談は多かったのだが……養母である先代女王を始め、その側近であるヤプールや排熱大公、妖精騎士らが問答無用で握り潰していたので沙耶自身はそれを知らない。

 様々な呪縛から解き放たれた先代女王らが「沙耶にも普通の恋愛をしてほしい」と願っていたからだが、何処ぞの大企業のトップが年齢を考えずに『自分が』縁談を申し込んできた時は本気でブチ切れてしまい、『はや辿り着けぬ理想郷(ロードレス・キャメロット)』をぶっ放したそうな。絶妙な力加減のおかげで死にはしなかったものの、そのトップは全治数ヶ月の重傷を負った。

 

 閑話休題。

 

 皆が驚く中、プラントの事情を知るミゲルとラスティが理由の一端を語る。

 

 

「プラントでは婚姻統制ってのがあってさ。俺達コーディネイターは世代が進むに連れて出生率が低下してるんだ。だから好む好まない関係なく、定められた者同士で結婚して子孫を残し、コーディネイターという種の存続と繁栄を狙ってるらしい」

 

「……他人事とは思えないわね」

 

 

 リアスも当初はライザーとの結婚を『悪魔社会のため』と無理矢理させられるところだった。それを一誠やカナエの活躍もあって白紙に戻され、今はこうして『自分達が得たものを未来へ受け継がせていく』ことのために異世界修行へ赴けるほど自由に生きている。

 

 

「婚姻統制でも当人同士が文句なかったり、望んでいれば問題は無いんだがな。生憎俺は家族を養うことばかりで無縁だったが」

 

「え?ミゲルってそういうのいないのか?面倒見いいし、モテると思うんだけど」

 

「さっきも言ったが家族を養うので手一杯、しかも就職先が軍だぜ?仮にそういう相手が出来ても、ろくすっぽ会えなくて婚約取消とかになる可能性だってあるんだ」

 

 

 むしろハズレ物件だろ、とミゲルは言うがラスティとしては「相手も軍人なら良いんじゃね?」と考えている。

 

 

「しかし婚姻統制……そこまでしないと子供が出来んとは……その点で言えばミナは子供の有無は気にしなかったな」

 

「ミナって誰?」

 

「ロンド・ミナ・サハク、俺の婚約者だ。成り行きでそうなったが、意外にも馬が合ってな。ウルトラ騎空団の面々も割とあっさり受け入れた」

 

 

 今度はキラにミゲルやラスティ、ラクスが驚くことになる。よもやオーブの五大氏族として有名なサハク家の女傑と、目の前の人物が婚約しているとは予想出来るわけがない。

 

 

「は!?いや、え、ちょっ……マジで!?サハクって言ったら俺らでも聞いたことあるぞ!?」

 

「ゼット……お前の超師匠、ホント何なんだ?」

 

「いや何なんだって言われても……」

 

「ダイゴさん、本当なんですか?」

 

「うん。最初はチーフも頭抱えてたけど、少ししたら普段の調子に戻ってさ」

 

「まあ!お二人共大変仲が宜しいんですのね!」

 

「「「「「最後だけ何かズレてね?」」」」」

 

 

 良いのか悪いのか、ラクスはそれを聞いてもいつも通り。だからなのかもしれない。その後に出てきた彼女の言葉は、キラとって心の清涼剤になるようなものだった。

 

 

「お二人が戦わないで済むようになれば、いいですわね」

 

 

 

 

「――よし、これで準備完了だ。ライ、モニカ。世界座標を入力すれば、レジェンド様の光気を辿って近くまで次元転移出来る」

 

「ありがとうございます、アムロ教官。ていうか束博士に近付いてきてますよね、教官の技術力」

 

「これで生身での戦闘力まで上がったらそれこそ九極天レベルですよ?」

 

「さすがに老師達のレベルには辿り着けないさ」

 

「「あの人と比べちゃいけません」」

 

 

 苦笑するアムロだが、二人の言うように東方不敗は今や宇宙空間でも問題なく生身で活動し、星間連合の一個師団を壊滅させる正真正銘の化け物である。あの縁壱でさえ「老師と素手でやり合いたくはない」と零すほどだ。

 

 何にせよ、ライ専用のガンダムデルタカイとモニカ専用のリ・ガズィカスタムの準備は終わった。あとは持っていく荷物をまとめて出発すればいい。

 二人は一刻も早くコズミック・イラへと向かうべく、ホテルに戻り出立の準備を始める。

 

 

「父さんからの定時連絡だと向こうにも怪獣が出たらしい。そもそも地球外生命体に対してあまり耐性がないみたいだし、向こうでそっち方面に戦力となるのは父さん率いるウルトラ騎空団か、もしくはダイゴさんが縁を結んだオーブって国ぐらいだってさ」

 

「奇しくもウルトラマンの一人と同じ名前の国なのね。でも、国一つしか対抗戦力が無いとなると余程の技術力や人材が無いとすぐに限界が来るわ。おそらくはウルトラ騎空団に所属してるメンバーがテコ入れしてはいるんでしょうけど……」

 

「どっちにせよ、早急に戦力の拡充が必要だってことだね。あっち側で参考になる機体があれば外見映像だけでも送って欲しいって言われてるし、俗な言い方になるけど僕らの専用機の元になるような見た目の機体が出てくることを願うよ」

 

「それで敵じゃないなら万々歳よ」

 

 

 翌朝、改良型デヴァイサースーツに着替え専用のヘルメットを用意してドラガイトのドックへと向かったライとモニカは、アムロだけでなくニールにも一緒に見送られドラガイト……そして惑星レジェンド系を暫定的な専用機で飛び立った。

 

 

 

 

 皆が寝静まり、一部の者以外が交代で番をしているアークエンジェル。ウルトラ騎空団とキラによる『ラクス返還計画』が実行に移される。手順としてはこうだ。

 

 ①ラクスをパイロット用更衣室まで連れ出し、着替えさせる(無論女子が)。

 

 ②直接実行メンバーである沙耶、及び仮の追撃役であるキラがラクスを連れて格納庫まで向かう。他のメンバーは一部を除き、万が一に備えて三名が無事見つからずに格納庫まで到達出来るよう、他者の注意を引く。

 

 ③沙耶がラクスと一緒にガンダムXのコックピットに入り起動シーケンスを終えると同時に、彼女らに追随した一部メンバーで発進口を開け、リニアカタパルトをスタンバイ。その合間にキラが「沙耶がラクスを連れ出そうとしている。自分は止めたが生身では力及ばず」という体でストライクによる追跡を願い出る。

 

 ④理由が理由だけにキラの申し出は断られないだろうし、ガンダムXをあくまで形式的にストライクで追跡する。沙耶の方はヴェサリウスの方へラクスの引き渡しを告げ、条件として引き渡しに来させる者をアスラン・ザラに限定。かつその他の条件諸々も合わせて告げる。ストライク到着後は「今撃てばラクスに当たって大事になる可能性がある」とライフルを構えたまま二機は待機。

 

 ⑤ラクス引き渡し後、キラとアスランを会話させる。選んだ道にもよるが、あとはガンダムXとストライクが揃って帰投。マリューやナタルらが何かを言ってきたら「元は自分達が保護して面倒を見ていた」点を突いてレジェンドが物申す。ついでにそれにも関わらずラクスを人質扱いしたことも問い詰める。

 ※場合によっては避難民その他も合わせてペガサスAへの移動も考える。

 

 これでミッションコンプリートというわけだ。運頼みな部分もあるが、ある意味今回では敵地内からのスタートみたいなものだし仕方ないだろう。

 

 早速沙耶はラクスを連れて更衣室へと入る。その周辺をさり気なく他の女性陣が行ったり来たりして警戒。幸い、人が通らなかったことでそっちの方は問題なかったのだが……ラクスの衣装はスカートが大きめのふんわり仕様だったため、脱いだあとに無理矢理お腹の辺りに押し込んだら「何ヶ月?」みたいな外見になってしまった。

 

 

「ルリア様、アマリ様、それにアズ様もありがとうございました。また一緒に遊んで下さいね」

 

「はい!ラクスさんもお元気で!」

 

「それは無事に帰れて、また会えたときにね?」

 

「レジェンドさん達も用意してるから……二人とも、気を付けて」

 

「ええ。あとは任せて」

 

 

 短い間にすっかり仲良くなったルリアはラクスとの別れを惜しみつつも、笑顔で送り出す。アマリとアズも気遣いながら沙耶とラクスの無事を祈った。

 それから同じくパイロットスーツに着替えたキラと合流するが、予想通り一瞬ポカンとしたあと頭を振って正気に戻り格納庫へと向かう。

 

 整備目的ということで事前にガンダムXは格納庫に用意してあり、コックピットも開けてある。整備班も眠りこけており、敵意さえなければ大きな物音を立てない限り起きないだろう。

 三人を待っていたのはレジェンドとダイゴ、そして万が一ラクス引き渡し後に予想外の事態が起きた際、即座に出撃出来る戦力として三日月。

 

 

「さ、もう少しだよ……と、最後にチーフからラクスちゃんにプレゼントがあるんだ」

 

「私にですか?」

 

「お前、キラやダイゴと一緒にデュエルモンスターズやってただろ。その時に作ったデッキと予備カード、それからデッキ強化の為のパックやストラクチャーデッキその他諸々が入ってる。向こうに帰ってから怪しまれて勝手に没収されないよう、中が分かるクリアケースだから中身云々は問題ない」

 

「しかもパックってBOXのままじゃん。いいな、それ」

 

「ハロも一緒だが持てるか?一応固定用のホルダーも付いてるから、無理そうなら後で沙耶に付けてもらえ」

 

 

 何かと面倒をかけられたレジェンドだが、結局彼は口では何だかんだと言いつつ優しいのだ。キラやダイゴとワクワクしながら組んだ思い出が残るそれが入ったケースをしっかり抱き締めつつ、ラクスは三人へ礼を告げた。

 

 

「ダイゴ様、三日月様、そして……お兄様、僅かな時間でしたがとても楽しかったです。他の皆様にもどうか元気でとお伝え下さい」

 

「チーフ、お兄様だって」

 

「日に日に増えてくね、妹枠。ラクスは純粋に妹的感情みたいだけど」

 

「三日月、後半どういう意味だオイ」

 

 

 ユーリ達紫天一家を始め、兄呼びで恋愛感情持ちが多いからなのだろうが……最後までいつものノリの彼らにラクスは小さく笑い、同時にもうこの掛け合いが見れなくなることを寂しく思う。

 

 しかし、いつまでも感傷に浸ってはいられない。沙耶はラクスを連れコックピットに入り、それを見届けたレジェンド達も最後の準備に入る。

 ここで定石通りマードック軍曹達整備班が目を覚ました。

 

 

「あ……!?おい!何してる!?」

 

『悪いけどちょっと出掛けてくるわ』

 

「はあ!?」

 

 

 ここで漸くキラの出番だ。

 

 

「マードックさん!」

 

「坊主!」

 

「あの、沙耶さんがあの子を返すって……!勝手にやったら問題になって、貴女の立場が悪くなるからって言ったんですけど……あの人も身体能力が凄くて振り切られたんです!」

 

 

 (演技で)少し息を切らせながら言うキラをマードック他整備班も信じたのか、その後に続いたストライクでの追撃許可を現場の判断で出すことに。

 エアロックを開けるレジェンドが「計画通り」とほくそ笑んだのは内緒だ。それはサーガやレイトがすべきことのような気がする。何故かは分からないが。

 

 

 

 

 

 ブリッジでもそのことはすぐさま伝えられた。アドバイザーとして先の先遣隊の生き残りであるコープマンもそこにいる。

 

 

「沙耶さん?が出ようとしてるですって?」

 

『しかも嬢ちゃんまで一緒なんだと!俺が格納庫についた頃には準備が終わって、坊主がそれを追いかけようと……駄目だ!もうエアロック開けられちまった!』

 

「何だと!?」

 

「その沙耶という人物は?」

 

「ウルトラ騎空団所属の人物です。妙に弁が立つというか、我々にあまり良い感情を持っていないと言いますか……」

 

 

 マリューからそう言われたコープマンは、先の事態から尚の事こちらには悪印象しか無いだろうと推測する。この場合、下手に止めればアークエンジェルを標的にしかねない。

 

 

「……ブリッジから呼び掛けるより、ストライクに追跡を任せた方が無難かもしれん。ウルトラ騎空団……彼らは生身でも各々が十分過ぎる戦闘力を持つのだろう?もし彼女の行動が彼らの総意だった場合、妨害すれば逆に彼ら全員を敵に回す可能性もある」

 

「それはっ……でしたら、団長であるレジェンドという人物を問い詰めて――」

 

「バジルール少尉、先刻の事を忘れたのか?既に我々は人命優先という名目で彼らが保護した民間人の少女を許可なく人質同然に扱っている。これ以上ことを荒立てれば、それこそ取り返しのつかない事態へと発展するぞ」

 

 

 コープマンに言われマリューもそれに同意、格納庫のムウも納得する。正直、ウルトラ騎空団を敵に回したとすれば間違いなくアークエンジェルは敗北・撃沈もしくは奪取されるだろう。しかもキラが離反する可能性だってある。それを考慮したナタルは、仕方なくストライクへと望みを託すしかない。

 尤も、キラもこの引き渡しに関わっている以上、その望みが叶うわけが無いのだが。

 

 

 

 

「足つきからのMS発進を確認!」

 

「はあ?」

 

「ストライクではなく、ヘリオポリスで確認された機体です!」

 

 

 相変わらずストライク以外で出てくる機体が定まらない、訳の分からん艦だとアデスは思う。今回に限っては出撃タイミングも理由も不明……ますます頭を悩ます案件だ。

 戦闘配備を打診しつつ、MS部隊に発進準備をさせようとしたところ、発進してきた機体――ガンダムXから放送が伝わる。

 

 

『こちらウルトラ騎空団所属のMS、ガンダムX。ラクス・クラインを同行、そちらに引き渡すわ』

 

「「「「「!?」」」」」

 

「おや、アレのパイロットが女性とは予想外だ」

 

 

 まさかの事態にヴェサリウスのブリッジは騒然とするが、何処ぞ発禁天司は機体のパイロットが女性であることに注目していたりする。脈無しなのは分かりきってるだろうが、本人もそこはどうでもいいらしい。

 

 

『ただし、ナスカ級は艦を停止。イージスのパイロットが単独で来るのが条件の一つ。破られた場合、彼女の生殺与奪の権利はそちらが放棄すると見なし、引き続きウルトラ騎空団の方で預かることとする』

 

 

 そこで終われば引き渡し後に間髪入れず攻撃を再開出来ただろうが、月王国の女王である沙耶はそこまで甘くない。

 

 

『それから引き渡し後、ナスカ級はイージスのセンサー範囲外まで後退。さらに本機や本機を追ってきているストライクがアークエンジェルへと帰投するまで、イージスはその場で待機。これも条件よ。安心しなさい、引き渡し後はこちらもこの場では攻撃しないし、させもしない。尚、この条件開示後、イージスが出撃してきた場合はこれを呑んだものとする。しっかり考えてから答えを出しなさい。迅速にね』

 

「……こいつは一本取られたな」

 

「ああ。どうやっても我々には追撃させない気らしい。あのパイロット、女性とはいえ駆け引きというものを知っている」

 

 

 敵なのが惜しいな、とクルーゼは呟く。艦長のアデスとしては完全に信じることは出来ないのだがラクス、そしてキラも来るということを聞いたアスランが黙っていられるわけもなく、行かせてほしいというのでクルーゼやベリアルは行かせることにする。

 ここで別の策を強行して今後の動きを制限されるより、今回ばかりは引き下がろうと考えたのだ。

 

 同じ頃、アークエンジェルでもガンダムXを囮にザフトへの攻撃を進言していたナタルだが、運悪くブリッジに入ってきたレジェンドに聞かれ――ブリッジ全体にレジェンドが殺気を充満させつつ、額に青筋を浮かべて彼女の胸ぐらをつかむという事態が巻き起こっており修羅場になっていた。それを彼らは知る由もない。

 

 

 

 

 程無くしてヴェサリウスからイージスが発進し、引き渡しのためのポイントへと向かうとガンダムXは静かにシールドバスターライフルを構える。同じくして到着したストライクは、ビームライフルを構えつつも予定通りラクスに当たると大事になるとアークエンジェルへ伝え、一時的に通信を切った。

 

 

「コックピットを開き、名を名乗りなさい」

 

 

 沙耶のその言葉に、アスランは素直にイージスのコックピットを開いて所属と名前を名乗る。

 

 

「ザフトのクルーゼ隊所属、アスラン・ザラだ」

 

「キラ、彼がアスランで間違いないかしら」

 

「はい」

 

「次は貴女ね。ちゃんと話して、自分が本物だと証明なさい。偽物や影武者と思われて撃たれでもしたら大変でしょう」

 

「分かりましたわ」

 

 

 キラとラクスの声にアスランは少しだけ身を強張らせるも、ガンダムXのコックピットが開いてその中からクリアケースとハロを抱えたラクスがいつもと変わらぬ笑顔で声を掛けてきた。

 

 

「こんにちは、アスラン。お久しぶりです」

 

「ッ……確認した」

 

「なら彼女を連れていきなさい……ってこのままじゃ少し不安かしら。ラクス、軽く押し出してあげるから彼に受け止めてもらいなさい。貴方もいいわね?」

 

「え?あ、ああ……」

 

「お願いします、沙耶様」

 

 

 まさか敵にそんなことを言われるとは思わず、素っ頓狂な声を出したアスラン。それを見ていたキラはクスッと笑い、ラクスは沙耶に押されて宇宙空間をゆっくりと進みアスランに受け止められた。やっぱりお腹の部分を見て驚いたのは言うまでもない。

 

 

「色々とありがとう。キラ、ウルトラ騎空団の皆様……それにアスラン、貴方も」

 

「次からはしっかり護衛を付けなさい。今回のような運の良いことになるとは限らないのだから」

 

「はい、肝に銘じます」

 

 

 にっこり笑うラクスと、本当に分かっているのか不安な沙耶を見つつ、キラは沈黙を守る。そんなキラに対し、アスランが呼び掛ける。

 

 

「キラ!お前も一緒に来い!」

 

「……!」

 

「お前が連合……地球軍にいる理由がどこにある!?それに貴女も!危険を承知でラクスを引き渡しに来てくれるような貴女が地球軍にいる必要はない!俺も全力で弁護を――」

 

「僕だって……君とは、戦いたくない。だけど……」

 

 

 キラの脳裏に浮かぶのは、共に学んだトール達学友。複雑な立場にいる自分を肯定し、真っ先に庇ってくれたダイゴ。そしてレジェンドを始めとするウルトラ騎空団や、捕虜的な立場ながら親交を深めたミゲルやラスティ。

 まだ出会い、過ごした時間は長くはない……しかし、とてつもなく濃密で充実した時間。そんな彼らがいるアークエンジェルをキラは見捨てたり出来るわけがない。

 

 

「あの艦には守りたい人達が……友達が、大切な人達がいるんだ!!」

 

「ッ……ならば仕方がない……次に戦う時は、俺がお前を撃つ!」

 

「僕もだっ……!」

 

 

 お互いに譲れぬものがある。守りたいものがある。故に、手を取り合いたくとも出来ない――そんな状況に歯痒さを感じつつ、沙耶も返事を返す。

 

 

「私もそちらには行けないわ。でも一つだけ勘違いしないでほしいのは、私達は成り行きで貴方達と戦っているけれど地球連合に協力してるわけじゃない。ただ降り掛かる火の粉を払っているだけよ」

 

「それは……」

 

「貴方も見たでしょう?あの化け物を。きっとこれから先、貴方達はこれからあんな化け物を何度も見ることになるわ。私達ウルトラ騎空団はあれらと戦うためにこういった戦力を保持しているの」

 

「何だって……!?教えてくれ!あれは何なんだ!?」

 

「先生は円盤生物と言っていたわ。気を付けなさい。あれはナチュラルやコーディネイターなど関係なく襲ってくる」

 

 

 それだけ言って沙耶はガンダムXを反転させ、ストライクを伴いアークエンジェルへと帰っていく。

 アスランとラクスは沙耶に告げられた事実に衝撃を受けつつ、小さくなっていく二機を見えなくなるまで見つめていた。

 

 この日――キラとアスランは袂を分かつ。

 

 同時にアスランは知る。この世界に現れ始めている恐るべき存在(モノ)達を。

 

 

 

〈続く〉




レジェンド、何とか抑えた……と思ったら最後の最後でブチ切れました。タイミング悪すぎィ。

原作と違い、フレイが多少の罪悪感を持ったり、キラがフレイに何も感じなかったり(怒りは別)と色々ありますが、一番の変化は……



ラクスがデュエリストとなったことだ!(違)

そして安定の用心深い沙耶さん。発禁天司と狂気仮面の策を完封しました。ちゃんとコックピットではパイロットスーツ着てます、ガヴァドン寝袋じゃございませんよ!

次回は一旦戦闘から離れて小話になるかな。種割れ準備他もあるし。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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