ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

264 / 301
お待たせしました。職場で欠員が出たためその穴埋めに、更に年度末も加わって忙しくなり思うように進みませんでした。申し訳ない。

サブタイトルでお分かりでしょう、あの武器が遂に解禁されます。その武器と同名の曲を準備してお読み頂けると臨場感が増すかと。


それでは本編をどうぞ。


月は出ているか?

 北アフリカの砂漠の一角――

 

 一人の男が珈琲を片手に、双眼鏡でアークエンジェルを見ている部下に声をかけた。

 

 

「どうかなぁ、噂の大天使の様子は?」

 

「は!依然何の動きもありません」

 

「地上はNジャマーの影響で電波状況が滅茶苦茶だからなぁ。ただアズナブル隊とか、最近だとオーブで活動してるっていう謎の傭兵団も頭一つ抜けた技術力を持ってるって話だし、油断は出来ないか。ん!?」

 

「何か!?」

 

 

 男が何かに気付き、それに反応し通信先の士官も身を強張らせる。しかし、その理由はアークエンジェルとは別のところにあった。

 

 

「いや、今回はモカタマリを5%減らしてみたんだがね、こりゃあいいなぁ。ラルさんとか気に入ってくれるといいんだが」

 

「驚かせないで下さいよ……いつもの珈琲ですか」

 

 

 肩をすくめる部下に笑いつつ、男は指示を出す。

 

 

「では、これより地球軍新造艦アークエンジェルに対する作戦を開始する。目的は、戦艦及び搭載MS……いやMSじゃなさそうなのも混じっているらしいから、艦載機でいいか。それの戦力評価である」

 

「倒してはいけないのでありますか?」

 

 

 男に問いかける部下の兵士、そしてそれにつられて他の兵士からも笑い声が上がる。別に男を馬鹿にしているわけではなく、自分達ならそれが造作もないと言わんばかりの自信からだ。部下達の反応に、男は「んー」と顎に手を当てて少し悩み――。

 

 

「その時はその時だが……あれは遂にクルーゼ隊が仕留められず、ハルバートンの第8艦隊がその身を犠牲にしてまで地上に降ろした艦だぞ?それを忘れるな。一応、な」

 

 

 そこから更に男は本題だと言わんばかりの真剣さを持って続ける。

 

 

「それからもう一つ、あの艦にはアズナブル隊を退けたというとんでもない連中……降下時に分断されたらしいから全部ではないだろうが、そいつらも乗っているとの情報もある。個人的にはそっちが要注意だ。なんせ下手すりゃ機体性能も技量もアズナブル隊を上回るんだからな。一応救いと言っちゃ何だが、あのサザビー・リビルドを負かしたって奴はあそこにはいないそうだ。ま、逆に言うとそれぐらいしかこっちのプラスになる要素は無いってことだからな。妙な動きをしたら無理に突かず生き残ることを優先しろ。では、諸君の無事と健闘を祈る!」

 

「総員、搭乗!」

 

 

 男の言葉に続き、部下――おそらくは副官なのだろう人物の号令を聞き、すぐさまMS……バクゥとドートレスに搭乗していく。ドートレスは正確に言うとドートレスHM(ハイ・モビリティ)“ファイヤーワラビー”……つまり性能向上版だ。

 

 無論、男も部下と共にジープに乗り込む。

 

 

「ん〜、珈琲が旨いと気分がいい。さ、戦争をしに行くぞ!」

 

 

 男――砂漠の虎と呼ばれたザフトの名将、アンドリュー・バルトフェルドは軽く、しかし重い言葉でその場を締め括った。

 

 

 

 

 アークエンジェル・ウルトラ騎空団部屋――

 

 

 「……ん……」

 

 

 身をよじらせながら目を覚ましたのは、先刻まで意識を失っていた沙耶。凄く懐かしい夢を見た気がするが、とりあえず現状把握しなければと思い、気怠さが残る身体を起こすと――。

 

 

「煉獄龍オーガ・ドラグーンで攻撃!煉獄の混沌却火(インフェルニティ・カオス・バースト)!」

 

「俺のヒートライオォォォ!二回目ェェェ!」

 

 

 やっぱり決闘(デュエル)していた。今回は一誠とキラ。

 

 

「畜生何でヒートライオだけフィールドに残ってると決まって相手が大型モンスター出してくんだよ!フラグか!?敗北フラグなのか俺のヒートライオ!?」

 

「もう台詞でそれっぽくなってるわよイッセー」

 

「マジすか部長!?」

 

「いや何度かパイロ・フェニックス出せる機会あっただろ」

 

「そうなんだけどさ……あれは相手もリンクモンスター使ってないと本領発揮出来ねーし」

 

「あー……」

 

 

 ガックリ肩を落とす一誠に対し、ハイタッチしてるダイゴとキラ。ちなみにタッグデュエルしたところ、ダイゴとキラが誇るWインフェルニティデッキの異常なまでの回転率で一誠とタイガはフルボッコにされたという。

 

 いつも通りの光景だ、と納得した沙耶はアズが持ってきてくれた卵粥を食べつつ現状を把握する。

 

 

(先生は……そうか、あの時……)

 

 

 ウルトラ騎空団において入団時に知己の者はレジェンドと勇治のみ。勇治は度々侍女が話題にしていたし、その功績から知っているぐらいだが、レジェンドは別だ。

 母親のモルガンとも親しく、妖精騎士達さえ頭を下げる程の人物にして僅かな期間だったが指導されたことがある。ついでに本気モードのメリュジーヌを拳骨一撃でダウンさせたのを見た時は自分だと死ぬんじゃないかと恐怖した。

 

 つまり、月王国規模でそこそこ親密な付き合いだったわけだ。

 

 パイロットとして、指揮官として、単純に経験豊富な先達として……正直レジェンドに頼りがちだったと自分でも理解している沙耶だが、状況が状況だけにそれも仕方のないことだろう。

 だがいつまでも気落ちしてはいられない。レジェンドだけでなく、ウルトラ戦士としては「三分の一人前」と呼ばれているもののパイロットとしては間違いなくエース級なゼットもいないのは痛手だ。レジェンドと一体化(もはやそう言っていいのか判断に困るが)している以上、当然ではあるのだが。

 

 

(あの機体……デュエル、だったかしら。かなりの執念だったし……そっちほどではないにしても、バスターも)

 

 

 おそらくだがゼットには然程執着しないかもしれない。なにせ不可思議な力場で身動き取れなくされたところに手痛い一撃を叩き込まれたのだ。苦手意識が刷り込まれた可能性が高い。

 ……が、一誠とリアスはそうもいかないだろう。バスターの方は単純に何度もやり合って仕留められなかったから、が妥当か。こちらはまだいい。

 問題はデュエル。元々血気盛んなのか、一度一誠のゲシュペンストに凄まじい一撃をブチ込まれ撤退させられてからその執念に拍車がかかったように見えた。

 

 沙耶が思考を巡らせていると、キラ以外はどうやらブリッジで交代の時間だったらしく「また後で」と部屋を出ていく。

 

 

「そういやパイロットは哨戒任務とか無けりゃ待機なんだよな。今のうちに少し横になっとこうぜ」

 

「そうだね。明かり消して、タオルをアイマスク代わりにしたりして仮眠を取っておこうか」

 

「さっきまで寝てた沙耶さんは?」

 

「大丈夫……だけど、あれは体調不良で仕方なく、だったから。一応普通に寝ておきたいわね」

 

 

 とりあえず、満場一致で仮眠を取ることに決まり、明かりを消すとそれぞれ布団に入って各々の方法で眠ろうとする。

 

 ――彼らが警報によって叩き起こされるハメになるのは、全員が眠りに落ちてから少し経ってからのことであった。

 

 

 

 

 

 

 ミリアリア達が交代としてブリッジに入り、計器類を見ていると何やら不可思議な反応を確認する。

 

 

「……?何かこの辺り磁場がおかしくないですか?」

 

「何?」

 

 

 同じくブリッジにいたナタルが確認すると、誤差範囲内ではあるが計器類に異常が見られた。

 

 

「砂漠の熱対流などでそんなことが起きるなど聞いたこともないが……警戒しておくに越したことはないな。もしさらなる異常を感知したらすぐに報告しろ。くれぐれも自分達で何とかしようとは考えるなよ」

 

「了解しま……あっ!」

 

 

 磁場関係で発見が遅れてしまったが――

 

 

「本艦、レーザー照射されています!照合……測的照準と確認!」

 

 

 アークエンジェル側もザフトが仕掛けてきたことに漸く気付く。静かな夜は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 ブリッジよりアークエンジェル全域に第二戦闘配備が発令される。無論、これにより休息を取っていた面々も急遽起こされることとなった。一応ウルトラ騎空団は客員扱いであるため強制されることはないのだが、大音量で鳴り響けばそれこそ超弩級メンタルでもない限り寝ていられるわけがない。

 

 

「っんだよ、良い感じに眠れたとこだったのに!」

 

「第二戦闘配備……!?」

 

 

 苛立つ一誠や困惑するキラらを尻目に、起こされてブリッジに入ったであろうマリューから新たな指示が出された。

 

 

『第一戦闘配備発令!機関始動!フラガ少佐、ヤマト少尉は搭乗機にてスタンバイ!』

 

「!」

 

「二人に指示……ってことはザフトだね。俺もスタンバっとくよ、サーガ様」

 

「頼む、三日月。地上戦、特に熱対流も気にしなければならない地形では物理攻撃主体のバルバトスが要となる」

 

「となると、他にまともな活躍が出来そうなのはダブルオークアンタぐらいじゃないかしら……」

 

「ビームでも出力が並外れた武装であればあまり問題はないだろうが……どのみちそれだけの威力を持つ武装は限られているからな。先輩のアルトやアマリとルリアのゼルガードがいればこの状況にうってつけなんだが、無い物ねだりしても仕方がない」

 

 

 全武装が実弾なアルトアイゼン・リーゼ、ドグマによる特殊な攻撃方法を持つゼルガードは正しくこの場で真っ先に欲しい戦力だった。特にゼルガードは常時飛行可能な点もアドバンテージである。

 

 

「ともかく、搭乗機にてスタンバイと言われたからには現状があまり宜しくないということだろう。一応三日月以外の者も何かあったら対処出来るよう準備をしておいてくれ」

 

 

 そう言うとサーガは三日月とキラを連れて格納庫へ向かう。

 

 

「俺、援護射撃とか苦手だしな……誤射しそうでさ」

 

「イッセーもか?俺も中距離とかならいいんだけど」

 

「しのぶさん、私達のヒュッケバインはそこそこやれそうだと思うけど……」

 

「決定打に欠けるので母艦の防衛が精々でしょうね。こちらはまだGインパクトキャノンもありませんし」

 

 

 そういった会話に集中していたこともあったのだろう。沙耶が部屋を出ていったことに気付いたものは、その時誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 ブリッジでは既に数多の指示が飛び交っており、そこへ出撃準備を終えたサーガから通信が入る。

 

 

『こちらダブルオークアンタ、サーガだ』

 

「副団長さん!?」

 

「「「「「!」」」」」

 

『準備完了させてからで済まないが、俺は先輩のような指揮官としての能力は恥ずかしながらあまり持ち合わせていない。良くて小隊長クラスだと自分では思っているからな。俺のクアンタなら相手の攻撃にもGNフィールドである程度何とかなる。敵戦力を見定めるためにも俺が先行しようと思う』

 

「本当に何から何までお世話になりっぱなしね……分かりました、お願いします」

 

『了解した。おそらく敵はこの地形で有利な機体を寄越してくるはずだ。警戒を怠らないでくれ』

 

 

 マリューが頷くと、ミリアリアはナタルからの指示を受けハッチを開放。続けて発進をオペレートする。

 

 

「えっと……ツインドライヴ正常稼働、粒子放出状況ノープロブレム、それから……ダブルオークアンタ、発進タイミングをサーガさんに譲渡します!どうぞ!」

 

 

 いつもと違うアナウンスをしたミリアリアにマリューらはハテナマークを飛ばすが、サイやトールなどは話を聞いていたため納得。

 

 

『了解。ダブルオークアンタ、出撃する!』

 

 

 ストライクやバルバトスに先んじて、ダブルオークアンタが砂漠の夜空へと緑の粒子を放ちながら飛翔した。

 

 

 

 

 ダブルオークアンタの出撃、無論その様子はバルトフェルドらにも確認されている。

 

 

「あれは……名称不明ですが報告にあった粒子を放つ機体ですね。降りてくる前はパッカード教官と近接戦闘で互角にやり合ったとか」

 

「いきなりとんでもない奴が出てきたな。にしてもブースターや飛行ユニットらしき装備も無しにどうやって単独飛行を行ってるんだあれは」

 

 

 疑問に思うバルトフェルドだが、それを気にしてばかりでは作戦が進まないと考え部下に指示を出した。

 

 

「噂のストライクでないのは残念だが、まあいい。バクゥを出せ!反応を見たい。ドートレスはそのまま待機、ただしエンジンは暖めておけ」

 

 

 バルトフェルドの指示を受け、猟犬をイメージしたかのような四足型のMSバクゥが一斉に飛び出し、一直線にアークエンジェルへと向かっていく。

 

 

 

 

 

「あれは……変形したフラウロスと同じ四脚型……!地上戦特化のMSか!」

 

『ザフト軍MS、バクゥと確認!』

 

「やはりか……!」

 

 

 砂漠をホバーで高速移動するバクゥに対し、ダブルオークアンタは常時空中で戦闘を行うことで地形によるディスアドバンテージを無くしている。とはいえ、砂漠という地形はそれ自体を武器とすることが可能だ。砂塵で目くらましなど常套手段。

 

 

 

 

 

「あの機体、あの剣がライフルにもなるのか。それにしても、この状況下で威力が然程減衰しないライフル級のビーム兵器なんざ尚更珍しい。こりゃあ技術班が捕獲してこいとうるさそうだ」

 

「シールド?に装備されているアレは何でしょうか?」

 

「さてな。バクゥも飛びかかる形で空中へ攻撃は出来るが……常時滞空ってのはやっぱり厄介だ。しかし向こうも攻めあぐねているのは同じ……ん?」

 

 

 バルトフェルドが双眼鏡を覗くと、アークエンジェルからバルバトスとソードに換装したストライク、ついでにメビウス・ゼロの代わりとなるスカイグラスパーが出撃した。尤も、スカイグラスパーは偵察目的なのだが。

 

 

「戦闘機はいいとして……漸くお出ましか、ストライク。だがヤバそうなのはあっちのフレームが一部剥き出しの獣みたいなMSだ。ドートレス各機、戦闘用意!油断するなよ、こいつは勘だがストライクと一緒に出てきた奴は並じゃない!身の危険を感じたら機体捨ててでも逃げろ!戦争ってのは命あっての物種だ!」

 

 

 

 

 

「剣にしたんだ、装備」

 

「はい。アグニは強力だけど、バッテリー消費が激しくて……敵MSのあの動きを見たら確実に当てられる自信もないし」

 

「良い判断だと思うよ、俺は。ああいう奴って、カウンター狙いが一番だしね」

 

 

 そんな会話もそこそこに、二人は迫るバクゥを見据える。

 

 

「キラは向かってくる奴だけを狙えばいいよ。無理に突っ込まなくても連中の動きって早いけど限定されてるから」

 

「確かに……形状を考えると人型以上に可動域制限があります」

 

「そういうこと。アークエンジェルは任せた」

 

 

 短く告げると、バルバトスは人型であるにも関わらず機敏な動きで砂地を駆け抜けバクゥを肉薄する。

 

 

「なっ!?バカな!ここでバクゥを人型が捉えるなど――」

 

「うるさいよ、お前」

 

 

 敢えて砂漠を狙ってレンチメイスを振り下ろし、足元を吹き飛ばしてバランスを崩させるとレクスネイルでバクゥの頭部を容赦無く突き刺し、力任せにぶん投げると途中でパイロットが脱出。無人となったバクゥは砂漠に叩きつけられると爆発を起こす。

 

 

 

 

 

「あのMS……バクゥ相手に自分から接近戦へと持ち込み、かつ捉えて瞬殺するとは。強いて言うなら獣人型とでも言うのかね、あのバクゥ以上に獰猛な機体は」

 

「落ち着いてる場合じゃないでしょう!?どうします隊長、今のままじゃ奇襲とか裏をかこうとしても無理ですよ!」

 

「分かってる。焦って頭の中をごちゃまぜにするな。ドートレス、総員発進!バクゥと連携を取りつつ現状を打破しろ!それからレセップスに打電だ。戦艦を主砲で攻撃させろ!噂の連中、まだ出撃せず艦内にいるかもしれんからな!」

 

 

 待ってましたと言わんばかりに、待機していたファイヤーワラビーが出撃する。ホバークラフト搭載の脚部で砂漠を滑走し、バクゥに続いてアークエンジェルとウルトラ騎空団を攻め立てていく。

 

 

 

 

 

「あれは……新型か!?」

 

「人型で砂漠を自在に動けるMS!?」

 

「頭部を始めとした全体の形状が、今までのザフトの機体とはまるで違うな。技術が進んでいるのは地球軍側だけではないということか……!」

 

 

 ノイマンやトールが驚き、ナタルもライブラリから照合するも似たような機体が存在しない、新しいカテゴリの機体だと知るとモニターのファイヤーワラビーを睨みつける。

 

 そして、そこへ長距離砲撃が叩き込まれてきた。

 

 

「うわあぁぁぁ!」

 

「くぅぅぅっ!」

 

『ラミアス艦長、大丈夫ですか!?』

 

「ええ……!本艦の近辺に着弾したけど、直撃はしてないわ。砲撃してきた相手との距離は!?」

 

「南西、20キロの地点と推定!」

 

(ダブルオークアンタのトランザムライザーソードならやれないことはないが……)

 

「本艦の攻撃装備でも対応出来ません!」

 

 

 他の機体でも厳しい距離だ。サーガが考えているようにダブルオークアンタのトランザムライザーソードであれば問題無く届く。ただ確実性で言うならこちらにいないゼットのZガンダムがウェイブライダーである程度まで近づき、ハイパー・メガ・ランチャーで狙撃するという戦法が無難……本当に向こう側に欲しい人材が集中してしまったというか。

 

 

『俺が行って、レーザーデジネーターを照射する!それを目標に――ん!?』

 

 

 ムウが打開策を提示しようとした時、新たにアークエンジェルから戦場へと現れた機体があった。

 

 沙耶のガンダムXだ。

 

 

「あれは……!彼女はまだ病み上がりでしょう!?」

 

「沙耶お姉様!?下がって下さい!」

 

 

 

 

 

「私……何で出撃したのかしら……こんな地形での戦闘なんてウルトラウーマンとして以外で行ったことないのに。それとも――!?」

 

 ――貴女と、そのガンダムなら出来る――

 

 

 沙耶の頭に聴こえてくる謎の声――声の感じからして少女だろうか。

 

 

「出来るって……!?」

 

 ――力を怖がらないで。貴女が、貴女とそのガンダムがどうあろうとするかは貴女次第だから――

 

「私、次第……」

 

 ――大丈夫。月は、いつもそこにある――

 

 

 その言葉を最後に声は聴こえなくなるが、同時にモニターには『フラッシュシステム』の文字が表示される。

 

 

「フラッシュシステム……?それがこの機体のブラックボックス……違う、まだ先がある。これは……」

 

 

 『サテライトシステム』

 

 

「サテライト……月……まだよく分からないけど、月が絡むのであれば私の能力は問題無くいけるはず……!」

 

 

 沙耶は月にまつわる様々な力を己が能力で行使することが可能。この機体に何か月が関係するシステムを搭載しているのであれば、レジェンドが自分にこれを託したことに納得がいく。

 

 

「この状況を打破する可能性……!背中のキャノン砲、今なら……!」

 

 

 ガンダムX――いよいよその切り札が紐解かれる。

 

 背部のリフレクターがX状に展開され、長身砲を肩に担ぎつつ展開されたグリップを掴むガンダムX。そして突如、月から何かのレーザーがガンダムXの胸部へと当てられる。

 

 

 

 

 

 その光景はアークエンジェル側だけでなく、ザフトや……レジスタンスである『明けの砂漠』の者達にも見えていた。

 

 

「あれは……何だ!?」

 

「分からない!私もあんな機体は知らない、少なくともヘリオポリスで開発していた機体ではないぞ!」

 

「そんなものが何故アークエンジェルに……」

 

 

 

 

 

「隊長、あの機体……何をしようとしているのでしょうか」

 

「今のレーザー、何かの信号か?だとすれば……!」

 

 

 バルトフェルドは歴戦の猛者の勘とでも言うべきか、ガンダムXがこれから行おうとしていることの恐ろしさを直感的に感じ取った。

 

 

「レセップスに急いで打電だ!その場から後退するように動け!だがそのまま後退ではなく左右どちらでも構わんから横に避けろとな!」

 

「隊長!?」

 

「拙いぞ……!俺の勘が正しければあいつはとんでもないものを撃ってくる!!」

 

『ならばその前に叩けばいいだけの話です!』

 

『連合の新型か何か知りませんが、所詮ナチュラルが乗った機体!すぐに落としてみせます!』

 

「いかん!よせ!!」

 

 

 バルトフェルドの制止も聞かず、ザフトのMS部隊は真正面からガンダムXへと迫る。

 

 

 

 

 

 一機のMSに対し複数で迫るMS。普通に考えるなら余程高性能かパイロットの腕が優れているかしなければまず助からないのは誰でも分かることだ。

 

 

「次、4.03秒後にマイクロウェーブ……次元貫通!?」

 

 

 マイクロウェーブ云々はともかく、それが次元貫通で送信されてくることに驚く沙耶。先のレーザー……照準用レーザーもそれであった。

 このガンダムXに搭載された『サテライトシステム』は、惑星レジェンドの存在する宇宙・星系にある月に建造されたマイクロウェーブ送信施設から送信されるスーパーマイクロウェーブを使用する。そのシステムを使うための機体登録認証に使うのが『フラッシュシステム』(尤も、これだけの用途ではないが)だ。

 そういった事情もあって、次元間使用が可能なそのサテライトシステムはその世界の月を媒介にして次元間転送送信を行うため、月が出ていなければ使用が出来ない欠点があった。

 

 そしてその封印が今、解き放たれる。

 

 他の者には月そのものから光がガンダムXへと照射されたかのように見えただろう。マイクロウェーブ送信施設から送信されたそれは、月と地上を結ぶ巨大青き光の柱となってガンダムXへと降り注ぐ。

 それは背面のリフレクターによって膨大なエネルギーへと変換され、急速に砲身へと充填されていく。

 

 

「マイクロウェーブ、エネルギーへ変換及び充填完了……!これでっ!」

 

 

 バクゥ、そしてファイヤーワラビーの猛攻にも怯むことなく、ガンダムXはその場から一歩も下がらない。既にチャージは完了され、あとはトリガーを引くのみ。

 

 ――サテライトキャノン。

 

 ガンダムXに搭載された最強最大の決戦兵器。レジェンドから概要を聞いていたサーガは三日月やキラ、ムウへと急遽通信を送る。

 

 

『各機!急いでガンダムXの射線上から()()()離脱しろ!!』

 

『っ……!』

 

『何だか分からんがヤバそうだな!』

 

 

 三日月はサーガの言葉故に疑うはずもなく、キラとムウも直感的にその言葉の意味を理解し、バルバトスとストライクはガンダムXの背後へ、ダブルオークアンタはスカイグラスパーが退避しきれないかもしれないと考慮し、急ぎ抱えて急速離脱。

 

 そして――

 

 

 

 

 

「いっ……けえええええ!!」

 

 

ズギュオオオオオン!!!

 

 

 

 

 

 MSの――否、戦艦でさえも大抵持つことの叶わぬ圧倒的な光の奔流がサテライトキャノンより放たれた。予想外どころではない、想像さえつかなかった――『暴虐の光』とも言うべきそれに、ザフトのMSは絶望するしかなかった。

 

 

「な……何だこの兵器は!?」

 

「駄目だ!耐えられ……!」

 

「範囲が広過ぎる!回避が……」

 

「い……嫌だ……!」

 

「「「「「うわあああああぁぁぁ……!!」」」」」

 

 

 光に飲み込まれ、爆散していくバクゥとドートレスHM『ファイヤーワラビー』。さらに光はその爆発さえも消し飛ばし、威力を殺さぬままレセップスへと向かう。事前警告もあり、間一髪レセップスは小破で済んだものの、レジスタンスが仕掛けていた地雷諸共大きく砂漠を抉ったサテライトキャノンのビームは、戦闘中のバクゥとファイヤーワラビーを全て消滅させてしまった。

 

 

 

 

「な……あ……」

 

「……戦力評価に来たつもりが、全滅……いや、殲滅とはな。しかもこちらがされる側。大目玉なんてもんじゃない、甚大な被害を被った。ダコスタ、撤退だ。散っていった部下達に弔いや黙祷を捧げてやりたいが、ここに留まっていれば第二射が撃たれるとも限らん。そうなれば次はレセップスか、俺達か……」

 

 

 部下――ダコスタはバルトフェルドの表情を伺う。さすがに今の光景……サテライトキャノンの威力に加え、部下達がまとめて消滅という形で戦士したことに強い衝撃を受けたのか、冷静ではあるが暗く意気消沈しているのが見て取れた。

 

 

「……了解です、隊長」

 

「戦争とはいえ、割り切れんもんだな。こっちが仕掛けた側なんだが……ああも簡単に命を消し飛ばされるのは」

 

 

 満月の浮かぶ夜空を仰ぎ、バルトフェルドは腕で目元を隠す。それで隠すのは涙か、悔恨の念か――。

 

 

 

 

 あまりの光景に絶句していたアークエンジェルとウルトラ騎空団。ふとしたことでミリアリアが気付く。沙耶がかの低軌道会戦にて不調を感じ始めたのは敵機を撃破してからだと。それを思い出したミリアリアは急ぎ沙耶へ通信を試みる。

 

 

「沙耶お姉様!大丈夫ですか!?」

 

『あ……あ……』

 

 

 懸念は現実のものとなった。明らかに沙耶の様子がおかしい。すぐに全機に通信を共有した瞬間、それは同時に起こった。

 

 

『ああああああああ!!』

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 沙耶の絶叫が木霊する。彼女は命を奪う覚悟などとうの昔に決めていた。であればそれでこの叫びは異常だ。

 

 

『おい!あの嬢ちゃんどうしたってんだ!?苦しみ方が尋常じゃないぞ!!』

 

『まさか、これは……!』

 

『ヤバイよサーガ様。とりあえずガンダムXを収容するから』

 

『沙耶さん、しっかり!落ち着いて!』

 

 

 出撃したムウ、サーガ、三日月、キラが口々に沙耶を気に掛ける。素早い判断でバルバトスとストライクが、キャノンを戻して棒立ち状態のガンダムXを支えつつアークエンジェルの格納庫へ収容した。

 

 そして、その直後――

 

 

 

 

 

キシャアアァァァオォン!!

 

 

 

 

 

 虹色の光が砂漠の下から放たれたと思うと、少し離陸していたアークエンジェルは再び砂漠へと着陸させられ、徐々にそこへと引き寄せられていく。

 

 

「どうした!?」

 

「計器類に異常!強力な磁場がこの先に……!?」

 

「何が……あ、あれは……!?」

 

 

 マリューを始めとしたクルーが見たもの、それはアークエンジェルが徐々に引き寄せられている場所には大きな凹み……所謂蟻地獄のようなものが出来ており、そこからあまりにも巨大な鋏のようなものが突き出ていた。

 

 

「ま、まさか俺達……あれに粉々にされるとかないよな……!?」

 

「何だあれは……!?地球上にあんな巨大な生命体など存在するはずが……」

 

 

 そこまで言ってナタルは気付く。宇宙空間で遭遇したスコーピスやシルバーブルーメ……あれと同類なのではないかと。特に前者の方に。

 

 

『くそ!偵察目的だったからまともな武装を積んじゃいねえ!』

 

『させるか!』

 

 

 スカイグラスパーは武装が使用不可、そのためダブルオークアンタがGNソードⅤをライフルモードにして銃撃すると、一時的に虹の光――磁力光線が遮断されるが、何故か今度はアークエンジェルがその場で砂漠の下へ沈んでいく。まるで何かに導かれるように。

 

 

『アークエンジェル!どうした!?』

 

「分からないわ!ノイマン少尉!」

 

「駄目です!先の磁力とは違う何かで、操舵を受け付けません!」

 

「何ですって!?」

 

「艦全域を隔壁閉鎖!重要区画の安全を最優先に確保しろ!」

 

 

 ナタルが間髪入れず指示を出す。そのままアークエンジェルは砂漠へと完全に飲み込まれ、通信さえも繋がらなくなってしまった。

 

 

 

 

 

「なんてこった……こりゃ向こうだけじゃなく俺らもヤバいぜ。こんなとこで立ち往生なんてどれだけ保つか。緊急出撃だから万が一の時のサバイバルキットも積んでねぇぞ」

 

「こちらはともかくそちらの燃料も心配だ。せめて落ち着ける場所だけでもあれば……」

 

 

 残されたムウのスカイグラスパーとサーガのダブルオークアンタ。今後以上に現状直面した問題をどうすべきか頭を悩ませているとき、地上から声を掛けられた。

 

 

「おーい!そこのMSとMA!困ってるならこっちの話を聞かないかー!?」

 

「「!」」

 

「今からアジトまで案内する!少なくともあんた達は『虎』と敵対しているみたいだしな!ついて来い!」

 

「渡りに船ってのはこのことか?ま、仮に死ぬにしても野垂れ死にか殺されるかの違いだろうし、行ってみようぜ。副団長さん」

 

「ああ。アレについても聞かなければならないからな」

 

「……さっきの蟻地獄っぽいのにいた奴のことか」

 

 

 ジープに案内され、スカイグラスパーとダブルオークアンタはその場を後にする。

 

 アークエンジェル――反応消失(ロスト)――

 

 

 

〈続く〉




ガロードが出てくるかと思った?残念!ティファによるメッセージでした!

いやだってここは女の子+同じ能力的なアレで。むしろガロードが話したらティファがやきもちを焼く可能性もあったわけで。ついでにどちらかというと沙耶にとってのガロードがレジェンドみたいなもんで……。
ともかく、無事(?)サテライトキャノン発射→沙耶の精神にバックファイアしました。

直後に奴も現れましたが今回は顔出しのみ。砂漠に飲み込まれたアークエンジェル、その先は――ヒントはミンサガです。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。