ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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本編、お待たせしました。

SEED原作における『ペイバック(報復)』に相当する話ですが、明けの砂漠はあまりバルトフェルド隊に損害を与えていないのでこういうタイトルに。

しかも、書いてるうちに展開的に長くなると思ったためほぼ前後編扱いになりました。理由は本編内容にて。


それでは本編をどうぞ。


渦巻く悪意

 ――空が、タッシルが燃えている。

 

 それを聞いた明けの砂漠の団員達は急ぎ準備を終え、出発しようとしていた。

 

 一方でアークエンジェル組やウルトラ騎空団は次に取るべき行動を冷静に考えている。敵の敵は味方だからというわけではないが、いたずらに首を突っ込んでいいものか……。

 

 

「どう思います?」

 

「んー……砂漠の虎は残虐非道、なんて話は聞かないけどなぁ。でも、俺も彼とは知り合いじゃないしね。それでどうする? 俺達も行くか?」

 

「アークエンジェルは動かない方がいいでしょう。確かに別働隊の心配もあります。少佐、行っていただけます?」

 

「あ? 俺?」

 

「副団長さんのダブルオークアンタを除けば、スカイグラスパーが一番早いでしょ?」

 

「宇宙だったらリアスって子のシナンジュ……だったか。アレも相当なもんだけどなぁ」

 

 

 正直、大気圏内……つまり地上戦においては三日月のバルバトスは別として、別れて降下したペガサスA――レジェンド側に有効な戦力が集中していたのだ。

 

 ビームの減衰に対して実弾武器で固められたアルトアイゼン・リーゼ、抜群の機動力と射程を持つライン・ヴァイスリッター、豊富な武装と変形による臨機応変な対応が出来るZガンダム、そしてドグマを使用した地形に左右されない攻撃が可能のゼルガード……。

 更にここに、パイロットの連携によって絶大な戦闘力を持つガンダムデルタカイとリ・ガズィカスタム、サテライトキャノン程ではないが一撃必殺の威力と長射程を有し汎用性に勝るバスターライフルを備えたウイングガンダム(EW)も増援として加入している。しかもこの三機も変形機構持ち。

 

 この状況において、せめて一機でいいからあちら側の変形持ちが欲しかったと言わざるを得ないマリューであった。

 

 ……だが、彼らは知らない。

 

 燃えてるのはタッシルの街だけでなく、人々もだということを。

 

 そしてそれは砂漠の虎でも、ましてやザフトでもなくたった一人の……いや、『獣』によって行われていることを。

 

 

 

 

 燃え盛るタッシル。

 

 焼け焦げ、老若男女分からぬ屍の山。

 

 砂漠の虎――アンドリュー・バルトフェルドは絶句していた。彼だけではない……出撃したレセップスに属するザフトの全員がその惨状に言葉を失い、それを実行した悪魔のようなガンダムを呆然と見つめている。

 

 彼らはそこまでする気はなかった。確かに街を始め、食料や武器、燃料は焼き払う予定ではあったが……それは警告後、住民が避難する時間を与えた上で実行する手筈になっていた。

 

 だが目の前のガンダムとそれを操る者はそんなことなど一切考えず街を焼き、逃げ惑う人々を容赦無く殺戮し――笑っていたのだ。

 

 

「た……隊長……」

 

「普通なら止めるべきだろうな。だが……やり過ぎているとはいえ、奴がやっていることと似たようなことを我々はやろうとしていた。ただ直接命を奪うか否か……違いはそれだけだ」

 

 

 レジスタンスによる目立った被害は受けていない。先日の戦いでレジスタンスが仕掛けていた地雷に関しては、彼の部下の機体共々ガンダムXのサテライトキャノンで諸共消し飛んだ。もし地雷で被害が出ていたのならばもう少し気分に変化もあったのだろうが……バルトフェルドの表情は晴れない。

 

 

「彼らにしてみれば連合もザフトも変わらんのだろうな。宇宙からやってくるか、同じ地球の何処かからやってくるかの差しかない。しかし……これでレジスタンスがこちらに向けるのは憎悪しか無くなるだろう。ここまでされて黙っているとは思えん。ダコスタ、撤収する。あの機体にもそう伝えろ。もう十分過ぎるほどやったとな」

 

「は……え……」

 

「復唱!!」

 

「は、はいっ!! 総員、撤収!!」

 

 

 珍しく語気を荒らげたバルトフェルドに驚きつつ、ダコスタは撤収の指示を出す。

 

 

 

 

 

「おや、もう撤収とは。ンンンンンンン〜……拙僧、些か消化不良気味ですが仕方ありますまい。あまりはっちゃけ過ぎて主に迷惑が掛かるのは望ぬので。ええ、ええ、そうですとも。拙僧にとって()()優先すべきは主でありまする。そして何より主自身が()()でなければ気が済みませぬゆえ!」

 

 

 バルトフェルド達に続き、悪夢を引き起こしたガンダムとそのパイロットも引き上げる。

 

 その地に無数の瓦礫と骸を、人々の心に癒えぬ恐怖と傷を残して。

 

 

 

 

 ――オーブ――

 

 宰相家たるセイラン家の嫡男ユウナ・ロマ・セイランとウルトラ騎空団グランサイファー隊のリーダー格たるグラン……オーブとウルトラ騎空団の双方にとって見過ごせない人物が事件に巻き込まれた。

 

 これによりウズミが今まで提唱していた『地球圏外からの、悪意を持った侵略者』というものが現実味を増し急遽対策会議を開くことになったのだが、結果は言わずとも分かるだろう。

 

 元よりダイゴから齎されたこの情報を真摯に受け止め、考えていたのはウズミとカガリ親子にエリカ・シモンズなどごく僅か。

 他の政府関係者はウズミからの又聞きのため、大半が夢絵空事か妄想としか捉えなかった。

 

 その結果、ウルトラ戦士達が戦ってきた世界に存在していた防衛・特捜チームに比べて準備する機会や技術に恵まれていたにも関わらずその方面の対策が不十分だったのだ。

 

 それでいて戦争のことに関してはダイゴの齎した技術で連合に肩入れする者がいる始末……これではウズミが頭を悩ませ、カガリが怒りに震えるのも分かるというもの。

 

 

(ただ話されるだけでは信じられぬのも無理はない。だがダイゴ殿……彼は自分が持たされたもの――あのMSに使われている技術を提供してまで脅威に立ち向かってほしい旨を訴えてきた。あの機体性能は今のこの世界のMS、いや総合的な技術の面でも遥かに上をいくものだとすぐに分かる。それを目先の利益に使い、こうして懸念していた事が起きても本来の目的に全くと言っていいほど使えていなかったツケが今になって回ってきたのだと、何故この期に及んでまだ理解出来ぬのか)

 

 

 実際、今飛び交っている意見は『外出を控える』『パトロールを強化する』などごくごく当たり前の方法……外出を控えるなどいつまでも出来ることではないし、大した装備も無くパトロールを強化したところでアメノミハシラに現れたという怪物みたいなものが出てきたらどうしようもない……逆に被害が増すだけだ。

 

 この場において数少ない同士であるロンド・ミナ・サハクを見てみると、視線が合ってすぐに溜め息を吐き『こいつらではダメだ』とでも言うように首を振ってやれやれ感を出している。

 

 そして――。

 

 

「此度の事件、我々だけでは手に余る。ここは彼ら――ウルトラ騎空団の手を借りるのが最善だと、私は意見する」

 

 

 ――ウズミの求めていた答えを発言してくれた。

 

 

「何だと……!?」

 

「確かに彼らはオーブ在留の傭兵団(※ということになっている)だが……」

 

「今までの実績があるとはいえ、これ以上――」

 

「これ以上被害が拡大するのを指を咥えて見ているとでも言うのか?」

 

 

 ギロリと官僚を見渡すミナに、ウズミを除く誰もが息を呑む。かのアメノミハシラにて得体の知れぬ怪異と遭遇し、ウルトラ騎空団に救われ生き延びた彼女だからこそ今回の事件の恐ろしさを深く理解している。

 

 実を言えば彼女はレジェンドと婚約してからすぐ、レジェンドにかつて彼が遭遇した宇宙人関連の事件を幾つかピックアップして書物化してもらい頭に叩き込んでいた。レジェンドの書き方が上手かったのもあり、ついつい何度も読み返し熟読、夜更ししてしまったりもしたのだがそれはまたいずれ。

 

 

「下らんプライドでは自分達を守れても、国民とそこからの信頼は守れんぞ。お前達が何のためにこの場でその椅子に座っているか、今一度思い返してみよ」

 

 

 ミナの言葉に黙るしかない官僚達。彼女がウズミへと視線を向けるとウズミは感謝しつつも決意に満ちた表情で頷き返した。

 

 

(後は任せたぞ、ウズミ・ナラ・アスハ)

 

(会議の風向きを変えてくれた事を感謝する、ロンド・ミナ・サハク)

 

 

 レジェンドとダイゴ=ティガ……二人のウルトラマンとそれぞれ繋がりのある二人によって、『人間消失事件』と名付けられたこの事件はウルトラ騎空団とオーブの合同捜査が行われることとなった。

 

 

 

 

 

「――というわけだ。頼りきりですまんが、どうにかお前達が合理的に捜査出来るまで持ち込めた」

 

「さっすがミナちゃん!」

 

「ああ、お陰様で諸手を挙げて現場に出向けるのはかなり助かる。なんてったって、この手の事件の専門家が総出で調べてくれるんだからよ」

 

「あとは種と仕掛けさえ分かりゃこっちのモンってな! 今の俺達が出来んのは被害者を減らす為に、俺らの中でも戦闘が得意な連中で固まってパトロールってことだ!」

 

 

 ミナが直々にウルトラ騎空団へ会議結果通達を行い、束やオルガ、カミナは喜びの声を上げる。

 オルガとカミナの言う通り、現場を調べる名目で一足先に捜査兼パトロールに出ているゲンを除き、ウルトラ騎空団所属でコズミック・イラに来ている宇宙警備隊及び銀河遊撃隊に属するウルトラ戦士達が過去のデータから類似事件を洗い出している最中だ。

 更に、戦闘面においてはナチュラルだのコーディネイターだの以前に次元が違う連中だらけのウルトラ騎空団ならパトロールも立派な戦術になる。

 

 

「それにグランの件もある。あれであいつは結構腕が立つ……なのに行方不明ってことはそれ以上の腕前か、もしくは何か特殊なやり方で陥れたってことだ」

 

「おまけにトリガーだしね」

 

「そこだぜ、問題は。グランの技量なら余程じゃなきゃいざとなったら変身出来るだろ。オルガの言ったことも踏まえると、変身してもどうにもならねえ状況か……それか変身する間も無かったかってことも一緒に考えられるぜ」

 

「ならばこそ腕の立つ複数人パトロールとやらか」

 

「おうよ! 一人より二人、二人より三人! 塵も積もれば山となるってな! 尤もウチには塵どころか最初っからエベレスト級が山程いるけどよ、本家が山脈だけに!」

 

 

 「俺も含めてな!」と親指で自分をドンと突きながらドヤ顔でサングラスを光らせつつ言うカミナだが、彼を知るものならばそれが事実だと彼同様胸を張って言える。何より不気味な事件が起きている中でこのカミナの自信に満ちた力強い発言は、周りに安心感をも与えてくれた。

 

 

「旦那がいねえ? 大将がいねえ? それが不安ならそんなもん宇宙の果てまでぶん投げちまえ! あの二人や一緒の奴らが帰ってきた時、俺達の武勇伝の一つも聞かせてやるのが神衛隊……いいや! ウルトラ騎空団ってモンだ!」

 

 

 マントを翻し、刀を携え不敵に笑うカミナは改めて告げる。

 

 

「事件は今んトコ全部夜に起きてる! ってことは昼間より夜の方が手掛かりは掴みやすいってこった! 勝負は真夜中!! 相手の策に完全武装で飛び込んでやろうじゃねえか!!」

 

 

 

 

 サイーブを始めとした『明けの砂漠』構成員とカガリ、それにアフメドという少年はタッシルに到着するとまずその惨状に愕然とした。

 

 

「街が……」

 

「み……皆は……」

 

 

 

 

 

 同時刻、スカイグラスパーで出撃したムウもタッシルの状況を空から確認していた。

 

 

「あぁ……酷え……彼処に転がってんのは遺体か? 原型があるかないかギリギリのラインで焼いてやがる……偶然じゃない、狙ってやったってことか。やりすぎとかそういうレベルじゃねえぞ、こりゃあ……」

 

 

 焼き払われたのは街のみならず、人も。それから少しして発見した生存者は予想より多くいたものの、既に元凶の姿は影も形もない。

 

 

 

 

 

 それを通信で聞いたマリューは訝しんだが、今すべきことはそれではない。ナタルや医師、他数名をバギーで送り出しはしたがその状況では人手が足りるかどうか……そういえばウルトラ騎空団のしのぶは医師じゃなかったかと思い出したところ、今度は別の所から通信が入る。

 

 その声の主は……。

 

 

『おう、美人艦長! ビッグランダーだ!』

 

「え……!?」

 

『俺らもちょっとばかし行ってくるからよ! 乗りたい奴はさっさと格納庫に来いって言っといてくれ! あと十分ほどで出るからな! んじゃ!』

 

「あ、ちょっと!」

 

 

 言いたいことだけ言って通信を切ったビッグランダー……先のバラージにてウルトラ騎空団入りしたランダーズのリーダー。彼のビークルモードはキャリアカートラックであり、ナタル達が搭乗したバギーより格段に大きく積載容量も多い。確かに彼が――彼らが行ってくれるのなら心強いことこの上ないのだが……。

 

 

「まさかと思うけど、彼らだけで勝手に出ようしてるわけじゃ……ないわよね」

 

 

 ダ・ガーンから聞いたところによると、一誠や彼と(もはや一応と付くが)一体化してるトライスクワッドはダ・ガーン達の隊長もしくは指揮官の立場にあるようで、基本的に彼らの指示抜きであまり勝手な行動は取れないらしい。らしいというのは今までダ・ガーンしかおらず、そのダ・ガーンも品行方正で真面目な為そういった前例が全く無かったからなので、これは仕方ない。

 

 しかし、その心配はアークエンジェルを出る時の通信でちゃんと出発メンバーを告げられたことで杞憂に終わることになった。

 

 

 

 

 

「ようし大将、全員乗ったな!?」

 

「おう! タッシルまでの道は大丈夫なのか、ビッグランダー!?」

 

「あたぼうよ! 伊達にランダーズのリーダー名乗ってるわけじゃねえからな! 長距離移動は任せとけ! 行くぜェ!!」

 

 

 そういうとビークルモードのビッグランダーはアークエンジェルの格納庫から勢い良く発進する。その荷台にはしっかりとドリル・ターボ・マッハランダーが格納されていた。

 最初は『ダ・ガーンジェットでも良かったんじゃ』と思った一誠だがビークルモードとはいえ合体に一手間かかるのでランダーズに頼むことにしたらしい。

 

 出発メンバーだがダ・ガーンやランダーズを別として、一誠とトライスクワッドは当然、更に医者であるしのぶに加えて沙耶とアズが同行することになった。

 そこへアークエンジェル側から何名かが追加、彼らもランダーズに関してはバラージで知っていたため問題はない。トライスクワッドは車内スペースを確保するためにアストラル体になって一誠の傍にいる。

 

 

「そういえば、しのぶは分かるとして沙耶とアズは何で一緒に行く気になったんだ? てっきり俺はリアスが来るかと思ったんだけど」

 

「タイガの疑問は尤よね。私がリアスに頼んだの、代わってくれないかって。何というか……行かないといけない気がしたのよ」

 

「ふむ……ではアズは……いや、私も分かったぞ。私達はアントラーと戦っていたから見ていないが、バラージで遭遇したというミニオンのことだな?」

 

「ええ。あのミニオン、どうしてかアズに対して驚いたような……それか恐怖している素振りを見せたわ。アズ自身は身に覚えは全く無いって言うし、誰かしらが傍にいたほうがいいと思ったのよ。それも生身でも戦闘可能なレベルな人がね」

 

 

 ついでに言うなら、バラージと違って地上の砂漠なら沙耶も遠慮なく養母仕込の大規模攻撃魔術が使えるのでミニオンにも遅れは取らない。アークエンジェルに残ったままだと、最悪侵入でもされたらバラージの時以上に身動きが取れないこともアズを連れ出した理由だ。

 

 

 

 

 

 ……ちなみに今アークエンジェルに残っているサーガ達だが……。

 

 

「出撃命令があるかもしれないし、軽く何か食べておこうか」

 

「あ、俺は卵焼きサンド。デカいやつで、辛子マヨネーズマシマシ」

 

 

 ダイゴにより、キラを含めた待機中のメンバーで軽食を取っていた。

 

 

「何でだろ。偶に俺、飯を食べる側じゃなくて提供する側な感じの時がある気がするんだ。何か米と……おみおつけ?ってやつなんだけど」

 

「おみおつけ……?」

 

「ああ、味噌汁の丁寧語バージョンって言えば分かるかな。実は先に生まれたのはそのおみおつけって言い方なんだよ」

 

「ダイゴさん物知りー! しかも簡単で分かりやすい!」

 

「分かりやすいのはそれしか意味がないからだから、僕の説明どうこうじゃないんだけどね」

 

 

 無論、学生チームも一緒だったので声を上げたミリアリアと同じことをトールやサイも思っていたりする。

 それから……それを言い出したら三日月が二刀流でとんでもない剣技をバンバン放ちそうな気がしてきたが、スルーしよう。

 

 

 

 

 

 現場に到着してみれば先に現場に行っていたムウとナタル達――正確にはムウと現地住民&カガリが何やら気まずい、というかムウが気まずそうにしており……。

 

 

「おう、鷹の兄ちゃんどうした?」

 

「「「「「車が喋った!?」」」」」

 

「あん?」

 

 

 ビッグランダーが口を開けば案の定カガリや住民達から驚きの声が上がった。ナタルはともかく、元凶とも言えるムウまで頭を抱えたが……。

 

 

「……貴方の不謹慎発言が原因じゃないの?」

 

「ホントいきなりピンポイント爆撃してくるねお前さんは!?」

 

 

 沙耶の直球どストレートな正論で撃ち抜かれた。それからすぐに実体化したタイガ達にも驚かれたが、彼らがランダーズに積んでいた補給物資を持ってきてから警戒は薄れる。特にタイタスはやはりその筋肉から子供達に大人気だった。

 

 

「あんたよりあっちの方がよっぽどマシみたいだな!」

 

 

 気性が荒いとはいえ、カガリがここまで言うとは何を言ったんだと思う沙耶だったが、まずはタッシルに起きたことを聞いていく。その中で気になったのはやはり『悪魔の如きMS』という発言。

 

 

「ザフトにそれっぽい機体はあるのかしら?」

 

「いや、そんな機体があるなんて聞いた話……はないが、決めつけるのは早いな。クルーゼの野郎やその参謀が乗ってたあのゴツくて早い奴だって情報が無かったんだ。ザフトが新型を開発していても――待てよ?」

 

 

 そこでムウが思い出したのは先日目にしたドートレス系列の機体。ザフトとは規格が異なるMSだったが、もしやそれと関係あるのではないか。

 

 

「ザフトのスポンサーがどうとか……」

 

「あのジンとは違うMSのことですか?」

 

「ああ。規格が違うにしたって、いくら何でも変わり過ぎだろ。考えつくのはそこと関わりのある機体なんじゃないのかってことだ。そもそも砂漠を根城にしてる奴が、この地形じゃバランス取り難い二足歩行の機体をいきなり投入してくるってのが気になったんだよ。そのスポンサーとやらが寄越した機体のスペックが余程良かったのかねぇ。確かに実際見た限りじゃ相当だったが……」

 

 

 それも簡単に全滅させちまったし、と口に出さずムウは思った。先日のファイヤーワラビーはその性能を見せつける前にガンダムXのサテライトキャノンで纏めて消滅させられ、跡形もなくなっている。

 だがそれでも砂漠を高速で駆け抜ける人型の量産型MSは衝撃的だったのだ。

 

 そんな話をしている時――サイーブが明けの砂漠の団員らと何やら口論する声が聞こえてきた。

 どうやらバルトフェルド達が撤収してそう時間が経ってないことに気付いた団員が追撃しようとしているらしく、それを止めるサイーブと衝突してしまったらしい。

 

 

「まさか俺達に、虎の飼い犬になれって言うんじゃないだろうな!? サイーブ!!」

 

「うっ……」

 

 

 さすがに止めるべきかと沙耶が思った瞬間、背筋が凍るような気配がして――。

 

 

 

 

 

「すみませぬがほんの少しだけお時間を頂けますか?」

 

 

 

 

 

 声のした方を皆が向くと、そこにいたのは奇抜な格好で大柄な男性。中々に鍛えられた身体だ。

 

 

「何だお前は? 俺達はこれから砂漠の虎を追うんだ! 邪魔をするな!」

 

「いえいえ、邪魔はいたしませぬとも。ただ一つだけお尋ねしたい事がありまして……それだけ教えて頂ければ満足です故」

 

 

 丁寧な言葉遣いではあるが、その喋り方とは裏腹に纏う空気が不穏なものだとこの場において気付いているのは沙耶だけ。大抵の者はやはり姿格好にばかり目が行っている。

 

 

「その手にした銃火器類、人の身には多大な効果を発揮するでしょう。しかしながら機動兵器には余程のものでなければ無意味ではないですか? 苦渋を飲み、生きる道を選ぶのもまた戦いなのでは?」

 

「そんなことをして何の意味がある! 見ろ、街がこんなにされて黙っていられると思うのか!?」

 

「もうタッシルでは暮らせない……! ならせめて虎に一矢でも報いてやるだけだ!」

 

「つまり……ここまでされて情けをかけられるなら、死んだ方がマシだと?」

 

「ああ、そうだ! 納得したならさっさと退け!!」

 

 

 その男性は団員に怒鳴られ、軽く溜め息を吐く。

 

 そして――。

 

 

「分かりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 では、死んで頂きましょうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は――」

 

 

ド ス ッ ! ! 

 

 

 ――時が、止まる。

 

 気付いた時にはその団員の身体を――男性の手刀が貫いていた。血に濡れた男性の右手が団員の背から生えており、そこから滴り落ちる血が砂漠へ染み込んでいく。

 

 言うまでもなく、団員は絶命していた。

 

 

「きゃあああああ!!」

 

「う、うわあああああ!?」

 

「エドル!!」

 

 

 混乱に陥るタッシルの生き残った人々。ムウやナタル、それに一誠やタイガ、しのぶらも突然の出来事に絶句していた。

 

 

「な……き、貴様! どういうつもりだ!?」

 

「ンンンンンンン? どういうも何も、死にたがっていたようなので殺して差し上げただけですが?」

 

「何だと……!?」

 

 

 まるで「はて?」と人の死を気にも留めない様子で平然と言い放った男性に、ムウとナタルは戦慄する。

 

 

「このような装備でMSに挑んだところで無駄死には目に見えておりまする。であれば! 先程この方は『死んだ方がマシ』と仰られましたので、拙僧が介錯したまでのこと。ユニウスセブンを撃ったことや、地球へニュートロンジャマーを撃ったことと何の違いがありましょう?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「こうすればよかったのです。人を撃つ覚悟がある者、命を捨てる覚悟がある者だけを狙うなら核やニュートロンジャマーもまた違った見方をされたでしょう。しかし!! 撃たれたのは無辜の民!! 撃たれる謂われのなかった人々!! 何故です!? 何故撃ったのですか!? 何故何故何故!?」

 

 

 鬼気迫る問い掛けを放つ男性の纏う雰囲気に呑まれ、反論する者――出来る者はいない。

 

 尚も男性は続ける。

 

 

「ユニウスセブンに何らかの理由でナチュラルがいることを考えなかったのか!? 地球で暮らすコーディネイターのことは考えなかったのか!?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「いいえ! いいえ! ()()()()()()()()()()()()!! そう! もはやその時点で『如何にして相手を滅ぼすか』それしか考えられなくなっていたのです!!」

 

「な……それは……!」

 

「――ですが、それはもう過ぎた事。撃ってしまった事実は変えようがなく、犠牲になってしまった人々のことも()()()()()。貴方々もよく使うし、好きでしょう? この言葉を」

 

 

 先程までの雰囲気とは一転し、再び現れた時と同じ空気を纏う男性。表情も柔らかいものだが、返ってそれが不気味であり先の言葉と合わせてムウや一誠達の心を抉る。

 

 

「結局、如何なる場合でも強い者、勝った者が正しいのです。そうでなくてもそうなってしまう。いい例がレーティングゲームでしょう」

 

「……!! お前、何で……!?」

 

「何で知っているか? 実は拙僧とマスター、幸か不幸か偶然にも一端の上級悪魔に出会って言われたのですよ。『自分が勝てばその女は妻、貴様は下働きになれ。そちらが勝てば望みを叶えてやる』と」

 

「!!」

 

 

 周囲の者はレーティングゲームやら上級悪魔やら急に訳の分からない単語が出てきて困惑し始めるが、それが何かを知る一誠やタイガ達はより警戒を強めた。

 

 

「いやはや劣勢も劣勢、悪辣にも程がある。相手はフルメンバーで強者揃い、対してこちらは拙僧とマスターのみ。これのどこがゲームと言えましょうか? 故に些か本気を出してしまいまして」

 

 

 一呼吸置いて――。

 

 

 

 

 

「拙僧、相手の『(キング)』を含めて皆殺しにしてしまいました。一方的でしたが」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 

 

 

 大半の者は皆殺しという言葉に、一誠やタイガ達は『一方的に、それもおそらく目の前の男性がたった一人で』ということに戦慄する。

 相手が一般人等ならまだ『この男性が裏社会の者だった』などと納得は出来るが、どの程度の力を持っていたか定かでないとはいえ上級悪魔と(男性いわく)強者揃いな下僕フルメンバーを一方的に皆殺し……即ち虐殺とも言える結果で勝利したということは、眼前の存在は相当な実力者。それも命を奪うことに躊躇いのないというイヤなオマケ付き。

 

 

「……ウルトラ騎空団所属の者以外は下がりなさい。この男は普通じゃない。アズ、貴女も――」

 

「おや? おやおや? もしや貴女様はかの月王国(ルナ・ブリテン)先代女王の御息女の一人にして現女王陛下? 

 ンンンンン!! 僥倖ッ!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「よもやと思いましたがその反応! 本人に間違いありますまい! まさかこんな場所で会えるとは!! 実は拙僧のマスター、貴女様の御母上と少しばかり因縁がありまして。立場もありますでしょうし手荒なことはしたくありませぬ故、自らの意思にて何卒ご同行を――」

 

「お断りするわ」

 

「ンンンンン〜即答ですか。一筋縄ではいかぬと想定していましたが、あまりに早い拒絶……拙僧、只今悲しみにうち震えておりまする」

 

 

 およよ〜と目元を隠す男性だが、逆に白々しすぎて沙耶はイライラしている。養母仕込の大規模魔術を本気でブチかましてやろうと思い始めた時……。

 

 

「まあ衝突は起こりざるを得ないと予想済みでしたし、遅いか早いかの問題だったのですが。予定通り腕尽くにて」

 

「分かりやすい反応をありがとう。尚更行く気が無くなったわ。ただ、名前くらいは聞いておこうかしら」

 

「ンンン〜申し訳ありませぬが、拙僧も立場上真名は明かせませぬ故。そうですな……別人格(アルターエゴ)辺獄(リンボ)とお呼びください」

 

 

 相手も互いに相容れぬ存在だと予め予測していたらしく、即座に戦闘態勢へと移行した。

 ミニオンに続く、新たな正体不明の敵との戦い。しかも一誠達はムウやナタルらに加えてタッシルの街の生き残りである人々も守らねばならない。

 

 

 

 一誠達ウルトラ騎空団と未知なる相手――リンボの最初の死闘が今、幕を開ける。

 

 

 

 

 ――???――

 

 

「う……あれ、僕は……ッ! スパークレンスとハイパーキーは!? ……ある。よかった……」

 

 

 行方不明とされているグランは気が付くと訪れたオーブと全く違う場所に倒れており、辺りには同じく多くの人々が倒れていた。

 万が一を恐れ、自身にとってもはや必要不可欠となったGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーの所在をすぐさま確認し、全種しっかりあったことに安堵して再び仕舞う。

 

 

「ここは何処なんだ……? 見た感じ、エリアル・ベースとかヒリュウ改の中に似ているけど、少し暗くて不気味だな」

 

 

 どうやら鉄か金属で作られた部屋の中のようで、とりあえずグランは今倒れている人達が大丈夫かどうか起こしてみることにする。

 

 

「君、しっかりして!」

 

「うぅ……何だよマユ、充電器ならいつもの場所に……」

 

「いや僕マユって子じゃないから! 充電器とかいいから起きて!」

 

「……ぅえ? うわっ!? あんた誰……ってここ何処だよ!?」

 

「えー……あんまりあからさまに驚いて離れられると結構傷付くんだけど……」

 

「あ、はい……何かすみません」

 

「僕はウルトラ騎空団所属のグラン。君は?」

 

「ウルトラ騎空団ってあの……あ、俺はシン。シン・アスカです」

 

 

 ――新たなる光になった少年は、近い未来……新たなる輝きとなる少年と出会う。

 

 

 

〈続く〉




さあ皆さんお待ちかねェ!!

 リ ン ボ 遭 遇 ! !

誰か声にツッコんであげて、展開的な問題で現状特別編でしか活躍出来てない主役を思い出して!

さらに、特別編ではちょくちょく出ていた彼が本編にも漸く登場!
しっかり縁を結ばせてもらいました。

さて……リンボのマスター、キーワードのいくつかから分かる人もいらっしゃるかと思います。
最大のヒントは『バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!』。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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