ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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大変お待たせしました。
特別編でも言ってた通り、尺を考えた結果前後編から前中後編の三本立てにすることにしました。
展開的に外せない場面があったので、そこを入れたら予想以上に長く……。

前話で彼を出した理由が今回で判明します。


それでは本編をどうぞ。


C.E.2020年の挑戦(中編)

 矢的達オーブ組、グランと竜馬達、そしてアートデッセイ号と赤き闘士……場所は違えど、心に灯した炎は違えず。

 

 

 

 

 暫定的ながらも事件の真相――犯人に近付いた矢的達だったが……その直後、ギャスパーとバーンが謎の液体の被害にあってしまう。

 

 

 

 

 

 ……かと思われた。

 

 しかし、ジークフリートが驚くべき速度で反応し、ギャスパーを引っ張りどうにか事なき事を得る。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「は、はいぃ! ありがとうございますジークフリートさん!」

 

「私も一瞬肝が冷えたぞ……感謝する、ジークフリート」

 

「これが事件の犯人か……!」

 

 

 ミナが謎の液体を忌々しげに睨み、凱もウィルナイフを構えて警戒する中……矢的が手にしたライザーガンでその液体を撃つと、液体は燃えて無くなった。室内ではあったが、幸い他の物に燃え移ったりはせず安堵する。

 

 

「可燃性の液体……やはり犯人は――」

 

「……ッ! 誰だ!?」

 

 

 部屋入口の扉の外に気配を感じ、凱が勢いよく扉を開けるとそこには誰もいない。

 

 

「いない? 単に気を張り詰めていて、鼠とかの気配にでも敏感になったか――」

 

 

 凱は再び調査のため部屋に戻ろうとして扉を閉めようとすると……。

 

 

 

 

「ヴォッフォッフォッフォッフォ……」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 

 

 

 人の形をした異形が目を動かしながら扉の影に立っていた。凱はウィルナイフを構え直そうとするも異形がいきなり走って向かって来たため咄嗟に避けた……のは良いが再度向かって来るかと思えばそのままゴーデン宅から出ていってしまう。

 

 

「っ! 待てっ!」

 

 

 すぐさま凱は後を追い、その異形を見た矢的は確信する。

 

 

「やはり今回の事件の犯人はケムール人だったか!」

 

「ケムール人……!? そういえば確か、ゴーデンの著書にもその名前があったような……」

 

「彼らの母星……ケムール星は、その発達した医療技術と改造技術で500年もの長命を実現したそうです。しかし、その保持ももはや限界……そこで彼らは地球人の若い肉体に目をつけた。加えてこの世界ではコーディネイターという遺伝子操作によって元から優れた能力を持つ人種も存在し、この世界の地球は彼らにとって肉体の代替にはもってこいの『狩場』なわけです」

 

 

 肉体の代替――即ち、肉体の元の持ち主の意思はケムール人のそれに上書きされて消える。そんなことが可能なのかと思ったが、そもそも人を消すような液体を作り出す連中なのだからそれすらも可能なのだろう。

 

 矢的自身もレジェンドから聞いてはいたが、実際目にするとその脅威が嫌というほど理解出来た。

 ジークフリートはケロニアの事を思い出し、ギャスパーとバーンも戦慄している。そんな中、ミナはいち早く冷静さを取り戻し、レジェンドから受け取っていたウルフォンでウルトラ騎空団全員へと連絡を入れた。

 

 

「オーブ全域のウルトラ騎空団へ告げる! 此度の事件の犯人はケムール人と呼ばれる異星人らしい! 私達の前に現れた個体はたった今逃走した! 例の液体の事もある、複数人で追い込まれたし! 場所は――」

 

 

 

 

 グランや竜馬達の前に現れたのも、やはりケムール人……だったが、それだけではない。

 

 もう一人、いやもう一種……宇宙怪人ブラコ星人がケムール人と共にいたのである。

 

 

「な……何だお前らは!?」

 

「ワレワレハケムール。オマエタチ地球人ノ肉体ヲモトメ地球ヘトヤッテキタ。オマエタチノ肉体ハスバラシイ」

 

「……あれ? ひょっとしてこれは友好的なのか?」

 

 

 だとすれば上手く交渉出来たら自分の株が上がる!

 

 ……などと考えたのか、ユウナは傍から見ても頭御花畑な思考をしているのが丸分かりな表情であった。

 だが、連中が友好的ならば最初からこんな誘拐事件など起こしはしないと普通ならすぐ気付くはず。

 

 

「そ……そうだろう? もし和解に応じて――」

 

「ソノ肉体ハワレワレニトッテ今マデノ肉体ノ代替品トシテ申シ分ナイ機能ガアル」

 

「――は?」

 

「マズハ今回確保デキタ地球人ノ脳ヲ摘出シワレワレノ脳ヲ移植スル。脳ノ適応ニ関シテハワレワレケムールノ技術デナントデモナルカラ問題ナイ」

 

 

 ケムール人の発言にユウナどころかグラン達も一気に血の気が引く。地球人の肉体の称賛――それ即ち、ケムール人達の新しい肉体にするというとんでもないものであった。

 脳の摘出と言っているが、問題ないのはケムール人側であって地球人側ではない。そもそも摘出された脳をどうするのかも告げていないのだ。

 仮に今のケムール人側の肉体へと移植されたとして、拒否反応ないし適応出来ない……もしくは問題無かったとしても、肉体寿命がほぼ限界ならば命そのものもそう長くないだろう。

 

 つまりどう転んでも地球人側にメリットなど無い。ユウナが目論んだ『友好的な交渉』などハナっから不可能だったのである。

 

 

「ふざけんじゃねえ! 誰がテメエらの脳味噌の容れ物になるかってんだ!!」

 

「その人の言う通りだ! 俺達をオーブへ帰せよ!!」

 

 

 真っ先に激昂し反論したのは竜馬とシンだ。

 

 ……だが、ここでブラコ星人がシンの母親に近付き『何か』をした。それにより、シンの母親は倒れてしまう。

 

 

「なっ……!?」

 

「お前、よくも母さんを!」

 

「ブゴォォォ!」

 

「うわあっ!?」

 

「お兄ちゃん!」

 

 

 ブラコ星人は外見からは想像も出来ない力でシンを持ち上げてぶん投げた。マユが悲痛な叫びを上げるが、ブラコ星人が次に標的と定めたのはマユ。ゆっくり迫る怪異に腰が抜けてしまい、マユは動くことが出来ない。

 

 

「あ……うぅ……」

 

「やめろ! 娘に手を出すな!」

 

 

 シンの父親もマユを庇うべく前に立つがシン同様吹っ飛ばされてしまう。いよいよブラコ星人の魔の手がマユに――。

 

 

「ブゴォォォ!?」

 

「……え?」

 

「「「「「な……」」」」」

 

 

 ――迫ることは無かった。

 

 グランがいつの間にか取り出したサークルアームズでブラコ星人を斬り裂いていたからだ。

 そのままそのブラコ星人は絶命し、グランは残るケムール人を怒りを込めた瞳で睨みつける。

 

 そして彼はサークルアームズを床に突き立て、GUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを取り出す。

 

 

『Ultraman-Trigger Multi-Type!』

 

「おい、グラン!?」

 

「いいんです、竜馬さん」

 

 

 口調は静かだが、明らかにグランの怒りが限界突破していることに竜馬は気が付く。

 

 

「僕とジータは母さんの顔を覚えてない。というか、父さんの顔すらおぼろげにしか覚えていないんです。僕達を育ててくれたのはビィやザンクティンゼルに住んでいる人達だった」

 

「え……」

 

 

 シンは、いやトダカらを含むその場にいた者達は言葉を失った。今の話から察すれば彼とその兄弟ないし姉妹は両親から満足に愛情を受けていない、もしくは両親がいないことになる。

 年齢的にはシンより少し年上ぐらいの少年が、そんな状況下でよくぞここまで育ったものだと思うだろう。

 

 

「だから僕にはシン君達が理想の家族に見えた。それは別に裕福そうだとかそんなんじゃなくて、当たり前で……ごく普通のありふれた家族としての姿があったんだ」

 

「グラン、お前……」

 

「だから、僕は……そんな普通の幸せをブチ壊した、こいつらが許せない! 彼らの日常を取り戻せるなら、僕がどう思われてどんな扱いを受けようと構わない!!」

 

『Boot-up!Zeperion!』

 

 

 揺るぎない決意と共に、グランは起動したハイパーキーをGUTSスパークレンスへと挿入した。

 

 ――一つだけ彼が間違っていることといえば、心配せずとも竜馬が彼を止めるようなことなどしないということ。

 

 

「へっ、覚悟が決まってる奴の意志をへし折る程、俺は腐っちゃいねえよ。それにだ、何かあればウチの騎空団は全力でお前を守ってやるさ。今は俺達だって家族だろうが」

 

「竜馬さん……!」

 

「だからよ、安心しろ。ただし……やるなら徹底的にブッ潰すぞ! 俺もこのインベーダーじみた思考のクソ野郎共には頭にきてるからな!!」

 

「はい!」

 

 

 大先輩の心強い激励を受け、グランは頷きながらケムール人を見据えてGUTSスパークレンスを突き出す。

 

 そして――。

 

 

「未来を築く、希望の光! ウルトラマントリガァァァ!!」

 

『Ultraman-Trigger Multi-Type!』

 

「チャアァッ!!」

 

 

 光に包まれたグランは、もう一つの姿であるウルトラマントリガーへとその身を変える。

 突き立てていたサークルアームズを再び抜き構えるトリガーに、シン達だけでなくケムール人も驚きを隠せない。

 場所が場所だけに地球人サイズではあるが、大きさ以外はいつものトリガーと何ら変わりはない……つまり基本的な能力はケムール人よりも圧倒的に上であるということ。

 

 ――だが、忘れてはいけない。

 

 この場において、ケムール人にとって予想外の相手がもう一人いることを。

 

 

「よぅし……グランが本気でやる気になったんだ。俺も遠慮なく大暴れさせてもらうぜ!! オラァァァ!!」

 

「フォ!?」

 

 

 竜馬は手にした大型銃器――ゲッタービームマシンガンをぶっ放すかと思いきや……それでケムール人を思い切りぶん殴った。

 質量の大きいものが勢いよく叩きつけられた場合の衝撃たるや言うに及ばず、ケムール人は頭を変形させながら壁に激突。そのまま気絶――絶命しているかもしれない――してしまう。

 

 

「こっから虱潰しにここを探索するぞ! 戦える奴は俺とグラン……トリガーの援護だ! 他の連中は俺達から絶対に離れるな! 全員一塊になって動いて、気になることがあったら何でもいいから俺達に言え! アンタはカミさんを背負いな!」

 

「分かった! すまない!」

 

「坊主!」

 

「は、はい!」

 

「妹を守ってやれ。兄貴だろ?」

 

「ッ……! はいっ!!」

 

「ようし、良い返事だ! 行くぞお前ら!!」

 

「「「「「オオーッ!!」」」」」

 

 

 トリガーと竜馬を先頭に、捕われた人々の反抗と脱出が始まる。

 

 

 

 

 一方、オーブでは逃げた一体のケムール人をウルトラ騎空団実働部隊がほぼ総出で追い回していた。

 

 ……正直、可哀想になるレベルで。

 

 

「「待てコルァァァァァ!!」」

 

 

 カミナとキタンがケムール人を追いかけるが、やはり身体能力の凄まじさから徐々に離されていく。ぶっちゃけある程度追いかけられるだけで凄いことなのだが。

 

 

「どうするカミナァ!? このままじゃ逃げられるぜ!」

 

「慌てんなキタン! 何故ならこの先にいるのは――」

 

 

 己の駆ける道の先に現れた人影をケムール人は刮目し、そして恐怖する。

 

 

「案ずるな、峰打ちにしてやる。両腕両足をへし折る程度のな」

 

「ヴォッ!?」

 

「ウチの参謀にして神衛隊生身最強格の巌勝だからよォ!!」

 

 

 そう、月の呼吸の使い手であり鬼討組の頭たる継国巌勝が鬼神刀を構えて立っていたからだ。

 かの人物の実力を知るものからすれば絶望しかないこの状況、ケムール人は如何に突破するのか。

 

 

「月の呼吸――何っ!?」

 

 

 なんと、例の液体を自分に向けてかけることで瞬間移動するという奇策を展開。回避不可の斬撃を放とうとした巌勝もこれには驚愕であった。

 

 

「何だそりゃあ!?」

 

「反則だろ今のはよぉ!!」

 

 

 カミナとキタンも文句を言わざるを得ない所業だったが……巌勝はそれすらも予想していたらしく、何やら通信を行う。

 

 

「こちら巌勝、目標は予想通り自身に液体をかけ転移逃走した。β班とγ班、δ班は予定通りの行動に移れ」

 

「おい、巌勝……まさか」

 

「奴らがあの方法で逃走するのは可能性の一つとしてあった。実際やられた時は少々驚いたが……自己転移の場合、そう遠くまで行けないようでな。予め各所に団員を配置して逃走経路に先回りさせてある」

 

「マジで有能過ぎだろウチの参謀は!!」

 

 

 実はこの策、カミナ達がある程度ケムール人を追いかけられていたから成功したのだ。前門の虎、後門の狼の状況に持ち込むことで自己転移しか逃げ道が無いように仕向けたという訳である。

 

 そしてケムール人が自己転移した先にいたのは……。

 

 

 

 

 

「よぉ……よくも竜馬をやってくれたなあ、あ゛?」

 

「竜馬殿を何処にやったのか、吐いてもらおう!!」

 

「パムー!!」

 

 

 バキバキと指を鳴らして睨みつけるレイトと憤怒の表情で日輪刀に手をかけている杏寿郎、そしてパム治郎。

 最悪な事に銀河遊撃隊隊長であるウルトラマンゼロの前に転移してしまった。

 

 

「ヴォッ……」

 

「ハンターズギルドにいるケムール人は気さくでイイ奴らだったんだがよ……テメエは真逆のクソ野郎だな!! シェアッ!!」

 

「いざという時まで姿を見せず、卑劣な手段を取るなどと……鬼舞辻無惨に通ずる所業! 断じて許せん!!」

 

 

 よりによって竜馬と組んでいた二人と一匹の前に現れたことで彼らの怒りが爆発。

 レイトは即座にウルトラゼロアイを装着し、等身大サイズで本来の姿たるゼロへと変身する。

 

 

「悪ぃがこっちは気が立ってんだ……倒しはしねえがボコボコにされる覚悟はしとけ!!」

 

「パム治郎、タマフリだ!!」

 

「パム! 『軍神招来』、『韋駄天』!!」

 

 

 パム治郎の使ったタマフリ『軍神招来』と『韋駄天』……簡単に言えば、前者は確定クリティカル+αで後者が『ヘイスト』――つまり加速。

 そんなものが同時に、それも元から攻撃力が高く動きも素早い二人にかけられたのだからとんでもない。

 

 即座にヤバいと判断し、方向転換して身体能力をフルに発揮して逃走しようとしたケムール人だが……。

 

 

「ゥオラァ!!」

 

「ヴフォァッ!?」

 

 

 タマフリによるバフがかかっていた事で先回りしていたゼロにコークスクリューブローをブチ込まれ、錐揉み回転しながらコンクリートの地面へ叩きつけられた。

 懲りずに起き上がり、往生際悪く逃げようとするも今度は峰打ちとはいえ杏寿郎の日輪刀を顔面に横一文字で食らってしまう。

 

 

「成敗ィィィィィ!!」

 

「ガブォッ!?」

 

「パムパムパムパム!!」

 

「ヴォォォォォ……!?」

 

 

 倒れ込んだケムール人の顔面をべしべしと叩くパム治郎。一見可愛らしいと思うだろうが忘れてはいけない、彼にもタマフリの効果は発揮されているのだ。

 

 ついでに、攻撃力アップの『渾身』まで使っているので相当なダメージである。

 

 しかしケムール人も大した根性しており、それだけ痛手を受けたにも関わらずパム治郎を跳ね飛ばすように起き上がり再度逃走。なお、パム治郎は杏寿郎にしっかり抱き止められた。

 

 

「大丈夫かパム治郎!?」

 

「パム〜」

 

「野郎……! 今度は逃さ……何だ、メビウスから通信?」

 

 

 

 

 

 さしものケムール人も蓄積されたダメージのおかげでペースが落ちたからか、常人でも拮抗出来そうな速度での逃走しており……。

 

 

「い……いましたぁっ!」

 

「……何か妖怪にもいそうなのじゃ……」

 

「まあ、見た目的にはね」

 

 

 アーシアと九重、サギリのチームに遭遇。女子ばかりだからどうにか出来ると思ったのかケムール人は突撃してくるも――。

 

 

「スキ丸出しのバカ丸出しィィィィィ!!」

 

「ヴォアァァァァァ!?」

 

 

ドゴシャァァアアア!!

 

 

 逆にサギリが飛び掛かり、フランケンシュタイナーのような技でケムール人を脳天からコンクリートに叩きつけた。しかも何か2,3回空中回転してたから遠心力も追加されてる状態。

 

 さすがジャグラー店長の嫁(予定)。

 

 

「サギリのスペックがおかしいと思うのは私だけではないはず……ちらっ」

 

「た……束博士もやれそうだと思います……」

 

「あの人は光神様直属じゃしのぅ……」

 

 

 それにやろうと思えばやれそうな面々が多いウルトラ騎空団。小猫とか夜一とか……案外レヴィも出来るかもしれない、パワーとスピードはあるし。

 

 ……が、しぶとすぎるこのケムール人。

 

 火事場のクソ力でも発揮されているのか、またも起き上がって逃走。滅茶苦茶ふらついているが物凄いスピードでその場から走り去ってしまう。

 

 

「ちっ……テキサスクローバーホールドで追撃かましとくんだったわ」

 

「サギリ、もしや光神様のような超人レスラーでも目指しておるのか?」

 

「ん? 違うわよ。ストーカーとかセクハラ対策」

 

『何なら我がシメてやってもよかったが』

 

 

 ……これまた忘れがちだから言っておこう。

 

 基本アーシアにはカプセル怪獣のゴモラに加え、マジンガーZERO(マスコットサイズ)も一緒にいるということを。

 

 つまり、一見華やかな三人だが遭遇したら一番危険なメンバーだったのだ。

 

 

 

 

 

 もはや満身創痍なケムール人は、かつて別個体がそうしたように遊園地へと到着した。

 何発も頭にくらったので意識朦朧とする中、何故か回っていた観覧車に飛び付き……その上で寝そべる様にぐったりしている。

 

 ここで、このペースなら少しぐらいは休めるだろう……そんなケムール人の甘い考えを木っ端微塵にするような――。

 

 

 

 

 

「ディザスターヒート!」

 

「ヴォォォォォ!?」

 

 

 

 

 

 シュテルの三連砲撃がケムール人を襲う。

 

 彼女を含めてレヴィ・ディアーチェ・ユーリの紫天一家は普通に空が飛べるため、散開してオーブ各所を空から監視していたのだ。

 加えてシュテルは四人の中で最も長距離砲撃を得意とするからか探知能力も頭一つ抜けている。そのおかげでケムール人の液体を浴びることなく一方的に攻め立てられるというわけだ。

 

 ……相手の居場所が観覧車の上でという場所でなければ。

 

 

「空を飛んでいてくれれば真・ルシフェリオンブレイカーで消し飛ばせたのですが……彼処にいられては万が一観覧車当たった場合、賠償責任が発生してお兄様に迷惑がかかりかねません」

 

 

 レジェンドへの配慮から全力を出せないし出さないようしていたのは良いところなのだが、その前の台詞が物騒この上ない。確実に殺る気だったぞこの娘。

 

 

「しかし……このままでは例の液体で――え?」

 

 

 彼女が連絡したことで観覧車の下辺りにはウルトラ騎空団の団員の他、オーブ軍も集まって来ている。

 指揮をしているのはまさかのウズミ・ナラ・アスハ……彼自らがこの事件を解決すべく先頭に立ったのだ。

 

 ただし、シュテルが驚いたのはそこではない。むしろ彼女だけでなく集まった人々も、そしてケムール人すら目が飛び出ている。

 

 何故ならば――。

 

 

 

 

 

 地上から数十m離れている、ケムール人がいる観覧車の上――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのケムール人の目の前におおとりゲンが蹴りの構えで飛び上がっていたからだ

 

 

「イヤアァァァッ!!」

 

 

バギャアァァァァァッ!!

 

 

「ヴゴヴァァァァァ……!!」

 

 

 

 

 

 ゲンの空中回し蹴りをド派手に食らったケムール人は、こちらに向かって飛んできていたレヴィ・ディアーチェ・ユーリとすれ違うように数km先までブッ飛んでいき……轟音と共に大地へと叩きつけられた。

 

 

「ぅえぇえ!? 今の何!?」

 

「此度の事件の主犯であろうが……」

 

「……誰にやられたのか分かっちゃいました」

 

 

 一方のゲンはというと、両足(しかも道着姿のため裸足だった)で豪快にコンクリートに着地。体調に何の不調も無くピンピンしている。

 駆け付けた蜜璃や小芭内らも真っ青、朱乃らオカ研メンバーもかつての特訓を思い出してガタガタ震えていた。

 

 

「あ……あれで全集中の呼吸すら使ってないって本当なの!?」

 

「甘露寺、かの御仁はお館様の直弟子の一人と聞いた。だとすれば納得がいく」

 

「……おおとり師範、雷が直撃してもそれを攻撃に転用してくるぐらいですから」

 

「カナエ先輩の攻撃を真正面から受け止めてぶち破ってきました」

 

「拳で真正面から剣をへし折られましたし」

 

 

 なお、これを事前に聞いたしのぶは『この人なら鬼舞辻無惨の血を注入されても、鬼になるどころか単純にパワーアップするだけの気がする』とまで思ったほどに顔を引き攣らせたとかなんとか。

 

 ……こんなんに気絶寸前のダメージを与えたゼアスって、実はウルトラ六兄弟並に凄いんじゃないか。

 

 

「いや、待って……あれ流石に死んだんじゃ……」

 

「「「「「…………ハッ!!」」」」」

 

 

 青褪めながらもセラフォルーが発した言葉に、漸く彼らはやり過ぎたことに気が付いた。

 

 正直、今更である。

 

 

「……そもそもあの男に攻撃させた時点で手遅れだったがな」

 

「今回ばかりはお前と同意け――「だからアザゼルあたりを投げつけておけばよかったんだ」――んじゃねーよ邪竜騎士!! 俺がダメージくらうだろうが!!」

 

「だとしてもお前も奴も死なんだろう。それに奴も相応の痛手は受ける」

 

「まず俺を投げるという発想をどうにかしろよお前は!!」

 

 

 ゼロガンダムがまともな意見を出したかと思えば即座にいつものアザゼルいじりにシフトチェンジ。

 犬猿の仲というか、凸凹コンビというか……何だかんだ言いつつ割と一緒にいる事が多い二人故に二人揃うと軽口がやたら飛ぶ。

 

 

「とりあえず確認しに――」

 

「……行く必要は無さそうだ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

 巌勝の言った短い言葉の意味は、直後にすぐ判明する事となる。

 おそらくケムール人が落下したであろう地点に、のっそりと巨大な影が立ち上がったからだ。

 

 

「な……何だアレは!?」

 

「怪人が……怪人が巨大化したぞ!」

 

 

 オーブ軍の兵士達は予想外の展開にパニック状態で右往左往。ウズミも初めての出来事に目を見開いて戦慄している程に。

 

 

「何かやっつけで巨大化した感が半端ないのじゃ……」

 

「もうどうにでもなれ的な雰囲気ですね」

 

 

 ……ただし、九重とシュテルの発言にウルトラ騎空団のメンバーは頷かざるを得なかった。

 

 グラン達と此方側でどうしてこんな展開の差がついてしまったのか……。

 

 どちらにせよ、そのままには出来ない。

 誰が対処するかと話し合い(本来はそんな時間など無いが、散々ボコられたからか巨大化したケムール人はまだ本調子でないらしい)しようとしたところ――。

 

 

 

 

 

「星まで届け、乙女のハッピー!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

『ウルトラウーマングリージョ!』

 

 

「シュワァッ!」

 

 

 

 

 

 愛らしい声と共に光が溢れ、ウルトラウーマングリージョが現れた。

 

 

「あっれぇぇぇぇぇ!?」

 

「打ち合わせする間もなくいきなり変身しましたね、彼女。いつになくやる気に満ちているというか」

 

「……ん?」

 

 

 どういうわけか今回、妙に行動力が溢れていたアサヒが誰よりも先んじて変身。

 ケムール人の前に立ち塞がり構えを取るが、巌勝は何か別の反応が恐ろしい速度でこの場へと迫っている事に気付く。

 

 到着したその反応の正体とは、ミナが駆る『ガンダムアストレイゴールドフレーム天津神』であった。

 

 あの後、ゴーデンの屋敷で通信を入れ終わった彼女はその足でモルゲンレーテ社の束の所へと急行。

 このような不測の事態に備えて愛機を起動させ、束とクロエにケムール人の反応を監視してもらい巨大化と共に出撃して駆けつけたというわけだ。

 

 

「生憎とこのオーブ、守護を客人扱いのウルトラ騎空団のみに任せていてはレジェンドに合わせる顔がない。何より、最初から最後まで他人任せにするのは私の信念に反するのでな」

 

 

 ミナのゴールドフレーム天津神の性能は、連合の開発したGAT-Xシリーズとは比べ物にならない。

 なにせあの束が開発した機体……つまりは惑星レジェンドの技術が使われている。

 おまけに一基だけだがダブルオークアンタと同じタイプのGNドライヴが搭載されており、エネルギー的な問題も解決。

 GNフェザーを展開し、オーブの空に浮かぶゴールドフレーム天津神は正しく天界に在りし神が如き威光を放っていた。

 

 さらに、遠くで光が爆ぜると同時にウルティメイトゼロがガンフェニックストライカーと共に飛び立つ姿が。

 

 

「ゼロとガンフェニックストライカー!?」

 

「よう! そっちに参戦出来なくて悪いな! ちょっくらメビウスと一緒に拐われた人達を救出してくるぜ!」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

『万が一に備えて僕は調べ物をしながら待機していたんですが、計器類が定期的にある特定の周波数をキャッチしたんです。それを解析したところ、亜空間にある何かへと送られていた事が発覚しました。恐らくは奴らの母船か拠点だと思われます』

 

 

 かつては不可能だった電送先の特定……ウルトラ騎空団、引いては惑星レジェンドの技術ならばそれが可能。

 電送先を特定したミライは、どれだけの人々が拐われているか不明なため少しでも多くの人達を乗せられるようにとガンフェニックストライカーで出撃し、ウルティメイトイージスによって空間移動をエネルギー消費以外ノーリスクで行えるゼロと連携して直接敵の本拠地へと乗り込む作戦を実行したのである。

 

 

「そんなわけで俺達は向こうで一仕事だ! 安心しろよ、あっちには竜馬や『トリガー』もいるんだからな! そして!」

 

『私もガンフェニックストライカーに乗ってまーす♪』

 

『オイラもいるぜ!』

 

「「「「「ジータ!?」」」」」

 

「ビィくぅぅぅぅぅん!?」

 

 

 誰かが「カタリナさん自重」と言いそうになったが、実際に言ったのはカナエさんである。

 彼女にツッコめるリアスとしのぶがいないのは痛かった。

 

 

『タイガは別の場所で頑張ってるんだし、私も駄弁ってられないからね。あ! それとオーブ軍の皆さ〜ん、バズーカ二丁借りました』

 

「「「「「オイィィィィィ!?」」」」」

 

 

 そもそも彼女……というかウルトラ騎空団は星晶獣という人知を超えた存在と日常的に戦闘を行っている。

 中でもジータはあのモネラマザー相手にタイガの救出を生身でやろうとしたレベルの度胸の持ち主だ。

 

 そんな彼女がもはや異星人相手というだけで怯むはずもなく、むしろ『ファンタジーなめんなエイリアン』とでも言うべき鬼メンタルを発揮。

 

 種も仕掛けも分かってしまえば狡猾で配下も強力、おまけにラスボスはデタラメな強さだったモネラマザーの方が遥かにヤバいと思ったジータはミライに頼み込み、ビィを連れて自ら救出作戦に志願したのである。

 

 

「スゲーだろ、コイツ。やっぱりグランの家族だぜ」

 

『でしょー……あれ? タイガのお父さんってゼロのお父さんの親戚なんだっけ? って事は私がタイガとゴールインしたらゼロは私のお兄ちゃん!?』

 

『いやジータ、滅茶苦茶飛躍してねーか……?』

 

「そういや親父が子供の頃に死んだっていう婆ちゃんがウルトラの母の姉妹って話聞いたっけ……え、何かレオ泣いてね?」

 

 

 サラッと言ったゼロの一言でゲンが両膝をついて「つらいとか言ってすみませんでした隊長ォォォォォ!!」と号泣している。

 どうやらセブンの母親との死別は自分やアストラよりずっと早かったことを知らなかったらしい。

 実際セブンは自身の姉に育てられたのだ。

 

 ちなみに父(つまりゼロの祖父)は勇士司令部のトップなので多忙。

 

 

「とにかく! 救出作戦は俺達に任せときな!」

 

 

 短時間の間にやたら濃い会話をした気がするものの、ゼロはウルティメイトイージスの力を使ってガンフェニックストライカーと共に空間移動する。

 少しずつ調子が戻ってきたのであろうケムール人がそうはさせんとばかりに動こうとするが、グリージョのしかけた飛び蹴りが直撃して吹っ飛ばされてしまう。

 

 

「沢山の人達に悪いことをした貴方にはお仕置きです!」

 

「喜ぶがいい、ケムール人とやら。貴様はこのゴールドフレーム天津神の記念すべき最初の実戦相手だ」

 

「ヴォオォォォ!!」

 

 

 邪魔をされて怒ったのだろうが、怒りが積もっているのはこちらも同じこと。

 手前勝手な理由で仲間を二人、誘拐されているのだからケムール人の行いを見逃して許すなど元から選択肢に無い。

 

 オーブにて起きた消失事件――終幕は近い。

 

 

 

〈続く〉




まさか宇宙怪人のコイツを出すことになるとは思っても見ませんでした。
どうも一種類だけだといまいち味気無い、何かスパイス的な奴がほしい!

……それで考えた結果が御覧の通り。何故だ。

しかも拐われた側はなかなか熱い展開になってるのにオーブ側はギャグ寄りというか……相手が悪かった。

次回、いよいよ決着に加えてイッセー達側も少し書けたらいいなと。レジェンド達は特別編で活躍中だし原作にはないオリジナルストーリーだしで今しばらく本編では出番待機です。


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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