ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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お待たせしました。
今回はギャグありシリアスありほのぼのありでお送りするバルトフェルドとの邂逅エピソード。

本作の特徴、超多重クロスによる会話が今回は一層際立ちます。
ちょい役ですが、久々に奴も出てきます。


それでは本編をどうぞ。


宿敵の牙

 ――バナディーヤ――

 

 

「俺達は自由行動?」

 

「ああ。そもそも君達は独立傭兵団だろう? とりあえず集合時間さえ守ってもらえれば何も言わないさ」

 

「えーっと……四時間後だっけ」

 

 

 ウルトラ騎空団並びにナタルとキラ、それにカガリやキサカ、サイーブらは砂漠の虎の本拠地であるバナディーヤの町にやって来ている。

 理由としては先の騒動で物資が不足しているタッシルの生き残りのため、アル・ジャイリーとやらとの交渉がメインだ。

 

 しかしながら全員で行くわけにも行かないし、まして行ったところで役に立たないどころか拗れさせて破談など以ての外。

 そもそもこの手の交渉事が出来そうなメンバー……アークエンジェルにいるウルトラ騎空団にはサーガとダイゴ、あとは沙耶に次点でしのぶくらいしかいない。

 

 

「しかし宜しいんですか? サーガ様に任せきりで……」

 

「しのぶも沙耶も先の戦いでの傷が癒えていないだろう。それにキラに加えあのカガリという娘にはダイゴがいてくれた方が何かと都合がいい。俺はアークエンジェルに残っていたから体調の方も問題無いからな」

 

 

 そう、リンボとの戦いに参加した、アズ以外の一誠達はまだ怪我が治りきっていない。

 そうなると、いざという時に頼れるのはダ・ガーン達……は大きさ的に最終手段として、ダイゴを除きあのゲンの一撃が直撃しても少し気絶するだけで復活するレベルの三日月だけなのだ。

 リアスも戦力として数えていいのだろうが、逆に指揮を執るとなると彼女は後方にいたほうがいい。

 

 

「それじゃあ俺達は大人しく荷物持ちしようぜ」

 

『何かゴメン、イッセー』

 

『タッシルでは問題無さそうだったんだが……』

 

『一応正体隠さねーとってなったら仕方ないよな』

 

「心配いらねーよ。師匠なら『これも無理しない範囲での修行だ』って言うだろうし」

 

 

 一誠の言葉にアストラル体のトライスクワッドは納得してしまう。

 ゲンなら間違いなく言うだろう。

 

 

「でも、ホントに虎の本拠地か疑いたくなりますよね。こうも普通に賑やかだと……」

 

「ふん! ついて来い!」

 

 

 サイーブやナタル、サーガと別れた一同がカガリに連れられてきた場所からは砂漠の虎の母艦、レセップスが視界を大きく遮っていた。

 

 

「あれが、この街の本当の支配者だ。逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ」

 

「ここに返り討ちできそうな面子集まってるんだけど」

 

「誰も彼もがお前らみたいだと思うな!」

 

 

 御尤もである。

 

 

 

 

「アルターエゴ・リンボ……」

 

「ああ。見た目から可怪しな奴だとは思ったが、ありゃあ思考も強さも普通じゃねえ。確かに考えさせられるような言葉も吐いたが、アイツのやったことで帳消しになっちまうレベルだ。『死んだ方がマシみたいだったから殺してさしあげた』 ……そんな理由で平然と人を殺しやがる。素手で、顔色一つ変えずに」

 

 

 ムウは珈琲片手にマリューとタッシル近郊であったことを話し合っていた。

 当然、話題はリンボの事に他ならない。

 

 

「正直、あの青い嬢ちゃんがいなけりゃどうなっていたか……」

 

「えーっと……沙耶さんの知り合い、だったのよね?」

 

「何でも、お袋さんの親衛隊みたいなもんらしい。しかもそん中で最強だと。そんでとんでもバトルをした挙げ句『全力が出せない』? この短時間でアホみたいな量のオカルトファンタジーに出会っちまったよ。おまけにその嬢ちゃん、名前がランスロットだぜ?」

 

「ランスロットって……あの『アーサー王伝説』の?」

 

「本名は別らしいけどな」

 

 

 ガシガシと頭を掻きながら言うムウに、余程その光景が衝撃的だったのだろうとマリューは思う。

 バラージの件もそうだが、漫画やアニメなどでしか見ないようなことを自身の身で体験すればそうもなる。

 

 

「……正直、これはここだけの話にしたいんだがな」

 

「はい?」

 

「宇宙で見た化け物やアントラーとかいうのだけだったら『どう対処するか』だけで済んだが……あんなんが出てきた以上、もしかすると連合やザフトにもああいうのが潜んでる可能性があるぞ」

 

「……そのことなのだけれど、彼らから教えてもらったのよ。クルーゼ隊の参謀、ベリアルについて」

 

 

 

 

 バナディーヤの町を一人歩く、真っ黒い装束の青年が一人。

 

 

「この世界がハズレとはまだ断定出来ないが……少なくともここには――ん?」

 

 

 青年が目にしたものは自身と因縁のある面々。

 直接的にあるのは限られている上に目にした者達の中にはいなかったが――。

 

 

「フ……彼らもこの世界にいたんだったな。最近収獲が無さ過ぎて忘れていたが、ベリアルから情報があったことをすっかり失念していたよ。丁度良い、挨拶の一つでもしておこうか。お誂え向きの役者もいるのだから」

 

 

 そう言いながら、青年――アサキム・ドーウィンはほくそ笑むのだった。

 

 

 

 

「やっぱりこの人数だと荷物分担出来て負担も少ないな」

 

「で……誰だ、このエリザリオの乳液だの化粧水だの頼んできたの。フレイ?」

 

(あ、そういえば彼女も残ったんだっけ。ていうか彼女が残ったからサイやトール達も残ったんだった。いつも何処にいるんだろ?)

 

 

 ぶっちゃけ、カガリがそう口にするまでキラの頭からフレイの事がすっぽ抜けてたのは内緒だ。

 そうこうしていると、いつの間にか注文していたらしい食べ物が運ばれてくる。

 

 

「何、これ?」

 

「ドネルケバブさ! あー、疲れたし腹も減った。ほら、お前達も食えよ。このチリソースを掛けて……」

 

「あーいや待ったぁ! ちょっと待ったぁ!」

 

 

 いざ食べようとした瞬間、何やらファンキーな男が待ったをかけてきた。

 チリソースという言葉に目を輝かせていた三日月は若干苛立っている。

 

 

「何、おっさん」

 

「おっ……!? いや今はそんなことどうでもいい! ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ! このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうが」

 

「ああ?」

 

「いや、常識というよりも……もっとこう……んー……そう! ヨーグルトソースを掛けないなんて、この料理に対する冒涜だよ!」

 

「どうでもいいし、俺は辛いのが好きだから」

 

 

 遠慮なくチリソースを掛けて齧り付く三日月に、カガリが笑顔になり男がショックを受ける。

 

 

「な……なんの躊躇いもなく……」

 

「お前、いい趣味だな! そもそもそっちのお前は何なんだ! 見ず知らずの男に、私の食べ方にとやかく言われる筋合いはない!」

 

 

 そう言うとカガリもチリソースを掛けて三日月のようにケバブに齧り付く。

 

 

「あぁぁぁ……なんという……では君はどうだ!?」

 

「え?」

 

「ダイゴ兄様! ヨーグルトソースが悪いとは言わないが、ケバブにはチリソースだ!」

 

「いーや! 大人の君なら分かるはずだ! ケバブにはヨーグルトソースがベストだと直感的に!」

 

 

 ……何故かダイゴに飛び火してしまった。

 ぶっちゃけ本人どころかカガリと男以外全員ポカンとしてしまう程に急な展開である。

 三日月に至っては黙々とケバブを食べ進めているので他の事は頭に入ってこない。

 

 

「ねえ、ホワイトソースとかチーズソースとかもあるのだけれど……」

 

「「論外!!」」

 

「あ、そう……」

 

『ほっときゃいいんじゃね? このケバブバカ共は』

 

『フーマ、今は食べられないからってそんな口の悪い……』

 

 

 リアスの質問を一蹴した二人に、さすがのフーマも匙を投げた。

 タイタスが諌めるも、その間に二人が揃ってダイゴのケバブにソースを掛けてしまうという惨事を起こす。

 ダイゴは仕方ないと諦めたのだが、笑顔のキラが淡々と二人に説教する姿は『仏の怒りってこうなんだな』と思わせるものだったとか。

 

 

 

 

 

 そんな光景を忌々しげに見ている者達がいた。

 

 

「ちっ、いい気なもんだぜ」

 

「あのテーブルや近くに居る連中は?」

 

「その辺の奴らだろ、どうせ虎とヘラヘラ話すような奴だ」

 

「では行くぞ。開始の花火を頼む」

 

「ああ。魂となって宇宙へ還れ! コーディネイターめ!」

 

「ンンンンン〜、いけませんねえ。ここでそんなことをされては何かと面倒なことになりまする」

 

「「!?」」

 

 

 

 

 

「いや……ホント悪かった……」

 

「私も……すまなかった」

 

「まあ、ミックスというか……食べ方を考えれば二種類の味を味わえるから」

 

(ティガ先輩、大人だ……!)

 

(さすが遊撃隊の切り札、気遣い半端ねえ……!)

 

 

 キラのお説教で意気消沈中の二人をフォローするダイゴに、一誠とタイガは心の中で拍手を送った。

 沙耶としのぶ、アズはケバブに悪戦苦闘中。

 

 

「これ、バーゲストは好きそうね……」

 

「煉獄さんならうまいうまいと平然と平らげそうなのだけど……」

 

「レジェンドさんと一緒に食べたかったな」

 

 

 アズの一言がデカすぎる。

 あの日ヒリュウ改の倉庫で見つかって以来、アズはレジェンドと一緒に食事する時間が何より好きになったのだ。

 そんな彼女らの光景にほのぼのしつつ、男は尋ねた。

 

 

「しかし凄い買い物だねぇ。パーティーでもやるの?」

 

「五月蠅いなぁ、余計なお世話だ! 大体お前は何なんだ? 勝手に座り込んであーだこーだと……」

 

 

 その時、響く銃声……ではなく。

 血塗れな男の遺体が二つ、派手な音を立てて落ちてきた。

 そんなものを見ればたちまち辺りは騒然となる事など自明の理。

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

「な……何であいつらは既にやられているんだ!?」

 

「くっ……仕方ない! 死ね! コーディネイター! 宇宙の化け物め!」

 

「青き清浄なる世界の為に!」

 

「ブルーコスモスか!」

 

 

 本来ならば威嚇を行った後に一気に攻めるはずだったブルーコスモスの構成員達であったが、どういうことか二人息絶えて落ちてくるという異常事態に混乱しつつも当初の予定通り攻め入ることにした……のだが。

 

 

「あぎぃ!?」

 

「がぁ!」

 

「「「「「!」」」」」

 

 

 突如飛んできた紙形で新たに二人が絶命。

 

 

「な……何だ!? 何をされた!?」

 

「今のは、まさか……!」

 

「ンンンンン? おやおや、よもや敵陣深く攻め込む……否、敵陣承知で観光? 何にせよ、その剛胆な精神……天晴でございまする」

 

「「「「「リンボ!!」」」」」

 

「思ったよりも早い再会でしたな、皆様。しかし拙僧、ここにいる以上やらねばならぬことがあります故、此度はお構い出来ませぬ」

 

 

 そう、リンボがまるで男を守るかのように現れブルーコスモスの構成員を始末したのである。

 

 

「他も、やってよろしいので?」

 

「ああ、頼む。ただしブルーコスモスだけだ」

 

「承知」

 

 

 短い会話の後、すぐさま新たにブルーコスモスの構成員を一人……肋骨をへし折り、首を捻り、両手足を砕く。

 更にまた一人、紙形を飛ばし爆発させ体そのものを吹き飛ばす。

 

 あまりに容赦の無いリンボの攻撃にブルーコスモス側が哀れに思えてしまうほど。

 後から到着した者達……ザフトの警備兵も唖然としてしまう。

 

 元より生身での戦闘を得意とするウルトラ騎空団団員複数を圧倒出来るリンボに一端の構成員が手足を出せる訳がなく、幾時も掛からず殲滅は完了した。

 

 

「いやはや、ブルーコスモスとは時として拙僧より過激……ンンンンン? ハハハハハ! 愉快、これは愉快!!」

 

 

 何やらリンボがカガリ達を見て爆笑し始めた。

 というのも、リンボの戦いの余波でどうやらカガリに加えてリアスまで複数のソースとお茶を頭から被ってしまったようだ。

 

 

「てんめえ……大半はお前の所為だろ!!」

 

「そうよ! あんな爆発を町中で起こして!」

 

「はて? 拙僧は紙形を飛ばしただけで、爆発したのはブルーコスモスですが。なるほど! つまり全てブルーコスモスが悪いと! なんと見事な責任転嫁!!」

 

「お前がな!!」「貴方がね!!」

 

 

 ……カガリとリアスは案外ウマが合うのかもしれない。

 

 そこへやってきたのはマーチン・ダコスタ。

 そう、アンドリュー・バルトフェルドの副官。

 つまり……。

 

 

「隊長! 御無事で!」

 

「ああ、私は平気だ。彼のおかげでな」

 

「……ちゃんと仕事したんですね、あの人」

 

「そう言ってやるな。彼が助けてくれたのは紛れもない事実だ」

 

 

 ――帽子とサングラスを取ったその姿は。

 

 

「……アンドリュー・バルトフェルド……」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「砂漠の……虎……」

 

 

 呆然とするカガリや、呆気にとられるキラ達を気にせず――。

 

 

「いや、僕の所為で度々迷惑をかけたようでホント申し訳無い!」

 

 

 バルトフェルドは軽く言い放った。

 

 

 

 

 一方、アル・ジャイリーとの交渉に赴いていたサーガ達は、出所不明ではあるもののアークエンジェルにとって必要なものは全て揃っていることに安堵しつつも金額が凄まじい額になっていることに驚愕。

 

 したのは一時の話。

 

 キサカが支払い方法を尋ねようとすると――。

 

 

「このあたりで使える紙幣や硬貨の持ち合わせが無い。これで構わないか」

 

 

 サーガがそう言ってブレスレットから取り出したのは、換金すれば何十年も遊んで暮らせそうな数の金の延べ棒。

 

 

「「「「「はあああああ!?」」」」」

 

「ええ! ええ! 勿論です! どうぞお納め下さい!!」

 

 

 キサカを含むナタル達は顎が外れ、アル・ジャイリーは一発で金塊の山を見て落ちた。

 一足早く我に返ったキサカが指示を出してすぐにそれを運ばせたが……。

 

 

「何故、あれほどの金塊を……」

 

「昔、他所で仕事中にな。あれが無くても俺も家族も生活は問題無い。あれで知人の命が助かるなら安いものだ」

 

 

 ……何故か、ナタルやトノムラからサーガは英雄を見るような目で見られるようになったそうな。

 

 

 

 

 ――キラ達は何故か、全員バルトフェルドの邸宅へと案内されていた。

 

 

「さ、どうぞ〜」

 

「いえ、僕達はほんとにもう……」

 

「いやいや~、お茶を台無しにしたのはそもそも僕が彼処にいたからだし、彼女達なんか服グチャグチャじゃないの。それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね? 僕としては」

 

「「「「「……」」」」」

 

(なるほど、こちらを警戒してるにはしているが……やはりリンボの方が気にかかるか。いや、彼らはリンボと何処かで対面したのか……? まさか、タッシル?)

 

 

 バルトフェルドはタッシル近郊であったリンボとウルトラ騎空団、そして妖精騎士ランスロットの激突を知らない。

 先のリンボの戦いを一度見ただけで警戒しているというのは間違いなのだが、今は双方それどころではないだろう。

 

 警備兵に案内され、向かった先にいたのは黒髪に青いドレスのスラッとした体格をした大人の女性。

 

 

「この子達ですの、アンディ?」

 

「ああ。彼女らをどうにかしてやってくれ。複数のソースとお茶を被っちまったんだ」

 

「あらあら……ケバブね〜」

 

「あ……うん……」

 

「それだけで分かっちゃうのね……」

 

 

 カガリは小さくなり、リアスはもはやそれだけで分かってしまうことに溜息を吐く。

 そんな二人の手を引き、女性は歩いて行ってしまう。

 

 

「さ、いらっしゃい」

 

「カ……カガリ……」

 

「部長……!」

 

「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」

 

「おーい、君達はこっちだ!」

 

「……二人とも、安心していいよ。きっと彼女の言ってる事は本当だから」

 

 

 ダイゴの言葉に少し安心したのか、キラと一誠もバルトフェルドに呼ばれた方へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 客間らしき場所に招かれたキラやダイゴ達。

 さすがに人数が人数なのでスペースを気にしているのだが……。

 

 

「僕はコーヒーには、些か自信があってねぇ」

 

「はぁ……」

 

「まぁ掛けたまえよ。寛いでくれ」

 

「じゃあ女子優先で……」

 

 

 何かあった時、すぐ対処出来るようにしのぶ、アズ、沙耶の順にソファーに座る。

 キラやダイゴ、三日月に一誠はたったまま、トライスクワッドはさり気なくアストラル体のままアズ達を守るようにテーブルに座っていた。

 

 そこで目に入ったのは。

 

 

「……これは」

 

「エヴィデンスゼロワン。実物を見たことは?」

 

「僕は無いですね。仕事柄あちこち飛び回りはするんですが、基本スケジュールがキツくて休む時間を確保出来ても自由な時間はなかなか……」

 

「あらま。体調には気をつけたまえよ。仕事中やらかすのが一番精神的にもくるからな、悪循環になる前に有給申請しといたほうがいい」

 

 

 差し障りのない返答をするダイゴは流石と言える。

 バルトフェルドも隊長職という立場上、何かシンパシーを感じたらしい。

 

 

「しかし何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」

 

「いや……そう言われても……」

 

「鯨っていうか、恐竜とか肉食動物っぽい」

 

「お! そっちの彼は結構良いセンスだねぇ。ただ気になるのはやっぱり羽根だと思うんだよ。普通鯨に羽根は無いだろう?」

 

「え……まぁ……でも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから……」

 

「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ」

 

「誰かが勝手に呼んで、それがいつの間にか当たり前になり誰もそこを気にしなかった……とか?」

 

「おお!? そこの青髪の娘、さては目の付け所がいいな?」

 

 

 アズにビシッと指を指しつつも戯けて言うバルトフェルドにキラは若干困惑している。

 砂漠の虎というからにはもっと獰猛な人物を想定していたからだろうか。

 

 

「ところで、どう?コーヒーの方は」

 

「……悪くないけど、人は選ぶわね」

 

「ん〜、一考の余地ありか。貴重な御意見ありがとう。 ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも」

 

「厄介……ですか?」 

 

「そりゃぁそうでしょう。こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか……可能性が出てきちゃった訳だし」

 

 

 ここでやっと全員が真剣になってバルトフェルドの話を聞き始める。

 

 

「人はまだもっと先まで行ける、ってさ。この戦争の一番の根っ子だ」

 

「確かに外宇宙を目指す、というだけなら競争程度で済むでしょうが――」

 

「そう、問題は『人は』って点だ」

 

「あるがままの人であるナチュラルと、その『もっと先まで行く』ための一歩とも言うべきコーディネイター……」

 

「最近思うんだよ、何も先に行くだけが道じゃないんじゃないかってね。ま、僕一人思ったところで他が同調するなんて甘い考えはしないけどさ」

 

 

 少しずつ雰囲気が重くなっていく中、先程の女性がノックして部屋にやってきた。

 隣には着飾らされたリアス、カガリの姿は――。

 

 

「ほう、これは……」

 

「部長……ナイス・ドレスアップ・バスト……グッジョブ」

 

「おう!?」

 

『『『イッセー!?』』』

 

 

 ドレスアップされたリアスを見た一誠は一筋の鼻血を垂らしてサムズアップしながら笑顔で仰向けに倒れるという離れ業を披露した。

 唐突で意外な反応にバルトフェルドすらも驚いてしまい、久々のリアクションにタイガ達も焦る。

 

 つーか何だ最後の単語。

 

 

「いやまさかそこまで似合うとは……」

 

「あー、ほら。もう、彼女を少しは見習って」

 

「ああ……」

 

 

 頬を染めながら前に出てきたカガリも、それはもう見事なドレスアップをされ、リアス程ではないにしろ十分華やかだ。

 

 

「あー……女……の子……?」

 

「っ……てんめぇ!」

 

「あ、いや! だったんだよねって言おうとしただけだよ!」

 

「同じだろうがそれじゃあ!」

 

「カガリは活動的な赤が似合ってたけど、こっちの色も良い感じで似合うね」

 

「ほら! ダイゴ兄様を見習え! 褒めるならこういう事を言えよな!」

 

(ティガ先輩、さすが)

 

(遊撃隊屈指のモテトラマンは伊達じゃねえな……)

 

 

 

 キラ、カガリ、ダイゴのやり取りを見ていたタイガとフーマはそう思った。

 タイタスはそういったことに無頓着なのか、既にいつもの筋トレを始めている。

 こういうときに便利なアストラル体。

 

 やり取りをバルトフェルドと女性にも笑われ、ちょっぴり恥ずかしくなるキラとカガリだった。

 

 

 

 

「何ですって!? キラ君とカガリさん、それに副団長さん以外のウルトラ騎空団の人達が戻らない!?」

 

『ああ……時間を過ぎても現れない。サイーブ達はそちらに戻ったか?』

 

「いえ、まだよ」

 

 

 アークエンジェルでキサカから通信を受けたマリューは、話の内容を聞き平静ではいられなかった。

 キラとカガリだけならまだしも、サーガ以外のウルトラ騎空団メンバーが誰一人戻らないのはあまりにも不自然。

 サーガもというのであれば、偶然騎空団の本隊と合流出来てそのまま……という可能性はあるが、それでも連絡の一つはしてくるだろう。

 ましてやダイゴという、オーブの特務大使までいなくなるのは只事ではない。

 

 

『電波状態が悪くて、彼らと直接連絡が取れない。連絡が付いたら何人か戻るように言ってくれ。市街でブルーコスモスのテロがあったのだ。だが、何をするのにも手が足りん』

 

「パル伍長! バジルール中尉を呼び出して!」

 

『いや、それには及ばない。彼らは無事だよ』

 

「「「「『!?』」」」」」

 

 

 突然割り込んできた若い男の声に周囲は騒然とする。

 

 

『安心するといい。心配しなくても君達に不利益な行動はしていないさ』

 

「……貴方は?」

 

『ふむ……名乗ってもいいが、個人的に君達の艦に同乗している彼らとは色々あってね。『ブラックゲイル』という偽名で勘弁してほしい』

 

(彼ら……おそらくウルトラ騎空団ね)

 

 

 さすがにそれ以外の選択肢は浮かばない。

 完全に信用する気は無いが、確かにあの面子が黙ってやられることも無いだろう。

 一先ずは声の主を信じることを決めたマリュー。

 

 

「信じるしかなさそうだし、それしか出来ることもなさそうね」

 

 

 

 

 ――再び、バルトフェルドの屋敷。

 

 

「ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ。特にそちらのお嬢さんは」

 

「家柄、というかこういったことは幼い頃から学ばされたので」

 

「おっと失礼。正真正銘のお嬢様か。で、そちらは……」

 

「勝手に言ってろ!」

 

「紅姫様と違って、喋らなきゃ完璧」

 

 

 その言葉にムッとするカガリだが、彼女自身もリアスと並んだら見劣りする事ぐらいは理解している。

 背筋もしっかり伸びてるし、スタイルなど同じ女性として見たら羨ましい程。

 

 そんな気持ちを隠すかのようにカガリはバルトフェルドを睨む。

 

 

「そういうお前こそ、ほんとに砂漠の虎か? 何で人にこんなドレスを着せたりする? これも毎度のお遊びの一つか!」

 

「ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」

 

「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり――」

 

「君が、いや君達が本当に聞きたいのはタッシルのことじゃないのか?」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 さすがにダイゴがカガリを諌めようとしたとき、バルトフェルドから衝撃の発言が出てきた。

 タッシルの大虐殺――それはこの場の誰もが疑問に思っていたこと。

 だが会って話をして分かったがバルトフェルドは襲撃に対する報復こそすれ、あのような非道な行為を行うような人物には思えなかったのだ。

 

 

「……ッ! 何であんな事を!」

 

「本来であれば、警告して十分後に町のみを焼き払う予定だった。燃料なんかもだがね。しかし……」

 

「しかし?」

 

「――私でもあの『獣』は手綱を取れなかった」

 

「獣……」

 

「あの惨状はリンボ一人によって行われたものだ」

 

「なっ!?」

 

 

 初めてここで、あの惨劇がリンボの独断で行われた所業であることをキラ達は知る。

 初めて会ったキラやダイゴ、リアスらは『気を許せない人物』と警戒する程度だったが……直接相対して戦闘まで経験した一誠や沙耶達にとっては『絶対に碌な事をしない奴』と確信しており、案の定それは正しかった。

 

 

「単独飛行可能な人型MSを駆って、家屋を引き裂き人々を焼き払い……悲惨としか言いようが無かったよ。私がやろうとしていたことも似たようなものだが」

 

「だったら! 止めることだって出来たはずだ! だがお前はそれをしなかった! 結局お前もアイツと同じだ!!」

 

「カガリ……」

 

「それは否定しないし出来ない、出来るわけがない。ただ、一つだけ同じ思いはある。君も死んだ方がマシなクチかね?」

 

「「「「「あ……」」」」」

 

 

 ――先程この方は『死んだ方がマシ』と仰られましたので――

 

 リンボはそう言ったから介錯したと。

 

 

「そっちの彼、君はどう思ってんの?」

 

「え?」

 

 

 突然話を振られたキラは困惑するが、バルトフェルドは気にせず続ける。

 

 

「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」

 

「「「「「!」」」」」

 

「お前、どうしてそれを!」

 

「はっはっは、あまり真っ直ぐすぎるのも問題だぞ。戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。ならどうやって勝ち負けを決める? どこで終わりにすればいい?」

 

 

 バルトフェルドの問いはキラだけでなく、一誠達にも重くのしかかる。

 

 そして彼は――。

 

 

「敵である者を、全て滅ぼして……かね?」

 

「「「「「!」」」」」

 

 

 机の引き出しから拳銃を取り出してキラ達へ向けた。

 その表情や空気から、先程までのおちゃらけた感じは全く無い。

 

 

「……最初からそういうつもりで私達を招き入れたのね。あの月の日の仇討ちなら私だけを狙えばいい」

 

「そうか、君があの機体のパイロットか。恨んでいないと言えば嘘になるが……これは戦争だ。仕掛けたのはこちらだし、いつまでも引き摺っていてはミスしないとも限らん。それでまた部下を失うような真似だけはしたくないのでね」

 

 

 沙耶にバルトフェルドもそう返し、遺恨自体は然程ない事を示すも銃を下ろす気配はない。

 タイガ達トライスクワッドも実体化するタイミングを狙っているし、最悪ダ・ガーン達も一誠らの指示無しで現れられるように準備している。

 

 

「しかし妙と言えば妙だ。少なくとも君達の中でコーディネイターはそこの彼ぐらいだろう」

 

「え!?」

 

 

 カガリはキラがコーディネイターと言われて驚くが、それ以上に……。

 

 

「他の者達はコーディネイターではなさそうだ。だが見慣れぬ種の機体を手足のように扱うその技量、私達で例えるならアズナブル隊に通ずるものを感じる」

 

「新生阿頼耶識とか使ってるし」

 

「やはり全く聞いたことがないな。個人的にはそこの君に詳しく話を聞きたいところだが、話す気はあるまい?」

 

「うん、必要も無いし」

 

「手厳しいが確かにそうだ。それに君達が何故我々と敵対する道を選んだかは知らんが、あの機体郡のパイロットである以上、私と君達は敵同士だと言うことだな?」

 

 

 暫しキラ達とバルトフェルドの間の空気が緊張状態のま膠着する。

 正直な話、バルトフェルド一人を突破することはこのメンバーなら造作もない。

 だがここは敵地のど真ん中の上、下手をすればあのリンボまで相手にしなければならなくなる。

 先の戦いより戦闘可能なメンバーこそいるが、それでも太刀打ち出来るかどうか怪しいところだ。

 

 叶うなら穏便にいきたいが――と思った瞬間、バルトフェルドは笑いながら銃を引っ込めた。

 

 

「!」

 

「ふふ。やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ。宇宙でも未知の化け物が出たというのは聞いているが、結局目の前の事態を解決したがるのが人間なのかもなぁ」

 

「あ、あの……?」

 

「ま、今日の君達は僕への襲撃のとばっちりを受けた被害者だし、ここは戦場ではない。帰りたまえ。話せて楽しかったよ、よかったかどうかは分からんがねぇ。また戦場でな」

 

「御配慮に感謝します」

 

「リンボのことなら安心していい。気休めにしかならんだろうが、少なくとも君達がこの町を出て姿が見えなくなるまで手出しをしないように言ってある。一応了承してはいたが……」

 

「あれの性格を考えると安心し切れないわね」

 

「そこはすまん」

 

「寧ろそこは貴方の所為じゃないでしょう」

 

 

 まだ緊張は抜けきらないが、少し前に比べればかなり穏やかな空気になっている。

 再び微妙な雰囲気になる前にとダイゴはキラとカガリを促し、ウルトラ騎空団もそれに続けて退室。

 それから邸宅より離れた町中へ送られ、そこから合流地点へと移動。

 

 心配されると同時に怒られたものの、事情を説明するとすぐ納得してもらえたのはありがたかった。

 

 ……しかし、バルトフェルドとの会話が彼らにとって大なり小なり影響を与える事にもなった。

 

 同時に彼らは予感する。

 

 近いうちに砂漠の虎との決戦が待ち受けていることを。

 

 

 

〈続く〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事に……かどうかは分からないが、艦に戻れたようだね。彼らへの挨拶は……そうだな、彼らと砂漠の虎の戦いにでも乗じてやらせてもらうとしよう。もう少しの辛抱だ、シュロウガ」

 

 

 黒き異邦人は黒い機動兵器と共に、静かにほくそ笑む。




キラの代わりにダイゴが被害を被りました。
そして復活はえーんだよお前はよぅ!

サイバスターとロスヴァイセいないのに出て来ちゃったアイツ、もはや乱入してくるの待ったなし。

次回は原作同様ほのぼの風味になる……か?


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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