ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER 作:ハジケハムスター・ポッポ
今回はあっさりしてると思いますが、少しばかりの息抜きパートだと思って力を抜いてお読みください。
それでは本編をどうぞ。
バトラの脅威から逃れられた直後、オーブ艦隊が出張ってきたと思えばアークエンジェルのエンジンが突如として故障し、オーブ艦隊に連行されることになった。
降下後から波乱続きだったので無理が祟ったというべきなのだろうが、どうも都合が良すぎる気がしなくもない。
ともあれザフトと上手いこと引き離されたのは僥倖と言える。
ちなみにペガサスAに関してはちゃんとオーブに滞在しているウルトラ騎空団の艦と認知されていたので、レジェンドと彼が持っている証書が決め手となり問題無く入港出来た。
「サハクってアレだろ? オーブのお偉いさんの一族の」
「団長さん、そことどういう関係なんだ?」
「ロンド・ミナ・サハク女史は超師匠の婚約者でござりんす。二人並ぶと出来る夫婦感半端なくて近くにいた俺泣きそうになったぜ」
「「……え゙」」
「父さん、いつの間に?」
「取り引き上仕方なく……と思ったが話してみると案外気が合ってな。芯がある女傑だぞ、あいつは」
つまりレジェンドの養子であるライと、ついでにライの婚約者であるモニカにとっても将来的に義理とはいえ親子関係になるわけで、気になるのは当然の事。
ちなみに束がミナと仲良しなのを彼らはまだ知らない。
「集まったらこれまでの状況を報告することになるだろうが……ホントどうすんべ、あのこと」
「コーディネイター誕生にインベーダーが関わっていること、だよね」
「インベーダーがどんなものか、まだ知らないだろうから知っている俺達と違い『何だそりゃ』で済まされるかも分からんが……逆に知ったら愕然として世界レベルの混乱が起こるだろうしな」
「むしろ竜馬さんはあのゲッターについて聞いてきそうなんだけど」
ゲッター聖ドラゴン。
あの荒廃した世界で見た謎の超巨大ゲッター。
どうもレジェンドとは面識があるようだが、当のレジェンドは必要以上に語る気が無いらしく……その事については黙秘している。
同じ頃、アークエンジェルでもカガリとキサカの正体が判明しており――。
「オーブにはウルトラ騎空団の本隊……いや、空の世界からこちらにやってきたメンバーが集結している」
「ウルトラ騎空団の、本隊……!」
「私の姉や、ダイゴさんの後輩に当たる方などもいますよ」
「しのぶさんのお姉さん……」
「私達オカルト研究部の決戦兵器。けど機動兵器の操縦に関しては、その……」
「あとから学び始めた私に叩きのめされてましたね」
実姉であるカナエがしのぶにしっかりこき下ろされていた。
その際、ヒリュウ改にいたカナエがド派手なくしゃみをして、偶然彼女の目の前にいたミツバに思いっきりかかってしまったのは避け得ぬ事態であったことを付け加えておく。
「それはそれとして、私達は正式にここで降りることになるわ。アークエンジェルに同行したのは不測の事態だったからだもの」
「あ、そっか……沙耶さん達の所属はウルトラ騎空団ってとこだもんな」
そしてそれは、今までアークエンジェル内で精神的支柱役だったダイゴとの別れも示している。
特にキラ達学生組は彼の言葉に助けられたことも多く、彼らの寂しげな表情はダイゴという存在の大きさをマリューらは改めて実感させられた。
☆
とある一室にてオーブの前首長ウズミ・ナラ・アスハを始め、マリュー、ムウ、ナタルに加えてレジェンドとサーガ、オーブの特務大使でもあるダイゴ、そしてロンド・ミナ・サハクが集い席に着く。
「御承知の通り、我がオーブは中立だ。公式には貴艦は我が軍に追われ、領海から離脱したということになっておる」
「はい」
「助けて下さったのは、まさかお嬢様が乗っていたから、ではないですよね?」
「国の命運と甘ったれたバカ娘一人の命、秤に掛けるとお思いか? むしろウルトラ騎空団に所属しつつ、我がオーブの特務大使も兼任しているダイゴ殿の方がその問いの答えに当て嵌まる。彼らは先日も我が国で起きた事件を解決し、そこに所属するダイゴ殿を見捨てるということはそれに不義理で返すということ。そんなことをすればここにいるレジェンド団長とサーガ副団長が黙っておりますまい」
そう言ってウズミに見られ、ダイゴは苦笑する。
ムウは「失礼致しました」と謝罪するが、ウズミは別段それを責めたりせずに「そうだったらいっそ分かりやすくてよかった」と返した。
その後、ウズミはキラにモルゲンレーテへの技術協力を希望している旨を伝え、動揺するマリューらを尻目にミナへ目配せして会話の主導権を譲渡。
「キラ・ヤマトの技術協力云々においては本人の意思抜きで決めるわけにはいかぬだろう。私がこの場にいるのはレジェンドとサーガ、分かたれてからの双方の旅路で起きたことの把握をするためだ。私もざっと聞いただけだが、どちらも相当な事実に直面したようなのでな」
「失礼ですが、貴女は?」
「ロンド・ミナ・サハクだ。オーブ五大氏族の一つサハク家の関係者で、そこのウルトラ騎空団団長レジェンドの婚約者でもある」
「「「こっ!?」」」
三人同時に驚きながら一斉にレジェンドの方を向くも、当の本人は目を瞑ったまま腕組みしつつ椅子にもたれ掛かっている。
口元は少し笑っているが。
(だからサハク家の証書を持っていたのね……)
(マドカ特務大使と合わせてどっちもオーブの重要関係者じゃないか。そりゃ影響力強いわけだ)
マリューとムウは相変わらず精神にダイレクトアタックしてくるレジェンドに頭を痛めた。
「さて。これで一通りここにいる者達の素性が分かったところで情報交換といこうか。まずはサーガから――」
☆
――ヒリュウ改・食堂――
「店長さん、おかわりお願いしまーす!」
「はいよ。しかし帰ってきてから即座にここに来るとはな」
「えへへ……」
ヒリュウ改に戻ってきたルリアは、当然の如くアマリを引っ張って食堂へ直行。
そこにいたジャグラーを見つけて帰還の挨拶も程々に早速特盛のうな重を頼み、たった今おかわりを所望した。
ガイとライ、モニカに連れられてやってきたミゲル、ラスティ、アポロンゼストはその光景に唖然としている。
「ま……マジでうな重出てる……!」
「あれが噂の店長か」
「で、ガイさんのライバル」
「よし、ちょっとおちょくってくる」
「「銀河遊撃隊の一員でその発言はどうなの?」」
驚くミゲルとラスティはいい、しかしガイの意地悪げな発言にはライとモニカもツッコまざるを得なかった。
ウルトラマンだろお前と言われそうだが、ガイとジャグラーの関係だからこその台詞である。
「ん? そういやゼットがいないな」
「ホントだ。どこ行った? ステラを紹介するんだーってはしゃいでたのに……ってそのステラもいないじゃん」
「彼らはな……」
そうしてアポロンゼストが告げたのは――。
☆
「え、ノアの奴こっちに来てそんなん仕込んでたの?」
「そうらしい。俺も又聞きでしかないから、詳しくはラミアス艦長とダイゴ……あくまでこの場では、だがそちらに聞いてくれ」
「まあ何でアイツがそこでそんなことしてたかはこの際どうでもいいか。にしてもアントラーの異形進化にミニオンねぇ……異形進化は分からんがミニオンの目的は想像がつく。尤も、そんなところにどうやって現れたかは知らんがな」
「加えてリンボと名乗る者や、応龍皇という超機人なる機動兵器……もはやナチュラルとコーディネイターで争っている場合ではない。ダイゴ殿に言われた通り、この世界全体に危機が迫っている」
バラージでの出来事に始まり、タッシルで起きた暴虐の元凶やバルトフェルド隊との決戦の最後に現れたヴァーリの駆る超弩級の機動兵器・応龍皇……アークエンジェル側も相当なもんだとレジェンドは顎に手を当てて思案している。
「それで、先輩の方は?」
「よりによって連合のある施設を偶然見つけてな。内容が悪ふざけにも程があるんで、その時の総力を挙げてブッ潰した。これにはギャラクシーレスキューフォースと、そこに出張してるクルーガー夫妻にも協力してもらってる」
「「「なっ!?」」」
「抗議は最後まで聞いてからにしてくれ。実際、先輩直属のドギー・クルーガーまで動くなんてかなりの事態だ」
連合の施設ということで、当然ながらマリュー達は驚きのあまり声を出してしまったが、サーガの有無を言わせぬ真剣な表情と発言で息を呑むように押し黙る。
「して、そこはどのような……?」
「幸いその施設にいた一人がゼットに懐いて一緒に行くと言ってくれたのでな。この部屋の前で待たせてある。応急処置だけはしてあるが、事情が事情だけにすぐ治療の方法やスケジュールを組まねばならん以上、手っ取り早く済ませるぞ。ゼット!」
まだ話の節々しか分からないが、どうやら『悪ふざけにも程がある』内容というのは余程のものらしい。
レジェンドがゼットを呼ぶも反応が無いのでおかしいと思いつつ、扉を開けて横を向くと――。
「すぅ……すぅ……」
「ウルトラすいません超師匠。ずっとスタンバってましたがステラが寝ちゃって動けません」
床に体育座りしてるゼットが顔だけ向けてこう言ってきた。
ちなみにステラはゼットの隣に座って寄りかかるだけでなく、しっかりゼットの腕を掴んでいたため上記の発言に至る。
「あらま。これは仕方ない」
「ああ、仕方ないな」
「仕方ないですね、これなら」
「うむ、仕方あるまい」
上からレジェンド、サーガ、ダイゴにウズミ。
ミナも軽く笑うだけで四人と同じ。
皆苦笑したり、微笑ましく見ていたりしたのだが……。
「ではないだろう!?」
「……んぅ……」
ナタルの大声でステラが目を覚ましたようで、レジェンドとサーガは『何してくれてんだこの野郎』と静かに怒りの視線を向け、ダイゴとウズミは『もう少し声を抑えられなかったのか』と笑顔のまま圧をかける。
これにはナタルが本気で泣きそうになっても『仕方ない』かもしれない。
さしものマリューとムウも彼女を慰めるしかなかった。
「ステラおはよう。お話し大丈夫か?」
「うん……だいじょうぶ……」
くしくしと目を擦るステラの小動物感と、冷えたふかふかタオルでステラの顔を拭いてやるゼットのお兄さん感が良い感じで周りをほっこりさせてくれる。
その後、レジェンドが取り出したストロー付きパックジュースをステラに飲ませつつ、ゼットに手を引かれながら二人は会議室の席に隣り合って着席。
レジェンドとアポロンゼストとの邂逅から始まり、ガイとゼットを加えた四人での潜入、ゼットとステラの出会いやコロラトゥーラの正体、合流した戦力とギャラクシーレスキューフォースの援軍による施設完全破壊。
最後だけブッ飛びすぎな気がするが、実際やったことなので誇張でもなんでもない。
「ステラ、よく話してくれたな。ゼット、ステラをヒリュウ改に連れて行ってやれ。束には話を通してある。治療と言ってもあまり束縛したりするものじゃないから、まず食堂で好きなもの食べさせてやりな」
「イエッサー超師匠! ステラ、新しい部屋行こうか!」
「うん! レジェンドは?」
「俺はもう少しお話してから帰るから。心配しなくても大丈夫だ。着いたら皆にちゃんとご挨拶するんだぞ」
「わかった!」
素直なステラを撫でてやり、彼女をゼットに任せて席に座り直すレジェンド。
「もっと詳しく話させた方が――」
「それよりもっと確実なものを見せてやる。お前らはこっち見せた方が納得するだろうからな」
少しばかりナタルの発言にイラつきつつ、レジェンドは小さな機械を取り出した。
それこそ、レジェンド達の記憶からその時の映像を映し出す『メモリアルヴィジョントレーサー』という装置。
こんな事もあろうかと事前に用意していたらしい。
さすレジェ。
……しかしその一発目が早速ガイの侵入した、あの大量脳髄ケースのシーンなのは心臓に悪過ぎた。
「うっ!?」
「こいつは……!?」
「どうせ言っても納得しないと思ってインパクトのあるやつを厳選しておいた」
「インパクトありすぎて気絶しかけましたけど!?」
ダイゴのツッコミもどこ吹く風、レジェンドは大ペットボトルのスポーツドリンクを取り出してゴクゴク飲んでいた。
そんな彼とは裏腹に、これが出たなら次はペガサスAで確認したコロラトゥーラの『中身』。
さすがにいきなりアレを見せられ、マリューとナタルは本気で吐きかける。
「これは……なんという……!」
「外道にも程がある。これが先程聞いたバーサーカー、ファントム・オブ・ジ・オペラのやったことか……!」
あまりの凄惨さにウズミも絶句、ミナも憤りを隠せない。
そしていよいよ施設破壊ミッション。
ガイ、ライ、モニカに加えてミゲルとラスティがウルトラ騎空団に参加し、施設内外同時破壊を行う。
ガチでレジェンドによる無双がされていたことにマリューらはドン引きだった。
「いや、あの……団長さん……? あのファンタジー物に出てきそうな武器は……?」
「魔王遺物とディステニィストーンの一つだ。そしてオブシダンソード……歪んだ生命たる魔物を象徴するディステニィストーンはお前達が出会ったミニオンの狙っている物の一つでもある」
「「「「「!」」」」」
「ま、残りも俺が持ってるから連中がそれを手にするには俺を狙うしかないんだが、連中じゃ俺に敵わんと分かったから代替品を探してたんだろうさ」
まさかの情報がここで合わさった。
ダイゴはバラージで対峙したミニオン――ミニオン・ラースが「あの忌々しい光神」と言っていたのを思い出し、それがレジェンドのことであると理解する。
それはそれとして、いよいよ映像はクライマックス。
ドギー夫妻とリブットが援軍として現れ、ドギーがスペリオルデカマスターへと変身し一網打尽にしたところだ。
「いやいやいや何なのこれ? この特撮と時代劇の殺陣が組み合わさったような展開は」
ムウの発言も納得ではあるが既に暴れ回るレジェンドを見せられているので、ウズミやミナなど彼らを知る者達からすれば割と普通の光景であった。
途中、ウズミが「彼の鼻は大丈夫なのだろうか」という疑問を口にしたが、レジェンドが大丈夫かつ気にするなと答えると頷いて再び映像に目を向ける。
……逆にマリュー達がそのことを気になりすぎたのは言うまでもない。
トドメのベガブレイズで施設が真っ二つになったことは驚くなという方が無理だった。
人間大の大きさでぶった斬ったのだから。
そして、ステラ以外の子供達と善良と判断された職員がギャラクシーレスキューフォースに保護され旅立っていったところで映像は終了。
『あのこと』はまだ秘密にしておく気のようだ。
「ざっとこんなところだ。連合がこんな事をしてたっていうのもそうだが、俺としてはあのバーサーカーを『誰が呼んだのか』ってことが気に掛かる。バラージにいたニトクリスは土地とノアの縁で召喚されたということで納得出来るし辻褄も合うが、連合と奴の接点はまるで無い。単に適当に呼び出された奴を配置したのかもしれんが、だとしても誰が呼んだかという疑問は残る。確かに『オペラ座の怪人』の舞台となったパリはあそこからそれなりの距離だが」
そこまで言ってレジェンドは「これ以上ここで議論するには材料が少なすぎる」と言って席を立ち、他の面々も色々と衝撃的な内容が多過ぎたため今日は休むべく席を立った。
☆
――再びヒリュウ改・食堂――
あれからゼットとステラはヒリュウ改にて束から治療方法について説明を受けた。
単純に『寝る時は惑星レジェンド製の医療ポッドに入って寝る』だけで、あとは治療期間中に無理な運動などをしないことぐらい。
ハッキリ言って拍子抜けであった。
「ってなわけで身構えてたのがバカみたいだったんですございますよ」
「いや実際バカだろお前」
「久々に会ったのにゼロ師匠辛辣ゥ!!」
「そもそもその娘に会ったのもお前がバカやらかした結果じゃねーか」
ぐうの音も出ないとは正にこのこと。
ちょうど日課の訓練を終えて食事中だった凱と命の隣でスタミナ牛丼を食いつつ指摘するレイトに、ゼットは反論出来ない。
……が。
「ゼットをいじめちゃダメ!」
「へ?」
「ダメ!!」
「お……おう……」
ステラの鶴の一声によって追撃は防がれた。
「この娘の純粋さには、さしもの銀河遊撃隊隊長もタジタジってとこかな?」
「別に俺はいじめてたわけじゃないっての」
「はははっ! それはともかく、俺は獅子王凱。それからこっちが卯都木命、そしてこっちがモロボシ・レイトでウルトラマンゼロだ。よろしくな!」
「凱に、命に、レイト……ゼロ? うん、覚えた!」
屈託のないステラの笑顔に、凱達はほっこりする。
ケムール人とブラコ星人の一件もあって知らず知らずのうちに張り詰めていた空気がやっと和らいだ感じがした。
「てかセブン大大師匠が来ててマジビビったんですが」
「あー……それは俺もビビった。ケムール人とブラコ星人のとこにメビウスやジータ、ビィと殴り込みかけたらいたんだよ」
「こっちはこっちでおおとり師範が人間態でエヴォリュダーの俺を遥かに超える身体能力発揮したり、ミナさんが専用の新型機持ち出したりして色々度肝抜かれたぜ」
「いやミナ女史はいいんですが、人間態でエヴォリュダー超えってどんだけバグってんですかレオ大師匠」
「でもレジェンド様やサーガ様見てたら納得じゃない?」
「「「…………確かに」」」
「?」
命の一言にレジェンドと直接的な関わりがある三人は納得しか出来なかった。
小首を傾げる何も分かってないステラだけがこの場の癒しである。
ようやく再集結出来たウルトラ騎空団。
……しかし、それは空の世界で緊急事態が起きる前触れでもあった。
〈続く〉
――空の世界・パンデモニウム――
「……この景色も見飽きたな」
そう呟いた者。
その者は約2000年、空の世界から隔離されパンデモニウムに封印されている。
『彼』を見るのは異形の様相たる幽世の住人達。
「――」
「何度も何度も……貴様等も懲りないな。『天司』がそれほど珍しいか? あるいは同情のつもりか?」
幽世の住人に『彼』は怒りの視線を向ける。
「生憎、俺は見世物ではない……目障りだ!」
「――……!」
尋常ではない怒気を叩きつけられ、幽世の住人は一目散にその場を離れていく。
「まるで糞溜めだな、ここは。空気が淀み切っている。それに幽世の連中が漂わせる瘴気……鼻が曲がりそうだ。あの男……『ルシフェル』に初めて振る舞われた珈琲を思い出す」
そう吐き捨てた『彼』は、同時にかつて自分がいた場所のことも思い出していた。
「それでも、あの頃よりは遥かにマシか。軟禁という点では『研究所』と変わらんが。 ……今の俺には目的がある。あの頃とは違う」
座り込み、そう独白する『彼』の目に滾るは激しい憎悪。
「――天司として生まれながら、役割も与えられず、ただのうのうと生かされ続けていた日々……そんな無知で無為な存在である俺に、復讐という目的を与えてくれたのは――他ならぬ君だ……ルシフェル」
己が両手を見、そして強く握りしめ――。
「俺は生きる意味を手に入れた。今の俺は、箱庭という巣に閉じ籠もる雛鳥ではない。待っていろ、俺は必ず君を……いや、貴様をこの手で――」
その時、パンデモニウムが大きく振動する。
同時に『彼』は何か強大な気配を察知したが、それ以上にあることに気付く。
「封印が緩んでいる……? 何故……いや、理由などどうでもいいか。フフフ、まさに福音だな」
『彼』が笑みを浮かべ、見上げた先にいるのは――我先にとパンデモニウムを脱出しようとする幽世の住人や原初獣の群れ。
「ようやく再会出来るよ、ルシフェル……2000年の悲願を今こそ叶えてやる。道を開けろッ!!」
剣を携え、パンデモニウムの出口へと群がる者達を切り払い、『彼』は突き進んでいく。
「フフフッ……アハハハハハッ!!」
高笑いと共に真っ先にパンデモニウムを脱出した彼の視界に入ったのは、果てしなく広がる蒼い空。
久しぶりに見る外の世界を、『彼』は眩しそうにしながら呟いた。
「蒼いな、どこまでも……君はこの空の蒼さが好きだったか。俺がいなくとも、君が望んだ世界は残酷なほど美しい。これでハッキリした。君は俺に何も求めていなかった。君の世界に……俺は不要だった。フフ……ハハハハ……」
それは相手への嘲笑か、それとも……僅かな希望を抱いていた自分への。
希望が反転し絶望と化し、憎悪は決意と共により大きく燃え上がる。
「ルシフェル……この空を何色に染めたら、君は応えてくれるかな?」
――そして――
「ガイア! アグル! ……我夢、藤宮ッ!!」
「グッ……グアアア……!」
「ウッ……ウアアッ……!」
フレイムカッターを支えにして、片膝立ての状態のグランヴェールが巨大なカプセルのようなものに閉じ込められたガイアとアグルに手を伸ばす。
――パーシヴァルさん、僕達には構わず撤退してください!
――チーフに、C.E.にいるウルトラ騎空団にこの事を伝えるんだ! 行け!!
「ッ……ぐうううっ……! 必ず……団長達を連れてお前達を助けに戻る! 最後まで踏ん張れ、グランヴェール!!」
パーシヴァルに不甲斐なさで嘆く暇はない。
この危機に遭ってなお、テレパシーで彼に指示を出したガイアとアグルに報いるため、満身創痍のグランヴェールを動かし、パーシヴァルは単機撤退する。
――今、空の世界はかつてない事態に直面しようとしていた。
最後の最後で「どこが安らぎだコノヤロー!」とか思われたでしょうが、いやマジその通りです。
本来は『彼』の方だけで済まそうと思ったんですが、前回あんな終わりだったからそこにも触れないといけないだろと。
結局今回、ルリアとステラが癒やしの回だったなぁ……。
この調子なら次回本編を書いたら新章に進めそうです。
それではまた次回。
二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?
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真ゲッタードラゴン(大決戦版)
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真・ゲッター1(スパロボα仕様)