ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER   作:ハジケハムスター・ポッポ

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どうもです。
アンケートで多かったIS特別編、一話に全部ぶっ込んだら約16000文字という長尺になってしまいました。

束とクロエ以外のISキャラは今回限定の登場になります。
IS側の時間軸は林間学校編・銀の福音戦前で、展開上福音戦が発生しません。


それではどうぞ。


特別編・IS〜本当にさよなら、私達の故郷

 とある世界のとある島――

 

 

「レジェくんごめんね、無理言っちゃって」

 

「気にするな。クロエを助けて以来、いずれはしなければならんだろうとは俺も思っていたことだ」

 

「申し訳ありません……」

 

「気にするなと言ったばかりだろう、クロエ。やれやれ……どちらに似たんだか」

 

「私もレジェくんも背負い込むからねー。二人分丸ごと受け継いじゃったんだよわははー!」

 

 

 束とクロエはレジェンドに協力してもらい、やり残したけじめ、そして親しい者との最後の別れの挨拶をすべく自分達が生まれ育った世界へと赴いていた。

 加えてここには同行者も来ている。

 

 

「ゼッくんやしーちゃんもありがとね、付き合ってくれて」

 

「なんのなんの、束博士には俺の相棒EX-Zガンダムの礼もありますし!というか超師匠と一体化してる以上、一定の距離を超えて離れられないのでございます」

 

「あー、そういえばそうだったねぇ。割とフリーダムだったから失念しがちだよねそれ」

 

「私の方にも付き合ってもらう気だからな。貸しは作っておくに越したことはないだろう?ましてや相手がお前ほどの人物なら尚更な」

 

「にゃははー、ごもっとも。その時はクーちゃん共々御一緒するよ」

 

 

 そう、ゼットとC.C.だ。

 全員が全員、専用機持ちの面子である。

 もっとも、この世界において専用機持ちとは大抵IS関連に使われるが。

 

 

「既にこちらは補足が完了している。ついでに逃亡先に関してもロックオン済み、いつでも撃てるぞ」

 

「いやはや実際目にすると圧巻だね、このマルチロックオン。世界レベルでの超広域空間ぶち抜き爆撃。やられた方はたまったもんじゃないよ」

 

「連中のような奴らを叩き潰すのには慣れているのでな」

 

 

 言わずもがな、禍の団潰しのことだ。

 ただし、あれは生身での壊滅が殆どである。

 

 

「で、接触は林間学校?臨海学校だったっけ?」

 

「うん、どっちでもいいけどそうだよ。そこで箒ちゃんに専用機渡して、ついでにコアネットワークを介して全ISにアンロック不可能な制限をかけて、全世界に私の口から通達」

 

「それが終わると同時に俺のネオ・グランゾンのワームスマッシャーによる亡国機業を始めとした組織の拠点を狙い撃ち。発射源を突き止めてくるだろうことも想定し、俺達5人で迎え撃つ……と。当初の予定とは順序が変わったな。やる事は変わらんが」

 

「……ぶっちゃけ過剰戦力過ぎませんかね、俺ら」

 

「それでいいのだよゼッくん。『お前らがどれだけの技術と人材を得ようと私達には太刀打ち出来ないんだよ』って世界に見せつける意味もあるからね。今の束さんやクーちゃんのレベル、それから私達と一緒にいるレジェくん達の凄さをまざまざと見せつけてからさよならグッバイ永久にー!っていくから。順序を変えたのもそのためなのさー」

 

 

 ネオ・グランゾン、アストラナガン、ガリルナガン、EX-Zガンダムにコンパチブルガリバー。

 最初の2機だけでもう既存どころか数世代先のISでも如何なる数だろうと瞬殺しそうな規格外の超戦力。

 マジンガーZEROがいないだけマシだろう。

 

 

「で、どうだった?久しぶりの妹との会話は」

 

「あははー、やっぱり事務的なものになっちゃった感が半端ないよ。ただもう一つ、やっぱりっていうか焦ってる感もあったね。ついでにまだ携帯繋がったんだ、って驚きも感じたかな」

 

「お前が行方をくらました本当の理由を知らなければそうもなるか」

 

 

 束としては妹の箒はいつまでも可愛い妹だが、箒にしてみれば要人保護プログラムだかなんだかであちこち引っ張り回されて迷惑千万だったに違いない。

 そしてそのプログラムの裏側に隠された目的を知らず、原因となったISの開発者である束を恨んでいても仕方ないだろう。

 

 

「ま、決行は明日だよ。今日はゆっくりしよー」

 

「よし……レジェンド、ピザだ」

 

「何処でも変わんねーなオメーはよう!?」

 

「超師匠テンションがおかしくないですか?」

 

「逆にC.C.様はいつも通り過ぎるというか……」

 

 

 かつての束を知る者がいたらおそらく目を疑うであろう光景が、そこにはあった。

 

 

 

 

 翌日、林間学校二日目でIS学園の生徒達が集まった中、教師の一人である織斑千冬は一人だけ違う指示を出した。

 

 

「ああ……篠ノ之、お前はこっちだ」

 

「はい」

 

「そろそろ来るはず……ッ!?」

 

 

 突如暗くなったかと思えば、飛来したのはいずれも数十mに及ぶ五体の機動兵器。

 どれも異なる特徴が目を引く機体だが、明らかにISとは違うそれに生徒達はおろか千冬さえ驚きを隠せない。

 

 

「何だ……これは……!」

 

「はろはろちーちゃんお久しぃ!今行くよ!とぉぅっ!!」

 

 

 アストラナガンを着地させ、膝を折り曲げさせず直立のままコックピットを開けて空中何回転なのか分からないぐらい回転しまくってシュタッと着地する束。

 

 

「おい束、これは……!?」

 

「え、これ?アストラナガン、私の専用機だよ。レジェくんにもらったやつー」

 

「レジェ……?」

 

「後でちゃーんと紹介するから。いっくんも久しぶりだねぇ〜背も伸びたね」

 

「お……お久しぶりです束さん」

 

「うんうん、挨拶は大事だよ。えらいえらい」

 

 

 いい子いい子とニコニコしながら束はそこにいたただ一人の男性である少年――織斑一夏を撫でる。

 

 

「あの、織斑先生……彼女は」

 

「ああ……部外者は立ち入り禁止なのだろうが、ある意味最も部外者ではない人物だ。篠ノ之束、ISの開発者と言えばわかるだろう?」

 

 

 周りの生徒達が大声で驚くと、束は煩そうに顔を顰める。

 

 

「えええ!?篠ノ之博士って行方不明じゃ……」

 

「確かにそうだ。私の方に連絡があったのもつい先日……いつの日かを境に足取りが全く掴めなくなっていた」

 

「そりゃそーだよちーちゃん。私、この世界にいなかったんだから」

 

「この世界?束、お前何を」

 

『束、俺達はいつまでこのまま待機すればいいんだ?』

 

「「「「「!?」」」」」

 

「あ、ゴメンねー!いいよ、降りちゃって」

 

 

 突然聞こえてきた声が男だということに加え、他の機体も有人機だということにも驚愕するIS学園関係者一行。

 レジェンドを始めとした面々が機体から降りて姿を現すと、やはりというかゼットやクロエに視線が集中する。

 

 

「超師匠、なんかすっごく見られてるんですが」

 

「そりゃお前一人だけウルトラマンの姿だもんよ」

 

「クロエの方は……ああ、あいつが原因だな」

 

「彼女は……」

 

 

 そう言ってC.C.とクロエが見たのは眼帯をした小柄な銀髪の少女――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

 

「束、彼らは……」

 

「私が今お世話になってる人とお友達。それと娘だよん。皆まとめて家族っていうのが正しいね」

 

「ッ……」

 

 

 家族という言葉に反応したのはやはり束の実妹である箒。

 彼女からしてみれば自分や両親からも離れた束が家族という言葉を口にするのは許せないのかもしれないが……。

 

 

「さてさて、まずは用事の一つをちゃっちゃと済まそう。皆さんお空をご覧あれ!」

 

「空?」

 

 

 レジェンドらを除く全員が空を見上げると、一瞬キラリと空が光ったと思えば赤い物体が急降下してきた。

 ドォォォン!と轟音を立てつつ地面に突き刺さったそれは、赤いIS。

 

 

「第四世代IS『紅椿』!当初の設計に加えてレジェくんにも協力してもらったから箒ちゃんもちゃんとお礼言おうね」

 

「おい束、さっきから言っているレジェくんというのは……」

 

「あ、そうそう!あそこにいる男の人がレジェくんだよ。束さんのアストラナガンやクーちゃんのガリルナガン、あとしーちゃんのコンパチガリバーもだね。みーんなレジェくんの作った機体なのさ!」

 

「な……!?」

 

「これを、あの人が……!?」

 

「ぶっちゃけちゃうとレジェくん人間じゃないけどね。神様のさらに上、光神様だよ」

 

 

 次々と分からない単語が飛び出す束の口から一通り説明される。

 その間も爆速で紅椿の調整を行っているあたりさすがとしか言いようがない。

 

 

「つまり今のお前は彼のお付きというわけか?」

 

「まーそんなとこかな。レジェくーん!ここレジェくんが担当したとこだからちょっと箒ちゃんとのフィッティング手伝ってー!」

 

「はいはい。ゼット、あとは自分でやれるか?」

 

「ノープロブレムです超師匠!束博士とアムロ師匠直筆のこのEX-Z用OSマニュアルがあれば!」

 

「予想通り分厚いなオイ」

 

 

 意気揚々と答えるゼットに『まあ自分の興味がある事にはとことん向き合うコイツなら大丈夫だろ』と思い、そのまま束の近くに歩いていく。

 

 

「それでどこだ?」

 

「ここ、ここ。私は他の部分終わらせちゃうからお願いできる?」

 

「フィッティングのための参考データは?」

 

「ほいほいっと。念の為箒ちゃんのスリーサイズデータとかいる?」

 

「いらん」

 

 

 束に対して「何でそんなものを!」と怒りそうな箒であったが、不要だと即答するレジェンドにも僅かな怒りを募らせることとなった。

 だが、それは事実である。

 

 

「終わったぞ」

 

「「「「「早っ!?」」」」」

 

「余計な情報が無ければ必要な情報を必要な部分に参照して組み上げ調整するだけだ。余計な情報は逆に変な疑問を持って遅延の原因になる可能性もある。ならば無い方がいい」

 

 

 バッサリ言い切ったレジェンドだが、そもそも作業が早過ぎることが驚きの原因と気付いていない。

 

 

「レジェくんならそれくらい楽勝だよね〜っと、終わったよ箒ちゃん。とりあえず武装テスト……の前にレジェくんにお礼を言いましょう!今回を逃すともう機会なんてないだろうからね」

 

「え……?」

 

 

 最後の一言がどうにも気にかかるが、箒はクロエの元に向かおうとするレジェンドを呼び止めて礼を言う。

 

 

「あの……ありがとう、ございました。しかし、その……スリーサイズの件は」

 

「お前は好きでもない相手にスリーサイズを暴露したがる性癖でもあるのか?」

 

「!!」

 

「そういうものは好いた相手に教えてやれ。そうだな……あの少年にでも教えてやればいい」

 

「なぁっ!?」

 

「え、俺?」

 

「さすがレジェくん、他人の恋路のフォローが上手いねぇ。レジェくん自身はそれこそ束さん含めて数多の女の子のアプローチにも動じないゾル・オリハルコニウムハートなのに」

 

「毎回毎回俺のメンタルとかにわけのわからん名前つけられてんだけど納得がいかん」

 

 

 にゃははーと笑う束の額をツンと突くレジェンドの姿は、まるでカップルである。

 束の昔の性格を知る千冬や一夏、そして箒は目を見開いていた。

 

 

「もしかして束さんの彼氏か旦那さんなのか?」

 

「何っ!?そ、そうなんですか姉さん!?」

 

「んーん、まだ違うよ」

 

「「「「「まだ!?」」」」」

 

(何で束の方が先にそういう相手見つかるんだ……あのコミュ障だった束だぞ?どうしてこう、私はブリュンヒルデとしか見られないんだ。一生独身でいろとでもいうのか)

 

 

 その場にいるのは色恋沙汰に敏感な女子高生、当然束の発言に食いつくが束としては血涙出しながら睨んでくる千冬にビビっている。

 

 

「ちーちゃんこわーい」

 

「あれは……そうだな。一誠がリアスやイリナ、レイヴェルとイチャついてるのを見かけたモテない連中を見る目に似ている」

 

「ぐはっ!!」

 

「千冬姉ー!?」

 

 

 レジェンドの一言が千冬にクリティカルヒット。

 彼女はモテるにはモテるのだが同性に限られている。

 どうやら彼女の思っている通り、ブリュンヒルデ=尻に敷かれるという図式が完成してしまい、男性から敬遠されてしまっているらしい。

 そうなると彼女に勝てそうな男……少なくともこの場では、特例なゼットを除くと将来性に期待の一夏(ただし血縁)と既に理想的スペックなレジェンド(ただし脈無し)ぐらいか。

 

 

「じゃあ束……あとは悔いの無いようにな」

 

「うん。ありがと、レジェくん」

 

 

 

 

 

「で、武装テストさせつつ話させるように仕向けたのか。正直あの娘、素直に会話するとは思えんぞ」

 

「だろうな。話してて節々から束に対する複雑な感情が読み取れた。だがこれ以上は姉妹の問題、俺らが口出ししたところでどうにもなるまい」

 

「……意外だな、いつものお節介が炸裂するとばかり思っていたが」

 

「少しばかりもう片方にも気を配ってやらねばならんのでな。おいそこの眼帯銀髪」

 

「!?」

 

 

 目線を向けるどころか後ろさえ向かずにラウラがこちらを見ている事に気付いていたレジェンドは、名前も分からなかったのでとりあえず特徴で呼ぶことにする。

 

 

「先程からウチのクロエをじっと見てどうかしたか?」

 

「う!?い、いや特に」

 

「何も無いならそこまで見る必要ないだろう。銀髪が珍しいと言う理由はあちこち髪の色がバラついているこの場では通じんぞ」

 

 

 普段のラウラならば軍人として怯むことなどないのだが、相手はベテラン軍人すら霞むほど激戦を積み重ねてきた最高位光神のレジェンド。

 かつて教官であった千冬と比べてなお放たれる圧の次元が違うのだ。

 

 

「それは、その……」

 

「大方お前とクロエの容姿が似ていることに何かを感じたんだろうがな。その越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)も含めて」

 

「ッ!?何故それを……!?」

 

「さあな。ああ、腕ずくで聞き出そうとするのもやめておけ。ここにいる連中がISを展開して襲ってきたとして、俺は別にこの機体を使わずともお前達を叩きのめす……違うな、蹂躙することなど造作も無い。能力・才覚・経験・練度……いずれも埋められん差があり過ぎる」

 

 

 レジェンドの言葉に反論しようとするラウラだったが、突如向けられるプレッシャーがあまりに急激に膨れ上がったことで小さく悲鳴を上げて後退る。

 

 

「そう、強者を理解出来るのは戦場において生き残るために必要な事柄だ。あっちの娘じゃないが素直になって話しかけてみたらどうだ。やらずに諦める奴を手助けしてやるほど、俺は他のウルトラマンのように優しくはないぞ」

 

 

 ウルトラマンが何なのかはさておき、ラウラはレジェンドに言われた通りクロエに話しかけに行った。

 

 

 

 

 

「超師匠」

 

「んー?どうしたゼット」

 

「俺ら暇過ぎませんかねコレ」

 

「まあな。爆撃準備は完了してるし、やることホントないもん」

 

「お前ら二人で実況でもしてみたらどうだ?案外ウケるかもしれんぞ?」

 

「今後来る予定のない世界でウケて何が楽しいんだ」

 

 

 

 

 

「……とまあ、こんな感じ。箒ちゃん、何か質問は?」

 

「大丈夫です。……この紅椿なら、やれる……!」

 

(あーあ……やっぱりこうなっちゃったかぁ……)

 

 

 束は妹の様子に溜息を吐く。

 今まで遅れていたであろう立場から急に専用機持ち、しかもまだ誰も手にしていない第四世代を手にして浮かれてしまっている。

 故に、束は釘を刺しておく。

 

 

「……あのね、箒ちゃん。紅椿を手にして高揚してるのはわかるけど、あまり調子に乗っちゃ駄目。まだそれを完全に理解していない上、慣れてもいないんだから。今の状態で何かあって挫折して『もう自分はISに乗らない』なんて事態になったら目も当てらんないよ?」

 

「心配しないで下さい。自分のことは自分が一番理解してますから」

 

「ふう……まあ、こうなるよね。じゃあさ、レジェくんに頼んで模擬戦してみようか。当然箒ちゃんはその紅椿、レジェくんは生身でね」

 

「なっ!?そんなことしたらあの人は……」

 

「ほらそれ。もう勝った気でいる。そもそも箒ちゃん、レジェくんの実力知らないでしょ?世の中にはね、ISが無くても専用機なISを複数まとめて一網打尽に出来る実力者がわんさかいるの。レジェくんはその代表格にして筆頭だよ」

 

 

 束は箒が得た自信を悉く粉砕する。

 やはりというか、一夏やごく一部の親しい人物を除き少なからず女尊男卑な思考になってしまっており、レジェンドの実力を信じようとしていない。

 

 

「……姉さんが言うほど凄まじいとは思えませんが」

 

「やっぱり証明するしかないかぁ。レジェくーん!」

 

「どーしたー?」

 

「ちょっち箒ちゃん相手に模擬戦おねがーい!はいスタート!」

 

 

 周りの者は脈絡もなくいきなり!?と驚いており、箒も一瞬驚いたがすぐに加速準備に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッ!!メキメキメキッ……

 

「あ……があああああッ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし準備に入った直後、箒は背後からレジェンドに頭を鷲掴みにされ、凄まじい力で締め付けられた。

 

 

「随分急だな、束」

 

「ごめんねー。やっぱり反応出来なかったみたい」

 

「あ……が……!」

 

「ほ、箒!?束さん!」

 

「ちょっといっくん静かにしててね……おいお前ら。さっきまでレジェくんのこと大したことないと思ってただろ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 束の雰囲気がガラリと変わったことに驚くが、それ以上に凄まじいプレッシャーを放っている事にその場にいたほぼ全ての生徒や教員が恐怖する。

 

 

「その女尊男卑思考が祟ってあんな結果だよ。ISは元々宇宙進出と宇宙空間での作業の為に私が開発したもの、それを纏えるだけで優位に立てたと思ってんの?満足に扱えもしないくせにさ」

 

「が……」

 

「束、そろそろ俺の勝利かこっちの敗北か決めてくれ」

 

「あ、うん。ていうかそれどっちも結果同じだよね?」

 

「気持ちの問題だ気持ちの」

 

 

 レジェンドと話す時はいつもの束だ。

 解放された箒は紅椿が解除されて倒れ込み、一夏を始めとした親しい面々が駆け寄る。

 

 

「おい!大丈夫か箒!?」

 

「う……うぅ……」

 

 

 強く頭を締め付けられていたからかまだふらつき気味だが、どうにか無事なようだ。

 

 

「模擬戦でよかったね。もし実戦形式だったら間違いなく障害残ってたよ」

 

「束……今のはどういうことだ?いくら開発者とはいえあまりにも……」

 

「ちーちゃんさ、満足?こんな世界で」

 

「何?」

 

「私は嫌だね。女尊男卑の風潮を崩したくないがために他人の幸せも夢もみんな踏みにじっては奪っていくこんな世界。私にとっていらないよ」

 

 

 束の目には怒りや怨恨が浮かんでいた。

 

 

「レジェくん、そろそろ実行に移すけど準備オッケー?」

 

「漸くか。そっちの準備は?」

 

「うん、完了完了。それじゃサクッとやってさっさと帰ろうか。グーちゃんの紅茶とクッキーが恋しい」

 

「おい束、何を……!?」

 

「待っててねちーちゃん、今の世界情勢……まるっとひっくり返してあげるから」

 

 

 そう言うと束は箒に近付いて待機状態の紅椿、そして一夏の『白式』にプラグを差し込む。

 

 

「束さん!?」

 

「安心しなよ、いっくん。別にいっくんとか箒ちゃんをどうこうしようってわけじゃないからね。ただ私達の目的には『白騎士』のコアと、最新ISの紅椿のコアが必要なんだよ」

 

「え、白騎士って……」

 

「白式に使われてるのは白騎士のコア。つまりここには最初のコアと最新のコア……始まりと終わりが揃ってるんだよね。これは狙ってなかったけどいっくんと箒ちゃんが同じクラスだったのは好都合」

 

 

 束は紅椿を箒にフィッティングしていた時とは比べ物にならない速度で空間ディスプレイを操作し、作業を進めていく。

 そしてレジェンドもネオ・グランゾンへと搭乗し飛翔する。

 

 

『束、来たるべき時に指示をくれ。それと同時に予め補足していた対象と、新たに確認した対象にまとめて発射する』

 

「りょーかーい。もうちょっと待っててね。うし完了!さーて、この世界でふんぞり返ってるバカ共はどう出るか……なっと!」

 

 

 ポン、と束が悪い笑顔でディスプレイのEnterをタッチすると、手始めに白式と紅椿、そしてそれからコアネットワークを介し他のISへと急速にあるプログラムが浸透させられていく。

 

 

「いえーい!やったよレジェくん!やっぱりあいつら高を括ってたねぇ、ファイヤーウォールもなーんにも進化してない。私がちょっかいかけてこないからって油断してたよ。本物のバカ団体と組織だな〜」

 

「おい!束、お前何を!」

 

「何ってちーちゃん、本来の使い方を外れたISを軌道修正しただけ。暴走どころかちゃんとルール守るようにしたんだから、感謝こそされても怒鳴られる筋合いはないよ」

 

「ルール、だと?」

 

「そう、ルール。具体的に言うとねー」

 

 

 束がIS全機に盛り込んだプログラム。

 それはもしISが今後競技以外で他者に武器を向けた場合――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「単に巫山戯ただけであったとしても、連帯責任として全ISがコアを含めて()()するように、ね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「なっ……!?」」」」」

 

 

 千冬を始め、その場の者がレジェンド一行を除き絶句した。

 それは即ち文字通りISでの行動に大幅な制限、そしてそれを破った場合は世界からISそのものが消え去るという尋常ではないペナルティが課せられたということ。

 

 

「まあ、まだそれを知っているのはここにいる人達だけだし?束さんの最後の慈悲として今この瞬間各国の軍で使われたりしてるISはそれらのみ即時停止及び分解で済ませてあげたよ。自分達しか知らないのに、他の奴らが何も知らぬままやらかして使用権を剥奪されるようなことは嫌だよね〜。私は女性権利団体にそれと似たようなことをやられたよ。箒ちゃんや両親、当時は親しかっただけのいっくんまで……知らぬまま当人達も知らない状態で人質にされててさ」

 

「「「!?」」」

 

 

 束が次々と明らかにする事実に千冬、一夏、そして箒は他の者達よりも驚きを隠せない。

 

 

「とりあえず自壊プログラムの件も含めてこれから世界にちゃんと説明するからね。それじゃ、ポチッとな」

 

 

 その瞬間、世界中のあらゆる映像機器がジャックされ束がいるこの場所の映像が映される。

 

 

 

 

 

『はろはろ〜世界中の皆さんおはこんにちばんわ〜この世界で生まれてこの世界が凄まじく憎くなったけどケジメつけるために帰ってきた篠ノ之束さんだよ〜』

 

「しっ……篠ノ之束だと!?」

 

「馬鹿な!?何故今になって姿を現した!」

 

 

 

 

 

『え〜本日はだねぇ、おそらく今頃混乱してるだろう軍用ISを始めとしたそういう意味で使われてるISがどんどん分解されちゃってる事象について説明してあげよう!』

 

「まさか、もう知っているのか!?」

 

「世界中の映像機器がジャックされているそうです。知っていても不思議ではないかと……」

 

 

 

 

 

『それはズバリ!束さんの仕業なんだよね!にゃははー』

 

「「は!?」」

 

 

 

 

 

『実を言うとちょっと前、全てのISに制限とそれを破った時のペナルティを課したんだよね。スポーツ競技で第三者及びIS自身も適当であると認めた場合以外を除き、他のものに対して今後一切武器を向けた場合、連帯責任で全IS及びそのコアは自壊しまーす!』

 

「な……何だと!?」

 

「ふざけるな!そんな横暴が認められると思ってるのか!」

 

 

 

 

 

『まあ『開発者だからって何してんだー!』とか思うよねぇ。だったらそのままお前らに返してやるよ、その言葉。私の作ったISに込めた願いを歪めて使って何してんの?それこそ他人の褌で相撲とってんじゃねーよ』

 

「な……なに……?」

 

「願いだと……?」

 

 

 

 

 

『これを見てる女性権利団体の関係者に聞こうかな。満足かな?自分達のために私の夢も生活も家族と友人関係も全部奪ってブチ壊してくれてさあ。おかげでたった今から私を闇から引き上げてくれた大切な人をこの世界で犯罪者にしちゃうことになったよ。本来ISに込めた宇宙進出の夢はその人が別の形で叶えてくれたっていうのにさ』

 

「な、何を言って……」

 

「まさか、あの時のことを!?」

 

 

 すると、束はある映像を流し始めた。

 

 

――はあ!?ISの有用性証明のためにミサイル設備をハッキングして自作自演しろ!?ふざけんな、誰がそんな――

 

――これは世の中の女性の権利向上のためなのです。断れば貴女のご両親や妹さん、ご友人とその家族にもご迷惑をかけることになりますよ。その証拠に、ほら――

 

――ッ!?お前らァァァァ!!――

 

――お互いにメリットがあるでしょう?貴女はISが如何に有用か、そして私達は女性が如何に男より優れているかを証明出来るのですから――

 

 

 当時の女性権利団体による束の身近な者を人質に取った脅迫による自作自演の要求。

 まさに束が言った『全部奪ってブチ壊し』。

 己の手を汚さず何かあれば束がミサイル基地のシステムをハッキングしたということで彼女に罪の全てを被せ、それでいてISが女性にしか動かせない事を利用して女尊男卑の風潮を作る。

 その結果が今のこの世界である。

 

 当然、映像付きでそれを世界中に暴露された女性権利団体は真っ青だ。

 しかも普段とは違う様子の束の映像だから信憑性もある。

 

 

『で、私が行方を晦ませば私の親族を要人保護プログラムとかいうので保護?はっ、そんなものは名ばかりで私の居場所が割れた時の人質にしやすくするための監視だろうに。政府もグルだとは思わなかったよ』

 

「そ……そんなことはない!」

 

「そうだ、これは純粋に……!」

 

 

 

 

 

『まあこの際そんなことはどうでもいいや。私はこの世界に見切りをつけたから。話は戻すけど、軍やそれに準ずる組織のISだけ停止・分解したのは温情だよ。まだ知っているのはIS学園の一部の教員と生徒だけだったしね。けど、これで分かっただろうからこれ以上の慈悲はないよ。何なら試してみる?付け加えると違反者が出たらその瞬間、全世界に公開されるようなプログラムも仕込んであるから、一瞬でその国とそのISを使っていた人物は総叩きされるだろうねーあははっ』

 

「馬鹿な……そんなことが……!」

 

「すぐに解除を試みろ!何としても」

 

 

 

 

 

『ああそうそう、解除しようとしても無駄だから。私の認証に始まり、一文字一文字が1秒で変更更新されるパスワードを一万文字入力する必要がある上、仮に接続出来ても全設定を制限時間内に操作完了しないと逆探知でその端末のデータをぜーんぶ抹消しちゃうプログラムも仕込んであるからねぇ、それでもやりたいならどーぞ』

 

「そ……そんな……」

 

「あ……あああ……」

 

 

 

 

 

『おやおや?IS本体はともかくプログラムをどうにかしようとした連中はいたみたいだね。ざーんねんでしたー!それから全世界のIS解析データ、たった今全部デリートしちゃったから。今あるものを大事に使うよーに!気持ち新たにルールを守って楽しくIS!なぁんちゃって!それじゃあ、レジェくんだけのアイドル、束さんがお送りしましたー!じゃあねーこの世界のクソッタレ共!喧嘩売りたきゃご自由に!もうちょいこの世界にいるからね!返り討ちが関の山だけどさ!アデュー!!』

 

 

 

 

 

「……っはー!スッキリした♪お待たせレジェくん!さー派手にいっちゃおー!」

 

「ワームスマッシャー!!」

 

 

 突然周囲に尋常でない数のワームホールが開き、ネオ・グランゾンは予めチャージしておいたエネルギー光球を解放、その全てにビームを発射する。

 放たれたビームはワームホール内で威力を落とさぬまま更に分散し、総計66535の目標を圧倒的火力によって全て壊滅させた。

 

 

『……ふむ、撃ち漏らしはないな。念の為予定の三倍撃ったのが良かったのかもしれん』

 

「わー約20万発の高出力ビーム一斉発射とかレジェくんきっちく〜」

 

「な……何だ今のは……!?」

 

「ふんふふ〜ん♪束さんも確認……さっすがぁ!亡国機業の拠点から拠点にしようと目星付けてたトコまで完全壊滅!スポンサーらしきとこもしゅーりょー!そしてそしてぇ、それに味方する連中とか似たような組織もぜーんぶドッカーン!う〜んスカッとした!ありがとーレジェくん!!」

 

 

 束の出した言葉にまたも千冬は驚愕する。

 しかし、一夏と箒は束が開示した事実に呆然としていた。

 

 

「え……?俺が人質……?」

 

「姉さんが脅迫に……?私達が原因で……」

 

「あー、箒ちゃんやいっくんが原因じゃないよー。あの腐れ組織のクソババア共が悪いから。気に病まないでね」

 

 

 そう話す束はいつもの束だった。

 一先ずやる事を終えて一安心、といったところか。

 

 

「さてさて、これで私やレジェくんはこの世界じゃ立派なテロリストかあ……ホントごめんねレジェくん」

 

『気にするなと何度も言っているだろう。もし光神に相応しくないと糾弾されたらそんな立場は他の連中にくれてやる。光神の立場とお前達のどちらかを選べと言うなら俺は迷わずお前達を選ぶ』

 

「レジェくんってさあ、予想外なとこでイケメンぶっ込んでくるよね。色々スッキリしたからアプローチの質も量もハイパー化するから覚悟してね?」

 

 

 手の平を合わせ子首を傾げる束に苦笑するレジェンドだったが、直後にクロエから切羽詰まった通信が入る。

 

 

『レジェンド様!束様!』

 

「あや、どしたのクーちゃん」

 

『羽虫共でもやってきたか』

 

『表現がマジンガーZERO様のように……ではなく!確かにこちらに部隊は送り込まれてきていましたがそれが瞬く間に全滅させられたんです!』

 

「んん??それ、緊急事態なの?」

 

『よく分からんが面倒が無くなったんじゃないのか?』

 

『寧ろ面倒が激増です!全滅の理由がっ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……スフィアシステムを目覚めさせる因子を探していたら君達と出会うとはね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へえ、お前がやったんだ」

 

『アサキム・ドーウィン……!』

 

『そしてシュロウガとやらか』

 

 

 一度相対した経験があるクロエとC.C.に、それをリアルタイムで観ていた束はすぐに反応した。

 

 以前、レジェンドやゼットがゴーデスとの決戦に赴いていた最中、突如として襲来した黒い機体とその操者。

 アサキム・ドーウィンとシュロウガがこの世界に来ていたのだ。

 

 

『あれがクロエちゃんを圧倒したってやつか!』

 

『見たところ機体コンセプトはサイバスターに似ていなくもないが』

 

「そちらのウルトラマン二人……片方は光神でもあるか。君達に加えてそこの女性とは初対面だったね。もっとも……お互い少なからず知っているようだが」

 

『まあな……それで何の用だ』

 

「先程言ったようにスフィアシステム絡みさ。だが収穫は無かったよ。ここで君達と争う気はない」

 

「信じられると思う?と言いたいところだけどゴミ掃除してくれたみたいだし、今回は見逃してあげるよ」

 

「感謝しよう、天災」

 

 

 立て続けに起こる衝撃にパニックになるIS学園の生徒や教員達であったが、千冬だけは冷静さを取り戻していた。

 同時に思い知る……束と相対している存在が自分達の想像を超えたモノであることを。

 

 

 

「では一足先に僕は失礼するよ。ああ……光神、サイバスターとその操者たるヴァルキリーは元気かい?」

 

『ああ。使い魔共々な』

 

「それは良かった。僕が狩るまで力をつけ、誰にも狩られないようにと伝えておいてくれ」

 

 

 そう言い残し、シュロウガは次元の扉を開いて恐るべき速度でそこへ突入、そして消えた。

 

 

『……会ってみて分かったが面倒な奴だな』

 

『スフィアシステムとやらが何か知らんが、ロスヴァイセを狙っているのは確か……か。因子云々言っていたからあいつだけを狙っているというわけではなさそうだが』

 

 

 レジェンドとC.C.は今後の事を考えるとまた頭を悩ますことになってしまった。

 クロエやゼットは一先ずホッとしている。

 生徒や教員を守りながらでは満足に戦えないからだ。

 

 

 

 

 

 やることは全て終えた。

 もうこの世界に思い残すことはない……いや、あるにはあるが残りは彼ら自身でどうにかすべきだろう。

 

 束は満足したような表情で箒に近付くと、優しく抱きしめてポンポンと頭を軽く叩いた。

 

 

「……姉さん……」

 

「頑張れ、箒ちゃん。束さんが言ったこと守んなきゃ駄目だぞー?ISでも恋でも油断大敵、石橋をゴルディオンハンマーで叩いて渡るくらいしなきゃ」

 

「おい束、アレは叩いたら光になるから渡る以前の問題だろうが。せめてハイパーハンマーにしとけ」

 

「あれもあれで危ないよー?トゲ付きの鉄球だし」

 

 

 レジェンドがネオ・グランゾンから降りて束を迎えに来る。

 僅かに震えてるのを見たレジェンドは、もう少しだけ時間をやろうと思い、織斑姉弟の元へとやってきた。

 

 

「……これからもお前達はその生まれから様々な困難に遭遇するだろう」

 

「……!まさか……」

 

「生まれ?何のことですか?」

 

「それはお前達が自ら知るべきだ。俺の口から語るべき事じゃない。ただ一つだけ言っておく」

 

 

 一夏の頭を撫でつつレジェンドは父の、或いは兄のように優しく告げる。

 

 

「大切なものを守り、夢に向かって飛べ。束がISに込めた願いは争うものにあらず、未来を夢見たもの。先程言われたように正しくISを使えばそれは無限の未来への扉を開く鍵になる」

 

「無限の未来……」

 

「それからな、えらくモテているようだが不憫には注意するんだぞ。主に俺はモテなくても悲惨なぐらい不憫だがな!!というか不憫にモテてんじゃないのか俺!!」

 

『超師匠、台無しでございました』

 

 

 突然キャラが壊れたかのように叫ぶレジェンドに、一夏は鳩が豆鉄砲食らったような表情になったが、自然とすぐに笑みが零れた。

 

 

「いや、俺も不憫ですよ。なんていうかパンダみたいに扱われてる感ハンパないし、何かというと些細な事で選択迫られては選ばなかった方から殺意ビンビンに叩きつけられるし」

 

「後半は同意だな。俺は不可抗力なのによく『ぷんすこー』と言いながらヘッドロックをかけてきたり、身動き取れなくされた後に片足に関節技かけられたり……」

 

「分かります!いや俺も似たようなことされましたし……なんだろ、貴方がお義兄さんだったら良かったのにって思えてきた」

 

「!!」

 

 

 何故か意気投合してしまったレジェンドと一夏。

 一夏の方はどちらかというとラッキースケベとか配慮不足なんかもあったりするが、その後のカウンター度合いが理不尽なのでまあいいか。

 

 

「おーうちーちゃん、レジェくんは渡さんぞー?いっくん、お義兄さんが欲しいなら箒ちゃんとくっつくともれなくレジェくんがお義兄さんになるよ!」

 

「えっ?」

 

「ねっ!?ねねね姉さん!?」

 

「あっはっはー!これは冗談で終わらす気はないからね。ホントに頑張んなね、箒ちゃん。ライバルは多いし手強いぞー」

 

 

 束が笑いながら指差した先では、一夏がセシリアや鈴音、ラウラにシャルロットに詰め寄られていた。

 先程の束の言葉に反応した結果だろう。

 何気にレジェンドに助けてほしいような視線を向けているし。

 

 

「……はい、もちろんです」

 

「よろしい。レジェくんもね、他人の恋路に敏感で後押しまでしてカップル成立させまくってるのに、自分が絡むと途端にいっくんと同じように鈍感になってさあ……」

 

「それは苦労しますね」

 

「でしょー。しかもなんか向こう意気投合しちゃってるしさ。手を組まれたら二倍厄介になりそうだし引き離しに行こっか!」

 

「ええ……!一夏!何を鼻の下伸ばしている!」

 

「ちょっ!?これのどこがそんな状況に見えるんだよ!?」

 

「レジェくーん帰ったらオーちゃんアーちゃん、それからルリぴっぴにアマにゃん、トドメにアズにゃんとみっつんを筆頭にぷんすこーの刑ね」

 

「オイ規模が尋常じゃないぞ!?」

 

「そうだぞ束!そんな事するくらいなら彼は置いていけ!私が貰う!」

 

「駄目だぞちーちゃん!大してレジェくんとも付き合いないくせに婚期を逃すかもしれないとデキ婚に持ち込もうとしたら!!」

 

「ゴハァッ!?」

 

「千冬姉ー!?今日二回目!!」

 

 

 何故かレジェンド一家と同じような事態になってしまうレジェンド一行と一夏達。

 これに関してはレジェンドが不憫について話し出したことが原因かもしれない。

 

 ひとしきり騒いだ後、再びそれぞれの愛機に乗り込んだレジェンド達は各々の機体を飛翔させ、一夏達はそれを黙って見守ってる。

 

 

『さて、今度こそ本当にお別れだ。もう俺達からこの世界に来る事は無いだろう』

 

『あ、ちーちゃんが絶望的な顔した』

 

『え?あの人この世界最強と聞いたんでございますが』

 

『別の方面のメンタルはそうでもなかったようだな』

 

『C.C.様、せめてオブラートに包んで下さい』

 

『お前ら俺の真面目な雰囲気返せ』

 

 

 そんなやり取りを見て笑う一夏ら。

 途中の険悪な空気はもはや微塵もない。

 

 

「あれを逃したら私はまた独身街道をひた走るハメになるかもしれんのだぞ!?」

 

「いや千冬姉必死過ぎない!?」

 

「煩い!お前は良いよなあ一夏ァ!ただ嫁をたくさん貰うだけなんだからなァァァ!!」

 

「ぎゃあああああ!?」

 

「「「「「一夏(さん)ー!?」」」」」

 

 

 ……確かに不憫という点ではレジェンドと一夏が意気投合してもおかしくないのかも。

 

 

『箒ちゃーん!!』

 

「!!」

 

『しっかり旦那様連れて私を追っかけに来なねー!この世界には来ないけどそっちから来るのは大歓迎!こっちの宇宙にある私の別荘でたくさんお話出来る日たのしみにしてるからー!!』

 

「姉さん……!はい、必ず!!」

 

 

 外見に似合わず、思いっきり手を振るアストラナガンへと笑顔で返す箒。

 長い年月を経て、漸く姉妹の凝りは溶け切ったようだ。

 

 天に浮かぶ魔法陣らしきものに吸い込まれるように消えて行く5機の機動兵器。

 全てが魔法陣の向こう側へと消え、最後にその魔法陣も消えるとそこには雲一つない青空が広がっていた。

 

 

 

 

 ISへの過剰とも言える制限は女尊男卑という風潮を覆すには十分過ぎる結果をもたらした。

 女性しか扱えない反面、それを扱う者は文字通り国の命運を背負っているに等しい。

 それこそ日々の生活態度さえ監視されそうな重責から誰もが逃れようとし、結果ISが使えるから女性の方が優秀であるという考えは徐々に減衰していった。

 

 同時にIS学園では束がISを開発した本来の目的が判明したため、各国の援助を受けつつ宇宙進出へとISを使用することを決定。

 

 別れ際に束からレジェンド達のこれまでの戦いの記録を渡されていた一夏達はその凄まじさにまたも驚愕。

 宇宙どころか次元を股にかける壮大なものであったことで尚更宇宙を目指す気になったという。

 

 そして――

 

 

 

 

 ――ヒリュウ改――

 

 

「ぷーんすこー」

 

「コラオーフィス!服を引っ張……いや剥ぎ取ろうとするな!!」

 

「服だけなら燃やしてもいいよね、レジェンドさん」

 

「アマリちゃァァァん!?発想が恐いんだけど!!」

 

「……じゃあ、先に私が脱いだらレジェンドさんも脱いでくれるとか?」

 

「アぁぁぁぁズにゃぁぁぁぁぁん!?ストップ!!ストップだ!!いいかお前ら、既成事実はアウト!!絶対駄目!!OK!?つか何でそっち狙うようになってんの!?」

 

 

 相変わらずレジェンドの精神は擦り減らされていた。

 束と千冬とのやり取りが原因でしかも千冬が拗らせた上に一夏の発言が引き金みたいなので、今回は濡れ衣でもいい気がするのだが。

 

 

「あの、束さん」

 

「ん?なーにルリぴっぴ」

 

「その人ってあの、その……」

 

「胸おっきいよ」

 

「バハムート!!」

 

「ぎゃあああああ!?おい束ェェェ!!」

 

「あっはははー!!」

 

「そんな束さんにはカタリナさんの作ったお菓子をプレゼントしますね。はい、どうぞ?」

 

「がごっファ!?」

 

「束さん!?ミツバさん!?」

 

「アズがおかしい事言い出したのは貴女が原因とクロエさんから聞きましたよ?」

 

「う……うぅ……クーちゃーん……」

 

「すみません束様……私もそれを食べさせられるところでした……」

 

 

 奇しくも一夏ら同様、レジェンドとよく一緒にいる女性達がドタバタしている。

 騒動の中心になっている二人がそれぞれ見たらまた親近感湧いて、それこそレジェンドが織斑姉弟と養子縁組しそうな気がするが、一夏は喜びそうでも千冬が断固として反対するだろう。

 主に自分の婚期の問題で。

 ……レジェンドを手に入れるより自身のイメージを払拭した方が手っ取り早いと思うのだが。

 

 同じ過去でも、違う世界、違う今、そして違う未来。

 ただ、変わらないのは別れ際に結べた絆。

 

 

「……あとは私の方か。ゼット、またお前にも付き合わせてしまうが」

 

「別に問題ナッシングでございますよ。遊撃隊は様々な世界へ赴くわけですし。それよか超師匠がそろそろヤバくないですかね?」

 

「なに、アーシアがいるだろう?」

 

「それ瀕死と完治の地獄無限ループじゃね?」

 

 

 どんな事になろうと、彼らは彼らで歩んでいく。

 

 いつかまた、あの世界ではない何処かで再会出来ることを信じて。

 

 

「レジェくんクーちゃん助けてぇぇぇ……」

 

「それは俺の台詞だコンチクショー!!」

 

「あぅ……その、えっと……」

 

「超師匠!俺が助けにギャーッ!?」

 

「早々に助けられる側になったな」

 

 

 

IS特別編・完




割とスッキリと終わりました、IS特別編。
単体で見るとリア充爆発案件な一夏もレジェンドと並べると「あれれ〜?別に何ともないぞ〜?」とコナン君状態になる不思議。
レジェンドの方が日々似たような状態にも関わらず、それを打ち消す程のとんでもない不憫が印象的だからかもしれないですね、コレ。

アサキムが出て来ましたが何もせず去って行きました。
当初は一戦交えさせる予定でしたが「ネオ・グランゾンかアストラナガンだけでも余裕じゃね?少ないって言っても過剰戦力だろ」ということで無しにしました。
シン化してないのにさすがに無理ゲー過ぎるし(シン化すれば勝てるとは言っていない)。

今後書く予定のギアス特別編は今回ほど長くならない……と思いたい……!


それではまた次回。

二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?

  • 真ゲッタードラゴン(大決戦版)
  • 真・ゲッター1(スパロボα仕様)
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