ウルトラマンレジェンド Episode.CROSSOVER 作:ハジケハムスター・ポッポ
今までになく詰め込んだ結果、一万文字をゆうに超える長文となってしまいましたが、個人的には満足。
しかしこの第二章……これカナエ主人公じゃね?
それでは長めですが、どうぞお楽しみ下さい。
「いやー、リアスの『女王』が淹れてくれたお茶は美味しいものだな」
「痛み入りますわ」
前回から打って変わって和やかな雰囲気……
ではなかった。
相変わらずカナエは殺気を抑えず、何とか全員が平静に保とうと努力している状態だ。
ソファに座りながら、リアスらオカルト研究部メンバーやライザー、ルミナシアも冷や汗が流れている。
そんな中、なんとアーシアだけはいつも通りになっていた。どうやら家族が家族だけに慣れてしまったのと、レジェンドがくれた輝石のペンダントを見ていたら大丈夫に思えてきたらしい。
「ア、アーシアは平気なのか?今の部室の雰囲気……」
「はい、もう大丈夫です」
「アーシアちゃんは偉いわね〜」
殺気丸出し状態でもアーシアには優しいカナエ。いや実際は一誠達にもちゃんと対応するのだが、如何せん彼女の殺気が収まらないため怖くて話しかけられないのだ。
ともかく、どうにかして話を切り出さなければならないと思っていたのだが……ここに来てリアスが口を開いた。
「……私は家を潰さないわ」
「おおっ!さすがリアス! じゃあ早速俺と……」
「でも貴方とは結婚しないわ、ライザー。私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にだってそれくらいの権利はあるわ」
ハッキリと言い放ったリアスに、カナエは心の中で拍手を送った。クラスメイトとはいえ殆ど接点は無く、オカルト研究部へ入部して数日程度だが彼女にとってはもはや大事な友人だ。正直こんな男と添い遂げて欲しくはない。
しかし、その返答を聞いてライザーも黙ってはいなかった。
「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。この名前に泥をかけられるわけにもいかないんだ。こんな狭くてボロい人間界の建物なんかに来たくなかったしな」
前半はともかく、後半を聞いてカナエの怒りのボルテージがまた上がり出した。だったら最初から来るな、と。
「というか、俺は人間界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔としては、耐えがたいんだよッ!」
「黙りなさい」
『!?』
あまりの言い分についにカナエが本気でキレた。
「貴方の一族が何を司るかなどどうでもいい事です。いつから貴方達がこの世界を支配していると思っているんですか?噂の大戦ではかの軍勢はおろか、二天龍にすら一種族ではまるで手も足も出ずに壊滅寸前にまで追い込まれたというのに」
「なっ……何だと!!」
「ましてやこの駒王、貴方達が来る前より『あの方』のお膝元。先程の言葉、もしあの方に伝わればそれこそ光神様とその眷属の方々に見限られる事は間違いないでしょうね」
『!?』
アーシア以外その場にいた全員、特に純血悪魔であるリアス、ライザー、ルミナシアは驚愕した。大戦について知っているだけでなくこの町をお膝元とする存在がいる。それも、その人物が三大勢力のみならずこの世界の神話勢さえ跪くほどの存在『光神陣営』の者だと言い切る彼女は一体何なのか。
疑問は尽きないが、ライザーに対してカナエがトドメと言える一言を言い放った。
「それに私としてはどんな炎と風よりも―
貴方の方がよっぽど汚いんですが」
「っ!!貴様ァァァァァ!!」
「!?ライザー様、お止め下さ……」
「ふっ!」
ドゴッ!!!
これにはライザーも怒り心頭だったのだが飛び掛かろうとした瞬間、どうやったのか離れているにも関わらず顔面に日輪刀の柄を叩きつけられ、壁まで吹き飛ばされた。
「ペグァ!?」
「動きが鈍い。体も脆い。おまけに頭も弱い。話になりません」
ボロクソに言い切るカナエ。今の生活で彼女の家族や共に生活している人物、ハンターとして秘密基地で生活している者達など、男性との関わりは多いがいずれもこんな上から目線の者達ではない。
レジェンドは恋慕の相手で、何かと面倒を見てくれた。家族の大黒柱として、そして光の三超神の一人としても激務ながら自分達との時間を大切にしてくれている。
80は教師として自分に丁寧に色々な事を教えてくれた。あまりの文化の違いに戸惑っていた時も、一つ一つ自分も復習するかのようにレジェンドと一緒に勉強に付き合ってくれていた。
レオは初日こそ驚いたものの、とてつもない努力家だと知った。しかもそれを恥とも思わず、レジェンドに一撃で伸された時でも『己の修行不足』と特訓に精を出し始めた。彼のメニューを見せてもらったが自分ではとても真似できないものだ。
メビウスは礼儀正しい、人の良い人物だ。今朝の自分とアーシアの弁当を用意してくれたのもグレイフィアと彼だ。自分なりに出来る事をしようと模索して実践する真面目さがあった。
ゼロは若くして実力者達を束ねる隊長職の立場ながら、非常に気さくだった。偉ぶったところが無く、誰に対しても平等でありながら、ちゃんと敬意を払う事も忘れない。
彼女と親しくなったウルトラマンだけでもこういった人物ばかりなのだ。ハンターズギルドの面々……例えばジェントやラッシュハンターズもまたそれぞれ魅力を持った者達だが、ライザーからはそれをまるで感じない。
そんな彼らが生き、守ろうとしているこの世界を侮辱するような発言をしたライザーに対して彼女は一切の容赦をしない事にした。リアスの婚約者だろうと知った事か。
しかしそれに待ったをかけたのはルミナシアだった。
「胡蝶様、どうか刃をお納め下さい」
「先に私達の暮らす世界を侮辱したのはあちらですが」
「御無礼を働いた事は私も深く謝罪致します。私が仕えるサーゼクス様の名誉の為にもどうか、私にお任せ下さいませ」
深々と頭を下げたルミナシアの態度に、漸くカナエも日輪刀から手を離し殺気を少しだけ残しつつも抑える。
「……他意はないみたいですね」
「お心遣いに感謝致します。さて……」
ルミナシアはリアスと(吹っ飛んだ)ライザーを見据えながら二人にある事を伝えた。
「元々お嬢様が納得されていない婚約であったが故に、こうなる事は旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も承知でした。正直に申し上げますとこれが最後の話し合いの場だったのです。そしてそれが決裂した以上、残った最後の手段は……」
「『レーティングゲーム』ってわけね……」
「左様でございます。万が一……と言うよりも交渉に関してはほぼ決裂する事が予想されておりましたので、その場合はレーティングゲームの合否によって決める、との事です」
「あ……あのぅ……レーティングゲームって何ですか?」
おずおずとアーシアが手を挙げて質問する。彼女はもちろん最近悪魔になったばかりの一誠や、レジェンド一家で唯一の悪魔であるグレイフィアからそういった話を聞いていないカナエも気になった(一応、黒歌も元はぐれ悪魔だが今は元通りの妖怪なのであまりぶり返したくなかった)。
まあ、なんとなく平和的でないのは分かるのだが。
「レーティングゲームと言うのは爵位持ちの悪魔による、互いの下僕達を戦わせて競い合う競技のようなものですわ。公式なものには成熟した悪魔しか参加資格はありませんが、純血悪魔同士による非公式なものにはまだ成熟していない悪魔でも参加可能なんです。大抵の場合、今回のような身内ないし御家同士の問題に関する事なのですが」
朱乃がある程度掻い摘んで話してくれた。必要な事だけ選んで話してくれたようなので、三人には分かり易かったようだ。
「いいわよ。レーティングゲームで決着を着けましょうか、ライザー」
「本気で言ってるのか?まあ、俺は別に構わないぜ。だが俺は既に何度もゲームを経験してるし勝ち星も圧倒的に多い。それでもやるのか、リアス?」
「やるわ。ライザー、貴方を消し飛ばしてあげる!」
互いに睨み合うリアスとライザーを再び制するようにルミナシアは声を上げた。
「それではお嬢様、ライザー様。お二人とも承諾するという事で宜しいですね?」
「ええ」
「ああ」
「畏まりました。では私、ルミナシア・ルキフグスが証人となって旦那様やサーゼクス様、フェニックス家の方々に報告致します」
漸く一段落かと思いきや、ライザーがカナエや一誠達を一瞥してリアスに聞いてきた。
「なあリアス。そこにいる人間二人を除いた面子が君の下僕なのか?」
「だとしたらどうだと言うの?」
「話にならないな。君の『女王』である『雷の巫女』ぐらいしか俺の可愛い下僕に対抗できそうにない。そっちの人間ならどうにかなったかもしれんが」
(……駄目ね。たぶん手遅れだわ、アレの頭。私の一撃を受けても『能力』で優位に立てると思い込んでいる。己の能力で優位に立てると断言して良いのは……レジェンド様を除くとノア様やキング様くらいかしら)
カナエは心中にて相変わらずライザーを酷評していた。正直言って、不死程度の輩はあの三人は歯牙にもかけないだろう。
レジェンドはスパークレジェンドで完全消滅。
ノアはディメンション・ノアの応用で別次元送り。
キングは念力で拘束し宇宙牢獄にブチ込む。
一人は己の得意技で一発、一人は己の能力を使った技で世界から除外、一人は自力で脱出不可能な状態にしてほぼ永久投獄とどうにでもできるのだ。あの三人は相手にしたらヤバイどころの問題ではない。
それに加えて、カナエらはまだ会っていないが正面切っての殴り合いでもサーガという彼らに次ぐ規格外の存在がいる。
そんな彼らを知り、ついでに今の自分の身内が化け物通り越して到達しちゃいけないところをぶっちぎりで突破し続けている連中ばかりのカナエには、能力云々で勝敗が決まるなど余程のものでない限り有り得ないと感じている。
そんな事を考えていたらライザーの周りには彼の下僕らしき女性達が勢揃いしていた。その数、計15人……所謂ハーレム状態である。
自身の憧れを体現している奴が目の前にいる事で一誠は血の涙を流しながらガックリ両手両膝を着いていたのだが……やはりカナエがここで動いた。
頑張れ一誠。段々影が薄くなってきているぞ!
「兵藤君、そう落ち込まないで」
「胡蝶先輩……!でも……恥ずかしいし情けないかもしれないけど……俺はハーレムを……!」
「だったらもっと参考にするといい方がいるわよ。その方はあんな遊郭に通い詰めてそうな悪人面しないし、下僕は人間界出身ぽいって人間界嫌いとかこいつ絶対嘘付きでしょみたいな事もしないし」
笑顔で容赦無く毒を吐き続けるカナエ。さすが鬼を殺す毒を作り出した蟲柱な妹の実姉だけある。身体以上に心に効く。
一誠や木場、小猫にルミナシアはポカンとしており、アーシアはアワアワしている。さらに朱乃は「あらあら」といつもの優しい部分を見せ、リアスに至ってはいいぞもっと言ってやれと言わんばかりの良い笑顔だ。
そしてトドメの一言。
「何よりあんな下衆な性格してないし」
この言葉でついにライザーも爆発した。ここまで良く保った方である。
「貴様ァァァ!!一度ならず二度も俺をコケにしやがって!!やれ、ミラ!!殺しても構わん!!」
「はい、ライザー様!」
……言ってしまった。ライザーは言ってしまったのだ。あの存在が近くまで来ているとは知らずにカナエを『殺しても』と。
「この娘を殺すと言ったか、貴様」
ジャキィン!!!
『!!??』
どこからともなく発せられた、ライザーによく似た声の一言が聞こえた方を向くと、黄金のローブを纏ったような黒く巨大な異形の存在がライザーの背後に立ち、手にした大鎌でその首を斬り落とさんとライザーの首筋に当てていた。その腕を引けば即座にライザーの首は地に落ちるだろう。
三大勢力でもなければ人間でも、神話勢でもない『何か』にその場にいる者は圧倒的な恐怖を感じていた。
カナエとアーシアを除いて。
「な……何だ貴様は!?何者かは知らんがこんな事をしてただで……(ザクッ!!)ひぎぃっ!?」
「ライザー様!?このっ!化け物め!!」
ライザーが異を唱えようとした瞬間、当てられているだけだった大鎌がほんの少し首に食い込んだ。それを見たライザーの眷属が総攻撃を仕掛けるも、まるで効いておらず逆に腕を奮っただけで全員が吹き飛ばされた。
「あぐっ!!」
「がはっ!!」
「有象無象の寄せ集め風情が。少し黙っていろ」
先程と同じく発せられた声はライザーとよく似ている。だが威圧感と雰囲気はまるで違う。リアス達はおろかルミナシアも口を開けない。
次元が違い過ぎる―かつての大戦にも参加していたルミナシアにさえそう感じさせる異形の存在は三度言葉を発した。
「胡蝶カナエ。この者はギルドの潤滑油とも呼べる存在。数々の喧騒を穏便に収め、ハンターズギルドが円満に機能するように尽力している。そして先日新たに加入申請に来たそこのアーシア・アルジェントもそうだ。顔出し程度にも関わらず、己が存在と全く異なる姿の者を何の疑いも持たず治療し、ハンター……引いてはギルド全体の命を尊重する行為をとった」
どうやらカナエはもちろん、アーシアが加入したというハンターズギルドとやらの関係者なのであろうその異形は、先程の言葉からギルドという組織の為にカナエ、そしてアーシアを助けたと解釈して良いのだろう。
「故にその二人を失う事はギルド全体に大きな影響を及ぼす。保護者たるあの者の意思によるハンター業引退等の致し方無い状況、もしくはハンティングにおける不慮の事故ならばいざ知らず、人為的な殺害による喪失は認められん。それを行おうとした貴様は以後それが出来ぬよう我々『ギルドガード』が捕縛・管理させてもらう」
『なっ……!?』
言わば、警察による検挙のような事態に声を荒げたのはやはりライザーだ。
「ふざけるな!貴様に何の権限があって……」
「二度は言わん」
その瞬間、ライザーはその異形が取り出した一枚のカードに吸い込まれて行った。
「う……うわあああぁぁぁ…………」
『ラ……ライザー様ぁぁぁ!!』
ライザーは異形の存在の手によって一枚のカードに封印された。そして異形はそのカードを一瞥して呟く。
「……やはり媒介はあった方が良い。発動に手間が掛からなくなる」
リアス達は唖然としながらもその言葉の意味を理解した。あった方が良い、というのは即ち無くてもあの能力は発動出来るという事。
しかしあんな能力は今まで誰も見た事がなく、レーティングゲームにしても当のライザーがあの状態では行う事さえ出来ない。そんな事を考えていると異形がリアスやカナエ達に向き直る。
「名乗るのが遅れたな。知っている者も居るだろうが、俺は『メフィラス星人シックル』。ギルドガードを束ねている」
「メフィラス……星人……!?」
「簡単に言うとシックルさんは宇宙人なのよ。シックルさん、お仕事ご苦労様です」
「ああ」
にこやかに挨拶するカナエに短くだがしっかり返事するシックル。そんな二人に驚くアーシア以外のオカルト研究部だが本当に驚いている部分はそこではない。
『う、宇宙人!?』
「宇宙人って、え!?矢的先生みたいに!?」
「ええ。メフィラス星人って種族で、とんでもなく頭が切れる知性に優れた種族なのよ。シックルさんはジェントさんと並んで実力もトップクラスだけど」
「ジェント……?その人もメフィラス星人なの?」
そしてカナエの次の一言がルミナシアをさらなる衝撃の渦へと叩き込む。
「そうよ。私達が所属しているハンターズギルドの中心人物。何より伝説の『七星剣』の古参の一人なの」
「し……七星剣ッ!?」
「ど……どうしたのルミナシア?いきなり大声を出して……」
明らかに動揺しているルミナシアにリアスは問うが、そこから返ってきたのは驚愕の事実だった。
というか今凄い事言わなかったか。目の前にいるシックルの実力がジェント……
「七星剣とは、レイブラッド事変より前に起きた非常事態……この世界が崩壊するかもしれなかった程の事件を解決し、世界を救ったとされる伝説の七人の剣士と彼らが振るったとされる七振りの剣の事です。剣と剣士、どちらも七星剣と称される以外は未だ正体不明とされていて、もはやそれこそ御伽話ではないかと言われていたのですが……」
「その内の三振り、妖刀カナツキ、妖刀フニブシ、そして最強の七支刀たる妖刀ナナマスは次代へと受け継がれ、ラッシュハンターズの皆さんが所有しているわ」
『!!』
またもカナエが驚きの事実を口に出す。
「カナエ……貴女まさか七星剣達と知り合いなの!?」
「ええ、私は全員と。それにアーシアちゃんもジェントさんやラッシュハンターズの皆さんとは先日知り合いになったわ」
「な!?」
「本当なのかアーシア!?」
「は、はい……それと」
アーシアがおずおずと手を挙げ、そのまま隣を指差す。
「あの……ジェントさんもいらっしゃいました」
「いやあお取込み中にすいません。そこの彼が行くと言うので少々心配になりまして」
『!?』
シックルよりも更に巨体のメフィラス星人と思しき存在がアーシアの隣に立っていた。あまりに大きいので部室の天井とギリギリだ。
「それでシックル、彼女らに例の物はお渡ししましたか?」
「心配しなくても今から渡すところだ。余計な真似をした連中がいたからな」
先程の一撃からまだ立ち直れていないライザーの眷属を一瞥し、ライザーを封印したカードを見せた後、シックルはカナエとアーシアを呼ぶ。
「胡蝶カナエ、アーシア・アルジェント。お前達に通達する。まずは胡蝶カナエ。本日付を以ってハンターランクをAへと昇格する」
「!!本当ですか!?」
「続けてアーシア・アルジェント。手続きが完了したため正式にハンターに登録された。本来ならばFランクからのスタートになるが先の通りギルドに所属する負傷ハンターを分け隔て無く治療し、ギルド全体の命を尊重、未来あるハンターの救命に尽力する意志を認め、Eランクからのスタートとなる」
「え……わ、私はただあの方が仰った通り、私がしたい事をしただけで……」
「それでいいんですよアーシアさん。何もハンターだからといってプラズマソウルを手に入れるだけがハンターではありません。共にハンティングを行う者達をサポートする事に徹し、皆が無事にハンティングを終えて帰還できるように尽力する。それも一つの立派な戦い方なんですよ」
シックルによって告げられたハンターランク昇格にカナエは喜び、アーシアは通常よりワンランク上の状態でスタートする事に若干緊張しているが、それをジェントが優しく諭す。その言葉たるやライザーと明らかに違い、紳士的でアーシアの優しい心を肯定する至極真っ当な意見だった。
これもあってリアスや一誠らはシックルこそまだ恐怖の対象だが、ジェントは信用出来る人物と認識した。
「これがお前達の新しいハンターライセンスカードだ」
「ありがとうございます、シックルさん」
「わ、私もこれから私なりに頑張りますっ」
「改めておめでとうございます。長生きはするものですね。こうやって成長が楽しみなハンターがどんどん出て来てくれるとは」
ハッハッハと口元を発光させながら朗らかに笑うジェントに漸く今までの殺伐とした空気が消えた。
……と思ったのだが。
「あの、宜しいでしょうか……?」
『あ』
すっかり忘れられそうなルミナシアが声を出した。
「はい、何でしょうか。ああ……顔を動かすだけですみません。なにぶんこんな体格でして、下手に動くと天井に穴を空けてしまいそうで。ついでに床が抜けなくて助かりました」
「はわわ……ジェントさん、大きいですもんね」
「お気になさらず。それでその……シックル様が手にされてる……ライザー様の事なのですが……」
「こいつがどうした」
「差し出がましい事とは存じます。不躾な発言や行動はなさらない様、ライザー様に私からも申し上げますので、どうかライザー様を開放して頂けないでしょうか」
ジェントはふむ……と悩んでいるようだったが、シックルは即答する。
「お前が言ったところで聞くような奴とは思えん。その申し出は受けられん」
「……シックル、ここは彼女を信じてみませんか?」
「……どういうつもりだ、ジェント」
「まあ、聞いて下さい。ライザー……という彼が我々のギルド所属のハンターであるカナエさんに対して不適切な発言や行いをしたのは分かりました。ですが、それまでの経緯を私やシックルは知りません。まずはそれを教えて頂けますか?」
「は、はい。実は……」
ジェントの提案で話を聞いてくれる事になった二人に対し、ルミナシアはリアスの婚約の事やレーティングゲームの事を時系列にそって説明した。
シックルは腕組みしたまま沈黙を保っているが、ジェントは時折頷き、顎に手を当てたり考える素振りを見せながらルミナシアの話を聞いている。
「……以上が、大まかな事の全容になります」
「なるほど。つまり彼がレーティングゲームとやらに参加出来なければ、婚約破棄にせよ即結婚にせよ関係の精算も何も出来ず仕舞いだと」
「……くだらん。何かと思えば身内や家同士の厄介事を持ち込んだ結果、己のちっぽけなプライドで胡蝶カナエの逆鱗に触れる言葉を発し返り討ちに合っただけだろう」
「ですよね〜。しかも言う事もやる事もこっちの神経逆撫でしてくるのでついこちらも殺る気になってしまって……そこは反省してます」
「過ぎてしまった事ですし、それはいいでしょう。折角ですから私達も観戦させてもらいましょうか、そのレーティングゲームとやらを。それで手打ちにしましょう」
『!?』
はっきり言って破格だった。自分達がそのレーティングゲームを観戦出来るようにするだけでライザーを開放すると言うのだ。しかしジェントは更に言葉を続ける。追加で頼みたい事があると。
「一通り見てみましたが、リアスさんの方は眷属の数も練度も不十分。そこで、十日間程準備期間を設ける事と……人間とはいえ正式な部員であるカナエさんとアーシアさんの参加許可を欲しいのです。彼女らは部外者ではないですし、ルールに則った上での戦いならばシックルも文句はないでしょう。それに準備期間はお互い平等にあります。特訓を重ね今より更に力を付けるなり、ゆっくり休養を取り体調を万全の状態に整えるなりするのは各自自由です」
ルミナシアは「確かに」と納得する。
リアスの下僕はまだ四人……正確にはここに居ない僧侶一人を含めた五人なのだが、兵士の駒は一誠に全て使ってしまってこれ以上増やせず、そもそも如何せんこの短期間で不足の人員を見つけるのは難しい。だから少なくとも正規の部員であるカナエとアーシアを参加させ、後は訓練するなり新しい下僕を見つけるなりすれば少なくともそれなりの形にはなるだろう。どちらを選ぶかは本人次第なわけだから。
それにしてもこのジェントというメフィラス星人、相当なやり手である。
「畏まりました。観戦に際してこちらからご用意する物は……」
「ああ、それは結構ですよ。こちらの設備でどうとでもなるのでしっかりと許可が頂きたかっただけですので」
「は、はあ……」
「では、約束通り彼を開放しましょう。シックル」
「……ふん」
シックルがライザーの封印されたカードを放り投げ、自身の持つ大鎌と共鳴させるとライザーと媒介にしていたカードに分離され、カードの方はシックルの手に舞い戻った。
「……はっ!?ここは……俺は確か……」
「お帰りなさいませ、ライザー様。カードになられている間にレーティングゲームに関して打ち合わせが済みましたので、シックル様とジェント様のご厚意により元に戻して頂けました」
「何だって?カード……思い出したぞ!あの……」
「ライザー様!この方々は本来我々ではお目にかかる事さえ出来なかったかもしれない方達です!これ以上御無礼を働くならば私も動かざるを得ません!」
声を荒げたルミナシアに尋常成らざる気迫を感じたライザーは大人しく引き下がった。その時に偶然アーシアの方を向いたらシックルよりも巨大なジェントがいたのを見て「ひいっ!?」と情けない悲鳴をあげていた。
当のジェントは「どうも」と片手を上げていただけなのに。
「では改めまして……レーティングゲームは本日より十日後に。開始時刻は追ってお知らせ致します」
ルミナシアがそう言うと、彼女やライザー、それにライザーの眷属達も魔方陣と共に消えて行った。というか眷属連中まだ復帰出来てなかったけど本番までに治るのか?
☆
「さて……私達も準備しましょうか。挨拶一つ返せない彼には徹底的に痛い目にあって頂きましょう」
ジェントが言った言葉にシックルとカナエ以外はギョッとした。え?何この人怖い事言い出したんだけど。
「ジェントさん、私が参加出来るようにして下さってありがとうございます!ふふっ……お姉さん、どう弄っちゃおうかしら」
「ハッハッハ、期待してますよ。遠慮なく宇宙の広さというものを教えてあげて下さい、カナエさん」
カナエの目が笑ってない。瞳孔開き気味だ。普段優しいタイプは怒らせたらヤバイというのは卯ノ花がいい例だ。
そしてジェントも煽るんじゃない。
「おい、ジェント」
「おや?どうかしましたかシックル」
カナエを除くオカルト研究部のメンバーはこの時ばかりは彼に希望を託した。先程の発言を諫めてくれると……
「何故俺も参加させなかった」
「そんな事を許したら食べれない挽肉やフライドチキンがすぐさま食卓に並んでしまうじゃないですか。食べれないのに早々テーブルへ出て来てもスペースの無駄遣いですよ。ああいうのは調理されてるのを見るのが醍醐味なんですから」
諌めるどころか自分も参加したかったらしい。
そしてジェントの例えが色々酷い。ライザー(&その眷属)を焼き鳥どころか食べれない料理扱いしている。
ジェントの隣に地獄の有名なあの補佐官が笑顔で立ってサムズアップしてるのが見えるんですが。
「と、ともかくライザーとのレーティングゲームは十日後!それまで個々の実力アップの為の強化合宿をするわよ!」
「ああ、それなら既に手配してありますのでご心配無く。カナエさん、彼にも連絡は取ってありますよ。なんでも『ダイブハンガーはまだ駄目だが、仮住居やその地下に作った[勉強部屋]は自由に使って良い』だそうです。このスマホ、便利ですねぇ」
「ちょっ!?準備早ェ!!」
「ていうかスマホなのにやけに大きくないですかそれ!?」
用意周到というか、専用のデカいスマホでレジェンドに連絡済みだった。スマホなのにデカいとは如何にと思ったがジェント自身のサイズがサイズなので仕方無い。
とはいえレジェンドの事はまだバラしていない。時期尚早だと本人から言われているからだ。ましてや一誠の神器にはオーフィスの既知であるドライグも宿っているわけで。
「詳しくはカナエさんとアーシアさんに聞いて下さいね。なにせ参加するのは彼女らや貴方達なのですから。しかしあの名家であろうに品性の欠片もない若僧も愚かですねぇ。私達は観戦させてくれと言いましたが……貴方達の手助けをしないなど言っていないというのに」
「あらあら……お顔の表情は読み難いですが、そこはかとなく悪そうなお顔をしてそうですわ」
「まあ、私達はよく『悪質宇宙人』などと呼ばれていましてね。あまり気持ちの良い二つ名では無いですが、あの焼き鳥の失敗作のような連中なら呼ばれたところでどうも思いませんから。ハッハッハ」
ジェントといいシックルといい、実力も頭脳もヤバイレベルで備わっている二人がよもやどちらもリアス派(というか正確にはレジェンド派)だとは思うまい。
かくしてレジェンドとオーフィス、スカーサハが留守の間、オカルト研究部はジェントを筆頭にハンターズギルドも全面協力するという強化合宿を行う事になる。
そして、彼らがいくつもの転機を迎える事になるのも、もしかしたらジェントは見透かしていたのかもしれない。
〈続く〉
タイトル通り、もはやライザーの受難ですがアレの被害はこの回に留まりません。直接あの二人やレジェンドらが出張らないだけマシ、くらいでしょう。
次回はいよいよ特訓……の前に何話かレジェンド側のお話を挟もうと思います。
まさかあのキャラがあんな風になるとは……
ヒントは本作登場の『馬場寿司』とその板長。
それではまた次回。
二択決定戦! シン一人乗りする最終ゲッターはどちらだ!?
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真ゲッタードラゴン(大決戦版)
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真・ゲッター1(スパロボα仕様)