『ボーダーライフ』~ボーダー隊員なりきりシミュレーションゲーム~ 作:Amisuru
あととあるキャラ(タグ見れば一発で分かるんですけど)の設定弄り過ぎたりヘイト染みたこと言わせてしまったりここまでやるならオリキャラでやれよ感がすごいことになってしまってそういう意味でも失敗作なので供養。
1話1話が無駄に長いので宜しければお時間のある時にご覧下さい。
はじめまして!
ボーダー隊員なりきりシミュレーションゲーム『ボーダーライフ』の世界へようこそ!
わたしはこの世界のナビゲーションを担当させていただく、広報部隊嵐山隊所属のオペレーター、綾辻遥と申します! どうぞよろしく!
あなたはこれより入隊式に参加し、ボーダー隊員としての日常に身を投じることになります! 部隊を組んでA級1位を目指してみるもよし、ポイントを稼いで個人総合1位を目指してみるもよし、はたまたオペレーターとして隊員たちのサポートに回るもよし! 未来は無限に広がっています! あ、これとある元S級隊員さんの口癖なんですよ。もしかしたらゲームの中でも話せる機会があるかも? 夢のある話ですよね!
我らが隊長こと嵐山さんをはじめとして、A級1位部隊隊長の太刀川慶さん、『プロジェクトT』に選ばれテレビ出演も果たした那須玲さん、元モデルの小佐野瑠衣さんなどなど、あなたの知っている有名隊員とも交流を深めることが出来ちゃうんですよ! もちろん藍ちゃんや時枝くん、あるいはわたしとも――うふふ。すべてはあなた次第、です!
「佐鳥もいますよー」
……え? 今何か聞こえた? 気のせいじゃないですか? 画面の端に顔窓が見える?
あー……バグですね! 申し訳ありません、何分まだまだ開発中ですので色々と不具合が残っているようで……あとできっちり
こほん!
それでは早速入隊式に――と行きたいところなのですが、その前にちょっとした面接のようなものを行わせていただいてもよろしいでしょうか。というのもですね、皆さんご存じ防衛隊員の必須装備『トリガー』。実はこれ、持っていれば誰でも使えるというものではないんですよ。詳しいことは入隊してからの説明になるんですが、使いこなすにはある特殊な『才能』が必要になるんです。実は今こうしてわたしが喋っている間も、特殊な機械を使ってあなたの『才能』を測らせていただいています。防衛隊員として入隊を希望して下さった以上、やはり『トリガー』を持ってバリバリ戦いたい! という御希望をお持ちの方が殆どかと思いますが、こちらの計測結果次第ではオペレーターや技術者などに回されてしまう場合もございますので予めご了承下さい。
堅苦しくなってしまってすみません! 改めまして面接の方はじめていきましょう。よろしくお願いいたします。
ではですね、まずはあなたのお名前から――
>名前を入力してください。
苗字:ゆいが
名前:たける
漢字:唯我 尊
>その名前は使用することが出来ません。
「
「うるせーぞ唯我! いきなりデカい声出すんじゃねえ!!」
「聞いてください出水先輩! ボクが唯我尊としてこの世界で生きていくことを拒否されてしまったんです!!」
「遅れてきた厨二病かよ」
「プレイヤーじゃない方のタケルくんもゲームの中にいるってことじゃないのかね~?」
「ボクそんな話一言も聞いてないんですけど! 肖像権の侵害だ! 誰だこんなゲームを作ったのは!?」
「らいぞーさんが中心になってエンジニアの皆で共同開発したって聞いたけど」
「ウチの
「くっ……パパとママから与えられた誇り高き我が名を捨てろというのか……!」
「お前その歳で両親のことパパとママって呼んでんの」
「それ今ツッコむことじゃないですよねえ!?」
「せっかくウチの作戦室で遊んでるんだからプレイヤーくんの名前も太刀川隊らしくしようよ。こんな感じで」
苗字:たちずみ
名前:ゆう
「ボク成分どこ!?」
「エンブレムに続いてここでもハブられんのか唯我」
「やめてくださいよあの件結構引き摺ってるんですから!!」
「まあまあ、おねーさんに任せたまえ」
漢字:太刀水 唯宇
「どやぁ」
「あっ……なんかボクと国近先輩の子供みたいでいい……」
「ごめんその感想は正直ちょっと引く」
「唯我お前……」
「ああ! 二人のボクを見る目が変態に対するそれと化していく!?」
「つーかてめーの発想だとおれ的には名字の方から目背けたくなんだよ」
「どっちが産んだのかなあ」
「柚宇さん……やめて……おれそういうのホント耐性ないから……マジで勘弁して……」
「せっかくいい感じの名前が付いたと思ったのにどんどん印象悪くなっていきますね」
「元はと言えばてめーのせいだろがこのやろう」
「痛っ! 心が痛い! トリオン体だからって容赦なくガシガシ蹴るのやめてくださいよ!」
「とりあえず細かいことには目瞑って先進めよう? 画面の中の綾辻ちゃんが口開けたまま固まっちゃってるよ」
「今更ながらこんなゲームにまで駆り出されるとか広報部隊ってのもラクじゃねーな……」
――太刀水唯宇さんですね! ありがとうございます!
今お幾つでいらっしゃいますか?
>年齢を入力してください。
年齢:16歳
失礼ながら性別の方もお伺いしても……。
>性別を入力してください。
「いや綾辻先輩!?」
「しおりんに連絡して綾辻ちゃん用の眼鏡を発注してもらわなきゃ……」
「てめーが無駄にロン毛してっから女と見分けつかねーって言われんだよ」
「あー! それボクだけじゃなくて東さんまで間接的にディスってますよ! 聞いちゃったぞ絶対言いつけてやる!」
「んじゃてめーに男らしさが足りないのが悪い」
「話を逸らそうとしてもそうはいきませんよ! 東さんを敵に回すということは即ち二宮さんを初めとして」
「とうっ! スキあり!」
性別:女性
ありがとうございます!
「何やってるんですか国近先ぱぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「てへぺろ」
「この路線で行くなら名前だけでも尊ちゃんのままの方が面白かったかもしんないっすね」
「そうだねー」
「そうだねーじゃないんですよ人の子供に何してくれちゃってるんですか!!」
「わたしたちの子どもでしょ?」
「引くって言ってた割にはノリノリかよ柚宇さん」
「いいですか? ボクはですね! 主人公は基本的にもう一人の自分自身だと思ってプレイするタイプなんですよ!!」
「でもこの間モンハンでマルチプレイしたときタケルくんのハンター女の子だったじゃん」
「おまけに装備が露出度高めのな」
「のはあっ!!」
「主観ものはともかくとしてアクションのときは女の子のお尻眺めたい派か~、わかるわかる」
「そこで理解示しちゃうのも柚宇さん女としてどうなの?」
「A級1位のオペレーターとしてわたしは常に戦闘員の心情に寄り添える存在でありたい……」
「大物かよ」
「ええいリセットだリセット! この隊員はボクの分身に相応しくない!!」
「タケルくん……
「人聞きの悪過ぎること言うのやめてくれませんかねえ!?」
「引くって言ってた割には」
「今のは正直わたしもやり過ぎたと反省している」
「くっ……何故今のやり取りでリセットを押すことに躊躇いを覚えてしまうんだボクは……!」
「お前なんつーか意外とのめり込みやすいタイプだよな」
「リセマラするんだったらトリオン測り終わってからの方がいいんじゃない? 良い数値出てたら勿体ないじゃん」
「時間かければトリオン
――さて、そろそろ『才能』の計測結果が出た頃だと思いますので確認させていただいて……おお、おおおおおおおおお?
うそ……こんなの雨取さん以外に見たこと……ちょ、ちょっと待っていてくださいね!
……………………。
し、失礼しました。えーとですね太刀水さん、あなたの『才能』――いえ、もう一発合格待ったなしですので正式名称をぶっちゃけてしまいましょう。トリガーの動力源となる生体エネルギー『トリオン』。あなたの持つトリオン器官から検出されたトリオンの数値がですね、その、
>あなたのトリオン値は 34(推定) です。
「トリモン一発ツモ」
「九蓮宝燈
「生きるッッッ!!!!!」
「これ綾辻ちゃんトリオン量のパターンごとに台詞全部収録したのかなあ」
「結構演技自然っすよね。ところどころ素が出てるっぽいけど」
「これでなんで歌わせるとアレなんだろう……」
「え、綾辻って歌下手なの? 意外」
「オペレーター合同カラオケで死体の山を築いた話……聞く?」
「……夢が壊れそうなんで遠慮しときます」
「あのですね先輩がた! そんなことよりこの類稀なる才能に恵まれたボクたちの娘についてもうちょっとこう……何か……あるんじゃないですか?」
「さっきは認知しないって言ってたくせに」
「だから人聞きがァ!!」
「『神よ……あなたは連れていく子供を間違えた……』とか言っときながらレース終盤にいきなり現れて息子自慢始めるタイプだわこいつ」
「あの感動のシーンをそんな解釈する人初めて見ましたよボクは!!」
「あれ中盤くらいにレース見て心動かされてるおとーさんの描写一回挟むだけでも大分印象違ったと思うんだよねー」
「急に掌返したようにしか見えなかったっすよね」
「なんて歪んだ感性の持ち主たちなんだ……パパとママの愛情が足りなかったのか……?」
「バァン!!」
「ひいっ!? なななんですか出水先輩シューターの癖にいきなり銃を撃つフリなんかして!!」
「出水くんネタ拾うのはいいけどそのあとキミも死んじゃうやつだよそれ」
「ハーイ、ジョーカー」
「I thought my life was a tragedy, but now I realize it's a comedy...」
「国近先輩が英語を喋っている……!?」
「キミも中々に失礼だねタケルくん」
「勉強は出来ないけど創作の台詞や設定だけはスラスラ言えちゃうオタクあるある」
「むー、米屋くんと仲いいくせしてしれっと成績いい方の裏切り者がなんか言ってる」
「槍バカは別に関係なくないすか」
「槍バカが普通にバカなんだから弾バカも普通にバカなんだろうなって思うじゃん」
「と、思うじゃん?」
「相方の決め台詞をしょーもないタイミングでパクッてドヤ顔する系男子」
「国近先輩には誰が弾バカだって言い返さないんですね」
「うるせーぞ銭バカ」
「銭バカ大いに結構! ボクが金持ちなのは純然たる事実ですので!」
「うおお、タケルくんが出水くんにマウント取ってる貴重な瞬間」
「すげームカついたんでおれの気が済むまで蹴り入れることにします」
「痛っ! 心がっ! ボクの心が悲鳴を上げているっ! そろそろパワハラで労基に訴えますよ!?」
「学生ボーダー隊員って労働者扱いに入るのかなあ……」
「柚宇さんこないだ18になったとき契約書の更新とかなかったんすか?」
「んー、いろいろ紙渡された覚えあるけど全部よくわかんないままサインしちゃった」
「……街で変なスカウトとかに声かけられてもついてったら駄目っすよ柚宇さん」
「わたしがー? そういうのはそれこそ綾辻ちゃんとかおサノちゃんとかが心配することでしょ」
「そういう隙だらけなキャラが男からしたらいいカモなんですって」
「ご安心ください国近先輩! このボクの目が黒いうちは国近先輩に不逞の輩など一切近付けさせはしませんよ!」
「あー、確かにこいつの非モテオーラ浴びれば柚宇さんのモテ感も中和されそうだわ」
「ボクそんなオーラ出した覚え一度もないんですけどォ!!」
「タケルくんはねー……こうやって一緒にゲームしたりする分には楽しい子なんだけどねー……」
「え、なんでボクいつの間にか国近先輩にフラれた感じになってるんです?
「そもそも出水くん、スカウトに引っかからなかったらわたしは今ここにいない筈の女なのだよ」
「あ、柚宇さんてスカウト組だったんすか――え、柚宇さんボーダー測定でトリオン1っすよね? なんで?」
「当時やってたネトゲで五つくらいのギルド掛け持ちしてやりたい放題やってたら並列処理能力が高いんじゃないかってことで声掛けられちゃった。チャットで」
「それでいいのか界境防衛機関……」
――ですがこのトリオン、高いからと言って良いこと尽くめという訳でもないんです。いえ、ある意味では
という訳で、ここから先は一定以上のトリオンが計測された方のみにお訊ねする内容となります。太刀水さん、あなたは――普通の人では持ち得ない、自分だけの特殊な技能や感覚……そういったものに、心当たりはありますか?
他人の嘘が分かる、その日のうちに体験したことを一眠りしただけでほぼ全て身に付けられる、他人が自分に対してどんな感情を抱いているのかが分かる、動物と会話出来る、人一倍耳が良い、あるいは――人の未来が見える、とか。
高いトリオン能力を持つ人間のみに発現する、脳や感覚器官の変容――
それらの総称は、『サイドエフェクト』と呼ばれています。
>あなたにはサイドエフェクトが ある。
「あ、これおれも聞かれたわ」
「わたしは聞かれてなーい」
「ボクは入隊顔パスだったもので……フッ」
「『フッ』じゃねーよつまるところコネ入社じゃねーか威張るなコラ」
「いいじゃないですか少しくらい威張ったってぇ! コネだろうが何だろうが結果としてA級隊員の唯我尊が今ここにいる、その事実こそがボクにとっては何よりも重要なんです!」
「てめーの辞書に名を捨てて実を取るって諺は載ってねーのか」
「捨てる必要を一切感じませんね! 実など後から手に入れてしまえばよろしい!」
「そういうデカい口はウチのお荷物を卒業してから叩け」
「タケルくんのこういう逞しさだけは素直に見習いたいところだよね」
「こいつのは単に恥知らずとか図太いっていうんですよ柚宇さん」
「非道いっ!?」
>あなたのサイドエフェクトは 瞬間記憶能力/ランクB:特殊体質 です。
ふむふむ、写真や映像などを一目見ただけで細部に至るまで記憶出来る、それでいて決して忘れることがない――ですか。いわゆるカメラアイと呼ばれる類の能力ですね。
……失礼ですが太刀水さん、一つテストをさせていただいても宜しいでしょうか。
今から一瞬だけわたしの手元にある書類を一枚お見せしますので、そこに記載されている内容を出来る限り詳細に答えてみて下さい。
いきますよー? せーの……はいっ!
どうですか? 何が書いてあったかわかりました?
……………………。
――お見事。仰るとおり、ボーダーのブリーフィングファイルに記載されているわたしの隊員情報です。トリオン2、機器操作8、情報分析8、並列処理8――
……え、歌と絵が壊滅的に下手なCカップ?
あはは、いやですねー。そんなことまで細かく載ってるわけ……
……!?
ぎゃ――――――――――――――――!!!!!
>暫くお待ちください。
「綾辻ちゃん体張ってるなあ……」
「深夜のバラエティでヨゴレやらされてるアイドル見てるような気分だわ今」
「綾辻先輩……Cカップかあ……」
「こういう変態ヤローに知られちゃいけないこと知られてるしヤバいでしょこのゲーム」
「極々身内だけに配ってる体験版みたいなものだってらいぞーさん言ってたよ」
「数年後とかにプレミア付いてメルカリに流れてそう」
「出品者も落札者も見つけ次第まとめて記憶処理されてそう」
「綾辻先輩……Cカップかあ……」
「まずはこいつの記憶消すのが先決だと思うんすけどどうしましょうか柚宇さん」
「保護した民間の人が連れていかれる部屋ってどこだったっけ」
「あやつじ……しーかっぷ……」
ボーダー本部長、忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する。
君たちは本日C級隊員……つまり訓練生として入隊するが、三門市の――そして人類の未来は、君たちの双肩に掛かっている。
日々研鑽し、正隊員を目指してほしい。君たちと共に戦える日を待っている。
私からは以上だ。この先の説明は嵐山隊に一任する。
嵐山隊の嵐山准だ。これから入隊指導を始めるが、まずはポジションごとに分かれてもらう。
攻撃手と銃手を志望する者はここに残り、狙撃手を志望する者はうちの佐鳥について訓練場に移動してくれ。
>ポジションを選択してください。
・攻撃手
・射手/銃手
・狙撃手
「――はっ! ボクは一体何を……!?」
「おら、寝ぼけてねーでさっさとポジション選べ太刀水」
「タチズミ? 誰ですかその太刀川さんと出水先輩が一つになったようなあ痛ァ! 心がっ! なんで今ボク無言で蹴り入れられたんですか!?」
「てめーの言葉のチョイスが悪い」
「思ったんだけどさ、
「そもそもトラッパーはまだ分かるんすけどスポッターって何するポジションなんすかね」
「今度結束ちゃんに会ったとき聞いてみよう」
「思い……出した! ボクと国近先輩の愛の結晶!」
「そこまでにしておけよタケルくん」
「声低っ」
ポジション:射手/銃手
>初期トリガーを選択してください。
・アステロイド
・メテオラ
・バイパー
・ハウンド
初期トリガー:アステロイド(拳銃型)
「フフン――ボクの娘である以上、やはりここは華麗なる二丁拳銃ガンナー以外にはあり得ない」
「C級だからまだトリガー一個しか持てねーんだよアホ」
「そういえばタケルくんてなんでそんな戦闘スタイルで行くことにしたのかね?」
「愚問ですね――カッコいいからです」
「あー、オトコのコだ」
「弓場さんならともかくこいつじゃ全然サマになってないっすけどね」
「やめてくれませんかボクの前であの恐ろしい人の名前を出すのは!!」
「住む世界が違うとしか思えない二人にまさかの共通点が」
「弓場さんがウチのランク戦の
「うわあお」
「いきなり作戦室に上がり込んできた若頭風のオールバック眼鏡マンに『唯我ァ!!』って怒鳴りつけられたときのボクの気持ちがわかりますか!? 人生において本気で死を覚悟したのはあのときが初めてですよ!!」
「わたしなんでそのとき作戦室いなかったんだろー……見てみたかったなあ」
「まったく、他人事だと思って……」
「何だったら今再現してみせましょうか」
「は? 再現? 出水先輩一体何を――」
「唯我ァ!!」
「はぁははははははははいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「パブロフの犬だこれ」
「おめェー……なんで
「い……いやあの、
「あァ?」(ピキッ)
「ひいっ!?」
「そんな消極的な理由で自分と同じスタイルにしたなんて言われたらそりゃ怒るよタケルくん」
「唯我ァ……下手な誤魔化しはいらねェんだよ」
「ご、ごまかし……?」
「ただ銃手やりてェってだけなら
「あ、流れ変わった」
「ぼ……ボクがガンマンになった理由……そ、それは……」
「言え! 言うのだタケルくん!」
「か――カッコいいからです!!」
「言ったァ――――――――!!」
「……………………」(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
「おや? ゆばずみくんのようすが……」
「BBBBBBBBBBBBB!!」
「唯我ァ……おめェー……」
「は……ハイ……」
「――
「ゆ……弓場さん……!」
「まさかの同類だった」
「で、『"
「普通に気に入られてる件」
「案外弓場さんも自分と同じスタイルの奴見つけてテンション上がっちゃったのかもしんないっすよね」
「なにそれかわいい」
「こっちはずっと生きた心地がしなかったんですけど!!」
「で、結局タケルくんは弓場さんのとこ行ったのかね」
「いやぁ……ほらボクA級1位じゃないですかぁ……B級上位ギリギリの人から教えを乞うのって外聞が悪いっていうかぁ……」
「やっぱりタケルくんの辞書買い換えよう?」
「二宮さんの爪の垢煎じて飲ませてぇわこいつ」
――改めて、攻撃手組と銃手組を担当する嵐山隊の嵐山准だ。まずは、入隊おめでとう。
忍田本部長もさっき言っていたが、君たちは訓練生だ。B級に昇格して正隊員にならなければ、防衛任務には就けない。
じゃあどうすれば正隊員になれるのか、最初にそれを説明する。各自、自分の左手の甲を見てくれ。
君たちが今起動させているトリガーホルダーには、各自が選んだ戦闘用トリガーがひとつだけ入っている。
左手の数字は……君たちがそのトリガーを、どれだけ使いこなしているかを表す数字だ。
その数字を『4000』まで上げること、それがB級昇格の条件だ。
ほとんどの人間は1000ポイントからのスタートだが、仮入隊の間に高い素質を認められた者は、ポイントが上書きされてスタートする。
当然その分、即戦力としての期待がかかっている。そのつもりで励んでくれ。
ポイントを上げる方法は二つある。週2回の合同訓練でいい結果を残すか、ランク戦でポイントを奪い合うか。
まずは訓練のほうから体験してもらう。ついて来てくれ。
>あなたの初期ポイントは 3900 です。
「「「高っ」」」
「トリオン34×100+サイドエフェクトで500点って感じかなあ」
「……ま、雨取ちゃんみたいに狙撃手選んだならともかく、射手銃手がこのトリオンでC級いてもやることねーよな」
「やれやれ……ボクの知らないC級隊員の世界とやらを味わってみたかったのですが、唯宇にとってもこのステージは少し狭過ぎたようだ」
「ぞわっとしたから唯宇ちゃんのこと名前で呼ばないであげて」
「あなたが付けた名前でしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「そういや1500ポイント下回ったトリガー一つでも持ってたらC級に降格出来るらしいっすね」
「降格『出来る』って変な言い回しするね出水くん」
「いや、そこのバカがC級の世界を知りたいとか言い出したから教えてやろうと思って」
「……いやいや、
「蜀が滅んだ後の阿斗ちゃんみたいなこと言い出したこの子」
「
――さあ、到着だ。まず最初の訓練は……対
仮想訓練モードの部屋の中で、ボーダーの集積データから再現された近界民と戦ってもらう。
仮入隊の間に体験した者もいると思うが、仮想戦闘モードではトリオン切れはない。ケガもしないから思いっきり戦ってくれ。
今回戦ってもらうのは、「
訓練用に少し小型化してある。攻撃力はないがその分、装甲が分厚いぞ。
制限時間は一人5分。早く倒すほど評価点は高くなる。自信のある者は高得点を狙ってほしい。
説明は以上! 各部屋始めてくれ!
>対近界民戦闘訓練を開始します。
「ようやく戦闘パートですか――待ちくたびれましたよ」
「わたしたち喋ってばっかで全然ゲーム進めてなかったからねえ」
「つってもまあ、トリオン的に考えて……」
「いきますよ! 目標をセンターに入れて――アステロイドォ!!」
>1.2秒 で大型近界民を撃破しました。満点基準を達成、20ポイントを獲得します。
>アステロイド:3900→3920
――すごい記録が出たな!
歴代2位の記録だ!
「ま、そーなるわな」
「一発撃っただけでバムスターの上半分吹き飛んだもんねえ」
「デザートイーグルも真っ青な威力してたっすね」
「霊丸みある」
「2位ですって!? やり直しましょう! もう一度です!」
「そういやこの記録でも2位扱いなんすね。1位誰なんだろ? やっぱり太刀川さん?」
「んにゃ、空閑くんの0.4秒」
「……マジ? 一生更新されねーだろ……」
「タケルくんが弓場さんに早撃ち教わってれば唯宇ちゃんが追い抜いてたかもねえ」
「いやこれゲームですから! 現実の技術は反映されませんから!」
「むしろ柚宇さんが操作した方が良いタイム出たんじゃないすか」
「わたし? そうだねー……タケルくんは十字キーで慎重に照準合わせてたけど、わたしだったら右スティックちょんと〇ボタン同時押しだったかも。この威力なら少しくらいズレても一撃だったと思うし」
「ガチ勢からのありがたいご意見いただきました」
「ゲームはね――遊びじゃないんだよ」
「国近先輩の辞書も大概おかしなことになってません?」
>地形踏破訓練で3ポイントを獲得しました。
>隠密行動訓練で2ポイントを獲得しました。
>探知追跡訓練で5ポイントを獲得しました。
>対近界民戦闘訓練(二回目)で20ポイントを獲得しました。
>アステロイド:3920→3950
「ヘタクソ」
「おお……もう……」
「げ……ゲームですから……現実の技術は反映されませんから……」
「なんかどれも実際のタケルくんが獲りそうな点数なのがリアル感ある」
「隠密訓練で高所取って即位置バレしたのとかモロそんな感じっすよね」
「こ、こちらから先に隠れている他の全員を見つけてしまえば実質ボクが1位じゃないですか! そういうことですよ!」
「不可能ってことに目瞑れば完璧な作戦だな」
「こういう『全部満点取ってれば今頃は目標達成出来てた』みたいな状況ってゲーマー的にはすっごい歯痒いです」
「ガチ勢様がお怒りだぞ唯我。そろそろ代わるか?」
「こ、これから挽回しますとも! 唯宇はボクが責任をもって育てるんです!」
「おとーさんはいつもそうやってわたしの気持ちなんか無視するんだ……」
「妻としての台詞か娘としての台詞かさっきの名前で呼ぶな発言に掛かってるのかこれもうわかんねーな」
「正解はわたしがボーダー入るのに最後まで反対だった父親と喧嘩別れしたときの台詞でした」
「重ォい!!」
「……柚宇さん? 冗談言うときはいつもみたいに笑って言ってくんないとリアクションが」
「冗談だったらよかったのにね」
「えっ……」
「…………」
「…………」
「…………」
――ここがC級ランク戦のロビー。
ランク戦のやり方を教えるよ。空いてるブースに入ろう。
C級ランク戦は基本的に、仮想戦場での個人戦だ。やり方は簡単。
249 710 弧月
315 1240 バイパー
311 2760 弧月
246 1985 弧月
115 2010 アステロイド
151 1420 メテオラ
338 590 スコーピオン
105 1826 スコーピオン
203 940 弧月
333 2810 スコーピオン
194 2300 アステロイド
128 3020 バイパー
202 3792 ハウンド
このパネルに武器とポイントが出てるだろう? これが今ランク戦に参加してる隊員。
好きな相手を選んで押せば対戦できる。逆に向こうから指名される場合もある。
対戦をやめたいときはブースを出ればOKだよ。
なるべく早くポイントを稼ぎたいとき? ポイントが高い相手に勝つほど点が沢山貰えるよ。
逆に自分よりポイントが低い相手だと勝ってもあまり貰えなくて、負けたときは沢山取られる。
そういえば、自己紹介がまだだったね。
時枝だよ。よろしく、太刀水さん。
「おお~
「今更思い出したようにゆるふわアピールされても反応に困るんすわ」
「ゆるふわ……そうだ、今日の国近先輩にはゆるふわ感が足りないんですよ! ボクの知っている国近先輩と違う!!」
「キミたちわたしのこと常に語尾伸ばして喋らないと死ぬ生き物か何かだと思ってない?」
「イメージっすね。柚宇さんの。おれたちが抱いている」
「UFOの中で改造手術された倒置法おにーさんと同じ扱いは甚だ心外です」
「穂刈さんの言ってる宇宙人に拉致られたーってアレ、普通に近界民の仕業だと思ってるんすけどどう思います?」
「近界民なんてのが実際にいるんだから宇宙人がいても不思議じゃないかもだよ」
「そういうもんすかね――ま、宇宙人も幽霊も妖怪もまとめて近界民じゃロマンがねーか」
「でも
「UMAいこと言ったつもりっすか……あーくそ、佐鳥のニヤケ面思い出して手首が疼いてきた」
「出水先輩も遅れてきた厨二病ですkおぶっ!!」
「おーし唯我、今だけてめーを佐鳥だと思うことにする。ボクのツインスナイプ見ました? って言ってみろ」
「何ですかそのカッコいい決め台詞は! ボクの二丁拳銃が火を噴いたときに是非とも利用させておほあっ! 心がっ! 出水先輩シューターなのかキックボクサーなのかどっちなんですか!?」
「初代タイガーマスクの中の人が興した格闘技に『修斗』ってのがあってな、それやってる人のこともシューターって呼ぶんだってよ。勉強になったな」
「その知識ボクの人生の一体どこで役に立つんです!?」
「紅丸コレダー!!」
「!?」
「……柚宇さん、人の首絞めるのはゲームで負けたときだけにしてくんない」
「出水くんまさかKOFを御存知でない……!?」
「いや分かるんすけど急に横から技名叫んで首掴まれたらビックリするから普通は」
「ちなみにわたしはいつも97の最終決戦でオロチに襲い掛かったときのいおりんになったつもりでキミたちの首を絞めているよフフフ……」
「たまに首絞めるとき『キョオオオオオオオオオ!!』って叫んでたのは」
「血の暴走」
「国近先輩も厨二病患者だったというのか……」
「太刀川さんにエンブレムの由来教えてもらって以来『月を見る度に思い出せ』って台詞を人生のどこで使うべきか真剣に悩んでいる国近柚宇18歳です」
「戦闘員だったら相手の
「話の流れと全然関係ないんだけど出水くん、『わくわく動物野郎』を英語で言い直すと」
「MR. DISCOVERY CHANNEL」
「なんて厨二力の高い会話なんだ……まともなのはボクだけか……?」
「ボートを用意しろ」
「一人乗りでいい」
249 710 弧月
315 1240 バイパー
311 2760 弧月
246 1985 弧月
115 2010 アステロイド
151 1420 メテオラ
338 590 スコーピオン
105 1826 スコーピオン
203 940 弧月
333 2810 スコーピオン
194 2300 アステロイド
128 3020 バイパー
つ202 3792 ハウンド
>202号室を対戦相手に指名しました。対戦相手の応答を待っています。
「…………」
「…………」
「…………」
「……柚宇さんに倣って流れと全然関係ない話振るんすけど」
「うん?」
「マジで喧嘩別れだったんすか。親父さんと」
「そこ掘り返しちゃうかー」
「自分からいきなり訳分かんないタイミングで空気凍らせといて突っつくなってのはナシでしょ」
「マインスイーパでもそこに地雷埋まってるの知っててうっかりクリックしちゃうことあるよね」
「無理にゲームで例えようとしなくていいから」
「無理にじゃないよ。わたしからゲーム取ったら何も残んないもん。それ以外のコミュニケーションの仕方知らないんだよ」
「散々漫才やっといて今更コミュ障気取りは無理があるわ柚宇さん」
「中身のない会話なんていくらでも続けられるっていう良い例だよね」
「……なんでそんな自己評価低いんすか? 逆の意味で自分の評価と他人の評価が釣り合ってないそこのバカ少しは見習ってくださいよ」
「は!? あああああの出水先輩、ボク今すごい唐突に重くなったこの部屋の空気にまるで付いていけてないんですがその」
「――そうだね。タケルくんはすごいなって、たまにわたし思うことあるよ」
「へっ」
「ボーダーにスカウトされたときね? おかーさんは凄いじゃないって素直に褒めてくれたんだけど、おとーさんはそうじゃなかったんだよね。『碌に勉強もしないで家に帰っても部屋に籠ってゲームばかり、そんな子供を勧誘する防衛組織なんてどうかしている』って。いやー、ぐうの音も出ないとはこのことだよ」
「それでも柚宇さんは反対押し切ってはるばる北海道から三門市くんだりまでやって来たわけだ。すげーじゃん」
「押し切ってないよ。ほとんど逃げてきたの。家を出るときもおとーさんだけ見送りなかったし、たまに実家に帰ったときも一切会話無し。実質縁切り状態だよね」
「……あの、国近先輩がボーダーに入隊したのって……」
「こっちの高校入るのとほとんど同じタイミングだから――三年くらい前だね。いやー、あの頃はわたしも今のタケルくんより年下だったんだなあ」
「まだまだ昔を懐かしむような歳でもないでしょ」
「そうかなあ? さっき言ったじゃん、18になった途端あれこれ紙渡されたって。詳しいことはよくわかんないけど、要するにわたしってもう子ども扱いされなくなっちゃったんでしょ、ほーりつじょー」
「年少者と未成年者は別物っつーか……あーくそ、そういう話がしたいんじゃねーんだよおれは」
「2022年4月1日以降は未成年者の基準が18歳未満に引き下げられるらしいですね」
「唯我」
「ああっ! 心が――おかしい、いつまで経っても心が痛まないぞ」
「蹴らねーよバカ」
「あはは……そーなんだ? そしたらいよいよハタチじゃないからまだ子どもだもんとか言えなくなっちゃうね」
「あああああ国近先輩!! ボクが愚かでした! 出水先輩の代わりにどうかボクをお蹴りになって下さい!!」
「今の台詞録音して基地内放送で垂れ流してーわ」
「ボクは本気ですよ!?」
「本気で言う台詞じゃねーからツッコミ入れてんだアホ」
「蹴らないしタケルくんはバカじゃないよ。ううん、たまにこの子ほんとダメだなあって思うことあるけど、それでもわたしよりずっと頭いいし」
「褒められてるのか貶されてるのかまったく分からなァい!!」
「じゃあ普通に褒めてあげる。――タケルくん、
「え……いやあの、急にそんな持ち上げられましても心の準備がですね……」
「カメレオンで見えないはずの頭を当真くんに撃ち抜かれたり」
「ぐはっ!!」
「カメレオンの全てを知り尽くしてる風間さんたちに分からされたり」
「おはあっ!!」
「『No.1ガンナーの称号はボクが貰いましょう!』とか言って
「あばっ! あばばばばっ!!」
「はっきり言って全然いいとこないまま何度かのシーズンを越えてきた訳だけれども」
「柚宇さんホントに褒める気あって喋ってるんすよね?」
「それでもめげずに頑張ってきたタケルくんのことをね、わたしは素直にすごいと思って――おや、さっきから胸を抑えてどうしたのかねタケルくん」
「いっ……出水先輩の蹴りの三十倍は心が痛いっ……」
「太刀川さんといい柚宇さんといい上げて落とすのがうめーなこの人らは……」
「――まじめな話ね、わたしなんかは好きなことやって生きてたらたまたま拾ってもらえただけの女なわけでして」
「普段しないような話してるせいかどんどん口調が愉快なことになってますよ柚宇さん」
「うるさいよ。……だからね、思ってたのと違うとか、自分のやりたいようにやれないとか、タケルくんのA級暮らしってそういうことがいっぱいあったはずなのに、それでも続けられるっていうのはホントにすごいなあって思うわけなのです」
「なんと……国近先輩がボクのことをそんな風に見ていてくれていたとは……」
「まあそれはそれとしてズルしてA級入りしたのはやっぱりダメだよねとも思ってるけど」
「ゴハァ!!」
「血ィ吐いたような声出しやがったこいつ」
「右京さんに謝らなきゃ……」
「そっ……その件につきましてはどうか一つ寛大な御配慮を頂ければと……」
「将来会社継いだときに役立ちそうな台詞回しが板に付いてんな」
「ウチの会社がこんな下手に出ないといけない取引先なんて早々ないですからね!?」
「わたし女社長?」
「オペ服でPCに向かってるときだけはやり手のキャリアウーマンぽく見えないこともないっすね」
「今は」
「気が抜けた休日のJKそのもの」
「だよねー。……ホント、変な感じだなあ。わたしの中ではね、ゲームやるのもオペレーターやるのも大して変わりがないんだよ? なのに片方はただの遊びでしかなくて、もう片方は街の平和を守る大事なお仕事って、おとーさんの言う通りじゃないけど、どうかしてるよね」
「別にいいんじゃないすか、仮想の平和守るのと同じ要領で現実の平和守っても」
「あはは――それ、スカウトさんの口説き文句とおんなじ」
「マジかー」
「ついでに言うと、わたしとおとーさんの仲が拗れる決定打になった言葉でもあります」
「……マジかー」
「『仕事と遊びを履き違えるような娘に育てた覚えはない』……だったかなあ。正直言うほど育てられた覚えもないけどね。まともな教育受けてたら来る日も来る日もゲーム漬けの生活する子どもになんか育たないでしょ? 普通は」
「く……国近先輩……?」
「でもね、そんなわたしでも誰かの役に立てる仕事があるって言われたんだよ。それまで将来のこととか何も考えてなかったけど、わたしはきっとこのお仕事をするために生まれてきたんだなあって思えるような、夢みたいにキラキラしたものがわたしにとってのボーダーだったの。そんなものに手を伸ばそうとしたところで、汚い手で触るなみたいなこと言われたらさ。わたしも思うよね」
「柚宇さん」
「『おとーさんはいつもそうやってわたしの気持ちなんか――』――むぐっ」
「ウチのお坊ちゃまがドン引きしてらっしゃるのでそのくらいに」
「い……いえその、引いている訳ではないんですよ? ただ先程も申し上げたとおりですね、ボクの知っている国近先輩と違う感がその……」
「人が普段隠してる部分に踏み込んだらそりゃそーなるってだけの話だろ。いちいちビビんな」
「……だから言ったじゃん。地雷が埋まってるって」
「悪かったよ。今度は唯我抜きでやるから勘弁して」
「『今度はイタリア抜きでやろうぜ』みたいな勢いでボクを省こうとするのはやめていただきたいのですが!!」
「おれドイツ」
「わたしドイツ」
「「は?」」
「いや柚宇さん日本人でしょ。大和魂どこに置いてきたんすか」
「髪を金色に染めても身体に流れる血の色までは変えられないんだよ出水くん」
「そりゃナメック星人でもあるまいし血の色は普通に
「はい出水くんが東ドイツ担当」
「そう来たかー」
「第二次大戦が終わったと思ったら東西冷戦が始まってしまった……ボクは歴史の追体験をしているのか……?」
「長ぇよ!!」
「ネオジオCDか何か?」
「ボクそれ知らない……」
「えっとね、そこの黒いやつ――あー違う違う、そっちは普通のネオジオ」
「なんで両方買っちゃったの柚宇さん」
「いやほら、悪名高い猿のお手玉を実体験せずにゲーマー名乗ったら先人たちに失礼じゃないか的な使命感がね」
「今更ですが本当に何でも置いてありますね……国近先輩にとってオペレータールームとは……」
「わたしの全て」
「大きく出たなー」
「そう? ちっちゃいでしょ。小部屋一つに納まる程度のちっぽけなものだよ」
「まーだ闇引き摺ってんの。続きはお子ちゃまが寝た後でやるっつったでしょ」
「誰がお子ちゃまですか誰が!!」
「てめーのこととは一言も言ってねーよ」
「そんな使い古された挑発に乗るボクではありませんよ! というかですね、この棚一つ丸ごと埋め尽くす大量のゲーム機を見て思ったのですが――国近先輩!」
「わたしに来た」
「タゲ取り失敗したわ」
「先輩は言いましたね? 父親は自分の意思を尊重してくれなかったと! ですが改めて見て下さい、この溢れんばかりのゲーム機の群れを! これはいずれも御父上が先輩のためにと買い与えて下さったか、そうでなくとも御父上の稼いだ給料から生まれたお小遣いによって手にしたものではないのですか! ボクは確かに家のコネでボーダーに入り家のコネでA級隊員になりましたが、それだけにパ、もとい父への感謝の念を忘れたことだけは生まれてこの方一度もありません! 思い出して下さい国近先輩、あなたの大切なゲーム機を与えてくれたのは一体誰だったのか! そこには紛れもない、御父上の愛情があったはずなんです!!」
「三行に纏めて喋れ」
「親の財力に!
感謝を!!
しなさい!!!」
「過去最高にてめーをお坊ちゃまだと感じたわ」
「黙らっしゃい! どうなのですか国近先輩、この突き付けられた事実を目の当たりにして、それでもなお先輩は御父上から蔑ろにされていたと仰いますか!」
「……柚宇さん、とりあえず一言」
「全部ボーダーのお給料で買ったやつです……」
「生まれてきて申し訳ありませんでしたァァァァァァァァァァ!!!!!」
「こんな完璧に決まった土下座見たことねーわ」
「佐鳥くんとどっちが上手だろ」
「なんで佐鳥?」
「なんか後輩の子から土下座返し先輩って呼ばれてるんだって。当真くんが言ってた」
「『返し』って一体誰に返したんすかね」
「そこまでは聞いてないなあ」
「くっ……この態勢のまま断罪を受けることすらなく放置されるという恥辱……! いや違うぞ唯我尊、この放置という扱いこそ国近先輩がボクに下した何よりの罰なんだ……! 国近先輩に鳴けと言われればワンと吠えるし足を舐めろと言われたら喜んでボクは舐めるべきなんだ……!」
「本当に蹴るよ?」
「是非!!」
「出水くんが」
「重ね重ね心から深くお詫び申し上げます」
「わかればよろしい」
>対戦を拒否されました。202号室から音声メッセージが届いています。
――3000の壁を越えて今まさに"高み"へと至らんとする者よ。
心行くままに駆けあがっていくがいい。おまえの前に立っているのはもはや壁ではなく、ノブを捻るだけで
だが心しておけ。おまえが頂だと思っているその場所は、大いなる波のうねりの一部にすぎないということを。
B級という奔流の中を、果たしておまえは泳ぎ切ることが出来るのか……今はおまえの一歩後ろから、見物させてもらうことにするとしよう。
甲田照輝。いずれおまえに牙を突き立てる"狼"の名だ――覚えておくがいい。
『決まったなリーダー! 一世一代の大演説だ!』
フッ……そう持ち上げるな早乙女。"高み"に手をかけているのはオレたちも同じ、獣同士で食らい合うほど愚かなことはない――だろ?
それに古人もこう言っていた。『君子危うきに近寄らず』……3000を侮ったばかりにオレたちは不覚を取った、これからは2000台以下に照準を絞ってこつこつと……
『やべえぞリーダー! まだ音声入力が切れてねえ!』
は!? ななな何やってるんだ丙、指摘している暇があったらさっさと入力を切れ! いいかそこのおまえ、オレは逃げたんじゃないぞ! 今はまだオレたちが戦うべき"
>メッセージを終了しました。
「……なーんて言ったけど、うん。タケルくんの言ってることは正しいよ」
「またそうやって持ち上げてから叩き落とすおつもりでしょう! もう騙されませんよボクは!」
「別に持ち上げるつもりはないんだけどね。ゲームは一つも買ってくれなかったけど、おとーさんがわたしにくれたものは確かにあったなあってだけの話」
「パソコンすか」
「そう。ねだったわけじゃなくて、プログラムの勉強用にって押し付けられたようなやつだけどね。まさかネトゲ専用機にされるとは思ってなかっただろうなー」
「言ってもホントに全然やらなかった訳じゃないんでしょ、ベンキョー」
「……まあね。結局途中で放り投げちゃったけど、さわりの部分だけでも身に付けといたのがボーダー入ってから役に立つんだから、なんていうか、皮肉だよねえ」
「国近先輩がプログラムの勉強……おかしい、A級1位のオペレーターである以上言われてみればそのくらいはやっていて然るべきだというのに、何故こうもしっくりこないんだ……」
「そりゃあ今はアホの子ですから」
「自分で言っちゃうかー」
「正直小さい頃にあれこれ詰め込み過ぎた反動で今こんな生活送ってるようなところはあるよね」
「そんな下地があるなら今さんに迷惑かけない程度には学校の成績にも力入れて下さいよ」
「だって結花ちーすっごい丁寧に教えてくれるんだもん……疲れてそろそろ休みたいなーって思ったタイミングですっとお茶とか出してくれるし、絶対あの子はいいお嫁さんになるね。このわたしの目にくるいはない」
「コンタクト付けてる人に視力アピールされてもなあ」
「出水くんがコンタクトの悪口言ったって結花ちーにばらしてやる」
「クラスだけじゃなくてそこまで同じなのは知らなかったわ……」
「……あの、きっかけはどうあれ今の国近先輩はA級1位部隊の隊員な訳じゃないですか? 入隊に反対していらっしゃったという御父上もですよ、国近先輩の現在を知った暁にはそれこそ『わたしの娘の名前は『国近柚宇』! 遥かなる北海道の地から東北地方を渡り切って、たったひとりぼっちで今! この! 三門市へやって来ました……うう……』となってもおかしくないのでは――」
「……ボーダーってさ。上手くやってるよね」
「は?」
「『異世界からの侵略者』なんてそれこそ、ゲームの設定みたいな話みたいでしょ? でも現実に近界民はいて、わたしたちは確かにそれと戦ってるし、ついこないだにも大規模侵攻が起こったばっかり――なのになんだか、『世界の危機』って感じはしないよね。それはなぜでしょう」
「ボーダーが誘導装置使って
「あたり。こっそり人さらっていく程度のちっちゃい門だったら世界中で開いてるって噂もあるけど、基本的に近界民っていうのは三門市民だけの脅威みたいな扱いで、ウチで一番有名な嵐山さんなんかも、ちょっと悪い言い方になっちゃうけど、ご当地アイドルくらいの知名度しかないのが現実です」
「で……ですがそれは、悪いことではないですよね? 仮にボーダーが存在しなかったら、近界民は三門市のみならず、日本全土を荒らし回っていた可能性だって――」
「実際に
「……"ボーダーA級1位部隊の隊員"とか言われても、その価値自体がイマイチ伝わらない訳だ。三門市の外の人らには」
「ウチなんか北海道だから尚更ね。大規模侵攻くらいの騒ぎでも、たいがんのかじ? っていうのかな。そんな感じ」
「なんと皮肉な……大業を成しているが故に人々にその価値を理解されないとは……」
「タケルくんはやっぱりボーダーがもっと有名であってほしい?」
「それは……まあ、スポンサーの息子としても、出資先の知名度が高いに越したことは……」
「そのためにたくさんの人が犠牲になっても?」
「……まさか。流石にそれはないです」
「実を取ったな」
「弓場さんに弟子入りする気になった?」
「ぐっ……! よもやそこに話が繋がるとはこの唯我尊の目を持ってしても……!」
「視力自慢してーならその鬱陶しいロン毛ばっさりと切れ」
「タケルくんもコンタクトにする? 二人で力を合わせてしおりんと戦争しよっか?」
「この先輩たち空気の切り替えが早過ぎて付いていけないんですけどォォォォォォォォォ!!」
249 710 弧月
315 1240 バイパー
311 2760 弧月
246 1985 弧月
115 2010 アステロイド
151 1420 メテオラ
338 590 スコーピオン
105 1826 スコーピオン
203 940 弧月
333 2810 スコーピオン
194 2300 アステロイド
つ128 3020 バイパー
202 3792 ハウンド
>128号室を対戦相手に指名しました。対戦相手の応答を待っています。
「……まあ、確かに納得のいく理由でした。三門市民以外にボーダーの価値が正しく理解されていないというのは誠に遺憾ではありますが、例のC級隊員奪還プロジェクトが発表されて以来、世間でもにわかに
「そういやお前メガネくんのこと知らなかったらしいけど大規模侵攻の後の会見見なかったのな」
「なんでこのタイミングでそういう余計なことに気が付くんですかあなたはァァァァァ!!」
「ァァァァォォォォやかましいんだよ違う漫画のメガネくんですかこのヤロー」
「出水くんが影浦くんみたいな声になってるアル」
「そういう柚宇さんも小南みたいな声になってんだわ」
「あのですね! ボク今いいこと言おうとしてるんですからね! ウチは間違いなく遠征部隊にも選ばれますし、御家族の方々に近界行きを隠す必要もない訳ですから、堂々と土産話を持って帰って自慢の一つでもしてみせればいいんですよ! 間違いなく御父上の評価も変わりますとも!」
「てめーはどうせまた留守番だけどな」
「それはそれとして!」
「それとするな」
「じゃあ次は納得いかない理由の話しよっか」
「……はい?」
「柚宇さーん。ゆるふわ、ゆるふわー」
「じゃあ次は~、納得いかない理由の話しよっか~?」
「怖ーよ」
「今日一日でボクの国近先輩のイメージは粉々なんですが……というか、この上まだ何か御父上が国近先輩をお認めにならない理由があるとでも?」
「『仕事と遊びを履き違えるような娘に育てた覚えはない』」
「それは……御父上が入隊に反対されたときのお言葉でしたか、ですが今どうして――」
「要するにおとーさんは、
「――は?」
「おかーさんが言うにはね。おとーさんはわたしのこと、すぐに音を上げて三門市から帰ってくるものだと思ってたんだって。引き篭もり同然の生活してたような子どもに防衛組織の隊員なんかが務まる筈がないって。わたしがおかーさんに『今日はウチの隊がランク戦で勝ったんだよ~』とか『ウチの隊がA級に昇格したよ~』とか報告するたびに、おかーさんはおとーさんにも同じことを伝えてくれたらしいんだけど――ボーダーの話をするたびに機嫌が悪くなっていくから、そのうちしなくなったって」
「い――いやしかしですね、国近先輩がそうして今の地位を築くまでにも、並々ならぬ努力といいますか、陰ながらの苦労といったそういうものが……」
「……『ゲームやるのもオペレーターやるのも大して変わりがない』ね」
「へ?」
「あー、うん。つまりはそういうことだよ」
「……なさらなかったんですか? 苦労」
「んー……なんていうのかな。もちろん一から十までゲームと同じって訳じゃないから、ホントに最初からなんでもできた訳じゃなかったよ? でも、分からない仕事を覚えるのがつらくなかったっていうか、まさにボーダーっていうゲームを攻略するような感覚でやってたら、"すごーい! たーのしー!"って気持ちのまま、いつの間にか
「……それは……また、何と言ったらいいのか……」
「今のタケルくんが感じたもやもやを濃くしてドロドロのぐちゃぐちゃにしたものがおとーさんの気持ちなんだろうね、きっと」
「い、いえいえいえいえ! そもそもA級1位までの道のりについてボクがどうこう言えた義理はありませんし、仮に国近先輩が労せず今の地位に上り詰めたのだとしてもですよ、子供の成功を素直に賞賛出来ない親などいるものですか! そんなものは――」
「タケルくんはきっといいおとーさんになれるね。安心して
「今はゲームの話なんてどうだっていいんですよ! ボクは
「――おやまあ」
「し――ししし失礼しました国近先輩! 勢い余ってまたしても先輩を不快にさせるような呼び方を……!」
「……いいよ? 名前で呼んでも」
「え……いやでも、さっきぞわっとするって……」
「流石に呼び捨てはダメ」
「あ――ああ、そういう意味だったんですか……えーと、その、柚宇さ」
「"先輩"って呼べ」
「!? いいい出水先輩いたんですか!?」
「まさか唯我に空気扱いされる日が来るとは思ってなかったわ……キレそう……」
「それでも蹴りを入れないあたりに出水くんから精一杯のプライドを感じます」
「……柚宇さん、追い打ちかけるの楽しい?」
「たぶん一生に一度しか見られない貴重な瞬間を全力で弄りたいよね」
「このクソアマ……!!」
「声だけじゃなくて中身まで影浦くんみたいになっちゃったアル」
「ボクたちこの現場抑えられたら三人纏めてスコーピオンで首飛ばされるのでは……」
>128号室との対戦に勝利しました。アステロイド:3950→3971
>サイドエフェクト『瞬間記憶能力』が発動! 『
>333号室との対戦に勝利しました。アステロイド:3971→3989
>サイドエフェクト『瞬間記憶能力』が発動! 『スコーピオン』耐性が向上しました。
>スコーピオン専用スキル『
>311号室との対戦に勝利しました。アステロイド:3989→4001
>サイドエフェクト『瞬間記憶能力』が発動! 『弧月』耐性が向上しました。
>
>正隊員用トリガーを入手しました。メイン・サブ各4種、計8種のトリガーをセット可能です。
「…………」
「…………」
「……クソゲー」
「国近先輩!?」
「おやおや~? 柚宇先輩って呼んでくれないのかね~タケルく~ん~?」
「初めて柚宇さんに蹴り入れてーなって思ったわ」
「出水くんの鬼畜! DV男! 吉田ヒロフミ!!」
「誰が最初に言い出したのか知らねーけどマジで風評被害極まってんな」
「でも実際にクァンシの顔蹴ったじゃん」
「だからって『流石普段から女の顔殴り慣れてるだけのことあるわ』って感想はないでしょ」
「やめてくれませんか……ボクの前でチェンソーマンの話は……」
「こいつトーリカの師匠推しだったらしいんすよ」
「あー……」
「いいんですよあんな球体関節おばさんの話は!! というかく……ゅ、柚宇先輩……」
「おれが迅さんのサイドエフェクト持ってたら絶対この未来だけは避けたのにな」
「そんなに」
「そ――そのですね! ボクたちの娘が晴れてB級隊員に昇格を果たしたというのに、さっきの呟きはどういうことですか! 寺島
「……じゃあ聞くけどタケルくん、三回ランク戦やってみてどう思った? 全部アステロイド一発で終わったけど」
「ま……まあ確かに、戦闘らしい戦闘が出来たのはスコーピオン使いのときだけで、それもサイドエフェクトで技を奪うためにあえて引き伸ばしたようなところがありましたが……」
「シールドないっつっても訓練用トリガーじゃ頭か心臓ぶち抜かれない限りまず死なねーしな」
「最強の剣で無双したから次はプラス盾いってみようか。ちょっと貸してね」
「あれプラスとかいらないしガチで一番強いのはバーサル最強の剣らしいっすね」
「えっ……そうなの……?」
「まーた小南みたいな声になってる」
「というか柚宇先輩よりゲームに詳しいこの出水先輩は一体何なんですかね……」
「とりあえずこれで」
「柚宇さんハウンド厨かよ……萎えるわ……」
「今度二宮さんに会ったとき覚悟しておきなよ出水くん」
「二丁拳銃じゃない……」
「一丁だけでも残してあげたことを慈悲だと思いたまえ」
「というかスコーピオンはさっき技覚えたから分かりますが弧月と旋空は何故入ってるんです? 枠の無駄では……」
「そこが分かるならそこも分かれよ」
「日本語が雑ゥ!!」
「バッグワームも入ってないし完全に
「そゆことだね。それじゃタケルくん、テキトーにポイント高い弧月使いの人捕まえて」
「クソゲー呼ばわりしといて完全にゲーマースイッチ入ってんの笑うわ」
「おだまりなさい」
――なんや自分、見ない顔やな。B級上がりたて? さよか。
ちょお待ってな、ゴーグル付けるわゴーグル。……これでよし。うん? 素顔が見たい? あかんあかん、女の子やろ自分。俺マリオちゃん以外の女の子とは見つめ合うと素直におしゃべりできんねん。今もめっちゃ照れ顔やねんな。見えへんやろ? そこがゴーグルのいいとこやねん。いやホンマ、辻ちゃんに勝るとも劣らんレベルで照れとるから今。知っとる? 辻ちゃん。あ、そこにおったわ。おーい辻ちゃー……逃げよったわ。そない照れることないやんな。支離滅裂やって? よお言われるわ。
それで何やっけ、俺がとうとうギター辞めて料理に手ぇ出し始めた話やっけ? ちゃうねん、こう見えても指にタコ出来るくらい毎日練習したんやって。言うても小さい頃から竹刀ブンブン振っとったから元々タコまみれやったけどな。タコまタコ人ってレベルでタコやったわ。焼いたらウマいで。食ったことないから知らんけど。そんな自分、赫足のゼフやないんやから自分の手や足食ったりせーへんて。堪忍してぇな。なんでこんな話になったんやっけ? 忘れたわ。
話が長い? すまんな、それもよう言われるわ。勝負したいんやろ勝負。ええで、10本いこーや。話早いやろ? スマートな男目指しとるから俺。ゴーグルももう少しスッキリさせた方がええかなあ、迅のグラサンみたいな感じで。なあ、自分どう思う?
>『No.6攻撃手』生駒達人と対戦しますか?
「やだ! イコさんはやだ!!」
「柚宇先輩!? どうしたんですか柚宇先輩!!」
「旋空弧月パクるならこれ以上打ってつけの相手もいないでしょーに」
「あ、そういう理由で弧月使い狙ってたんですかって柚宇先輩キャンセル押したらダメですって!!」
「ダメなの! イコさんはダメ! 踏み台にするならもっと心が痛まない人にして!!」
「完全に拗らせた夢女子みたくなってやがるこの人」
「えーと、今逃げていった辻先輩は……」
「ふざけてるの!?」
「柚宇先輩の発狂ポイントがこれっぽっちも分かりませんよボクは!!」
「そもそも唯宇ちゃんと
「三輪先輩とか……」
「絶対ダメ」
「つーか旋空入れてねーしなあいつ」
「旋空を入れていない弧月使いですって……? そんなものが存在するのか……あー、村上先輩とか荒船先輩とかは……」
「さっきからキミはわざとやっているのかねタケルくん」
「逆に誰なら許せるのか知りたいくらいですよこっちは!!」
「わたしから名前挙げたら角が立つじゃん」
「卑怯者がア~……!」
「チェンソーマンの話すんなっつってたのはおれの聞き間違いだったか?」
「そうだ烏丸! 貧乏人の烏丸を狙いましょう! 玉狛支部に殴り込みをかけますよ柚宇先輩!」
「はいキャンセル」
「ああっ!?」
「ちなみに京介も旋空入れてねーかんな。大体もうランク戦やってねーしあいつ」
>対戦をキャンセルしました。
ん? 勝負せえへんの? 勝負以外で俺が女の子から声掛けられる理由て……
まさか――これが世に聞く逆ナン……? ウソやん……そんなん隠岐の世界やん……ゴーグル外しても泣きボクロ付いてへんで俺……。
あかん、こうしとる場合やない。作戦室行ってギター取ってこな。俺いまめっちゃギターハマってんねん。料理? そんなんもう古いわ、男の人生言うたらやっぱロックンロールやろ。瞬間瞬間を必死で生きるってやつや。ほれ自分も一緒に、ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! どや? テンション上がってきた? 俺は最初からクライマックスやで。ゴーグル付けてるから表情分からへん? せやで、五代雄介も仮面の下でずっと泣きながら戦ってたんや……泣けるで……。
でな、最近駅前に出来たとんかつ屋なんやけどな、あそこ今フェアメニューでマグロカツ丼やってんねん。めっちゃウマかった。食べたことない? マグロカツ丼。醤油かけて食ったら最高やで。一口食べて思わず言うてしもたもん、宝石箱や! って。ウマいもん食ったときの定番やねんな。青汁飲んだら『マズい! もう一杯!』って言わなあかんのと一緒やで。やのに一緒に食いに行った水上が言うねん、『イコさん宝石ってキャラやないでしょ』やて。心外やで、俺のこのキラキラした目見てようそんなん言えるわ。ゴーグル付けてるから分からへん? せやで、五代雄介も仮面の下で――
なるほど、天丼も悪うない。天丼カツ丼てきたらアレやな、かまめしどんやな。いやーごっつう懐かしいわアンパンマン、あれ小さい頃はよう何も気にせんで『僕の顔をお食べ』とか受け入れとったと思わへん? 俺いま自分で言うてみて怖って思ったもん。せやけどアレやな、替えが利くんはアンパンマンもトリオン体も一緒やねんな。一回
>生駒達人と友人関係になりました。
「そうはならんやろ」
「なっとるやろがい」
「先輩たちに関西弁が伝染している……」
「もうランク戦とかどうでもいいからイコさんとくっついて終わりで良いんじゃないかな」
「ゲームジャンル変わってんじゃないすか」
「ガンパレードマーチだってSエンド狙うだけが遊び方じゃないでしょ」
「あー、ガンパレシステムでボーダー隊員になれるゲームとかあったら絶対買うわって思ってたそういや……」
「喜べ少年。君の願いはようやく叶う」
「なるほど……ボーダーという組織に学生の関心を集めたいなら、ゲームというアプローチは悪くないですね。寺島CEはよもやそれを見越して……」
「作者の人そこまで考えてないと思うよ」
「真顔でなんてこと言うんすか柚宇さん」
「しかし結局どうするんです? 他にめぼしい弧月使いといえば、玉狛の新人――」
「ヒュースくんなら入隊初日以来ブースには顔出したことないはずだよ」
「ていうか開発時期的にゲームん中にいるのかどうかも怪しいっすよね」
「米屋先輩」
「お、アリだな」
「いやアリじゃないよ槍じゃん。次」
「加古隊のおさげの……」
「女の子なら許すとかそんなことは勿論ないからね」
「黒江もとりあえず韋駄天って感じで旋空使うイメージねーしなあ」
「王子先輩……はどうせ無理ですよね、流石に分かってきましたとも――」
「…………」
「悩んだ!?」
「普段ユウチューバーとか呼ばれてる恨みをここで晴らす気だな」
「タケルくんに余計なこと教えないでイズーミン」
「ロシア人みたいな綽名付けられてますね出水先輩」
「ドクソンは黙ってろ」
「どこから来たんですかその綽名!?」
「『独』っつったら一つって意味なんだから唯我尊も唯我独尊も大して変わりねーだろが。おれがロシア人ならてめーはドイツ人だ」
「もっともらしい理屈で謎のネーミングセンスを擁護しなくてもいいですから!!」
「んー……アリよりのナシ」
「アリよりなのか……」
「セーフ判定の筈なのにここだけ聞くと王子さんが柚宇さんにフラれたみたくなってんな」
「こうなったらブース入って検索で一番ポイント高い人選ぼう。名前挙げた人たちとマッチングしても運が悪かったってことにすればわたしの心は痛まない」
「いよいよ畜生成分を隠さなくなってきたなこの人」
「今までのやり取りは一体何だったんですかもう……いいですか? ブース入りますよ? 操作パネルをタッチして――」
250 7881 アステロイド
251 12042 弧月
312 7009 ハウンド
247 9721 スコーピオン
252 4780 スコーピオン
152 7452 弧月
111 45961 弧月
106 8395 バイパー
253 5172 スコーピオン
107 7119 弧月
195 9825 弧月
129 8442 アステロイド
201 7407 弧月
「「「あっ……」」」
「……いや、ないでしょう。ないですよね?」
「……ま、一番ポイント高い弧月使いっつったらそうなるわな」
「でもさっき先輩たちも名前出さなかったじゃないですか!」
「そりゃお前……分かってんだろ。踏み台にするっつってんだぞ? この人だけはねーよ」
「あ……で、ですよね? それじゃあここは251号室をタッチして……」
「――いいよ。やろうよ」
「え……」
「……おい、何考えてんの柚宇さん」
「なんでわたしがさっきあんなこと言ったのか、タケルくんもこれできっと分かるでしょ」
「い……いやしかしですね? 名前なんか見なくたってこの人が誰かくらいボクにも分かりますよ、だってボクも――」
「うん。わかってるよ。
「……そういう台詞は、もっと別のときに聞きたかったです」
「ごめんね」
「心が痛まない人選ぶっつっといて一番ダメージ返ってくる人選んでどうすんだか……どうなっても知らねーぞおれは」
>『No.1攻撃手』『
――よお、はじめましてだな
さて、何本やる? いくらでも付き合うぞ。大学生は時間余っててヒマなんだ。
>太刀川慶に10本勝負を挑みます。
おっ、いいねー。冷やかしじゃないようで何よりだ。使い方あってるよな? 冷やかし。
いや気にするな。確認しただけだ。
――んじゃ行くぞ。
「……『時間余っててヒマ』じゃねーだろ、今日もレポートの提出期限がヤバいとか言って蓮さんに手伝ってもらってるくせに……」
「年下の女のひとにレポート手伝わせる二十歳って人としてどうなんだろうね」
「え、太刀川さんと月見先輩ってそういう関係なあああああ太刀川さん早ァい!! 照準を定める余裕がああやめて旋空やめてええええええええ!!」
おいおい、何だその唯我みたいな狙いの付け方。やる気ないなら帰るぞ俺は。
「寺島ァ!!」
「てめーがァ!!付けても何も威圧感ねーってことだけは分かった」
「…………」
「というか無理ですよこれ! トリオン量だけで勝てるほど太刀川さんは甘くなかったんです! やっぱりリタイアしましょう!!」
「……あー、おう。そーだな、さっさと降参しろ降参」
「タケルくん」
「え、あ、ハイ……柚宇先輩、代わりますか?」
「ううん。必要ないでしょ。キミでも勝てるよ」
「い、いやしかし見ての通りアステロイドを当てようにも動きが早過ぎて――」
「L1R1同時押しで両トリガー選択、更にR2を長押ししながら□ボタン」
「……それは……」
――マジか。
「――
「……ホント、厨プレイだわ」
「ゆ、柚宇先輩……」
「続けて」
「…………」
「…………」
「…………」
「――すごいねタケルくん。わたしたちの娘が太刀川さんに9-1だって」
「……やめてくださいよ」
「どうして? 子供の成功を素直に賞賛出来ない親なんていないんでしょ? 褒めてあげなよ」
「やめてくださいってば!!」
「……柚宇さん、
「出水くんはこれ見て何とも思わない?」
「……そりゃ、マジで太刀川さんがこんな風にボコられたりしたらショック受けるよ。でも実際にこんなこと出来るやつ一人もいないでしょーが」
「
「…………」
「あの子どうして人撃てないのかなってずっと不思議だったんだけど、わたしみたいなのに逆恨みされるのが怖かったのかもしれないね」
「……また自虐始めんのやめろよ。どのみち雨取ちゃんは人撃てねーんだから、もしもの話してもしょうがねーだろ」
「その気になれば撃てるだろって言ってたよ、当真くんは」
「クラスメイトだからって学校でそんな話してんじゃねーよ……」
「か、仮に雨取隊員が人を撃てるようになったとしてもですよ! 玉狛はB級! ボクらはA級1位! ランク戦で相手になる機会なんてないんですから! 考えたところで詮無きことですよ!」
「でもタケルくんは玉狛がA級に上がれるって信じてるでしょ? いつも食い入るように試合見てるもんね」
「べ、別に食い入るようにという程のことは……三雲くんにはこのボクが胸を貸してあげたのだから結果を出して貰わないと困るというだけでゴニョゴニョ……」
「
「……柚宇先輩……」
「……おいおい」
「今季は昇格試験の時間が取れないらしいから、遠征に行けたとしてもA級にはなれないみたいだけどね。でも来季には絶対上がってくるでしょ、あの子たちシーズン開始時のボーナスポイントなしで上位入りしたんだよ? 開始時点で二宮隊や影浦隊に15、14点差付いてたのに追いつこうとしてるって、異常だよ、はっきり言って」
「……それだけメガネくん達が頑張ったってことでしょ。京介に鍛えてもらって、唯我や嵐山さん達の力も借りて、それでもRound4じゃ上手くいかなかったけど、新技覚えてまた這い上がって――報われてもいいだけの努力をメガネくんがしてきたのをおれは知ってる、そこにケチ付けんのはいくら柚宇さんでも聞き捨てならねーぞ」
「それは三雲くん一人の話だよね、出水くん」
「雨取ちゃんだって人撃てないなりに大砲とか
「そういうのってさ、縛りプレイとか舐めプって言わない?」
「――いい加減にしろよゲーム脳。マジで蹴り入れんぞ」
「やってみればいいよ。こっちも本気で首絞めてやる」
「よーしおまえらケンカすんな」
「「は?」」
「ひいっ!? ぼぼボクじゃないですよ二人して一斉にこっち睨むのはやめてくれませんか!!」
「そーだそーだ。こっち見ろこっち」
「「……あ」」
「――で、誰の娘が俺に9-1付けたって?」
収拾が付かなくなりそうだったのでダンガーを放り込むことで空気を強引に変えていくスタイル