ダンジョン▶カプリチオ 〜TS三人娘のダンジョン動画投稿〜   作:井戸ノイア

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昔、なろうで書いてたのを読み返したら
改稿しつつ、続き書きたくなったので投稿
4話までは改稿するだけで、すぐ投稿予定



第一回【動画投稿開始!】

 えーとこれでいいのかな?

 

 少女が小首を傾げる。

 その少女の頭の両脇には真っ黒な手の大きさほどもある角が頭上に向かって伸びており、背中には皮膜の張ったこれまた真っ黒な翼が、そして後方でゆらゆらと揺れる艶やかな黒い尾。

 それらが、彼女は普通の人間では無いことをこれでもかと言うほど主張していた。

 

 そしてその少女の言葉に同意するかのように、後ろを向いた彼女へコクコクと肯首するもうひとりの少女がいた。

 一人目の黒とは対照的に白い髪とその天辺にピンと立った二つの白い耳。巫女装束のような、動きやすさを意識している和装に合わさるは二本の鞘。

 どちらも黒い簡素な鞘であるが、そこに収まっている刀からは抜かれていないにも関わらず鋭利な雰囲気が漂っている。

 刀に目線がいきそうになるが、その後ろにはこれまた小さく揺れる真っ白なふさふさの尻尾があり、彼女もまた普通の人間では無いことが分かる。

 

 

 ……大丈夫。麗は心配性。

 

 別に心配って訳じゃないさ。誰でも初めて触るモノには慎重になるだろう? 骨折り損のくたびれ儲けは嫌だからね。

 

 

 そうして話す二人に緊張感は無い。

 突如、麗と呼ばれた黒の少女の背後の通路から何かが姿を現した。

 それは一頭の人牛、二足歩行で歩く3mを優に超す牛だった。麗は気付いていないのか、そちらに目を向けることすらしない。

 

 人牛は口元を緩め、右手に持った己の身長と大差無いほどの大きさを誇る大木を振りかぶる。

 狙いは少女二人。

 この距離ならば一撃で二人とも葬ることが出来るだろう。

 話に夢中なのか、二人ともこちらに気付く様子は未だに無い。

 

 人牛は存分に狙いを定め、大木を振り下ろした。

 

 はずだった。

 振り下ろした大木は気付けばどこにも見当たらず、少女達は未だに会話を続けている。

 

 どうして、どうしてこいつらは潰れていないのだ。

 

 狼狽する人牛は何テンポも遅れて、ようやく痛みに気付いた。

 右腕が、痛い。

 意識すればするほどに右腕が熱を持ったかのように熱くなり、耐えきれず悲鳴を上げる。

 が、その悲鳴はすぐに止んだ。

 

 

 攻撃して来なければ逃がしたのに、馬鹿だねぇ。

 

 ……仕方ない。ここの奴らはそういう風にしか出来てない。

 

 

 人牛が知覚するよりも早く、頭が細切れになった。

 重い音を立てて倒れる人牛の身体を一瞥し、二人は何でも無かったかのように会話を続けた。

 

 

 まー大丈夫かな? じゃ本番いこっか。雅は準備オーケー?

 

 ん。いつでもいいよ。

 

 それじゃ、始めますか!

 

 

 麗が壁に突き刺した板の上にカメラを乗せた。

 そしてスイッチを入れる。

 カメラの前で手を振りながら、画面を覗き、撮れていることを確認してから麗は雅の隣まで戻った。

 

 

 あー、初めての試みで大分緊張してます。麗です。

 

 緊張はしてないかな。雅。

 

 えーと、今回ちょっと私たちの所属している企業の方からお願いされてこのような動画を撮る運びになりました。

 本当はもう一人来る予定だったのだけど、恥ずかしがっちゃって。次回までには説得して連れて来るので許してください。

 

 もう一人の名前は凜。とても明るい娘だよ。

 

 それでこの動画の目的ですけど、最近ダンジョンに一般人が入るための規制がだいぶ緩くなってきたじゃないですか。

 

 ちょっと前に、高校生まで認可されるかもしれないって話題になった。

 

 そうそう。ダンジョン探索も人手不足なのかなぁ。

 まあ、そんな訳でこれからダンジョンに入る人が急増することが見込まれます。

 そこで、ダンジョン内での活動や、知識を少しでも知って貰えたら無用な犠牲者も減らせるかな、ということなのです。

 

 本音で言えばこういう動画に需要が出そう。

 なら、作ったらいろいろ宣伝にもなるんじゃないかと。

 

 というわけで、これからちょくちょく動画上げて行く予定なので良かったら見てねー。

 で、一回目だしダンジョンの雰囲気を伝えようかなと思って、今ここ、ダンジョンの中です。

 

 67層だったかな。

 

 うーん。まあちょっと初心者向けでは無くなっちゃうんだけど、いつかはこんなとこにも来るのだと思って見て貰えれば嬉しいかな。

 それじゃ、移動するので一旦区切ります。

 

 

 

 

 こんなもんでいいのかなぁ。

 

 いいと思う。あんまり長くなっても面倒。

 

 じゃ、次行きますか。

 

 

 麗はカメラを構えて目の前の扉を映す。

 その扉は周囲の洞窟の中のような雰囲気とは違い、明らかな人工物の様相をしており、景色に馴染めずにぽつんと浮いて見える。

 

 

 たぶん、知っている人も多いと思いますけど、これは各階層に必ず一つあるボス部屋とか言われてる扉です。

 で、何でこんな深いところで撮影してるかと言うと、最初は一層とかでやろうと思ってたんだけどね。

 出てくるボスがね……。

 

 弱すぎた。

 

 あんまり簡単に倒しちゃって、ダンジョンは危険で無いなんて間違った印象を与えるといけないからね。

 それで67層っていう中途半端な階層なのには理由があって。

 このボス部屋って極稀に何も出てこない安全部屋みたいなのがあるんだよね。

 それで、このダンジョンは66層が安全部屋だったからそこに転移の巻物(スクロール)設置していつでも来れるようにしてる訳。

 

 すごく便利だけど、貴重品。

 

 まあ、その辺りの事情は置いといて、だから67層のボスで第一回やろうと思った訳。

 それにここなら雅一人でもなんとかなるからね。

 

 がんばる。

 

 というわけで、開けます。雅が。

 ここのボス厄介で、先に開けて貰わないと最悪カメラ落としちゃうかもしれないからね。

 で、今雅が既に戦っているのだけど、たぶんカメラには黒い影くらいしか映ってないよね。

 雅ー、ちょっと一匹ちょうだい。

 

 ん。

 

 よっ、と。

 これがここのボス。

 ダンジョンのモンスターってほとんど名前が付いてないけど私たちはスカイフィッシュって呼んでるよ。

 まあ、見た目まんまだしね。

 映ってないと思うけど数十匹単位で前方から次々に飛んでくるのを雅が撃ち落としてるところ。

 説明すると、こいつの口元鋭く尖ってるでしょ。高速で迫ってきてこいつらは敵にこの口先を突き刺すの。すると、口の中から小っちゃいフライフィッシュの赤ん坊みたいなのが体内に射出されて、身体の内側から食い破られるって寸法。

 弱点としてはこいつら自身は紙耐久なのと、突き刺す攻撃は大して強くないこと。

 全身鎧とかなら完全に防げるんじゃないかな。

 

 隙間通って入ってくるから、完全には無理。

 

 ま、そうなんだけどね。

 生身に喰らわなければ平気な攻撃ではあるよ。

 刺された部分をすぐに全力で叩けばこいつらの赤ん坊ごと倒せるけど、出来なかったら喰われてそのまま死ぬと思う。

 最初に挑んだ時は本当に死ぬかと思ったくらいだし。

 

 凜が一番やばかった。

 

 そうそう、もう全身血だらけで。

 この先に孵卵器みたいなのがあって、そこから無限湧きするからそれを壊せばここは終わり。

 その時助かったのは、ここのボスが全快の巻物(スクロール)を落としたからだよね。

 どうも、20~30回に1回くらい落とすらしくて今でもちょくちょく集めに来てるよ。

 

 深層はアレがあると無いとでは生存率が全然違う。

 

 そうそう。と、話が逸れちゃったな。

 まあそんな感じだね。

 ダンジョンって上のほうは子供でも頑張れば倒せるくらいのしか出て来ないけど、下のほう行くとこんな感じの魔境になるの。冒険が好き、一攫千金を狙いたいっていう夢は分かるけど、覚悟が無いならあんまりオススメはしないかな。

 

 私たちはやるしかないから、やってるだけ。命は大事に。

 

 というわけで、孵卵器も見えたし、もう壊しちゃっていいよ。

 

 

 そう言った瞬間、これまでモンスターが後ろに抜けないように刀を当てるだけに留めていた雅が二本の刀をほとんど同時に振り下ろした。

 刹那、宙を飛んでいた全てのフライフィッシュが真二つになり、まだ距離のあった孵卵器も同時に弾け飛んだ。

 孵卵器のあった場所を見れば、そこには既に残骸などは存在しておらず、何枚かの薄く透明な羽が落ちているだけだった。

 

 

 今回は外れだね。これ耐久性も無いし、綺麗なだけの使い道が無い羽だね。元が何に付いてたか知ってるからあんまり触りたくも無いし。

 

 元の見た目って大事。

 

 そうだね。それじゃあ、ボスも倒したことだしそろそろ終わるかなぁ。第二回は何やるかは未定だけど、絶対やるから見てねー。龍ちゃんこと、麗と、

 

 狐の雅。

 

 じゃあねー。

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