ダンジョン▶カプリチオ 〜TS三人娘のダンジョン動画投稿〜   作:井戸ノイア

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第二回【凛のお披露目だよ!】

 第二回はっじめーるよー!

 

 いえー。

 

 はい、という訳で。皆さんがたくさん見てくださったのでこんなにも早く第二回が開催出来ました!

 そして! 約束通り、凜を連れて来ましたー。

 

 

 そうしてカメラに映ったのは凸凹な身長の麗と雅の、ちょうど中間ほどの身長の少女だった。水色を基調とした、一般に浴衣と呼ばれるような動きにくい服装を纏うその姿はとても危険なダンジョンに来るような格好には見えない。

 また、二人と違って彼女には一目で人外と分かるような特徴は見当たらなかい。

 だが、よくよく見ると、彼女の足元にはそこだけが冷えているのか霜が降りており、やはり普通の人間とは一線を画す存在であることが伺われる。

 

 

 あ、えっと凜です。よろしくお願いします。

 

 固い、固い! いつもみたいな明るさはどうしたんだ?

 

 凜、いつもみたいにのののの言う。

 

 ちょ、雅ちゃん! それは違うの!

 あッ、えっと……あー凜なの。よろしくなの!

 

 そうそう。どうせ、カメラがある以外は普段と変わらないんだから気楽にやればいいんだよ。

 

 うぅ。分かってはいるの!

 だけど……

 

 そういえば募集。

 

 おぉ、忘れるところだった。

 冒頭で第二回としか言っていないように、この動画にはまだ正式な名称が決まっていない。

 そこで、皆にその名前を募集したいのだ。

 

 あうあう……

 

 凜、緊張し過ぎ。

 

 だってぇ。

 えっと、見事選ばれた名前を付けてくれた方には景品をプレゼントするの。

 何を贈るかはまだ決まってないけど、どんどん応募して欲しいの!

 

 じゃ、早速だけど告知はこれくらいにして、動画の方に移って行こうか。そういえば、前回の動画で紹介し忘れたから、凜も含めて今回紹介するぞ。

 まず、私は龍の変異者(メタモルフォシス)の麗だ。よろしく。

 

 狐の変異者(メタモルフォシス)、雅。よろ。

 

 雪女の変異者(メタモルフォシス)の凜です!

 

 で、まぁ変異者(メタモルフォシス)のことは、聞いたことはあるけど詳しくは知らないって人が多いんじゃないかな。

 なので、ダンジョンを攻略しながら変異者について説明しようと思うよ。

 

 今回もボス倒す。

 

 前回の動画で要望が結構あったらしくて、今回も深層で撮影してるの。

 ……凜は前回いなかったから関係無いのだけど。

 

 まぁしばらくは適当に雑談しながらダンジョンのいろはや、私たちのことを説明して行くことになるかなあ。

 もし要望があれば今回みたいにどんどん反映していくけどね。

 

 深層の動画はほとんど無い。

 

 そうそう、まあ私たちは需要に応えるだけさ。

 最高到達階層付近は流石に無理だけどね。

 

 あそこは動画撮ってる余裕なんてないの。気を抜いたら一瞬で死ぬの。

 

 動画が投稿されなくなったら、私たちは死んでる。

 

 縁起でもないこと言わないでくれよ……。

 さて、だいぶ話もずれてることだし戻ろうか。

 今回は凜がモンスターを倒してくれるよ。普段は後衛なんだけど、これくらいの階層なら問題無いからね。

 

 今は58層に来てるの。

 前回よりも浅い階層だけど、ここのボスは珍しいタイプだから期待してていいの。

 

 そういうことだ。

 さて、早速モンスターが来たな。

 あれは、えっと、何言おうとしたんだっけな。

 

 巨大カブトムシ……

 

 そうそう。ダンジョンにおける虫系統モンスターは気をつけるんだぞ。

 奴らは仲間の体液に反応して集まってくるから全部捌ききるか、体液を流させずに倒す工夫が必要だからな。

 

 ふふん、凜なら余裕なの。

 なんたって凜は雪女。体液ごと凍らせてやるの。

 

 ん。

 

 

 と、意気込む凜の隣から雅が一歩前に出て刀を一閃。

 刹那、巨大なカブトムシは細切れになり、その体液を周囲に撒き散らした。

 

 

 ちょ、何してるの!

 

 動画映え、がんばれ。

 

 

 と、通路の奥から地響きが鳴り始める。

 それは、目の前の光景を見れば何が来ているのか容易に想像が出来た。

 奥から目を光らせながら迫り来る。カブトムシの大群。

 凜が瞬時に最前列の集団を凍らせるが、その氷を砕いて後続が迫ってくる。

 

 

 いやぁぁぁぁ

 

 凜が動画栄えのために犠牲になったところで、そろそろ変異者についての説明をしようか。

 うーん、しかしいつ見てもこの光景は度し難い気持ち悪さだな。

 

 虫系統は危険。

 気をつける。

 

 うんうん。教訓にもなって一石二鳥だな。

 さて、変異者だがどこから話したものか。

 そうだな、始まりはダンジョンが生まれた日だな。私たちはその日、人間を辞めさせられ、ダンジョンで新たな身体を得たんだ。

 

 記憶も元の身体も奪われた。

 

 そうだな。そして、ダンジョンに放り出された。

 幸い、私たちは普通の人間よりも頑丈だし、力が強かったり、凜のように特殊能力が使えたりもする。

 だが、それでも衣類一つ無くダンジョンに放り出されて生還出来る確率は非常に低かったな。

 まあ当然と言えば当然さ。一層や二層ならともかく、生存者は大体20層付近に投げ出されたからね。

 モンスターに殺される者、水も食糧も無く衰弱して死んでしまった者。たくさんいたと思う。

 

 火山の地形だった。あれは最悪。

 

 ダンジョンが生まれた日に大勢の人間が行方不明になっただろう? 

 あれが私たち変異者だ。正確に言えば私たちなのかは分からないけどね。

 それぞれの人生の軌跡を記憶として覚えているだけだから本人であると証明することが出来ないんだ。

 今だってこんな話し方をしているが、これも意志とは別の話し方さ。

 気付いたらこんな話し方しか出来なくなっていた。私なんかはまだマシだが、雅は長文を話せなくなって不便だっただろう?

 

 もう慣れた。

 ……もう、慣れた…の。やっぱり、きつい。

 

 雅ちゃーん!? 凜がきついみたいに言うの止めてよー!

 

 こんな感じに誰かの口調を真似ることも出来ないんだ。

 その後になるが、なんとかダンジョンから生還出来た者達は国に保護されたり、ダンジョンを攻略しだすんだが、その辺りの動きは話し出すと長いからなぁ。

 もう凜も終わるだろうし、これくらいでいい、のかな?

 

 いいんじゃない?

 

 や、やっと終わったの。途中から黒いアレに見え始めて本当に散々なの。

 

 前回休んだ罰。

 

 うぅぅ。雅ちゃんそんなちっちゃくて可愛い見た目してるのにひどいの。

 

 

 と、凜の後ろを見れば大量の黒い虫が、霧になって消えていくところだった。

 その後にはキラキラと光る白い石が大量に表れる。

 

 

 虫系統が嫌われているもう一つの理由だな。こいつらは大抵何も落とさない。いや、そう言うと語弊があるんだが、この魔石しか落とさないんだ。

 魔石自体はどの階層のモンスターも落とすからな……。

 

 売値格安。

 

 深層に潜ってるとしょうがないの。

 

 まあ、格安と言えどこれだけ量があれば多少にはなるんだけどな。

 持ち帰るかって言われたら遠慮したいな。重いし嵩張る。

 最も、これが新エネルギーとして注目されてまだまだ数が足りないらしいからな。最近の入場規制の緩和もこれのためだろう。

 

 今回は動画撮るために来てるだけだから回収するの。麗ちゃんよろしくなの。

 

 ああ、うん。まあ任せろ。

 さて、凜がこの階層に出現していたカブトムシは全部倒してくれたはずだから邪魔されずにボスまで行けるな。

 じゃ、ボス部屋まで数分かかるからカット!

 

 

 というわけでボス部屋に着いたぞ。

 編集さんは頑張ってくれ。

 

 ここは攻撃飛んでこないし誰が開けても大丈夫なの。

 もちろん、初めて行くところは前衛が開けなきゃ即死するところもあるから注意なの。

 

 凜、早く開ける。

 

 雅ちゃん今日冷たくない!?

 

 と、じゃあ開いたし説明しようか。

 今回のボスは無機物系統の鏡だな。

 見た目はちょっと豪華な感じのする鏡だし、向こうから攻撃もして来ない。

 けれど、その性質はまさしく鏡で、厄介極まりない性質をしている。

 じゃ、凜よろしく。

 

 オッケーなの。

 

 

 と、凜が手を前に翳し、小さな氷の粒を生成、鏡にぶつける。

 氷が鏡に当たる瞬間、目の前で氷は消滅し、鏡から全く同じ形、大きさの氷が放たれる。

 凜はそれを軽々と手で受け止めて、放り投げた。

 

 

 今みたいに攻撃を反射してくるんだ。

 この鏡の機能は主に二つ。

 一つが今見せたような攻撃の反射。そしてもう一つが一定以下の威力の攻撃の無効化だな。

 元々耐久力は高いうえに、近接で攻撃しようものなら避ける暇すら無く反撃が来るからな。

 

 遠距離攻撃が無ければ、詰み。

 

 正確には詰みに近い、なの。

 いちおう一撃で倒せば反射もされないし、仲間が防御出来れば近接攻撃だけでも倒せなくはないの。

 

 仲間は大切。

 

 そういう訳だな。あとは、こいつが耐えれる範囲内の攻撃を利用すれば反射は訓練にもなるぞ。

 こんなふうに。

 

 あっははは。弾幕なの!

 

 

 凜は大量の小さな氷の礫を飛ばしながら、反射されて帰ってきた礫を避けて笑っている。

 器用に反射された礫と自身が放った礫を当てることにより、辺りにキラキラと氷が舞う。

 そして、ニヤリと笑みを深めた凜は、周囲のあらゆる角度から氷を放ち、無差別に反射させ始めた。

 それを見た雅は鬱陶しそうな表情を浮かべる。

 

 

 凜、こっちまで飛んできてる。

 

 どうせ大した攻撃じゃないから問題ないの!

 当たっても痛くも痒くもないの!

 

 

 と、地面の三脚に置かれたカメラの前に氷が迫る。

 すっかりカメラを意識していなかった三人はそれに気付かず。

 ガシャリ

 

 あっ

 

 慌てて駆け寄る麗と雅の姿と、顔を青ざめた凜の姿を最後に、映像は途切れた。

 

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