東方幻想組   作:土門一家

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久々の更新です。遅れて申し訳ありません!今回の内容には一部、残酷な表現が入っています。ご注意下さい。


第二話 目覚めた場所

木漏れ日の漏れる森の中、二人の少女がうつ伏せで倒れている。霊夢と魔理沙だ。鳥が囀り、草木を撫でる心地よい風が霊夢たちを通り過ぎていく。そんな中、意識を失っていた霊夢が少しずつ目を覚まし始めた。

 

「ん……んぅ?………ここは…」

 

 霊夢は少しぼんやりとした感じで目を開きつつゆっくりと体を起こす。

 そして、自分のいる場所を見て霊夢は不思議に思った。ここはどこだろうかと。

 

 実際、霊夢たちが最後意識を失ったのは人里で黒い液体を抑えようとしていた時だ。なのに、ここには人里の家も無ければ自分たちが意識を失うこととなった原因である黒い液体もない。

 

 ふと、霊夢が横を見ると魔理沙が倒れていた。霊夢は驚いて魔理沙の肩を掴んで揺すり始める。

 

「……え……?……魔理沙!?起きて…!生きてる!?」

「……ん……………ん?…一体なんだぜ…霊夢」

 

 魔理沙は目を擦りながら体を起こす。霊夢は魔理沙が起きたことでほっと一息つく。

 しかし、霊夢はここが何処なのか全く見当がついていなかったため、魔理沙に聞く。

 

「魔理沙。起きて早速悪いんだけど…ここがどこか何か分かりそうなことはある?」

「いや…さっぱりだぜ。霊夢の方こそ何か心当たりはないのか?」

「うーん………無いわね……こんな森は見たことないわ」

「そうか…とりあえず動いてみて考えようぜ、霊夢」

「それもそうね、行きましょうか」

 

 霊夢と魔理沙は立ち上がり、適当に方向を決めて歩き出す。

 

 二人が歩いている森はとてものどかで心地の良い場所であった。しかし、二人はある事について疑問に思っていた。それは幻想郷を襲ったあの黒い液体のことだ。自分たちの意識が無くなる前に不可思議なことが起きていることに気付いたのだ。人里にいた阿求や小鈴、空にいた文などは黒い液体に呑まれ跡形もなく消えてしまったが人里の人間や白狼天狗たちはその場に黒い像として残っていたのだ。そこが一番の謎であった。

 

 霊夢と魔理沙が黒い液体の事について考えながら歩いている時、前方から異臭が漂ってきた。霊夢は足を止め、魔理沙がそれに釣られて止まる。霊夢はこの異臭をよく嗅いだことのある匂いだと気付いた。それは、人を襲う妖怪を退治する時によく妖怪から漂ってくる人の血の匂いだと。また、それ以外の異臭も同時に漂ってきている。

 

「魔理沙、この先から人の血の臭いがするわ…しかも……それだけじゃない、何かおかしな匂いも混ざっているわ」

「なに?どういうことだぜ?…いや、行って確かめてみようぜ」

「そうね、行きましょう」

 

 霊夢と魔理沙は急いで臭いの発生源であるであろう場所に走って向かう。走って、近づくにつれ臭いは濃くなっていく。

 

 それから数分後、二人は臭いの発生源であろう場所に着いた。二人はその場所に広がる惨状に息を飲んだ。

 

 そこに広がっていた光景とは……

 地面に転がる数多の刀や剣、斧、盾を持った兵士の死体。中には全身に無数の矢が刺さった死体や心臓を刺しあった二人の死体など様々な状態で死んでいた。

 また、その死体の中には数多くいる兵士よりいくらか質が高い鎧や甲冑を着た兵士もおり、ここで大規模な戦闘が起きたことを物語っている。死体は霊夢たちが来た反対側の方から道を作るように転がっている。

 

「これは……一体…」

「…分からないんだぜ………」

 

 二人はその非現実的光景を前にしながらも、奥に進もうと動き出す。二人は死体の状態をよく見ながら進んでいるととある事に気付く。

 兵士たちはどうやら二つの勢力が戦っていたようだ。一つはどうも侍のような刀と甲冑を持っている勢力、もう片方は全く分からないが剣や斧、円盾を持っている勢力だ。防具は布や革、偶に肩に狼の頭の剥製を付けた兵士もいた。

 

 二人はそれを見ながら進んでいると、進行方向から声が聞こえてきた。声は女性の声しか聞こえず、また、焦っているような感じもする。二人は声のする方向に走っていく。

 

 二人が声がしたところに近付いてきた時、前に一人の女性が飛び出てきた。

 

「何者だお前ら!…そこで立ち止まれ!」

 

 現れた女性は赤く染めた甲冑を身に纏い、右手に刀を持っていた。兜は被っておらず、その顔は二人が以前、幻想郷で見たものと全く同じだった。

 

「上海人形!?なんでここにいるの?それにその姿…」

「しかもなんで私たちと同じ身長なのか気になるぜ…」

「静かにしろ!何者だと聞いている!幻蛮郷の手先なのか!?名を申せ!」

 

 甲冑を身に纏った上海人形の後ろに木の盾を持った一回り小さい軽装な鎧を着た上海人形が二人現れ、さらにその奥には弓を構えた軽装な鎧を着た蓬莱人形が立っている。

 霊夢と魔理沙が周囲を見ると周りを囲むように木の後ろから軽装な鎧の上海人形たちが盾を向けながら出てくる。その近くには槍だけを持った者や少し強そうな者がいる。

 

「これは……」

「囲まれているんだぜ……」

「聞いているのか!お前らのような者たちは見たことがない、その服はここらでは見たことがないぞ!」

「え…?えぇと……私は博麗霊夢…博麗神社の巫女よ」

「私は霧雨魔理沙だぜ……?普通の魔法使いだぜ」

「なに……?博麗霊夢に霧雨魔理沙…まさかお前ら、原初の幻想郷から来たのではあるまいな?」

「原初のってのは知らないけど…幻想郷から来たわよ?」

「そうだぜ。来たって言い方が正しいかどうかはよく分からないんだけどな…気付いたらここにいたんだぜ?」

「そうか……疑ってすまなかった。お前たち…いや、貴方たちは原初だったか…」

「ん?誤解というか……警戒は解いてもらえたのかしら?」

「それはよく分からないんだが…お前らはなんなんだぜ?」

「私たちか?私たちは幻侍郷で暮らしている上海人形たちだ。私は指揮武者上海人形、ここの者たちは足軽上海人形たちだ。装備している物によって細かい名は変わるけれど。あの甲冑を着た上海人形は武者上海人形。そして私はこの者たちを指揮する者としてここにいる。今、私たちが警戒していたのは幻蛮郷の侵攻があったからだ」

 

 霊夢と魔理沙は目の前の上海人形が言っていることがイマイチ分からなかった。なぜなら、自分たちが何処にいるのか分からないのにさらに聞いた事のない場所の名前を聞かされたからだ。

 原初の幻想郷はかろうじて幻想郷の名が入っていたから分かったものの、幻侍郷と幻蛮郷に至ってはちょっと幻想郷に似てるなぐらいにか感じれない。

 

「あなたは…その……この幻侍郷というここに生活しているのね?」

「ん〜……よく分からないんだぜ…」

「まぁ原初の方に私が説明しても分からないだろうから私たちの主様に聞いてもらった方が早いと思いますよ」

「え?あなたたちに主とかいるの?」

「それはもちろん。むしろいない方がおかしいですよ?私たちの主は……」

 

「敵だ!こっちに隠れていた!」

 

 少し離れた所から誰かの叫び声が聞こえる。それを聞いた指揮武者上海人形は仲間の声と判断し、周りに指示を出す。

 

「全員!敵が来るぞ!原初の方々を護衛しろ!」

「「「はっ!!」」」

 

 霊夢と魔理沙が慌てる間もなく二人を守るように大きな木製の盾を持った盾武者上海人形たちが囲む。その周囲には槍を持った槍足軽上海人形と刀と盾を持った盾足軽上海人形が囲む。敵が来るであろう方角には指揮武者上海人形を筆頭に先程見た強そうな武者上海人形と弓を持った弓足軽蓬莱人形が隊列を組んで待機する。

 

 しばらくすると多くの足音が近付いて来るのが分かる。そのまま待てば、刀を腰に携えて逃げる一人の上海人形とその後ろからそれを追いかける見たことのない装備をした上海人形と蓬莱人形、そしてその集団の先頭に両手斧を持った魔理沙が走って来ていた。

 

「え?魔理沙?どういうこと?」

「なんで私がいるんだぜ?しかも…ヤバそうな雰囲気だぜ」

「霊夢様たちには指一本触れさせませんよ…全員、逃げている仲間を助けた後、奴らを皆殺しにしろ!」

「はい!」

 

 盾足軽上海人形たちが前に並び、刀と盾を前方に向ける。その盾の間から槍足軽上海人形たちが槍を構える。弓足軽蓬莱人形たちは後方に並ぶ。盾足軽上海人形たちの中心には武者上海人形が刀を両手で持って横立ちで立っている。

 逃げていた足軽上海人形が盾足軽上海人形たちと合流した時には後ろから追って来ていた両手斧を持った魔理沙たちは止まっていた。

 

「なんだ?ここにもまだ生き残りがいたのか?」

「ふん、幻蛮郷の奴らに好き勝手させるわけないだろう?」

 

 指揮武者上海人形と両手斧を持った魔理沙が喧嘩腰で話す。その間、侍側と蛮側の上海人形たちはじっとして何が起きてもいいように武器を握って待機していた。

 

「お前らの後ろに誰かがいるようだが…全員血祭りに上げてやる!」

「やってみろ!貴様らの首を刈り取ってくれるわ!」

「「全員…突撃ぃっ!!」」

 

 二人の号令と共に配下の上海人形たちが一斉に動き出す。先頭にいた足軽盾上海人形たちは盾を構えたまま小走りで突撃、雑兵蛮上海人形たちは持っている盾も構えず、剣や斧を振りかぶって突撃する。

 先頭集団がぶつかった瞬間に戦闘は始まった。ある盾足軽上海人形が刀を振って蛮側の雑兵蛮盾上海人形の体を袈裟斬りにしたり、また、ある雑兵蛮盾上海人形が槍足軽侍上海人形の頭に斧を振り下ろし、かち割っていたりと壮絶な戦いが繰り広げられた。

 一方、隊長格の指揮武者上海人形と両手斧を持った魔理沙は中央で向かい合っていた。

 

「私の名は指揮武者上海人形。この領地の港湾要塞の主、将軍薙刀武者レミリア様に仕える十二家臣長が一人!」

「私の名は指揮蛮斧士魔理沙。侵攻部隊の突撃隊長の一人だ」

「いざ尋常に…勝負!」

「かかってきな!」

 

 指揮武者上海人形が高く振り上げた刀を振り下ろし、それを指揮蛮斧士魔理沙が両手斧の柄で受け止めた形で勝負が始まった。両手斧の振り回しを避けたり、あるいは刀で受け流したりなどの戦闘を繰り広げ、両者互角の戦いをしていた。

 しかし、指揮蛮斧士魔理沙は終盤で両手斧を片手で持って片腕の腕力で薙ぎ払い、指揮武者上海人形の腹に斧の頭を当てて吹き飛ばす。そのまま指揮武者上海人形は木に叩き付けられる。他でも足軽上海人形たちが雑兵蛮上海人形たちの猛攻で次第に不利になっていった。

 その戦闘を見ていた二人は盾武者上海人形たちに守られながらハラハラしていた。

 指揮武者上海人形の右手から指揮蛮斧士魔理沙が持っていた刀を遠くに弾き、その頭に両手斧を振り下ろそうとした………

 

 瞬間、離れた所から指揮蛮斧士魔理沙の右手に矢が放たれ、その腕を貫いた。

 

「うがぁっ!……クソォ!誰だぁ!?私の腕を射った奴はぁ!」

 

 指揮蛮斧士魔理沙が叫んだと同時にこちらに向かってくる多くの馬の走る足音。その音はすぐに接近してきて、その姿を現す。

 

 先頭には雲と紅い満月と七色の宝石が付いた羽を持つ蝙蝠のクレストが着いた赤い兜を被り、真っ赤な甲冑を纏った右手に両刃型の柄の長い大斧を持ったフランが馬に乗っていた。周りの馬には武者上海人形が刀や槍、弓を持って乗っていた。指揮蛮斧士魔理沙の腕を矢で射抜いたのはその中の馬に乗った弓武者蓬莱人形だ。

 

「なっ……援軍だと!?」

「指揮蛮斧士魔理沙。お前の首、ここに置いていってもらうわよ!」

 

 馬に乗ったまま走ってきた武者フランは指揮蛮斧士魔理沙の首を片腕で振った大斧で一瞬で斬り落とした。

 指揮官を失った雑兵蛮上海人形たちは援軍の武者上海人形たちに全員斬り殺された。

 

「指揮武者上海人形、大丈夫かしら?」

「副将大斧武者フラン様…!…申し訳ありません……」

「いいわ、気にすることではないわよ」

 

 木に寄りかかっている指揮武者上海人形の前まで来た副将武者フランは馬から降りて左手を差し出す。その左手を指揮武者上海人形は握り返し、立ち上がる。が、上手くバランスを取れず、配下の武者上海人形と武者蓬莱人形が急いで支える。

 

「副将大斧武者フラン様、ありがとうございました。おかげであの方たちを守れました…」

「あの方たち…?それは誰のことだ?」

「あそこにおられる原初の二人です、偶然出逢いまして……」

「なるほど…御苦労、しっかりと休んで頂戴。港湾要塞にいた敵は全員退けたわ。ここが最後の戦闘地区だったから間に合ってよかったわ」

「はい、分かりました…」

 

 指揮武者上海人形は武者上海人形たちに支えられながら、足軽上海人形たちを連れながら要塞に向かった。

 

 一方、霊夢と魔理沙の前には副将大斧武者フランと馬から降りた配下の武者上海人形たちが立っている。

 

「あなた方が指揮武者上海人形が言っていた原初の二人ですか?」

「え、えぇ…一応そう言われているわね…」

「まぁ…原初なんだろうが……どういう事なんだぜ?」

「ふむ………詳しいことは言えませんが…ここは別の幻想郷ということしかできませんね。詳しいことは姉の将軍薙刀武者レミリアに聞きましょう。どうぞ、馬に乗って下さい」

 

 副将大斧武者フランが誰も乗っていない馬を二頭呼び、乗るよう二人に促す。二人はお礼をしながらそれぞれ馬に乗る。副将大斧武者フランたちも馬に乗り、要塞に向かって走っていく。

 




閲覧ありがとうございました!今回の内容はどうでしたか?様々な評価、お待ちしてます!これからもゆっくりと投稿します、気長にお待ちください! 
それとキャラクターの細かい設定などはTwitterなどに質問があったキャラのをツイートしていこうと思います。Twitterは土門一家とユーザー検索してください。

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