なので改行がおかしい事になっていて読みづらいです、ごめんなさい
人間が嫌いだった。
日本人だとか外国人だとか、美人とかブスとかイケメンとか、男とか女とか関係なく、人間が嫌いだった。
人間は自分より弱いものに標的として定め、搾取する。
自分より強いものに挑むものは、よっぽどの物好きか、ただの馬鹿か。
だから俺は観察をした。
俺から搾取する側の人間を、見て、視て、観て、覗た。相手の一挙一投足、細かい仕草や癖、動揺、愉悦。
そうしていくうちに、相手がどんな人間か、何が得意で、何が苦手か。その気になれば後ろめたいことだって、見てわかることは何でも分かるようになっていた。
初めて貴女に出会ったときでさえ、あなたを観察する所から始めた。
杖をついている、発育不足な小さな身体、それだけの弱点を抱えながらも、その器の大きさに、俺は心底恐怖した。
ただ俺が必要だと言ってくれて、その言葉に嘘偽りなんてなくて、本当は分かっていたのに、俺にはそれが信じられなかった。
だから俺は貴女から逃げてしまった。一度ならず、二度三度と。そうしなければ、俺は貴女に絆されそうで、でも本当は心の何処かで、それを望んでいて、でも俺が必要だとしても、俺には貴女の隣に立つ資格なんてあるわけ無くて、後から追いかけるのでさえおこがましい。
何度も何度も俺のもとへと訪れて、何度も何度も俺を欲しいと言ってくれた貴女に報いる為ならば、貴女の道を阻むものは俺が排除いたしましょう。
オレの持てるもの全ては、貴女の物だ。あなたが望めば俺はなんだって致します。死ねと言うならばここで命を断ちましょう。
殺せと命じるなら、相手が貴女でもその命を刈り取りましょう。
あなたを満足させろと言うならば、如何なる手段も用いようとも、貴方を満足させましょう。
それが俺の、存在意義なのだから。
# # # # # # # # # #
自販機で無料のミネラルウォーターを買い占めて、寮の自分の部屋に戻ったのが午後六時くらいのこと。
備え付けのガスコンロと調理器具と無料食材で軽食を作り終えたのが午後七時ころ。
ベランダに出て星を眺め始めたのが午後七時半ごろ。
(やはり、この時間が一番落ち着く)
彼の趣味らしい趣味といえば星を眺める事くらいのものだった。彼が過去に出来た事がそれくらいのものだったこともあるが、無心になれる時間が、彼は何よりも好きだった。
(施設の灯りが少々邪魔だが、我慢できない程ではない)
星を眺めながら、軽食をつまみ水で喉を潤し、今日あった出来事を振り返っていた。
(堀北学との邂逅、そして、Bクラス)
一之瀬に対して放った『軽犯罪者』という言葉。彼は彼女の過去を知っているわけでも、彼女の知り合いでもない。
ただ似ていたのだ。過去彼が過ごしていた場所に集まっていた、ろくでもない人間に。
そういった人間の話を盗み聞いていると、やれ警察の世話になっただの、犯罪行為の自慢ばかり聞こえてきた。
そしてその軽犯罪から生じた出来事が、彼女がBクラスたる所以である。それを見抜いて、彼は彼女に器ではないと言った。
(あいつがトップである以上、Bクラスまで上がることはそこまで厳しいことではない。だが、あっさりBクラスまで上がったとして、お嬢はきっと満足しない。せいぜいぎりぎり潰れる直前まで、足掻いてもらおうか)
そして彼のもう一つの目的、綾小路清隆について
(今日のあいつだけを見れば、自己紹介を失敗した痛いやつ、もしくはコミュ障と言った印象を受けるだろう。しかし、あいつはまだ底がしれない。お嬢が興味を抱いているから、では無く、あいつを放置するのは危険極まりない)
まだ様子見、そうせざるを得ない状況であるが、舞台さえ整えば、お嬢の元へと導こう。例えそれが本人は望まない結果だとしても。
だが、お嬢を倒すのは綾小路清隆であってはならない、彼女を満足させ、敗北を知らない彼女を完膚なきまでに叩きのめすのは、『−−−』だ。
# # # # # # # # # #
次の日の朝、彼が登校するために寮の部屋を出て、エレベーターでエントランスに出る。
「や、やっほー……」
エントランスに出ると、そこで一之瀬に声をかけられた。
「何の用だ、一之瀬帆波」
「い、いやあ……昨日のことについて聞きたいことがあったから、ここで待ってたんだけど……」
「昨日の今日で、よく話しかけようと思ったな。感心した心の底から、な。それで、何が聞きたい?」
「聞きたいことは二つ。一つ目は−−−ってちょっと?!」
一之瀬が話し始めたと思ったら、有平はスタスタと歩き始めてしまった。
そんな有平を慌てて追いかけ、
「待ってよ、話聞いてくれるんじゃなかったの?」
「歩きながらでも出来るだろ。何か不都合が?」
「……いいや、何も無いよ」
# # # # # # # # # #
「ほぇー、つまり私達が学生の普段の行動によって、毎月貰えるポイントは変動するわけか……そしてそのポイントが高ければ、Aクラスに行けるわけね」
「ま、お前たちがAクラスに行くことはないだろうがな」
「む、なんでそんなことが言えるのかな?まだ会って二日目だし、この先のことは分からないでしょう?」
歩きながら有平はこの学園の仕組みを一之瀬に教えていた。敵に塩を送っている形だが、まだ朝早いため周りに学生はいない為、有平は咎められない。
「昨日言っただろう。お前は器じゃない。お前がトップの間は、Bクラスだって危ないからな」
「へえ……一目見て、器なんて測れるんだ……言っておくけど、その測り、誤ってるかもよ?」
挑発するような物言いだが、有平を欺くには足りていない。元々、一之瀬帆波という人間が化かし合いに向いていない性格ということもあるが、相手が有平でなければ、あるいは欺けていたかも知れない。
「目が若干泳いでいる。神崎隆二なら、まだマシだったろうに。それに、お前だから無理というわけではない。恐らく、というか確実に、Aクラスは卒業直前まで不動のトップだ」
「まだわからないーーー」
「分かるさ。俺がお嬢の器を測り間違えるなど、起こってはいけない。お前たち一般生徒と違って、俺が生きてきた世界は、地獄に程近かった。人の観察に失敗したら待っているのは、身ぐるみ剥がれて野ざらしか、死だったからな」
「…………」
絶句していた。彼が語った過去の一部がそれほど悲惨で、考えられるものでは無かったからだ。
「まだ話したり無さそうだが、どうやら時間切れだ」
歩きながら話しているうちに、彼らは学校に到着していた。
「続きが気になるようなら、放課後俺の部屋に来い。部屋番号は501だ」
有平は一之瀬を置いて学校に入っていった。
# # # # # # # # # #
この学校の授業は、初回という事もあって、ガイダンスなどが主だった。教員たちも、国が運営している学校の教員と思えない程気さくな人物が多い。
驚くべきは、授業中に携帯を使っている学生がいようが、注意しようともしないことだ。
しかし有平はその学生たちを見て、落胆する思いだった。
(まさか、初っ端からこんな状態だとはな……この分では、来月のポイントは絶望的だ)
本来なら、彼がその学生を殴ってでも止めたいところだが、あまり表立ってクラスで行動するわけには行かない。
それが理事長との約束だからだ。昨日のように、クラスが絡んでいない行動なら自分勝手しても何も言われないが、クラスポイントに関わることは、積極的に動けない。
(まぁ、人間として生きていく最低限の保証はしてくれるから、ポイントは使わなくとも生きていけるのだが)
彼以外の学生は、昨日の時点で多かれ少なかれポイントを消費しているが、彼が昨日消費したポイントは0なのだ。
昼休みになり、有平は食堂へ向かった。自炊してもいいのだが、食堂には無料で食べられる山菜定食がある。これを食べることでポイントの消費を0に抑えることができる。
無料と言うこともあって、味は酷いものだが、過去いつ食事にありつけるか分からない日々を過ごしていた彼からしたら、無料で手に入る食材も、日用品も、水も、食事もとても有り難みを感じるものなのだ。
放課後になり、学生たちは各々行動に移る。
今日は放課後に部活動紹介があり、それに向かう物、部活に興味が無いものは放課後を満喫するために。
部活動に関しては、特に制限されていないが、興味のない有平はさっさと寮に帰る為に教室を出る。
「ねえ、坂柳くん」
そんな彼に声を掛けてくる人物がいた。クラスの人気者の地位を確立しつつある櫛田桔梗だった。
「何の用だ、櫛田桔梗」
「あのね、昨日クラスの人たちに連絡先を聞いて回っていたんだけど、坂柳くん、聞く前にいなくなっちゃってたからさ。ね、連絡先教えて?」
「…………」
正直、教えたくない。一目見たときから分かっていた二面性。他のクラスメイトの殆どは気づいていないようだが、彼は分かる。
そして教えなかった際の、クラスメイトから来るバッシングの対処それはそれで面倒だ。
教えた後に連絡を取らなければいいかと思い、胸ポケットに入れている携帯を櫛田に渡す。
「好きにしろ、終わったら返せ」
「あ、ありがと……」
まさか携帯そのものを渡されると思っていなかったのか、彼女は少し戸惑いながらも彼の携帯の連絡先を登録する。
「はい、登録終わったから返すね」
携帯を受け取り即座に胸ポケットにしまう。何かされたと疑ってるわけではないが、一刻も早く彼女から距離を取りたかった。
恐怖ではなく嫌悪、その感情こそ、有平が櫛田に抱いた感情である。
特にすることもなかったので、寮の自室に到着し、荷物を置いて、学校指定のジャージに袖を通した。
夜に向けての軽食を作っていると、不意に部屋のチャイムが鳴らされた。
誰か訪問してくる予定もあるはずは無い。有栖とは学校内であまり接触しないようにしている。彼女の父親が、何に難癖をつけてくるかわからない為だ。
だから携帯の連絡先にも有栖の名前はなく、現在登録されているのは櫛田のみとなっている。
軽食作りを一時中断し、ドアを開けると、そこにいたのは今朝あったばかりの一之瀬だった。
「何しに来た?」
「今朝の話の続き、してくれるって言ったじゃん」
そう言えばと思い出す。彼にとっては一之瀬であろうとそこらの有象無象と大差無い。
顔と名前は覚えるが、話していた内容までは記憶していない。関わりが深ければ別だが。
取り敢えず彼女を部屋に通しベッドに座らせる。自分は備え付けの学習机の椅子に座った。
「それで、他に何が聞きたいんだ?」
一之瀬は大きく深呼吸を二度三度と繰り返した。それほど彼女にとって重要な話なのだろう。
「……昨日、私のこと軽犯罪者って言ってたけど……君は、私の何を知っているのかな……?」
なんだ、そんなことかと嘆息する。彼が生きてきた世界からすれば、彼女のしたことは大したことではないと思っている。
「お前の事なんて何も知らない。昨日が初対面だったからな」
「だったら……!だったら一体何なの!君は私の何を知っているの!答えて!」
「だから何も知らない。知らないが、一目見て分かった」
ゆっくり人差し指を上げ、彼女を指差す。
「お前、万引き犯、だろ?それがお前が上へと這い上がるに足らない器の小ささの原因だ」
一之瀬は顔をクシャリと歪め、下を向いてしまった。
「何で、分かったの……?誰にも打ち明けるつもりも無かったのに」
「身に纏う雰囲気は取り繕うことは出来ても、変えることはできない。たしかにお前は、雰囲気を取り繕うのは上手かったさ。だからこそ、Bクラスのトップに立てている」
「…………」
「今朝の会話を思い出した。確か、観察眼が優れてるって言ったよな?俺はお前みたいな雰囲気のやつ、何百人と見てきた」
「…………」
「なあ一之瀬帆波、俺はーー」
ー実の両親捨てられて、ずっと路地裏で生きてきたんだぜ?ー
アンチヘイトのつもりはありません