まどマギに三体危機をぶちかましてみたwww 作:ryanzi
危機紀元初期の風景
-Crisis Era 3-
羅輯は日本のとある市街地を歩いていた。
彼はそこがどこなのかわからなかった。
理由はひとつ、そこがどこだかわかったら、世界が小さくなってしまうような気がするからだ。
数日前、羅輯はまた恋人と別れてしまった。それはもう日常茶飯事となった。
だからといって、これは傷心旅行ではない。ただ、旅行したかったから、日本に来たのだ。
電化製品店の店頭にあるテレビ、人々の会話からは聞きたくない言葉が聞こえてきた。
逃亡主義、技術公有化、ETO、戦時経済への移行、赤道起点、PDC、憲法九条の改憲・・・。
特に、憲法九条の話題がなぜかよく聞こえてくる。理由は明らかだった。
デモ団体が憲法九条改憲反対の声を上げているからだ。
彼らの主張はこうだった。
「三体星人がそもそも本当に実在するかは定かではないし、仮に存在したとしても話し合いで解決するべきだ。改憲は、日本が戦争をできる国にするための陰謀だ」
懐疑主義と平和主義の入り交ざった叫びが次々と聞こえてくる。羅輯はうんざりした。
空港のすぐ外でも似たような団体が署名を求めていて、電車の広告にもそんな意見があって、駅を出てすぐに(駅名は見ていなかった)デモに遭遇したからだ。
なんという国家だろうか?ここまで生存に消極的な国家は宋王朝以来ではないだろうか?
羅輯はあたりを見回した。中華料理店がひとつあった。名前は中華飯店万々歳。実にふざけた名前だ。
だが、デモ団体の叫びを聞かずに済むだろう。それにお腹もすいている。
-CASE:中国・北京-
「
老張の目的はただ一つ。逃亡ファンドを買うことであった。確かに彼が生きている時代には恒星間移動技術は完成しないだろう。
しかし、中国では子孫の存続が重要な価値観のひとつであった。
「あなたのお孫さんは船団の出発を見ることになります」
「孫は乗れるかね?」
「いや、それは不可能です。でも、お孫さんの孫は乗れるかもしれません」
「ということは・・・」張援朝は頭の中で計算した。「七、八十年先か」
「それより長くかかりますね。戦時下の政府は人口抑制策を強化し、産児制限に出産間隔規制を導入するでしょうから、一世代は四十年くらいになるでしょう。脱出船団はだいたい百二十年後に出発することになります」
「ずいぶん早いな。そんな期間で船が造れるのか?」
それからも会話がしばらく続いて、史暁明は部屋を出て行った。
老張はベランダに出た。街明かりで少しかすんだ星空を仰ぎ見て、心の中でつぶやいた。我が子孫よ、永遠に夜がつづくあの場所へ、じいちゃんはおまえたちをほんとうに行かせるんだろうか?
-CASE:日本・永田町-
井上宏一は銀河英雄伝説を読んでいた。
こうしたひと時を彼は愛していた。なにしろ、彼は国民を戦争に直面させるという使命があったからだ。
元来、彼は戦争が好きな人間ではなかった。それは誰であろうと同じ事かもしれない。
彼の頭を悩ませている問題はもう一つあった。逃亡主義だ。多くの日本国民は戦争をするくらいなら、宇宙に逃げることを望んでいる。
しかし、これには最悪の問題があった。それは技術面の問題ではない。倫理面の問題なのだ。
だれかが去り、だれかが残る。これは江戸時代のような封建時代なら一瞬で解決しただろう。
しかし、今は現代だ。
生存圏の不平等は、最悪の不平等だ。生き延びることを約束された人々がいる一方で、残された人々は本当にそれを受け入れるのか?ありえない。
味はまあまあだった。数値化すると五十点くらいが妥当であろう。
その一方で、看板娘はかわいかった。名前は由比鶴乃というらしい。
「最近、食材の値段が高くなっちゃって・・・。うちの店も危なくなりました」
というのは彼女が言ったことだ。この豊かな日本にも危機紀元の影が迫りつつあるのだ。
羅輯はデザートに杏仁豆腐を注文して、言った。
「この時代って、どうしてこんなに退屈になったんだろうな」