異世界をヴァーディクトウォーに巻き込まないでください(懇願) 作:COTOKITI JP
西暦2XXX年、世界は核ならぬコジマの緑に……と言ってももう年を数える人もいないので今が何年かは分からない。
「…………ク……!」
荒廃した土地に住むのは戦場の空気に脳をやられちまった渡り鳥共と武力による支配体制を築いた三大勢力。
そして今も尚、戦いは続いている。
こんな救いようのない世界だが、まだ滅んでいないという事は何かしらの価値があるのかもしれない。
「……ック!!」
かくゆう自分もその戦場に取り憑かれてしまったしがない孤独な傭兵だが。
一度戦場に足を踏み入れてしまった者は、死するその時まで戦場の景色が、匂いが、感触が永遠にまとわりつき続ける。
「おいレニック!!」
耳元から聞こえて来た突然の怒声に思わず飛び上がってしまった。
どうやら眠っていたようだ。
目を覚ませばそこには見慣れたコックピットがあった。
全周型モニターは点いておらず、機体の操作がロックされているのでまだ輸送中か。
「あぁ……すまんな。 寝てたみたいだ」
取り敢えず無線越しに僚機に向かって話しかける。
「
「まぁ落ち着け、奴の腕は確かだぞ。 少なくとも俺らと比べれば雲泥の差だろうさ」
無線で不満を垂れ流す僚機を更に別の僚機が宥める。
親しげに見えるが、これでも俺達は全員初対面だ。
初めて顔を合わせたのは今朝のブリーフィング。
傭兵とは皆大体こんなものだろう。
グチグチと煩い奴がミシェル。
そしてそいつを宥めているのがユーリ。
ブリーフィングで話を聞いた感じだと二人とも傭兵としてそれなりの経験はあるらしい。
撃破スコアを聞いてみたが、ミシェルはヘリコプターやMBT、装甲車、MTを多数撃破しており、ベテランと呼ぶに相応しい戦果を挙げていた。
ユーリに至っては敵のネームドACを一機撃破している。
「そういえば、アンタの撃墜スコアは聞いてなかったな」
「確かにヴェニデの切り札、『ライトニングホーネット』の撃破スコア、気になる所だ」
「あぁ……確か───」
「間も無く降下ポイントに到着!降下に備えろ!」
突然の無線に三機の間に緊張が走った。
急いでコックピットのシートに座り直し、ベルトをしっかりと装着する。
計器盤の下にある鍵穴のような穴に自分のIDの入ったキーを挿し込む。
すると全周型モニターが一気に点き、HUDが表示される。
最早見飽きたACの起動手順。
HUDが表示された後には決まってあの言葉が聞こえてくる。
男の機械音声だ。
『メインシステム、パイロットデータの認証を開始…………おはようございます。 メインシステム、戦闘モードを起動』
「対空攻撃でこれ以上は近付けねぇ!もう投下しちまうぞ!」
輸送ヘリのパイロットの声と共に強い浮遊感を感じた。
ACとの連結部分が解除されて投下されたのだ。
すかさずメインブースターを吹かして落下速度を抑える。
重々しい音と共に地に足を付けたのは鈍重な装甲を身に纏ったAC、即ち重量二脚のACだった。
「ライトニングホーネット、戦闘開始する!」
「ローチ、行くぞ!」
「トータス、出る!」
ミシェルは軽量二脚、ユーリはガチタ……ではなくタンク型ACだ。
ローチの武装は見た感じショットガンにとっつ……パイルバンカーと近接仕様のようだ。
トータスはガトリングにオートキャノン。
中距離支援型と言った所か。
降り立ってから少し進むと早速レーダーとモニターに複数のunknownが表示された。
『システム、スキャンモード』
スキャンモードでこの市街地に潜む敵を粗方捕捉する。
「戦車と攻撃ヘリしかいねえ、情報通りだ!」
フリーの情報屋から得た敵情報なのであまり期待はしていなかったがどうやら当たりらしい。
まず自分のライトニングホーネットは敵の攻撃ヘリに真正面から攻撃を仕掛ける。
こちらを捕捉した攻撃ヘリがATGMを放つ。
それは此方も予測しており、ATGMが着弾する前に右手に持ったライフル、『TANSY RF12』をヘリに向けて発砲する。
120mmのAPFSDSが二発放たれ、弱々しいヘリの装甲を穿つ。
FCSが戦闘領域中にいる攻撃ヘリ全てを捕捉し、次々と撃ち落とす。
先にヘリを叩き落としておくのは重要な事だ。
成形炸薬弾も旧時代に目まぐるしい進歩を遂げており、その貫徹力は1000mmを優に超える。
流石にACと言えど耐えられるものではない。
市街地上空で散らばって飛行していた攻撃ヘリ群はあっという間に各個撃破され、全滅する。
「ハエは叩き落としておいてやったぞ」
「あとはMBTだけだな」
ヘリを全滅させた後、リコンを射出し、戦車部隊の位置を特定する。
しかし敵の規模を確認すると違和感を感じた。
今回の任務はヴェニデの所有する工業地帯の防衛だった。
それも只の工場ではなく、
ある試みとは、オーバードウェポンの量産化である。
一般兵向けに威力等を調整し、パージ不可能という意味不明な機能をオミット。
エネルギーに関してはオーバードウェポン用の別のジェネレーターを取り付けるそうだ。
つまり、何が言いたいかと言うと、オーバードウェポンの量産化は相手にとって脅威である筈。
にも関わらず、ACがいないどころか戦力がMBTと攻撃ヘリが少数しかいないのはおかしい。
「さっさと終わらせて、帰ろうぜ!」
もしや、と思った時、市街地から遠く離れた丘で何かが光ったのを視認した。
やはり情報は間違っていた!
「おい!ミシェル下がれ!」
「あん? いきなりどうし──」
唐突の爆発音。
途切れる無線に慌ててミシェルの方を見れば、そこには上半身と下半身が真っ二つになったローチの姿があった。
数秒遅れて、ローチが爆散した。
ミシェルはもう生きてはいないだろう。
「ミシェル!!」
「ユーリ!急いで建物の陰に隠れろ!!敵ACを捕捉した。 六機は来てるぞ!!」
「なっ……まさか、あの情報屋騙しやがったのか!!」
「傭兵にはよくある事だ。 とにかく対AC戦に移行するぞ」
先程の狙撃。
間違いなくあそこの丘にスナイパーキャノン持ちがいる。
残りの六機は散開しながら戦闘区域に侵入してきている。
「司令部に増援を要請しろ! 俺は出来るだけ工業地帯に入る前に食い止める!」
そう言い、ブーストを吹かしながら市街地の中心へと向かう。
『システム、戦闘モード』
TANSY RF12を構え、ACが通過しようとしていた交差点に躍り出る。
敵もこちらを視認したらしく、攻撃をしようとするが、その前に砲弾を叩き込んでいく。
まずは一機。
右腕武装を破壊し、左足を撃ち抜いた。
そのまま離脱。
半円状の軌道を描きながら再度攻撃を仕掛ける。
今度はこちらの攻撃を予測していた敵が一斉射撃を仕掛けてくる。
だがこちらのライトニングホーネットは重量二脚。
たかがライフルやガトリング程度ではこちらの装甲を貫徹することは不可能。
ブーストを最大限に吹かし、ガトリングをばら蒔いている軽量二脚に肉薄する。
そして敵の軽量二脚にブーストチャージをカマした。
装甲の薄い軽量二脚は段ボールのように潰れ、コックピットハッチの隙間からパイロットの物であろう血液が吹き出した。
また離脱し、交差点の奥へと隠れようとするが、目の前にまた別の軽量二脚が飛び出してきた。
突っ込んで来た敵が左腕を後ろに下げる動作をした。
それですぐにパイルを使おうとしている察した自分は思い切り後ろへと飛んだ。
先程まで自分がいた場所には敵がパイルを振りかぶっていた。
飛行した状態でライフルを発砲するが、敵軽量二脚は恐るべき速さで攻撃を回避し、ビル群の陰に逃げ込んだ。
その際に、敵のエンブレムがチラリとだが確かに見えた。
恐らく今までで一番見た回数の多いエンブレムだ。
「レニック!もうじき増援が到着する!死ぬんじゃないぞ!」
「了解、それとユーリ、気を付けろ。 敵の軽量二脚の内の一機、エースパイロットだ。 こいつは俺に任せろ」
「分かった!雑魚はこっちに任せろ!」
「お前はタンク型だ。 あまり前に出すぎるなよ」
それだけ言って敵の軽量二脚を追う為にブーストを吹かす。
リコンによればまだそう距離は離れていない。
「これは偶然……ではないだろうな。 あちらが仕組んだものだろうな。 であればこのチャンス、逃す訳にはいくまいな……」
オープンチャンネルで敵に向かって言い放つ。
「なぁ、『ドライゼ』!!」
同時刻、別世界の日本の銀座にて、ゲート開通。
世に感想のあらんことを