異世界をヴァーディクトウォーに巻き込まないでください(懇願)   作:COTOKITI JP

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夏休みが来た。
やったぜ。

それと今回は記念すべき十話目です。


イレギュラー

今自分は夢を見ている。

自分でこれが夢と認識できているということはこれは明晰夢というものなのだろう。

レニックが見せられているのは嘗ての戦いの記憶。

当時の自分を第三者視点で見ている事にレニックは新鮮さを感じていた。

 

殺戮と、裏切りの日々。

自分は、それを否定する事は一度たりとも無かった。

敵だけじゃない。

何の罪も無い人々を、仲間を、友を、依頼主を、果てには自分の育ての親ですらこの手で殺してみせた。

 

無線越しに聞いた彼らの声を忘れることは無い。

 

『な、何をするんだ!? よせ、止めろ!! 俺は敵じゃ──』

 

『騙して悪いな………だが、俺とて金で雇ってもらっているんだ』

 

仲間。

 

『何故だ……!? 何故そうまでして戦いを求めるんだ!? こんな事、何の意味も無い!!』

 

『平和などというまやかしを信じるお前には分かるまいよ!! 戦場に取り憑かれた者の心など!!』

 

友。

 

全てを壊した。

二度と視界に映らぬように。

完膚なきまでに。

 

『お前さえ……お前さえいなければ父さんと母さんはッッッ!!!』

 

『卑怯者が!! 貴様など……!!』

 

『お前は危険だ……今すぐにこの世から抹消せねばならない!』

 

『あれだけ殺しておいて……まだ戦うか!!』

 

そして、

 

『まさかお前が候補者になるとはな……人の可能性……お前にならできるか……』

 

育ての親に銃口を向けた。

 

『最大の感謝と尊敬の意を持って、お前を殺す!』

 

二人は動き出す。

 

『可能性を証明してみせろ…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レニック!!』

 

 

 

「ッ!」

 

反射的に目が開く。

夢が覚めたようだ。

上半身を起こして時計を見る。

時刻はまだ五時半、起きている者はあまりいないだろう。

 

自衛隊の基地に運び込まれてから結構経ったが、腹の傷は完治とは言わないが日常生活が送れるくらいには回復した。

現在はコダ村という村に建てられたキャンプ地に住んでいる。

住民は全員が怪我人や老人、親を亡くした子供だ。

 

怪我が治ってからというもの、黒川ではなく別の知らない自衛官に個室で色々な事を根掘り葉掘り聞かれ、流石に疲れた。

ヴェニデの機密事項などは話さなかったが、その他の自分の世界の事や一般常識などは話した。

 

アーマードコアの事。

三大勢力の事。

ヴァーディクトウォーの事。

傭兵について。

現在の世界情勢。

 

これだけ話してやれば彼らは満足し、レニックの衣食住は彼らによって保証される事となった。

 

「外でも歩くか……」

 

特にやる事も無かったレニックは適当に服装を整えると部屋から外へと出た。

まだ早朝なので、僅かに薄暗く気温も低い。

誰もいない道をレニックは目的地も無く歩く。

隣に住んでいるテュカも未だ起きていないだろう。

住み始めた頃と比べて今のテュカはとても活発になり、誰かと話している姿をよく見るようになった。

彼女もすっかりここでの生活に慣れ親しんだようだ。

 

レニックも、既にテュカのジーンズとTシャツ姿というエルフに有るまじき服装に違和感を感じなくなっていた。

 

ボーッとしながらずっと足だけを動かして道を歩き続けている時、前に誰かがいることに気付いた。

身長はこちらよりも低い。

性別は女性。

真っ黒でフリルの沢山付いたドレスを来ている。

レニックからすれば美しいが、この世界での美醜の基準はまだよく分かっていないのでなんと言えば良いのか分からない。

 

レニックは彼女を一応知っている。

このキャンプ地の住人の一人である事。

 

そして、彼女が見た目だけの少女ではないという事だ。

 

「あらレニック、こんな時間にお散歩かしらぁ?」

 

「あぁ、お前もか? ロウリィ」

 

「えぇそうよ。 折角だし、お話でもどうかしら?」

 

「ちょうど暇だった所だ」

 

彼女はロウリィ・マーキュリー。

信じ難いが、彼女は亜神という存在であり、エムロイとかいうこれまたよく分からん奴の使徒の一人らしい。

しかし、身の丈以上はあるハルバードを棒切れのようにブンブン振り回す姿を直に見せられれば、少なくとも人間ではない事が分かる。

この世界に於いては結構知名度が高いらしく、死神ロウリィだの呼ばれているそうだ。

 

そんな彼女とレニックの関係だが、時々くらいは話す仲だ。

流石に初対面の時に「貴方、数え切れない程の人を殺しているわね?」などと言われた時は驚いたが。

神に隠し事は通用しないという事か。

 

彼女からしてみればレニックは面白い男なのかもしれないが、レニックからすればロウリィとの会話はまるで近所に住む婆さんの話し相手をしているような気分だった。

 

「それで、話って何を話すんだ?」

 

「貴方って元々傭兵なんでしょう? だったら傭兵時代の話を聞きたいわぁ」

 

「傭兵時代か、何を聞きたい?」

 

「今までに殺した人の数を知りたいわぁ。 ヴェニデとかいう軍の最高戦力の一人なんだから沢山殺しているんでしょう?」

 

レニックは少し考え、今までに挙げた戦果を数えてみる。

人単体の殺傷数はそもそも数えていないので分からない。

しかしACやMT、その他の兵器の撃破数はだいたい覚えている。

 

「そうだな……全てではないが、少なくとも1000人以上は殺しているだろうな」

 

「やっぱりそうだと思ったわぁ! 本当の意味の一騎当千ね」

 

殺した数が予想通り多かったのか、ロウリィは笑みを浮かべて喜んでいる。

 

「まぁ、傭兵なんて何千人殺したとしても大して得はしないがな」

 

「あらなんで? 傭兵というのは戦果に応じて報酬が貰えるものではないの?」

 

それを聞くとレニックは溜息をつきながら答える。

 

「確かに傭兵は出来高制だし、実際報酬はかなり貰ってる。 だが、その報酬の殆どはACの修理費、弾薬費、整備員の給料に持ってかれる。 俺が貰えるのは報酬の内の一割程度だ」

 

実際そうだ。

ACを駆る傭兵はその屈強さからよく若者の羨望の的になる。

しかし、傭兵というのは予想以上に生活が厳しいのだ。

報酬は殆どACの維持費に持ってかれる上に依頼主はあくまで依頼をし、報酬を渡すことしかしないため、傭兵のサポートなどはしてくれない。

 

「意外と損をする仕事なのね。 でもだったら何故レニックは傭兵になる道を選んだのかしら?」

 

「……それしか道が無かったんだよ。 俺は孤児だったし、住んでた孤児院も戦争で潰れた。 行く宛ても無かったから傭兵としての道を選んだ」

 

あの世界で行き場所を無くした者は死ぬか、傭兵になる。

そしてその傭兵の中から更に生き残る奴と死ぬ奴にふるい分けられる。

子供の頃から訓練を続け、ACを手に入れる事が出来たレニックは運良く生き残った。

運の無かった奴は皆死に、荒れ果てた大地の砂に埋もれる。

今やこの世界の状態に文句を言う者もいなくなった。

 

因みに孤児院が潰れたというのは経済的に破綻したのではなく、言葉通り物理的に潰れた。

砲撃が直撃したのだ。

しかもその時は夜間の奇襲だったので中にいる殆どが寝ており、逃げられずに吹き飛ばされて死んだ。

生き残っていたのは瓦礫の下に埋もれていたレニックただ一人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、本来ならばシリウスによるEGFとヴェニデへの同時攻撃作戦が実行される筈だった。

しかし、予定とは違い多くの兵器と兵士達は元来た道へと逃げ帰っていく。

その場にいる全員が混乱の渦に巻き込まれていた。

 

「こちら偵察隊より全部隊へ!『Ω標的』が進路を変更!こちらに真っ直ぐ向かってきている!!」

 

「ACは臨時の迎撃隊を編成し、Ω標的を迎撃しろ!!」

 

「Ω標的の速度、更に上昇──いか──粒─濃度が─────撤─せ───」

 

通信障害により、とうとう無線からは何も聞こえなくなってしまった。

この混乱の最中、俺達第88AC大隊はいち早く迎撃に急行。

Ω標的と呼ばれる物の座標まで移動していた。

 

「クソっ……あぁもう何なんだよ畜生!」

 

迎撃に出たはいいものの、無線が通信障害によって使えない為仲間と意思疎通ができない。

現在Ω標的はこちらに向かって一直線に来ている。

接敵する際は真正面からになるだろう。

そもそも俺達はΩ標的についてあまり知らない。

分かっているのは竜の姿をしている事と、体から汚染物質を垂れ流しているという事だけだ。

 

暫くすると、ヘレナ隊長のACの様子が変わった。

何か合図をしながら回避機動を取ろうとしている。

その意味を理解するのに少し時間がかかったが、俺と周辺の僚機はヘレナに続いて右に旋回した。

 

その時だった。

 

遥か前方から襲い来る緑色の閃光。

耳を劈く爆発音。

衝撃を受けて激しく揺れる機体。

 

「な、何が起こっ───」

 

爆発は後方で起きた。

何事かと後ろを見れば、そこにあったのは巨大なクレーターだった。

俺の後ろにいた僚機はいない。

恐らくあの閃光によって蒸発したのだろう。

 

閃光が放たれた方向から、何かが飛んで来る。

その速度は恐ろしく速い。

しかしそれは航空機ではない。

それよりも遥かに大きい。

緑光を纏いしその化け物は、空から俺達を見下ろしていた。

 

俺達はこの世界を侮っていた。

このような文明レベルの遥かに劣る世界など、脅威に成り得ないと鷹を括っていた。

確かにこの世界は俺達の脅威では無かった筈だ。

 

だがしかし。

今ACという最強の兵器が、たった一匹の蜥蜴に蹂躙されようとしていた。

 

「Ω……標的……!!」

 

 

 

 

 




炎龍「俺も仲間に入れてくれよ〜」

シリウス「何だこの化け物!?」

感想とブクマくれよな〜頼むよ〜。
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