異世界をヴァーディクトウォーに巻き込まないでください(懇願) 作:COTOKITI JP
敵の軽量二脚AC、『ドライゼ』を追いかけている内に、レニックは自分が戦闘区域から大分離れて来ている事に気が付いた。
それにドライゼの方も反撃してくる様子が無い。
どうやら、邪魔がいない所でやるつもりのようだ。
「タイマンがお望みか……」
「私は臆病なのでね。 一対一でないと君に勝てる自信は無いよ」
無線でドライゼが返事をした。
聞き慣れた、若々しく、知的で、ずる賢い雰囲気を醸し出す男の声を聞いて何故だか分からないがレニックは少し安心し、小さく溜息を吐いた。
自分が奴との戦いを望んでいたこと、その願望が奴の生存を願う事に繋がっていたのかもしれない。
今更気にすることでもないが。
「よく言うな、散々敵を蹴散らしておきながら。 にしても、お前EGFの部隊と協働していたようだが、シリウス・エグゼクティブスの次はEGFにでも鞍替えしたか?」
「そんな事は無いさ。 私は今は何処にも属していない、つまりフリーの傭兵だ」
「シリウスでの待遇が気に入らなかったのか?」
「いや、これまでの全ては今こうして君、レニックと決着を付けるためだけ行って来た」
ドライゼがその場で停止し、レニックのライトニングホーネットも止まる。
砂煙の吹き荒れる荒野に、二機のACが向かい合うように立っていた。
実を言えば、レニックはあのACの名前がドライゼであることは知っていたが、パイロットの本名までは知らなかった。
「そう言えば、今まで散々銃火を交えたのに、俺はお前の名前を知らなかったな。 今更ですまないが、教えてくれ」
「……ベッケルン・ラディール。 それが私の名前だ」
「いい名前だな……苗字があるのが羨ましい」
「そうか、君は戦災孤児だったか」
「あぁ、といっても死んだ親の名も顔も知らないがな」
そう言うと、ライトニングホーネットは両手に持った火器を構え、突撃の準備をする。
ドライゼもそれに反応し、構える。
互いのカメラアイが見つめ合い、幾秒の時が過ぎた。
「これが、良き戦いになることを願う」
「この戦いが、私の最期となるならば私は決して後悔しないだろう」
「さぁ、始めよう。 我々の闘争を!!」
二機のACは正面からぶつかり合った。
一方その頃、ヴェニデの総司令部は喧騒に満ちていた。
それは支配領域内で起こったある現象が原因だった。
しかし会議室の中はそれとは相対的に静寂に満ちており、全員が神妙な顔付きでそこに長テーブルを囲んで座っていた。
それもそうだ、その会議室にはヴェニデの指導者である男がいるのだから。
その名は、クリメント・ヴェニデ。
彼は元ヴェニデに所属していた傭兵だった。
元々、ヴェニデのリーダーとは血縁で決まる訳ではなく、その個人の強さで決められる。
当時ヴェニデ軍の中でも特に強かった彼がリーダーに選ばれたのだ。
「では中央区警備部隊長、現在の状況を教えてくれ」
「はっ!」
クリメントに呼ばれたその男は立ち上がり、直立不動のまま状況説明をはじめる。
「四時間前、中央区の市街地にて、正体不明の巨大な
「成程」
特に怒りも喜びもせず、クリメントは机に置いていたコーヒーに口をつけた。
「それと、歪み発生の際に走行中だった市民の自動車が誤ってそこに入ったのですが、それによってある事が分かりました」
「ほう、それはなんだ?」
無表情だったクリメントが少し興味ありげな顔をした。
「あの歪みの先は未知の空間に繋がっているという事です。 その運転手から聞いたところ、草原が広がっていたそうです」
「……草原?」
草原という言葉を聞いたクリメントは怪訝な表情をした。
この世界の土地において草原どころか草木一本とて生えることは無い。
それ程までに様々な汚染物質でこの土地が汚染されているからだ。
だが、彼はその歪みの先に草原があると言うのだ。
そこからクリメントの決断は早かった。
「その歪みの先へ、調査部隊を送り込め。 そしてその場所の安全が確保され次第、更に部隊を派遣し橋頭堡を築け」
「了解」
「派遣する部隊の編制はそちらに任せる。 ACも加えて構わない。 予算はこちらで何とかする」
「感謝します」
そして場面はレニックとベッケルンに戻る。
砂漠にけたたましく鳴り響くは砲声と金属同士がぶつかり合う音。
ライトニングホーネットの黒と黄色を基調とした塗装はドライゼの攻撃によりボロボロに剥げてしまった。
ドライゼの方も装甲が薄い分、損傷が激しく装甲が剥がれ落ちて中身が見えている部分もある。
「チィッッ、よくやるな!!」
「君にっ!褒められるなんてっ!光栄だねッッ!!」
ドライゼが猛スピードでライトニングホーネットの死角に回り込みその左手に持ったパイルを叩き込もうとするが、コックピットに直撃するコンマ数秒前に上方向に避けられた。
ホバー状態のライトニングホーネットは右手のライフルと左手のガトリングガン、『KO-5K4/ZAPYATOI』を同時に撃って動きを抑えながら肩部武装のKEミサイル、『UVF-17』を発射する。
「この火力……やはり軽量二脚では分が悪いね……!」
動きを抑えられたドライゼに近接信管を搭載した複数のミサイルが襲い掛かる。
幾ら高機動な軽量二脚であるドライゼでもこの状況では躱すのはほぼ不可能に近い。
「だけどね、私とてこれぐらいは予測してたさ!」
ミサイルの近接信管が作動する前に次々と撃ち落とされる。
結果的に両手武装による多少のダメージは与えられたが、ミサイルは決定打になり得なかった。
「CIWSか!」
一気に決めようとしてミサイルを全て打ち切ってしまった。
ガトリングガンは今ので完全に弾切れ。
ライフルもあと30発程度しか残っていない。
戦況が一気にベッケルンの方へと傾いた。
「このままではまずいな……!!」
ドライゼから距離を取ろうと、ブーストを吹かそうとしたその時だった。
機体を襲う凄まじい衝撃。
激しく揺れるコックピットの中で、レニックはほんの数秒だが意識を失った。
しかしその後すぐに身体中に走る激痛に叩き起される。
目を開ければ身体中が血に染まっていた。
パイロットスーツは引き裂かれ、装甲の破片があちこちに突き刺さり、肉を抉っている。
「ぐうっ……!!」
「判断を誤ったね……君は私に背中を向けるべきではなかった」
内部の回路が破損し、煙を上げるライトニングホーネットの目の前にドライゼが自らの勝利を宣言するかのように立っている。
これ程の損傷……パイルを叩き込まれたのだろう。
本来ならば今頃装甲の破片によってミンチになっていただろうが、こうして生きているのは最早奇跡と言える。
「何か、言い残すことはあるかい?」
再度パイルを構えながら最期の言葉を聞こうとする。
「……どうやら、今日も決着は付かなかったみたいだな」
「何を──」
その瞬間、側面から夥しい程の弾幕が襲って来た。
あまりの弾幕にパイルを装備していたドライゼの左腕が吹き飛んだ。
「何っ!?」
撃ってきたのはヴェニデの量産型ACとMTの混成部隊だった。
不意を突かれたドライゼは反撃よりも後退を選び、ブーストで距離を離す。
「まだ……死ぬ訳にはいかんな……」
その隙を見てライトニングホーネットは先程通った地下トンネルへ向けて移動する。
あと少しでやれそうな獲物が逃げているのを見たベッケルンは即座に追跡を開始する。
ライトニングホーネットが暗闇に包まれたトンネルの中へと入っていき、ドライゼもそれに続いた。
しかしトンネルに入った先での光景は異様なものだった。
余りにも暗すぎるのだ。
映像をナイトビジョンに切りかえても何も見えない。
ただ先に何かの光が見えるだけだ。
兎に角、今はあのドライゼから逃げなくてはならない。
そう考えて機体を加速させる。
光が段々と近付いてくる。
地下トンネルはそこまで距離は長くない筈なのだが、気の所為とは思えない程距離が遠い。
そしてとうとう光の中へと突っ込んだ。
《とある者の日記》
ある日の村での出来事だった。
突然空間が歪んだと思ったらその中から一匹の鉄の巨人が飛び出てきて大木に激突したと思ったら動かなくなってしまった。
皆が武器を持って警戒しながら近付くと、突然その巨人の体が開いて中から大怪我をした人間が転がり落ちてきた。
その時にはもう穴は閉じていた。
お父さんは取り敢えずこの人を保護して事情を聞いてみるみたい。
だけど……何故だろう………。
あの人が来た時からとても嫌な予感がして堪らない……。
考え過ぎだといいんだけど…………。
ハンサムなマスク(頭部パーツ)と均整の取れた体(機体)。
まだ粗製ミグラントの彼は、炎龍の調教に耐える事が出来るのでしょうか。