異世界をヴァーディクトウォーに巻き込まないでください(懇願) 作:COTOKITI JP
今回は結構話がキンクリします。
意識が朦朧とする。
自分は今、この微睡みの中で目覚めようとしている。
そして背中に感じるこの感触、どうやらベッドに寝かされているようだ。
あの後、友軍部隊に回収されたのだろうか。
となるとここはヴェニデの病院か。
それとベッケルンはどうなった。
あんな奴らに殺られるようなタマじゃない事は分かっている。
こうして自分が生きている事から奴はきっと撤退したのだろう。
そんな事を考えている内に意識がハッキリとしてきた。
不明瞭な視界も鮮明なものとなり、周りの景色がよく見える。
確かに寝かされていたのはベッドだが、病院ではなく何処かの民家のようだ。
体に包帯が巻かれているのを見るとどうやらちゃんと治療はしてくれたらしい。
しかし、ここは民家にしても変わったデザインだ。
部屋の仕切りは無く、円形の家の中に僅かな家財道具が置いてあるだけ。
それに建材もコンクリートではなく木材等の天然素材を使用しているようだ。
今の時代では目にすることの無い家だった。
自分の脳内でここがあの世か、それともタイムスリップでもしたのかという非現実的な二つの可能性が生まれる。
何にせよ、外を見てみなければここが何処かも分からない。
ベッドから降りるが、体が痛む様子は無い。
傷もそこまで深くはなかったようだ。
玄関と思われる扉のノブを握り、開く。
そこにあった光景を、レニックは信じる事が出来なかった。
見渡す限りの緑、緑、緑である。
草木が生い茂り、大木の幹に沿ってこの家と同じ構造の民家が複数建てられている。
こんな光景、一生掛かっても見る事は出来なかったことだろう。
「何だ……これは……」
呆然としながら家から出て歩こうとすると、前方からやってきた誰かと鉢合わせた。
「うわぁっ!?」
「……?」
女性だった。
変わった服装をしていて、長い金髪。
そして真っ先に目に付いたのがやたら長い耳。
確かに人間にも耳が多少長い奴はいるがこうも極端に長くはない。
兎に角、驚きのあまり転んでしまった少女にレニックは手を差し伸べる事にした。
「あー、大丈夫か?」
「▇▇▇▇▇▇▇!」
「……うん?」
少女が何を言っているのかよく分からなかった。
その怪訝な表情をしたレニックを聞き取れなかったと取った少女再度同じ言葉を繰り返すがやはりなんと言っているのか分からない。
少なくとも英語ではない。
しかし自分の知る如何なる言語とも発音等が一致せず、未知の言語であることが分かった。
「えーと、俺の話してる事分かるか?」
今度はこちらから話しかけてみるが、少女は首を傾げて理解できないと言った素振りを見せる。
「参ったな……」
まさかこんな所でコミュニケーションの段階で頓挫するとは思わなかったレニックは顔を顰めて額を抑える。
「▇▇▇▇▇▇▇?」
顔を顰め出したレニックを見た少女はまだ痛むところがあるのではないか、と思いレニックの背中を押して家の中に戻そうとする。
「お、おい何するんだ」
「▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇!」
「分かった分かった!戻りゃあいいんだろ戻りゃあ」
少女に怒られたと感じたレニックは大人しく家に戻った。
家に入ると少女はレニックをベッドに座らせ、何かを言うと家の外へと駆け出していった。
少女が戻って来るのを待っている時、ベッド脇に荷物が置いてあるのを見つけた。
自分がACの中に入れていた装備と食料、その他の道具類だ。
袋を開けると荷物の中には護身用のナイフと自動小銃に拳銃、そしてその弾薬まで入れてあった。
不用心な、と思いながら袋の中を漁っていると、また家の扉が開いた。
今度は少女の父親らしき人まで来ている。
やはり彼も耳が長い。
二人は少し話した後、こちらに寄ってきてまた未知の言語で喋りかけて来た。
「▇▇▇▇▇▇▇?」
やっぱり何を言っているのか分からないので何とか分からないと言う意思を身振り手振りで伝えると、二人は困った顔をした。
一番困っているのはこっちだよ、と悪態をつきそうになるが何とか抑える。
コミュニケーションを諦めた父親(推定)はレニックの怪我の確認をしたいらしく、包帯を取ろうとしてきた。
レニックは別に拒絶したりはせず、父親(推定)に包帯を取ってもらった。
「▇▇▇▇▇▇▇」
傷は殆ど治っていて僅かな傷跡が残っているのみだった。
父親(推定)の言っていることは分からないが声色からして安心しているのだろう。
この現状を理解できない今、兎に角必要なのは彼らの言語の習得。
そう思ったレニックは、これからの方針をそれに決めた。
こうして始まった未知の土地での生活だが、最初辺りはとても苦労した。
言語が通じない為、何をすればいいか分からないし、何の話をしているのかすらも分からない。
一応ある程度の力仕事等はこなしていたが、コミュニケーションが取れないのもあってかこの村の住民(全員耳長だった。 あと美男美女揃い)にはあまり歓迎されていなかった。
取り敢えず方針に従って最初にあった少女と父親(推定)に未知の言語を教えてもらう事にした。
あれから更に暫く経ったが、この異世界語もそれなりに板に付いてきた。
二人の助力あっての賜物だ。
まだ複雑な言葉などは無理だが、簡単な日常会話ぐらいならできるようになった。
お陰でここでの生活はかなり改善されたと思われる。
言語習得の合間にあの少女、
弓矢は普段使っている自動小銃とは感覚が違い過ぎて未だに的に命中させられた試しが無い。
ACの狙撃なら比較的得意な方なのだが……。
それとACに関してだが、幾つかの問題があった。
弾が少ないのは元々知っていたが、バラしたり試しに起動してみたりした所、FCSが破損しており、まともに使えない状況だ。
オマケに全周型モニターもあの時のパイルのせいで画面はノイズまみれ、しかもロックオンサイトやクロスヘアどころかHUDすら表示されないという致命傷だ。
外部の大まかな箇所の応急修理なら出来るが、こういった精密機器が破損しているならば一度ガレージまで運び込んで破損箇所を取り外してから整った設備で修理する必要がある。
まぁ、パイルをまともに食らってまだ動けるんだから大分マシな方なのだが。
普通だったらパイロットが生きていてもACの方はオーバーホールが必要なレベルの損傷になっていただろう。
まだ脇腹に大穴を開けられただけで済んでいる時点で奇跡としか言い様がない。
もしあの時ドライゼが装備していたのがHEATパイルだったらと思うと……想像もしたくないな。
問題はまだあった。
IDキーを認証する回路がやられたのか、ACがなかなか起動しなくなってしまったのだ。
酷い時には一度起動するのにIDキーを何十回と抜き挿しした事もあった。
これも中々の致命傷で、いざと言う時に戦えないというのはかなりまずい。
「ねーえ、レニック。 その鉄の巨人のお世話は終わったー?」
コックピットに篭っていると、外からテュカの声が聞こえて来た。
脇腹の大穴のお陰でハッチを閉めていてもハッキリと聞こえる。
時刻を見ると、もう夕方だった。
そろそろ夕飯が出来上がる頃だ。
「あぁ、今行く!」
ハッチを開き、膝を地に突いた状態のライトニングホーネットから飛び降りる。
外で待ってくれていたテュカは「早く帰らないとご飯できちゃうよ」と急かしながら大木の上へと梯子で上がっていく。
大木の高さが高さなので上り下りが毎回疲れる。
もう慣れてしまったが。
家の扉を開けるとそこにはテーブルに並べられた食事と椅子に座ってレニック達の帰りを待っていたテュカの父親であるホドリュー・レイ・マルソーがいた。
「やっと帰ってきたか。 さぁ、冷めてしまう前に食べよう」
帰ってきた二人は席に着き、食事を取り始める。
肉が少量入った山菜のスープにパンと質素な構成だが、いつも傭兵として暮らしており、まともな食事を取る事が無かったレニックにとってはこれらすらもご馳走だった。
何よりも、誰かと食卓を共にするという経験が無かった彼はこの瞬間が一番充実していた。
傭兵とは常に孤独だ。
いつも隣に付き添ってくれている仲間であっても、いつ裏切るか分からない為、信用が出来ない。
過去にあった話だが、とある母とその息子で部隊を組んだ傭兵部隊がいた。
母子と言うだけあって、その仲はとても良さそうに見えた。
コンビネーションも完璧でAC乗りとしてはベテランの域に入る実力を持っていたと考えられる。
しかし、依頼をこなしていたある日の事だった。
任務中、母親のACが突然背後から何かに撃たれて大破、母親は死亡した。
そしてその母親を撃ち殺したのが、息子だったのだ。
後の話では、息子は契約をしていた勢力、EGFとは別のシリウスにかなりの額の報酬で母親の殺害の依頼を受けていたらしい。
母親が殺害された理由は分からない。
シリウスの機密情報を握っていた等という噂もあるが、真相は既に闇の中だ。
淡々と食事の時間は過ぎていき、もうすぐ食べ終わろうとした頃、ホドリューが唐突に話し出した。
「レニック、お前がここに暮らすようになってから大分経ったな」
「まぁ確かにかれこれ半年はここで暮らしてるな」
「テュカとも大分打ち解けてきただろう?」
「まだ狩りの手伝いは出来そうにねえけどな、ハハハ」
「だったら今度弓矢の稽古つけてあげよっか? 村の中では得意な方だよ」
「そうだな、また今度頼むよ」
「その様子だと、すっかり仲良くなったみたいだな。 良かった」
二人の様子を見て満足そうに頷いたホドリューは本題を切り出すことにした。
「レニック、テュカももうすぐ大人になる頃だ。 それでお前に頼みがある」
「頼み……か?」
「あぁ」
「お父さん急にどうしたの?」
「これはテュカにとっても大事な話だ。 よく聞いておいてくれ」
「う、うん」
ホドリューが真剣な表情をしたのを見て、大切な頼みなのだと察したレニックは食器を一度置き、聞く姿勢を整えた。
何を頼んで来るのだろうか。
まさかここから追い出されたりしないだろうか。
ACがあったとしても流石にこんな場所で生きていけるとは思えんぞ。
こんなタイミングで騙して悪いがされてもあんなボロボロのACじゃ直ぐにピーピーピーボボボボボする未来しか見えない。
だが、レニックの不安は杞憂に終わった。
「……テュカを……嫁に貰ってはくれないだろうか」
「……ッッ!?」
「ブッッ!!」
余りにも急過ぎたその頼みに、思わずレニックは椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がり、ちょうど水を飲んでいたテュカは盛大にそれをマルチプルパルスの如く吹き出した。
「ちょ、ちょっと待て。 急に何を言い出すかと思えば結婚しろだと? 俺が?テュカと!?」
「そ、そうだよ!まだ会ってから半年しか経ってないんだし……」
「だが嫌いではないんだろう?」
「うっ!うぅ……」
ホドリューの一言でテュカは言い返せなくなり、顔を真っ赤にしながら俯いた。
娘の前でその娘との結婚を父親が頼むなど、こんなシチュエーションが今までにあっただろうか。
いや、あってたまるか。
「見た限りでは、お前達はいつも仲良く出来ているし、時間を共にしている事の方が多い」
「だからって結婚まで……それに人間とエルフの結婚なんて他の村人達が認めないだろう!」
「ん? 何だお前知らないのか?」
「なんの事だ」
何だか嫌な予感のするレニックだったが、その嫌な予感は的中してしまった。
「お前達の関係は村民全員の公認だぞ?寧ろ、早く結婚しろと言う奴までいる」
「嘘だろ……」
公認であるというのもそうだが、レニックとテュカの関係が村中に知れ渡っていたというのも驚きだ。
そんなに人間とエルフのイチャラブが見たいのかお前らは。
人間とエルフが交配したら何が産まれるんだろうか。
やはり本とかで見るようなハーフエルフが産まれるのだろうか。
奇形児とか御免だぞ。
「安心しろ。 昔、まだここが栄えていた頃はハーフエルフも結構いたぞ。 人間との交流も盛んだったしな」
「そ、そうなのか……」
そんな事を言われてしまうと何だか言い返せなくなってしまう。
「それで、二人は結婚したいのか? それともしたくないのか?」
「あー、えーと、ぬぅ……」
「……二人で話して決めてみる」
「……そうか、なら外で存分に話して来るがいい。 私はここで待つ事にするよ」
「うん、じゃあレニック」
「あ、あぁ」
レニックとテュカは家の外に出ると、互いに向かい合った。
2人共、緊張しているのか顔が僅かに赤みがかっている。
「テュカは……本当に俺で良いのか?」
「ねぇ、貴方が最初に来た時の事、まだ覚えてるでしょ?」
「あぁ」
「貴方と最初にあった時、私は貴方が怖かったの」
少し傷つくレニックだったが、それに構わずテュカは話を続ける。
「その背中には沢山の死を背負って来てる感じがして、目には確かな殺意が篭ってた」
「……」
「でも、こうして貴方と長い時を過ごしている内に、貴方の目の奥に宿る強い意志に気が付いたの」
「強い……意志か」
「そう、まるでもう何も失いたくない。 そんな感情が見えたの」
「見えた……ねえ」
「知ってる?目は口みたいに嘘をつけないのよ。 それにエルフは眼がいいからそんなの直ぐに分かっちゃう」
つまり目は口ほどに物を言うのエルフバージョンということか。
そう頭の中で考えてレニックは納得した
「貴方の目をずっと見ていくうちに、私の心の中で何かが変わった気がする。 貴方は傭兵として多くの人を殺めたのは知ってる。 だけど、私はそんな貴方と一緒にいて後悔はしてない」
自分が傭兵である事は、テュカとホドリューにだけ話している。
自分が人殺しであっても、彼女は後悔していないというのだ。
多くの人々を殺し、死体の山を築き上げてきたレニックを忌避するどころか彼女は寄り添ってくれた。
「もうハッキリ言っちゃうけど…………」
結論を出そうとしているテュカに、レニックは固唾を飲んだ。
レニックとて長き日をテュカと共にしてきた。
結婚したくないかと言われればそうでもない。
「……私!貴方と結婚したいっ!!」
「……!!」
彼女の答えに対する、返事などレニックはもとより決めていた。
「……契約、成立だな。 喜んで受けさせてもらう、その依頼」
月明かりに照らされながら、二人は愛を誓った。
炎龍がすぐそこまでやって来ている事も知らずに…………。
お前ら(読者)の感想の投稿が止まらねぇ限り、その先に次話はあるぞ!!
だからよ……(感想の投稿を)止めるんじゃねぇぞ……。(キボウノハナー)
自分、恋愛モノ書いたことないんで今回の描写下手くそかもしれないけど許し亭ゆるして。