異世界をヴァーディクトウォーに巻き込まないでください(懇願)   作:COTOKITI JP

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少々投稿が遅れを取りましたが、今や巻き返しのときです。


蜥蜴と巨人

無機質な部屋。

その壁際にある一台のPCとそれと向かい合って座る一人の男。

 

「それで、作戦の進捗はどうなっている」

 

男がPCに向かって問い掛けると今度はPCの方から返答が返ってくる。

 

「はい、我が部隊は無事に()を通過し、探索の領域を広めつつあります」

 

「そうか、現地に人間の類はいたか?」

 

「はい、探索中に32人の武装した集団と遭遇、攻撃を仕掛けてきた為交戦し、28人が死亡、残りの4人はこちらで拘束しており、情報を聞き出そうと試みています」

 

「その武装集団の特徴は?」

 

「特筆すべきは所持している武器がどれも旧時代以前、それも中世レベルの剣や槍等の刃物ばかりでした」

 

「ふむ、つまりその世界は文明レベルが我々と比べてかなり下にある、ということか」

 

「恐らくそう見て間違いないかと」

 

「AC部隊は出さないのか?」

 

この回線に接続していた別の男が質問を投げ掛けた。

 

「シリウスとの戦いが激化しており、ACはまだ量産型でも厳しい。 当面は例のハイエンドMTで対応する」

 

「ハイエンドMT……あぁ、あのタワー(・・・)の技術を応用したとかいう」

 

また別の男が会話に混じってくる。

 

「実際はタワーにあった設計図を元にそのままコピーしたようなものだがな」

 

「話が逸れてきたな。 一度本題に戻すぞ」

 

一人の男の一言で会話は止まる。

 

「今回の作戦に於いて、少々まずい事実が発覚した」

 

「なんだそれは?」

 

「……恐らくだが、ヴェニデがあの世界に介入してきている可能性がある」

 

 

 

 

 

 

ある日の朝、レニックを起こしたのは凄まじい羽音だった。

慌てて家を出ればそこにいたのは空から村を見下ろす巨大な竜。

直後、竜の口から放たれる爆炎。

それは村を瞬時にして焼き払い、瞬く間に村を囲う森が火の海と化した。

他の村人達も事態に気付き、弓矢を手に竜へと反撃を加え始める。

しかし竜の硬い鱗にそれは全て弾かれ、代わりに村人達が竜の炎で骨の芯まで炭にされた。

 

「な、何が起きてるの……!?」

 

「レニック!テュカ!良かった、まだ無事だったか!」

 

扉が勢い良く開き、そこに駆け付けてくるホドリュー。

彼も弓を持っていて戦う準備をしていたようだ。

 

「二人は急いで村の外に逃げるんだ!」

 

「そんな!皆を置いて行くなんて……!!」

 

レニックも元より、そそくさと逃げ去るつもりなど無かった。

 

「アンタら二人が逃げてくれ。 俺がアイツを殺る!」

 

「よ、よせ!!一人で戦うなど!!」

 

というより、恐らくこの状況であの竜を倒せるのは自分しかいない。

そう思ったレニックは二人の制止を振り切って梯子を降り、愛機のライトニングホーネットのコックピットに駆け込む。

 

ハッチの開いたコックピットから逃げる二人の姿が見えた。

今できる事を全力でやらねば、彼らは死ぬ。

これまでの恩を今返さずしていつ返すというのか。

 

ハッチを閉め、起動の準備を始める。

計器盤を起動し、ジェネレーターと各駆動部の接続を確認する。

そして、IDキーを挿し込んで起動を試みる。

 

これで本来ならばACは起動するはずだった。

回路の破損さえなければの話だが。

 

「クソっ!よりにもよってこんな時にっ!!」

 

何度IDキーを抜き挿ししても一向に反応が無い。

早く、早く起動せねばとIDキーを更に何度も抜き挿しするが、モニターは彼を嘲笑うかのように真っ黒なままだった。

外からは轟音と悲鳴が重なって聞こえてくる。

こうしてる間にも多くの村人が死んでいるのだ。

 

何度もIDキーを挿し、起動を試みてもやはり起動しない。

時に自らの無力さに対する怒りに身を任せて計器盤を殴りつけたとてそれは意味を成さない。

 

竜は無防備であるはずのレニックを無視し、より多くの村人を殺そうと動いている。

それが捕食の為か、それとも単なる虐殺なのかは分からない。

だが、彼にそれを傍観する程の薄情さは無かった。

 

「動けよっ!!動け!!動けよクソッタレ!!!」

 

人々の悲鳴が、竜の咆哮が、木々が燃える音が彼の耳に入る度に焦燥感がどんどんと増していく。

心無しか、村人の悲鳴も少しずつ減ってきている気がする。

 

自分は何も出来ないのか。

何も出来ずに彼らを見殺しにし、テュカでさえも失ってしまうのか。

あの時、あれ程助けて貰いながらこんな時に限って何も出来ないというのか。

今までの記憶を竜の咆哮とそれと共に放たれる爆炎が否定していく。

 

「動けよ……頼む……動いてくれ……」

 

結局自分は何も出来ない。

ただ嘗ての恩人達が焼かれ、食われ、死んでいくのを静観するのみである。

全てが、無駄になるのか。

 

また(・・)失うのか。

 

 

 

 

 

 

 

『私を超えたか……感謝するぞ……ありがとう……』

 

 

 

 

 

『レニック……今度はお前が……()に……なるのかもしれんな……』

 

 

 

 

 

 

そんな事を許してはならない。

俺は、今ここで、戦わなければならない筈だッッ!!!

 

 

「動けえええええぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」

 

力を振り絞り、IDキーを挿し込む。

今度は確かに、手応えのようなものを感じた。

 

『メインシ……、パ……ットデ…タの認…を開始』

 

途切れ途切れの機械音声が流れ、そして遂に、

 

『おはよう……ます。 メ……システム、戦闘モ……を起動』

 

モニターが点いた。

それから更に彼の意志に呼応するかのようにブースターは火を灯し、頭部のカメラアイが光った。

モニター越しに流れる映像には、まだ森を焼き続けている竜の姿があった。

まだこちらには気付いていないようで、明後日の方向を向いている。

 

「この位置なら……!」

 

直ぐに移動を開始し、ブースターを吹かしながら竜の背後へと回り込む。

そして右手のライフルを構え、三発発砲する。

三発のAPFSDSは二発が外れ、残りの一発が左脇腹を掠めた。

 

「やはり手動照準では無理があるな……」

 

APFSDSが脇腹を掠めた事で気付いた竜が今度はこちらに向けて炎を吐き出す。

挙動からそれを察知したレニックは後退して距離を取り、何とかそれを回避する。

今この機体は大穴が開いている。

あの規模の炎からはパイロットを守ってくれる事は無いだろう。

 

距離を取りつつ、樹木の間をくぐり抜けながら引き撃ちで竜を牽制する。

あくまでも牽制だ。

ただでさえFCSが破損して手動照準しか使えないのに更に激しい運動をしているのだ。

命中は期待できない。

 

更に四発発砲するが、やはり全弾命中せず。

だが、自分に向かって飛んで来ているのがただの矢では無い事に気付いた竜は一度足を止め、警戒する。

 

その隙にレニックも停止し、今度は命中させるべく静止状態での射撃を行う。

一発、二発、三発。

竜が動き出す前に少なくとも二発は命中させた。

一発は腹部に直撃、確実に貫いて臓器にダメージを与えた。

二発目は左腕の鱗で受け流すように弾かれてしまった。

 

「なんて硬い鱗持ってやがる!」

 

APFSDSを受け流すような形とはいえ弾いた事からしてあの鱗単体の強度は恐らくだが戦車の装甲材に匹敵するかもしれない。

多分ACのガトリングでは貫けないだろう。

こちらの矢が自分の体を貫ける事を知った竜は二足歩行から四足歩行へと切り替え、鱗の無い腹部を隠すような姿勢で突進してきた。

 

「ブーストチャージかよ!?」

 

咄嗟に上昇し、ハイブーストで突進を回避する。

竜が真横を通り過ぎるとさっきまで自分がいた場所の木々が一瞬にして押し潰され、開けた場所と化した。

ここに来て、レニックは自分とあの竜の戦力差がさほど開いていない事に気付く。

 

ここは森の中だ。

遮蔽物が多く、視界も所々遮られる上に狭く、近距離での戦いを強いられる。

重量二脚であるライトニングホーネットが苦手とする地形だ。

それに、この機体は既にボロボロでジェネレーターと他の駆動部が辛うじて生きているだけ。

残弾ももう残り少ない。

あの巨体には120mmクラスのAPFSDSですら致命傷を与えられない。

残り少ない残弾、しかも手動照準であの竜の急所を正確に撃ち抜くなど、常人ができる事ではない。

 

通り過ぎた竜の脇腹に更に三発撃ち込み、今度は三発ともしっかりと鱗を貫いた。

竜は苦痛に叫ぶが、案の定致命傷は与えられていない。

怒り狂った竜は爆炎をレニックのいる範囲にばら撒き、火の海を次々と広げていく。

それを更に後退しながら回避し、反撃の策を考える。

 

「モニターのノイズが酷い……これでは目を潰されたも同然だ!」

 

戦闘のせいか、モニターのノイズが増えて来ている。

左右はもう完全に見えない。

目潰しに近い状況に陥ったレニックだが、それでも操縦桿から手を離す訳には行かなかった。

テュカ達がどこにいるかは分からない。

だがまずは奴を倒さなければ生死確認もできない。

 

ブーストドライブで森の上まで飛び、そのままハイブーストで竜の上を飛び越える。

上を通過しながら、全力で砲弾を上から浴びせる。

傾斜さえなければこの程度の鱗は貫ける。

現に次々と背中に穴が開き、竜が悶え苦しむ。

 

が、しかし、竜と戦ったことなど無いレニックは、奴の特性を見誤っていた。

 

「があぁッッ!?」

 

左から襲い来る凄まじい衝撃。

パイル撃ち込まれた時とは桁違いな衝撃に、ライトニングホーネットは跳ね飛ばされた。

映像の乱れるモニターに映ったそれを見て、レニックは驚愕した。

 

ライトニングホーネットを跳ね飛ばしたのは……竜の尻尾だった。

竜からすれば重量二脚ですら玩具同然だ。

攻撃を受けた機体はバランスを失い、猛スピードで大木に叩きつけられ、ブースターで減速するが、速度が落ちることは無く轟音と共に不時着する。

 

警報音が鳴り響くコックピット。

レニックは意識を失っていて項垂れたまま。

ライトニングホーネットは脚部が完全に損壊しており、逃げる事はできない。

しかも尻尾の直撃の際に歪んだ装甲がレニックの腹部に突き刺さっていた。

溢れ出す血液がコックピットの床を徐々に赤く染めていく。

竜は今が好機と言わんばかりにライトニングホーネットの元に歩み寄り、口の中に炎を充填する。

 

それが放たれんとした時、ライトニングホーネットの腕がそれよりも早く動いた。

唯一動いた手は、持っていたライフルの弾をありったけ叩き込んだ。

何発かは外れ、しかし確実に殆どの弾が竜の鱗を貫いた。

相手の抵抗を鬱陶しく思った竜は構わず炎を吐こうとするが、その時、半ばヤケになって撃った最後の一発が竜の急所に当たった。

 

首だ。

最後のAPFSDSは首の動脈を貫いたのだ。

突然に致命傷を負わせられた竜はその長い首をうねらせ、悶え苦しむ。

 

動脈を撃ち抜かれた竜はレニックに構っている暇などなく、それはレニックが逃げ出す隙を作った。

ハッチを開き、竜に見つかる前にACから脱出。

先程の墜落で負傷した体に鞭を打ち、少し離れた草むらの中に飛び込む。

 

レニックが隠れた頃には竜はある程度落ち着きを取り戻しており、空になったライトニングホーネットを忌々しげに睨んでいた。

そして竜は炎は使わず、自らの足で踏み潰した。

 

金属の軋む音がけたたましく鳴り響き、機体は原型も残さず潰れ、地面にめり込んだ。

竜はどうやら中にさっきまで人が入っていたなど知らなかったようだ。

踏み潰した後は炎で焼き払い、黒焦げの鋼鉄の塊を一瞥するとそのまま飛び去って行った。

 

「まだだ……まだ……死ねな……い」

 

傷口からは夥しい血液が流れ、パイロットスーツは赤くなる。

瞼が重い。

この流れる血は砂時計の砂のようにドロドロと流れ落ちる。

そしてその砂時計は死へのカウントダウンを数えていた。

 

失いゆく意識に逆らう事は出来ずに、レニックはその目を閉じた。

朝日の射し込む森の中……。

 

 

 

 

 

 

「負傷者を見つけました!!」

 

「生きてるのか!?」

 

「まだ息はありますが出血が酷く、危険な状態です!」

 

「急いで止血しろ!それと……を呼んでこい!」

 

「はい!」




レニック異能生存体説

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